2016/03/27

錆との戦い⑩ 【披露編 人の巻】

  レストア後のお披露目、第三回です。 延々と続けて来た、旧母自のレストア記事も、今回で終わりです。 寂しいような・・・、嬉しいような・・・、いや、実は、寂しくも嬉しくもありません。 なぜなら、旧母自が終わっても、まだ、父自のレストア記事があるからです。 年初から、まるまる2ヵ月も、レストア作業を続けていたわけですから、書くネタは、いくらでもあるわけだ。

  とはいえ、自転車ネタばかり続けるのも曲がないので、父自の方は、しばらく間をおいてから出そうと思います。 ネタ切れした時の為に、キープしておこうというつもり。 では、旧母自レストアの最終記事を、お楽しみ下さい。 ・・・、楽しかないか、別に。





≪馬蹄錠≫
  馬蹄錠。 上段がビフォー、下段がアフターです。 荷台やスタンドが、メッキ仕上げになっているタイプの自転車は、馬蹄錠の表側が、グレーで塗装されているのが普通です。 ちなみに、裏側は、クローム・メッキ。

  錆で、あちこち、グレーの塗料が浮いていたのを、金ブラシでこすったら、全体の半分くらいは落ちて、鉄の地肌が出ました。 残った部分が、しぶとかったので、グラインダーに、ナイロン・ディスクを着けて、削り取りました。 細部は、金ブラシや紙鑢で、チマチマと落としました。

  鉄の地肌を活かそうと思って、透明錆どめを塗ったのですが、それは、暴風雨で溶けてしまいました。 もう一度、塗り直した上から、クリヤーを塗って、現在に至るのですが、それでも駄目なら、カラー錆どめのグレーで塗り直すしかありません。

  キーも錆びていたので、酸に浸けて溶かし、透明錆どめとクリヤーを塗ってあります。 操作ラベルは、一度剥がして、錆を取った後、透明錆どめの粘着力を利用して、貼り付けたのですが、果たして、いつまでもつやら・・・。




≪シート・ピン≫
  シート・ピン。 上段がビフォー、下段がアフターです。 シート・ポストを固定する部品なので、私は、「シート・ポスト・アジャスター」と呼んでいたのですが、調べてみたら、「シート・ピン」という短い名前があると分かりました。 だけど、写真なしで、名前だけ聞いたのでは、どの部品の事か、ピンと来る人はいないでしょうなあ。

  ちなみに、更に細かく言うと、このタイプは、「レバー固定式 シート・ピン」です。 他に、レバーがない、「ナット固定式」や、ワン・タッチで固定できる、「クイック・レバー式」というのがあります。 私の折自には、クイック・レバー式が付いています。

  これは、結構錆びていたので、ビフォー・アフターの差が歴然と出ました。 長ナットの端のキャップだけ外し、酸にドブ浸けしたら、綺麗に落ちました。 その後、透明錆どめを塗って仕上げにしておいたのですが、暴風雨で流れてしまい、塗り直して、その上からクリヤーを塗ったのは、他の元メッキ部品と同じです。 ボルトの方は、錆びていなかったので、そのまま使っています。




≪前籠ブラケット≫
  前籠ブラケット。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ハンドルの前に付いているこの部品ですが、形は見知っていても、「前籠ブラケット」という名前を知らない人は多いと思います。 「ブラケット(bracket)」というのは、棚などを支える、「腕木(うでぎ)」の事でして、工業製品の部品名としては、よく使われています。 自転車用語では、他に、「ボトム・ブラケット」がありますな。 しかし、所詮、業界用語の域を出ず、一般化している外来語とは言えません。

  それ以前に、「腕木」という日本語にしてからが、何を表しているのか、ピンと来る人が少なくなっていると思います。 家の作りが変わってしまって、後付けで棚を作るような事がなくなってしまいましたからのう。 ちなみに、「ブランケット(blanket)」は、カタカナだと似ていますが、元の英語では、全然、別系統の単語で、「毛布」の事です。

