おじゅうたれ
参りました・・・。 今、夜中の1時15分ですが、正に今、参っています。 犬の小便のせいで・・・。 岩手で入院している時、母が世話をしに駆けつけて来たのですが、その時、「犬が、漏らしてばかりで、困る」と、漏らしていたには漏らしていたのです。 しかし、まさか、こんなにひどくなっているとは・・・。
私が岩手に赴く、数ヵ月か前から、うちの犬は、もう、散歩に行けなくなっていました。 最盛時には、朝に母と、夕方に父と、一日二回行っていたのが、まず、朝、出かけなくなりました。 その後、半年くらいは、夕方だけ、父に引っ張られるようにして、門を出ていたのですが、せいぜい、20メートルくらい歩いて帰って来るだけになっていました。 若い頃は、家を一歩出るなら、紐をぐいぐい引っ張って、体重が5倍以上ある人間を引き回していたのに、同じ犬とは思えない衰えようでした。 そして、とうとう、家から全く出たがらないようになったのです。
ちなみに、かつては、私も、日曜日だけ、犬を散歩に連れ行っていました。 その頃は、車があったので、犬を後部座席に乗せて、海へ行き、砂浜を全力疾走させたりしていました。 ところが、4年前の2010年に、岩手応援に行き、3ヵ月して帰って来たら、犬の様子が変わっており、私が胴輪をつけようとしても、逃げてしまうようになりました。 「おめーはもー、連れてってくれなくていーよ。 朝晩、爺さん婆さんと行ってるからよー」という顔で、さも迷惑そうに私を見るのです。 私は、寂しく思うと同時に、「ああ、これで、10年続いた、日曜午前の犬の散歩から、解放されるのだな」と、心の八割くらいで、ほっとしました。 犬の散歩というのは、結構、大変なのですよ。
それ以来、散歩は、父と母に任せきりにしていたのですが、今年に入った辺りで、その習慣が、完全に途絶えていたわけです。 幸い、そこそこの面積がある庭があり、その中で、放し飼いにしているので、排尿排便の場所には困らず、すぐに、問題が発生する事はありませんでした。 犬は本来、自分の家の敷地内では、大小便をせず、用を足すために散歩に出かけるといっても過言ではないのですが、散歩に行けなくなった場合は、是非も無い、というか、背に腹は替えられないわけですな。
その段階で、私は、岩手に行ったのです。 父に頼んだ亀の水換えは心配していましたが、犬の事は、全く心配していませんでした。 入院中、母から、犬の尿の始末が大変な事になっていると聞いても、ピンと来ませんでした。 事態の重大さが分かったのは、会社を辞めて、家に帰って来てからです。 約二ヵ月ぶりに見た我が家の犬は、恐るべき、怪獣と化していたのです。
当年15歳で、人間なら100歳を超えている老犬ですから、無理もないと言えば無理もないのですが、もともと、我慢強さとか、奥ゆかしさとか、そういう気質に縁が無い奴で、常日頃、人間を小馬鹿にしている割には、ちょっと困った事があると、すぐに、飼い主に頼りたがるという、好かん性格。 そういや、他の犬に対する態度も、なかなか・・・。 自分より大きい犬が来ると、顔を背けて脇を通り抜け、小さい犬が近付くと、嵩にかかって吠え付くという、まことに、好かん性格。 一体、誰に似たんだか・・・。
少なくとも、うちの家族には、こういう性格の人間はいないので、生まれたブリーダーの家が、一家揃って、そういう性格だったんじゃないかと思います。 今となっては、確かめようがないのをいい事に、勝手な事を言っているようですが、三つ子の魂百までと言いますし、刷り込み理論なども考えると、どこかにモデルがいなければ、自然に、こうはならんと思うのですよ。
余談ながら、うちの犬は、名前を呼んでも、振り向きもしないという、およそ、可愛げの無い奴なのですが、もしかすると、ブリーダーの家で、先に名前をつけられていて、それが自分の本名だと思っているから、敢えて、うちでつけた名前を無視しているのではありますまいか? いつの日にか、本当の名前を呼んだら、振り向いて、ニタッと笑い、「ようやく、俺が誰だか、分かったようだな」と、人の言葉で喋り出すんじゃないでしょうか。 ちなみに、「鬼六」ではないようです。 「信州信濃の早太郎」でもない。 ・・・、犬相手に、こんな事、試しているのは、世界で私だけか?