  私が子供の頃の前籠ブラケットは、垂直になった部分が縦長の長方形で、元々は、砲弾型ライトを取り付ける為の部品だったのを、前籠用に流用していたようでした。 穴は開いておらず、前籠の方に、ブラケットに差し込む為の部品が付いていたように記憶しています。 現在、普及している、垂直部分が横長で、二つ穴が開いた物は、「ブタ穴タイプ」と呼ぶそうです。 

  これは、早い段階で取り外しました。 旧母自では、唯一、シルバーで塗装されていた部品で、耐水ペーパーで削り落とし、その後、酸に浸けました。 ちなみに、塗料は、酸では溶けないようです。 錆が落ちて、鉄肌が出てから、透明錆どめを塗ったものの、その後、暴風雨を喰らい、透明錆どめを塗り直して、その上からクリヤーでコートしたのは、他の部品と同じ。

  前籠後ろ側の締め付けナットも、酸に浸けました。 ロック・ナットだったので、プラスチック部分は溶ける事がなく、再組み立てした時にも、締め付けの強さは、変わりませんでした。 ナットやワッシャー、スプリング・ワッシャーが小さくて、透明錆どめを塗るのが大変でねえ。 いや、塗るのはいいんですが、乾かすのに、困るんですよ。 銅線に通したり、持つ所だけ残して、後で塗ったり、あれこれ工夫しましたけど。 その後、クリヤーも塗りましたが、そちらは、すぐに乾くので、始末が良い半面、塗った所と塗ってない所の区別がつかなくなって、それなりに苦労しました。


  ついでに写っているから、ヘッド・セットのワンにも触れておきましょうか。 旧母自は、フォークを抜いて作業したので、ヘッド・セットも全部、バラしました。 「ワン」、「コーン」、「ベアリング・リテーナー」が、ヘッド・チューブの上下にある上に、ワンとコーンの形や向きが、上下で違っていたので、組み直す時に間違えないように、写真を撮ってから、バラしました。

  錆取りは、酸に浸けましたが、ワンの中に入っていたグリスを洗い落とすのが面倒で、そのまま浸けたところ、錆が全部落ちた後でも、グリスは、全く変わらずに残っていました。 酸は、塗料にも、グリスにも、何の影響も与えないわけですな。 一つ、経験値が増えました。 ちなみに、これは、私がやったわけではありませんが、ステッカー・ラベル類も、酸ではビクともしないそうです。

  錆取り後の処置は、他の部品と同じ。 だけど、フォークを抜かなくても、本体の塗り替えは可能なので、ヘッド・セットをバラす事自体、人様にはお勧めしません。 ワンやコーンの錆取りは、まず、コンパウンドで挑戦してみるのがいいと思います。 相当には、綺麗なるはず。 それでも駄目なら、バラして酸浸け、という作戦で、どうでしょう。




≪サドル≫
  サドルの金具部品。 上段がビフォー、下段がアフターです。 おや? 「金具(かなぐ)」というのは、もはや、死語なのかな? 通じるには通じるけど、古臭い感じがするのかも。 だけど、わざわざ、「金属部品」と言うのは、面倒臭いなあ。 まったく、言葉というのは、寿命があるから厄介だ。 「金具」なんて、ゆうに1500年以上使われて来たと思うのですが、ここへ来て用済みとは、気の毒な。

  で、サドルの金属部品ですが、恐らく、自転車の部品の中では、錆び易いものの筆頭ではないかと思います。 直接、雨がかかるわけでもないのに、なぜ、こんなに錆び易いのか、原因が分からない。 本体以外の部品がメッキ系の車種では、クローム・メッキされ、黒塗装系の車種では、黒に塗ってあるわけですが、どちらであっても、やはり、イの一番に錆び始めます。

  シート・ポストを入れる部分の事を、「ヤグラ」と言いますが、ヤグラは、亜鉛メッキでして、なぜか、サドルに関しては、クローム・メッキの部品よりも、亜鉛メッキのヤグラの方が錆び難いように見えます。 旧母自では、ヤグラは、全く錆びてなくて、そのまま、再組み立てに回しました。

  クローム・メッキの金属部品の内、横棒とスプリングは、酸に浸けました。 V字棒は、大きい上に、立体的な形が邪魔をして、酸に浸けられず、グラインダーで削り落として、鉄肌を出しました。 横棒とスプリングも、酸から出したら、クローム・メッキの下の銅メッキが出てしまい、そこだけ銅色では、様にならないので、結局、全部、グラインダーで削る事になりました。 スプリングの内側には、グラインダーが入らず、父が持っていた、丸棒形の金属鑢で、銅色を落としました。 防錆処置に関しては、他の部品と同じ。

  だけど、後で考えると、サドルの下まで、ポリッシュ仕上げに拘る事はなかったと思います。 大体、錆を落としたら、錆どめを塗り、上から、シルバーで塗装してしまえば、それで充分だったはず。 ポリッシュ仕上げにしようと思うと、手間はかかるわ、雨には弱いわで、いい事がほとんどありません。

  ちなみに、旧母自の場合、サドルの金属部品は、全部バラせましたが、スプリングとV字棒が、外せないサドルもあるので、要注意です。 無理に外そうとすると、ベースのプラスチック部分を、割ってしまいかねません。 そういうサドルの場合は、分解せずに、大体の錆を取って、錆どめを塗り、任意の色で塗装する以外ありません。 




≪防犯登録ステッカー≫
  ボトム・ブラケット付近の様子。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ビフォーでは、「PLS登録ナンバー」や「JISナンバー」のラベルも貼ってあったのですが、それらは、剥がす時に、ビリビリに裂けてしまい、スクレイパーで掻き取ったので、もはや、この世に存在しません。 防犯登録ステッカーだけ、ほぼ、原形のまま剥がせました。

  再組み立てした後、防犯登録ステッカーを貼り直したわけですが、当初、透明錆どめに粘着力があるので、それを裏に塗って、貼ろうかと思っていたのですが、それをやる前に、例の暴風雨事件で、透明錆どめが使えないと判明。 ビニール・ボンドという製品があり、それなら、接着できそうなので、ネットで購入しました。 送料が捻出できるのか、こちらが心配になるくらい、安かったです。 ステッカーの裏側に、ボンドを塗り伸ばし、ベタつかなくなる程度に乾かしてから貼ったら、ぴったり着きました。

  ただねえ・・・。 防犯登録には、有効期限がありまして、静岡県の場合、「概ね10年」で、登録情報が抹消されてしまうとの事。 旧母自は、11年半経っていますから、もう、このナンバーに意味はないんですな。 それでも、貼り直したのは、見せかけだけでも、これを貼っておけば、多少の防犯効果が期待できるから、・・・というより、一枚でもいいから、ラベル・ステッカー類を復帰させて、本体を塗り直した事を気取られ難くしたかったからです。




≪ビニール・ボンド≫
  旧母自の防犯登録ステッカーを貼り直す為に買った、コニシの、「ボンド ビニル用接着剤 20ml 」。 なぜか、実店舗には置いてなくて、アマゾンに注文しました。 送料込みで、111円。 この値段では、実店舗より安いのでは? ホーム・センターを3軒梯子したのは、完全に無駄なエネルギーでした。

  使い方は、G17と同じで、両面に塗り伸ばして、ベタつかなくなる程度まで乾かし、貼り付けるわけですが、ステッカーの場合、ステッカーの裏面だけに塗れば充分だと思い、そうしました。 これなら、雨に濡れても、剥がれません。


  下の写真は、アマゾンのダンボール箱。 中身が小さいので、最小サイズの箱で届きました。 大きさを測らなかったのですが、最長辺が、20センチくらいでした。 それまでの最小は、A4サイズでしたが、下には下があるんですな。 中身の大きさに合わせて、小さい箱に入れても、運送業者の方に、そんなに細かいサイズ区分がなくて、送料は同じになってしまうのかもしれませんが、ダンボール自体の価格は、幾分、安くなると思います。