話を戻します。 岩手から帰って来た私が、犬にどんな具合に苦しめられているかというと、夜、眠らせて貰えないのです。 まず、毎晩夜中の12時近くになると、庭で、夜鳴きを始めます。 遠吠えとはまた違って、飼い主を呼ぶ時の声なのですが、これが、結構なボリュームでして、近所迷惑、甚だしい。 「うるせーぞっ!」なんて、怒鳴り込まれては堪らんので、急いで、二階の自室から、一階に下り、濡れ縁から外に出て、サンダルをつっかけ、犬小屋の前で寝ている犬を回収に行きます。 頭に来るじゃありませんか。 横になって寝ながら、ウォーウォー吠えて、人を呼びつけてるんですよ。 空使いだったら、ありゃしない。
うちの犬は、まだ一応、歩く事はできるのですが、後ろ脚がへたって、よたよたなので、自力歩行させていたら、犬小屋から濡れ縁まで、10分以上かかります。 いくら、夏とはいえ、夜中に、屋外で、そんなに待ってられませんから、犬の脇の下を持って、運んでしまいます。 これが、また、重いんだわ。 歳を取って、かなり痩せたんですが、それでも、まだ、10キロ以上はあります。 こちとら、腰痛持ちだってーのに、なんで、毎晩、こんな事せにゃならんのか・・・。 それに、私は、犬の吠え声で起こされる寸前まで、眠っているわけでして、起き抜けに、重い物を持つというのが、筋肉には、非常に宜しくない。 さりとて、犬は容赦なく吠え続けますから、準備体操なんかしている暇はありません。 敵わんなー・・・。
で、家の中に運び込むと、台所へ連れて行きます。 正確に言うと、食堂も兼ねている、ダイニング・キッチンです。 うちの場合、一階には、四部屋ありますが、その内、三つは和室で、台所だけが、ビニール素材張りの床になっています。 畳の上に小便されると、吸ってしまって、始末が悪いので、台所へ入れるしかないんですな。 私が岩手にいる間から、母がそうしていたらしく、私は、それを受け継いだというわけ。
ここで、どうして、私が、母に代わって、犬の夜の世話をする事になったかについて書いておきますと、単に、閑人だったからです。 8月の25日に有休が切れて、完全退社するまでは、何もする事が無いので、家の中で、一番厄介な役が回って来るのを、拒否できなかったのです。 何もしていないと言えば、父も、何もしていないわけですが、まさか、83歳の老人に、夜中に起きて来て、犬を取り込めとも、言えますまい。
母は、台所の床に、新聞紙を敷いて、犬が小便した場所を、直ぐに分かるようにしていたとの事で、最初は私も、そうしていました。 うちの犬は、オスだからかもしれませんが、歩きながらでないと、小便が出難いようで、一ヵ所に纏まってしてくれず、食卓の周りを回りながら、敷いてある新聞紙、5・6枚を、一気に濡らして行きます。 まるで、「せっかく、敷いてくれたんだから、頑張って、全部濡らさないとな」と思っているかのように・・・。
で、一度、濡れると、すぐにまた、ウォーウォー吠えて、「小便したぞー! 早く、どうにかしろー!」と、私を呼ぶのです。 臭いが嫌なんだか、濡れているのが嫌なんだか、単に、私を呼びつけて、扱き使ってやりたいだけなんだか分かりませんが、とにかく、呼ばないでは済まさない。 私は、二階の自室に戻って眠っているわけですが、また下りていって、新聞紙を取り替え、濡れ雑巾で床を拭きます。 ところが、手を洗って、二階に上がり、ベッドに横になったのも束の間、早い時には、1分もしない内に、また、ウォーウォー吠える声が聞こえて来ます。 これが、大体、5回から、7回くらい、繰り返されます。 もう、地獄・・・。