  各部の解説は、以上です。 ビニール・ボンドまで解説してしまいましたが、別に、「写真を撮ったから、ついでに出してしまえ」などという、軽はずみな気持ちで書いたわけではありません。 中には、ステッカー・ラベル類を、うまく剥がせたはいいが、貼り直す方法が分からずに、諦めてしまったという人もいるかと思い、参考までに、「ビニール・ボンドで、着きますよ」と、お知らせした次第です。


  旧母自のレストア作業を、通して評価しますと、実際、綺麗になりましたから、やって良かったとは思ってます。 かかったお金は、前輪タイヤを別にすると、2500円くらいでしょうか。 その程度の出費で、一応、錆が全く見えないところまで、持って行ったわけですから、まずまずの費用対効果と言うべきでしょう。 前輪タイヤは、907円したのですが、なぜ、それが別扱いになるかというと、前から付いていた物を取ってあって、今後、後輪タイヤが磨り減ったら、そちらに付けるつもりだからです。

  錆取り自体は、まあまあ、よくやったと思いますが、透明錆どめが雨で溶けて、また錆びて来てしまったのには、参りました。 その後、もう一度、分解し、各部品の錆を取り直し、透明錆どめを塗り直し、クリヤーでコートしたのですが、完璧な対策とは言えず、雨はクリヤーが弾いてくれるものの、湿度が高くなると、クリヤーの下で、透明錆どめが白化して来ます。 やむなく、雨が続きそうな時には、予め、プレハブの中に旧母自を避難させるようにしています。

  私は、引退者で、ほとんどの時間、家にいますし、雨の日には自転車に乗らないから、そういう事ができるわけですが、通勤や通学に自転車を使っている人は、雨でも乗らなければなりませんから、よしんば、錆取りを思い立っても、透明錆どめは、使わない方がいいと思います。 ポリッシュ仕上げには、魅力を感じるものの、すぐに錆びて来てしまうのでは、苦労して錆を取った意味がありません。

  小さい部品や、細い部品であれば、シルバーのペンキで塗ってしまっても、ほとんど、目立たない事が、今回の経験で分かりました。 ただし、シルバーのペンキで仕上げる場合でも、何かしら、錆どめを下に塗る必要はあります。 そして、ここが肝腎ですが、たとえ、どんなに念入りな防錆処置を施したとしても、月日が経てば、やはり、また錆びて来るのだという事を、覚悟していなければなりません。

  錆取りを始める前に、次に錆びて来たら、どう処置するかを考えて、方針を決めた方がいいと思います。 何重にも塗り重ねたり、特殊な色を使ったりすると、部分的に補修するという事ができなくなってしまいます。 「また、全部剥がして、やり直し」なんて事になると思うと、頭がクラクラして来ます。

2016/03/20

錆との戦い⑨ 【披露編 地の巻】

  レストア後のお披露目、第二回です。 前回も今回も、日記ブログの方にアップしている、日替わり写真の方から移植しているのですが、こちらでの出し方とは、書いた順序に違いがあり、そのせいで、文章の繋がりが悪いところがあります。 修正すると、えらい手間になってしまうので、そのまま出しますが、何卒、御容赦下さい。

  ちなみに、日記ブログの方は、恐ろしく、閲覧者が少なくて、「いい加減、閉じてしまおうか」と何度も思っているのですが、2001年から始めた、ホーム・ページの名前を受け継がせているせいか、何となく閉じそびれて、未だに続けているという次第。 今時、芸能人でもない限り、個人の生活を記した日記のブログなんて、誰も、読んじゃくれんのですよ。 プロの作家でさえ、随筆集が出せない有様ですから。

  とことん、他人の事に興味を抱かない人間が、増えたわけですな。 自分に役に立つ情報・知識以外、用がないわけだ。 考えてみれば、当然でして、赤の他人が、昼飯に何喰ったかなんて、どーでもえーこったもんねえ。 その点、ストーカーという人種の気が知れん。 如何に下心が原動力になっているとは言え、莫大な時間と手間を費やして、他人に付き纏って、面白いかね? どんな美女でもイケメンでも、体の中は、反吐と糞尿だらけの、ただの動物だってーのよ。

  なんだか、傍若無人に脱線しまくってますな。 さっさと始めましょう。





≪前輪スポーク≫
【写真1】
  旧母自、前輪スポークのビフォー写真です。 目を背けたくなるくらい、錆びています。 雨の日に乗る事がないのに、前輪だけこんなに錆びるのは、不可解千万。 自転車置場の屋根の架かり方の関係で、雨が前輪側に吹っかけるせいで、こうなってしまうのではないかと思います。 同じ所に置いてある三台が、三台とも、前輪だけ錆びていますから。

  あまりにひどいので、スポークの交換も考えたのですが、交換自体はわけないものの、その後の「振れ取り」ができないので、断念しました。 「下手をして、乗れなくなってしまうよりは、みすぼらしい方が、マシ」と判断したわけです。

【写真2】
  で、錆だけを落とす事にして、酸、金ブラシ、金束子、クレンザー、布鑢、紙鑢などを総動員して、金属光沢を戻そうと、努力しました。 ニップルの錆もひどかったので、リムにガム・テープでマスキングをして、金ブラシでこすりました。 「このくらいなら、何とか、見れるかなあ」というところで打ち切り、透明錆どめを塗って仕上げたのが、この写真になります。

  写真では、分かり難いですが、これでも、最初の状態に比べれば、段違いに綺麗になったのですよ。 とりあえず、赤錆色が目立たなくなっただけでも、大変な違い。 誠意を買ってください。

  タイヤまで綺麗になっていますが、これは、せっかく、スポークを綺麗にするのだから、タイヤもと思って、前輪だけ、ネットで買ったもの。 今まで付いていたのは、中心にオレンジが入ったツートンで、それは、取り外して、保存してあります。 次に、後輪タイヤが磨り減ったら、付ける予定。

【写真3】
  ところが、暴風雨を一度食らって、透明錆どめが溶け、錆が復活してしまい、唖然呆然、愕然悄然・・・。 錆を落とし直し、透明錆どめを塗り直し、今度は、その上に、シルバーの油性塗料を塗りました。 油性塗料の幕で覆ってあれば、透明錆どめが溶け落ちる事はないですし、たとえ錆びて来ても、シルバーの塗膜を突破するまでは目立ちません。

  ちと、話がややこしくなりますが、暴風雨が来た頃には、父自の方のレストアに取り掛かっていまして、父自の前輪スポークは、とても錆が取り切れない程ひどかったので、最初から、透明錆どめの上に、シルバーの油性塗料を塗っていたのです。 旧母自の前輪スポークは、その後で、父自と同じように処理したという順序になります。

  メッキだった部分を、シルバーの塗料で塗り替えると、貧乏臭くなるのではないかと恐れていたのですが、スポークは細いせいか、思ったほど、ペンキっぽさが目立たない仕上がりになりました。 案ずるより、産むが易しという事でしょうか。 メッキと言っても、スポークの場合、亜鉛メッキですから、光沢は鈍くて、シルバーの塗料と大きな違いがないという事もあると思います。

【写真4】
  車軸付近のアップ。 車軸も、シルバーで塗ってしまったのですが、近づくと、やはり、塗ってある事が分かります。 でも、他人が乗っている軽快車を、こんなに顔を近づけて、ジロジロ見る人は、よほどの変人を除いて、いないでしょうから、塗ってある事がバレる可能性は、限りなくゼロに近いのではないかと思っています。

  私自身、自分の自転車の錆取りを始めるまで、他人の自転車が錆びているか、綺麗になっているかなど、ほとんど、気にしていませんでした。 世の中、そんなもんなんです。




≪前ブレーキ≫
  前ブレーキ。 上段がビフォー、下段がアフターです。 元は、クローム・メッキされていたのが、かなりの広範囲にわたって、錆に覆われていました。 右上の写真を見ると、こげ茶色になっていますが、ここまで進むと、金ブラシでこする気にもなりません。