犬の奴が、一晩に、何回も小便をするので、新聞紙が足りなくなり、その内、新聞紙を敷くのをやめてしまいました。 新聞紙が濡れれば、確かに、どこでやったか分かり易いですが、新聞紙が小便を全て吸ってくれるわけではないので、結局、それを剥がした後、濡れ雑巾で拭く事になり、ゴミが出るだけ、面倒が多いのです。 直接、床にさせてしまって、雑巾で拭いた方が、一手間少なくて済みます。
母は、バスタオルを敷いておいて、翌朝、洗うという事もやっていたようですが、うちの犬は、御丁寧に、バスタオルの上だけ避けて、小便をするのです。 まるで、汚してはいけない所だと思っているかのように。 それに、臭いが嫌で吠えるのだとしたら、バスタオルだろうが、新聞紙だろうが、床に直かだろうが、臭う事に変わりはありませんから、結局、吠えられるわけで、意味が無い。
ブルー・シートを切って、新聞紙の代わりにするというのも検討しましたが、よく考えてみれば、汚れたブルー・シートを、雑巾で拭かなければならないわけですから、毎日、敷いたり、干したり、畳んだりするだけ、手間が増えます。 結局のところ、若干の心理的抵抗があっても、床に直接させて、雑巾で拭く方が、効率がいいんですな。
犬用の紙おむつというのがあって、それを買って来て、着けてみた事があるのですが、あれは、少なくとも、うちの犬には、通用しませんでした。 歩いただけで、脱げて来ますし、脱げないように、ぎゅうとこら締め付けても、マジック・テープで留めてあるだけなので、犬が自分で、口を使って、外してしまうのです。 侮るべからず。 犬は、人間の赤ん坊より、ずっと器用なわけだ。 お尻回りだけを包むタイプは、とても、実用品とはいえません。 メーカーも、脱げてしまうのが分かっていて、売っているのだとしたら、かなり悪質な商法です。 もっと簡易な品で、腹巻き式に、胴に巻くだけのタイプもありますが、あれに至っては、尿道口すら覆えないのであって、話になりません。 詐欺商品、決定ですな。
犬用のおむつカバーというのがありますが、そちらは、よく考えられていて、腹だけでなく、背中まで覆い、前脚にも通すという、ほとんど、服なので、まず、脱げる事はなさそうです。 しかし、値段が、そこそこ高いですし、自分の家の犬にピッタリ合ったサイズを選ぶのが難しそう。 小さければ入らないし、大きければ、隙間が出来て、吸水紙が落ちてしまうでしょう。 犬の服の類は、人間と違って、サイズの基準が決まっていないので、S・M・Lで判断する事ができないんですな。 適合犬種で大雑把に分けられていますが、柴犬のように、大小の幅が大きい種類では、ほとんど、参考になりません。 困った事だ。
また、紙おむつができたところで、小便の臭いは消せないのであって、うちの犬のように、臭いが嫌だから、人間を呼ぶという場合、結局、呼びつけられる事になるのではないかと思うのです。 「拭いてくれー! 拭いてくれー!」が、「換えてくれー! 換えてくれー!」に変わるだけで・・・。 うーむ、処置無しじゃのう。 結局、床にさせて、拭くしかないのか・・・。
ある時、ふと気づいたのですが、私が床を拭いている傍らで、犬が、ペチャペチャ音を立てて、水を飲んでいやがるのです。 これだよ! 出す端から、補給しているのですから、そりゃ、何回も出るわけだよ。 こやつ、私に下りて来て欲しくて、わざと、水を飲んで、何回も小便してるんじゃないのか? 犬も、人間と同じで、歳を取ると、気が弱くなって来て、構って欲しいばかりに、わざわざ、人の迷惑になるような事をするようになるのかもしれません。
で、水皿の水の量を減らしてみたのですが、敵も然る者、一体、体のどこに溜めているのか、小便の回数は、一向に減らないのです。 もしや、小出しにしているのでは? 冗談じゃないよ。 そんな調節ができるなら、朝まで我慢できるだろうに! そもそも、庭にいる時、鳴かなければいいではないか!