  で、取り外し、バラバラにして、酸に浸けました。 酸は、期待通りの仕事をしてくれました。 錆が落ちた後、アルカリ液で中和して、水洗いして、透明錆どめを塗りました。 ところが、組み立てて、自転車本体につけてみたところ、ギクシャクして、うまく動きません。 前ブレーキは、命の綱なので、顔色が青くなりました。

  どうやら、先頭の回りどめナットを除き、全てのパーツがスムーズに動かないと、駄目なのだと分かりました。 透明錆どめは、乾いても、粘り気が残るので、密着させると、くっついてしまうんですな。 で、パーツの接合面にグリスを塗って組み直したら、まあまあ、まともに動くようになりました。

  これも、暴風雨の後、透明錆どめの上から、クリヤーを塗りました。 しかし、いつまでもつやら・・・。




≪後ろブレーキ≫
  ビフォー写真がないのですが、後輪の、バンド・ブレーキのアフター写真です。 クローム・メッキですが、実は、元々、それほど錆びていませんでした。 所々、錆が浮いていたのを、コンパウンドで取り、透明錆どめを塗ったのが、この写真。

  この後、暴風雨にやられてしまい、錆びはしなかったものの、もう一度、透明錆どめを塗り直し、更に、クリヤーを塗りました。 透明の上に透明を塗ったので、外見は、今も変わってません。

  この、後輪の車軸付近は、他よりずっと、綺麗に見えます。 ここだけ見ると、とても、11年半も経っている自転車とは思えない。 スタンドのスプリングの錆が落ちたのが、効いているのかも知れません。 とにかく、赤錆色が見えなくなると、自転車の見てくれは、ぐっと良くなるのです。

  そうそう、忘れていた。 バンドの調整ボルト・ナットだけは、真っ茶色に錆びていたので、二ヵ所とも取り外して、酸に浸けました。 綺麗に錆が落ちたのは良かったんですが、溶け過ぎて、ボルトとナットのネジが、ゆるゆるになってしまいました。 「まずいな・・・」と、顔を顰めたものの、本体に着けてみたら、何とか締まったので、ホッとしました。 あまり、存在理由がはっきりしない部品ですが、なしで走るのも、ちと不安ですけんのう。




≪ブレーキ・レバー≫
  ブレーキ・レバーの左右。 上段がビフォー、下段がアフターです。 レバー自体は外側が樹脂製なので、正確に言うと、錆取りをしたのは、レバーの取り付け部分です。 レバーの取り付け部分は、車種によって、金属製と樹脂製がありますが、旧母自に付いていたのは、金属製で、部品が上下に分かれていて、片側を咬み合わせ、もう片側をボルト・ナットで締めて、固定する方式。

  このボルト・ナットが、まさかの9ミリでして、まだ、最初の頃にバラしたものだから、スパナをもってなくて、参りました。 ボルトの頭に、十字が切ってあったので、そこに、プラス・ドライバーを入れ、ナットの方は、小型のモンキー・レンチで押さえて回したら、何とか外れました。 その後、後ろ泥除けのボルト・ナットにも、9ミリが使われている事が分かり、結局、8-9の両口スパナを買う羽目になります。

  錆の取り方は、バラバラにして、酸に浸けました。 一度、綺麗に落ちたのですが、最初にドブ浸けした口だったので、経験値が足らず、アルカリ液で中和した後、水洗いして、日向に干しておいたら、その僅かの間に、また錆びて来てしまいました。 もう一度、酸に浸け直すのが億劫で、そのまま、透明錆どめを塗ってしまったのですが、アフター写真右側で、少し、錆が見えるのは、そのせいです。 こういうのは、後々になって、気になって来るものでして、面倒なようでも、酸に浸け直した方が良かったんですな。