で、これを書いている夜も、もう、7回、小便の始末をしに、台所へ呼びつけられました。 雑巾を絞ってばかりいるので、左の親指を痛めてしまいましたよ。 睡眠不足だけでなく、ノイローゼになりそうです。 犬でさえ、こうですから、これが、人間の介護になったら、どれだけ大変な事か・・・。 いや、人間は、吠えないだけ、マシでしょうか? ものは提案ですが、≪ルンバ≫を作っている会社で、犬が漏らした尿を吸い取って、床を拭いてくれるロボを開発してくれませんかね。 犬が死ぬ前に、私が死にそうです。
私が岩手に赴く、数ヵ月か前から、うちの犬は、もう、散歩に行けなくなっていました。 最盛時には、朝に母と、夕方に父と、一日二回行っていたのが、まず、朝、出かけなくなりました。 その後、半年くらいは、夕方だけ、父に引っ張られるようにして、門を出ていたのですが、せいぜい、20メートルくらい歩いて帰って来るだけになっていました。 若い頃は、家を一歩出るなら、紐をぐいぐい引っ張って、体重が5倍以上ある人間を引き回していたのに、同じ犬とは思えない衰えようでした。 そして、とうとう、家から全く出たがらないようになったのです。
ちなみに、かつては、私も、日曜日だけ、犬を散歩に連れ行っていました。 その頃は、車があったので、犬を後部座席に乗せて、海へ行き、砂浜を全力疾走させたりしていました。 ところが、4年前の2010年に、岩手応援に行き、3ヵ月して帰って来たら、犬の様子が変わっており、私が胴輪をつけようとしても、逃げてしまうようになりました。 「おめーはもー、連れてってくれなくていーよ。 朝晩、爺さん婆さんと行ってるからよー」という顔で、さも迷惑そうに私を見るのです。 私は、寂しく思うと同時に、「ああ、これで、10年続いた、日曜午前の犬の散歩から、解放されるのだな」と、心の八割くらいで、ほっとしました。 犬の散歩というのは、結構、大変なのですよ。
それ以来、散歩は、父と母に任せきりにしていたのですが、今年に入った辺りで、その習慣が、完全に途絶えていたわけです。 幸い、そこそこの面積がある庭があり、その中で、放し飼いにしているので、排尿排便の場所には困らず、すぐに、問題が発生する事はありませんでした。 犬は本来、自分の家の敷地内では、大小便をせず、用を足すために散歩に出かけるといっても過言ではないのですが、散歩に行けなくなった場合は、是非も無い、というか、背に腹は替えられないわけですな。
その段階で、私は、岩手に行ったのです。 父に頼んだ亀の水換えは心配していましたが、犬の事は、全く心配していませんでした。 入院中、母から、犬の尿の始末が大変な事になっていると聞いても、ピンと来ませんでした。 事態の重大さが分かったのは、会社を辞めて、家に帰って来てからです。 約二ヵ月ぶりに見た我が家の犬は、恐るべき、怪獣と化していたのです。
当年15歳で、人間なら100歳を超えている老犬ですから、無理もないと言えば無理もないのですが、もともと、我慢強さとか、奥ゆかしさとか、そういう気質に縁が無い奴で、常日頃、人間を小馬鹿にしている割には、ちょっと困った事があると、すぐに、飼い主に頼りたがるという、好かん性格。 そういや、他の犬に対する態度も、なかなか・・・。 自分より大きい犬が来ると、顔を背けて脇を通り抜け、小さい犬が近付くと、嵩にかかって吠え付くという、まことに、好かん性格。 一体、誰に似たんだか・・・。
少なくとも、うちの家族には、こういう性格の人間はいないので、生まれたブリーダーの家が、一家揃って、そういう性格だったんじゃないかと思います。 今となっては、確かめようがないのをいい事に、勝手な事を言っているようですが、三つ子の魂百までと言いますし、刷り込み理論なども考えると、どこかにモデルがいなければ、自然に、こうはならんと思うのですよ。
余談ながら、うちの犬は、名前を呼んでも、振り向きもしないという、およそ、可愛げの無い奴なのですが、もしかすると、ブリーダーの家で、先に名前をつけられていて、それが自分の本名だと思っているから、敢えて、うちでつけた名前を無視しているのではありますまいか? いつの日にか、本当の名前を呼んだら、振り向いて、ニタッと笑い、「ようやく、俺が誰だか、分かったようだな」と、人の言葉で喋り出すんじゃないでしょうか。 ちなみに、「鬼六」ではないようです。 「信州信濃の早太郎」でもない。 ・・・、犬相手に、こんな事、試しているのは、世界で私だけか?