  それ以前に、酸で錆を落とした後、中和して水洗いしたら、布で水気を取り、すかさず、何らかの防錆処置をしなければいけなかったのです。 天日に干したって、仕方ないんですな。 洗濯物じゃないんだから、なーんでも、干しゃいーってもんじゃねーのよ。

  暴風雨にやられて、透明錆どめが落ちてしまったのは、ここも同じ。 その後、クリヤーを塗って、コートしてあります。




  今回は、ここまで。 前書きが脱線したついでに、後書きも脱線させてしまいますと、歳を取れば取るほど、赤の他人の存在が、鬱陶しくなって来るものですなあ。 社会の高齢化が進み、平日に、外を歩いているようなのは、年寄りばかりですが、関わると、ろくな目に遭わないから、私は積極的に避けています。

  「人間、歳を取れば、温厚になる」なんて、とーんでもない。 家の中に居場所がなくて、やむを得ず、外をうろついているジジイどもなんて、自分の存在意義に自信が持てず、フラストレーションが溜まっているものだから、喧嘩相手を探してるんですよ。 説教したり、怒鳴りつけたりできる他人が、どこかにいないかと、虎視眈々、機会を窺ってやがるんですな。 そんな奴の餌食になってたまるもんですか。

  現役で働いていた頃に、出世競争に明け暮れていたような人間は、引退しても、その癖が抜けなくて、他人を見れば、蹴落とす相手か、顎で扱き使う相手にしか見えないらしい。 サラブレッドは、競馬から引退しても、他の馬と並ぶと、すぐに全力疾走したがるので、別の用途に流用が利かないと言いますが、それと同じですわ。 馬か、おまいら?

  男に比べれば、女の方が、まだ、攻撃性が少ないです。 だけど、私は、そちらもまた、好んで近づいて行くような事はしません。 異性間だと、何かと誤解を生じ易いからです。 もう、他人絡みの厄介事はうんざりですわ。 どうせ、他人が自分の事を分かってくれるなんて事はないですよ。 また、分かられると、逆に困ってしまうという人も多いはず。 他人との接触で、利益を得ようという考え方が、そもそも、間違っているんでしょうなあ。 人付き合いは、ギャンブルと同じで、トータルで計算すると、損害の方が多いと思います。

2016/03/13

錆との戦い⑧ 【披露編 天の巻】

  いよいよ、旧母自レストア後の写真を、お見せする時が来ました。 それにしても、なんだか、タイトルが長くなって、鬱陶しいですなあ。 「天の巻」という事は、「披露編」だけで、三回あるわけだ。 別に、引っ張ろうというわけではないのですが、全部一遍に出すと、長くなり過ぎるので、予め、三分割した次第です。





≪全体≫
  旧母自の錆取りと塗り替えが終わり、再組み立てなった後の様子。 塗り替えた結果、貧乏臭くなるのは避けられなかったものの、錆が見えなくなり、すっきりした事で、相殺されて、「まあ、こんなものか」と言ったところでしょうか。

  アサヒペンの、「カラーサビ鉄用 グレー」ですが、思っていたよりも明るい色でした。 ちなみに、ライト・グレーなら、折り畳み自転車や小径車で、元からその色というのがあるようです。 ごく少数ですけど。

  プラスチックの前籠と、本体の色が合っているせいで、割と渋く見えます。 しかし、地味といえば、地味。 今までがシルバーだったので、それが灰色になれば、それは、地味な感じがしますわなあ。 何となく、軍用っぽいですが、こりゃ、海軍や空軍の色ですな。 しかし、私には、別段、ミリタリー趣味はありません。 グレーを選んだのは、元の色、シルバーに近かったからというだけの理由です。




≪荷台≫
  ビフォー写真を撮り忘れたので、比較ができませんが、荷台のアフター写真です。 酸、金ブラシ、紙鑢、布鑢など、あれこれ使って、マメに錆を落としました。 メッキが残っている部分と、鉄の地肌が出てしまっている部分が混在しているのですが、どちらも、金属光沢があるので、近づいて、しげしげ見ないと、分かりますまい。