話を戻します。 岩手から帰って来た私が、犬にどんな具合に苦しめられているかというと、夜、眠らせて貰えないのです。 まず、毎晩夜中の12時近くになると、庭で、夜鳴きを始めます。 遠吠えとはまた違って、飼い主を呼ぶ時の声なのですが、これが、結構なボリュームでして、近所迷惑、甚だしい。 「うるせーぞっ!」なんて、怒鳴り込まれては堪らんので、急いで、二階の自室から、一階に下り、濡れ縁から外に出て、サンダルをつっかけ、犬小屋の前で寝ている犬を回収に行きます。 頭に来るじゃありませんか。 横になって寝ながら、ウォーウォー吠えて、人を呼びつけてるんですよ。 空使いだったら、ありゃしない。
うちの犬は、まだ一応、歩く事はできるのですが、後ろ脚がへたって、よたよたなので、自力歩行させていたら、犬小屋から濡れ縁まで、10分以上かかります。 いくら、夏とはいえ、夜中に、屋外で、そんなに待ってられませんから、犬の脇の下を持って、運んでしまいます。 これが、また、重いんだわ。 歳を取って、かなり痩せたんですが、それでも、まだ、10キロ以上はあります。 こちとら、腰痛持ちだってーのに、なんで、毎晩、こんな事せにゃならんのか・・・。 それに、私は、犬の吠え声で起こされる寸前まで、眠っているわけでして、起き抜けに、重い物を持つというのが、筋肉には、非常に宜しくない。 さりとて、犬は容赦なく吠え続けますから、準備体操なんかしている暇はありません。 敵わんなー・・・。
で、家の中に運び込むと、台所へ連れて行きます。 正確に言うと、食堂も兼ねている、ダイニング・キッチンです。 うちの場合、一階には、四部屋ありますが、その内、三つは和室で、台所だけが、ビニール素材張りの床になっています。 畳の上に小便されると、吸ってしまって、始末が悪いので、台所へ入れるしかないんですな。 私が岩手にいる間から、母がそうしていたらしく、私は、それを受け継いだというわけ。
ここで、どうして、私が、母に代わって、犬の夜の世話をする事になったかについて書いておきますと、単に、閑人だったからです。 8月の25日に有休が切れて、完全退社するまでは、何もする事が無いので、家の中で、一番厄介な役が回って来るのを、拒否できなかったのです。 何もしていないと言えば、父も、何もしていないわけですが、まさか、83歳の老人に、夜中に起きて来て、犬を取り込めとも、言えますまい。
母は、台所の床に、新聞紙を敷いて、犬が小便した場所を、直ぐに分かるようにしていたとの事で、最初は私も、そうしていました。 うちの犬は、オスだからかもしれませんが、歩きながらでないと、小便が出難いようで、一ヵ所に纏まってしてくれず、食卓の周りを回りながら、敷いてある新聞紙、5・6枚を、一気に濡らして行きます。 まるで、「せっかく、敷いてくれたんだから、頑張って、全部濡らさないとな」と思っているかのように・・・。
で、一度、濡れると、すぐにまた、ウォーウォー吠えて、「小便したぞー! 早く、どうにかしろー!」と、私を呼ぶのです。 臭いが嫌なんだか、濡れているのが嫌なんだか、単に、私を呼びつけて、扱き使ってやりたいだけなんだか分かりませんが、とにかく、呼ばないでは済まさない。 私は、二階の自室に戻って眠っているわけですが、また下りていって、新聞紙を取り替え、濡れ雑巾で床を拭きます。 ところが、手を洗って、二階に上がり、ベッドに横になったのも束の間、早い時には、1分もしない内に、また、ウォーウォー吠える声が聞こえて来ます。 これが、大体、5回から、7回くらい、繰り返されます。 もう、地獄・・・。
犬の奴が、一晩に、何回も小便をするので、新聞紙が足りなくなり、その内、新聞紙を敷くのをやめてしまいました。 新聞紙が濡れれば、確かに、どこでやったか分かり易いですが、新聞紙が小便を全て吸ってくれるわけではないので、結局、それを剥がした後、濡れ雑巾で拭く事になり、ゴミが出るだけ、面倒が多いのです。 直接、床にさせてしまって、雑巾で拭いた方が、一手間少なくて済みます。
母は、バスタオルを敷いておいて、翌朝、洗うという事もやっていたようですが、うちの犬は、御丁寧に、バスタオルの上だけ避けて、小便をするのです。 まるで、汚してはいけない所だと思っているかのように。 それに、臭いが嫌で吠えるのだとしたら、バスタオルだろうが、新聞紙だろうが、床に直かだろうが、臭う事に変わりはありませんから、結局、吠えられるわけで、意味が無い。
ブルー・シートを切って、新聞紙の代わりにするというのも検討しましたが、よく考えてみれば、汚れたブルー・シートを、雑巾で拭かなければならないわけですから、毎日、敷いたり、干したり、畳んだりするだけ、手間が増えます。 結局のところ、若干の心理的抵抗があっても、床に直接させて、雑巾で拭く方が、効率がいいんですな。
犬用の紙おむつというのがあって、それを買って来て、着けてみた事があるのですが、あれは、少なくとも、うちの犬には、通用しませんでした。 歩いただけで、脱げて来ますし、脱げないように、ぎゅうとこら締め付けても、マジック・テープで留めてあるだけなので、犬が自分で、口を使って、外してしまうのです。 侮るべからず。 犬は、人間の赤ん坊より、ずっと器用なわけだ。 お尻回りだけを包むタイプは、とても、実用品とはいえません。 メーカーも、脱げてしまうのが分かっていて、売っているのだとしたら、かなり悪質な商法です。 もっと簡易な品で、腹巻き式に、胴に巻くだけのタイプもありますが、あれに至っては、尿道口すら覆えないのであって、話になりません。 詐欺商品、決定ですな。
犬用のおむつカバーというのがありますが、そちらは、よく考えられていて、腹だけでなく、背中まで覆い、前脚にも通すという、ほとんど、服なので、まず、脱げる事はなさそうです。 しかし、値段が、そこそこ高いですし、自分の家の犬にピッタリ合ったサイズを選ぶのが難しそう。 小さければ入らないし、大きければ、隙間が出来て、吸水紙が落ちてしまうでしょう。 犬の服の類は、人間と違って、サイズの基準が決まっていないので、S・M・Lで判断する事ができないんですな。 適合犬種で大雑把に分けられていますが、柴犬のように、大小の幅が大きい種類では、ほとんど、参考になりません。 困った事だ。
また、紙おむつができたところで、小便の臭いは消せないのであって、うちの犬のように、臭いが嫌だから、人間を呼ぶという場合、結局、呼びつけられる事になるのではないかと思うのです。 「拭いてくれー! 拭いてくれー!」が、「換えてくれー! 換えてくれー!」に変わるだけで・・・。 うーむ、処置無しじゃのう。 結局、床にさせて、拭くしかないのか・・・。
ある時、ふと気づいたのですが、私が床を拭いている傍らで、犬が、ペチャペチャ音を立てて、水を飲んでいやがるのです。 これだよ! 出す端から、補給しているのですから、そりゃ、何回も出るわけだよ。 こやつ、私に下りて来て欲しくて、わざと、水を飲んで、何回も小便してるんじゃないのか? 犬も、人間と同じで、歳を取ると、気が弱くなって来て、構って欲しいばかりに、わざわざ、人の迷惑になるような事をするようになるのかもしれません。
で、水皿の水の量を減らしてみたのですが、敵も然る者、一体、体のどこに溜めているのか、小便の回数は、一向に減らないのです。 もしや、小出しにしているのでは? 冗談じゃないよ。 そんな調節ができるなら、朝まで我慢できるだろうに! そもそも、庭にいる時、鳴かなければいいではないか!
で、これを書いている夜も、もう、7回、小便の始末をしに、台所へ呼びつけられました。 雑巾を絞ってばかりいるので、左の親指を痛めてしまいましたよ。 睡眠不足だけでなく、ノイローゼになりそうです。 犬でさえ、こうですから、これが、人間の介護になったら、どれだけ大変な事か・・・。 いや、人間は、吠えないだけ、マシでしょうか? ものは提案ですが、≪ルンバ≫を作っている会社で、犬が漏らした尿を吸い取って、床を拭いてくれるロボを開発してくれませんかね。 犬が死ぬ前に、私が死にそうです。