  錆を落とした後、透明錆どめを塗り、仕上げたのが、この写真を撮った時の状態です。 ところが、その後、暴風雨を一度くらったら、透明錆どめが溶けて、錆が出て来てしまいました。 錆どめのくせに、防水ではなかったんですな。 焦った焦った。 で、もう一度、錆を落とし直し、透明錆どめを塗り直し、その上から、クリヤーを塗って、今に至りますが、やはり、錆びて来るのを完全に止める事はできないようです。

  スカート・ガードも写っていますが、こやつには、どれだけ痛い目に遭わされた事か。 せっかく、綺麗に塗った泥除けが、キズだらけ。 キズがついた所を、後から塗り直す羽目になりました。 ちなみに、スカート・ガードは、後ろの上側が分離するので、荷台を着けた後からでも、着けられます。 しかし、どの段階で着けても、泥除けがキズだらけになる事に、変わりはありません。




≪スタンド≫
  これも、ビフォー写真がないのですが、スタンドのアフター写真です。 左右両側から撮ったもの。 荷台同様、クローム・メッキされていたのですが、スタンドは、荷台ほど、錆がひどくなかったので、金ブラシで、こすっただけで、紙鑢や布鑢はかけずに済みました。 そのおかげで、メッキ面のほとんどが残っています。

  しかし、錆が浮いていたという事は、すでに、水や空気にメッキ面を突破されていた証拠でして、すぐにまた、錆びて来るに決まっていますから、透明錆どめを塗っておきました。 暴風雨にやられた後も、スタンドは、ほとんど錆びていませんでしたが、念の為、荷台と同じように、透明錆どめを塗り直し、その上から、クリヤーを塗りました。

  スプリングにも、同じ処置をしてあります。 スプリングに錆どめや塗料を塗る場合、スタンドに取り付けてからにした方がいいです。 引っ張った状態で塗らないと、くっついてしまうからです。




≪前籠ステー・ライト≫
  前籠ステーと、ブロック・ダイナモ・ライト。 左がビフォー、右がアフターです。

  前籠ステーは、荷台やスタンドと同じクローム・メッキで、そこそこの錆び具合でした。 ステーを取り外した後、地面に置き、周囲に角材を並べて、ステーの形に合わせた枠を作った上で、ラップを敷いて、プールにし、酸に浸けました。

  大方の錆が落ちた後で、鉄肌を出そうと、紙鑢でこすったのですが、メッキが残っている部分には、全く鑢がかからず、結局、メッキと鉄肌の斑状態で、諦める事にしました。 透明錆どめを塗っておいたのが、その後、暴風雨で流れてしまったので、また塗り直し、上からクリヤーを塗って今に至るのは、荷台やスタンドと同じ。

  ライトは、錆取りをしたわけではありませんが、一度、落っことして、レンズの周辺が割れ、破片が飛び散ったのを、拾い集めて、瞬間接着剤で張り合わせたので、復元したという意味で、レストアしたと言えます。 去年の暮れには、ライトが点かなかったのですが、復元のついでに、ダイナモ下の端子を鑢で磨いたら、まさかの復帰。 新しいのを買わないで済みました。




  今回は、ここまで。 あちこち、細部のビフォー写真を撮り忘れていて、同じ角度から撮った写真で比較できないのが残念。 レストアに取りかかる前は、早くやりたくて気が焦っているので、写真撮影を軽視してしまうのです。 旧母自の全体を写したビフォー写真は、過去の記事に、ちょこちょこ出て来るので、どうしても見たい方は、探してみて下さい。 だけど、ただの、シルバーの軽快車ですよ。


  もう、アフターの全体写真を見せてしまったから、勿体つけて隠す必要もなくなったわけで、組み立て中の写真を、オマケに付けておきます。


≪写真左≫
  カラーサビ・グレーを塗ったフォーク。 上の一本になった部分は、組み立てると、ヘッド・チューブ内に隠れてしまうので、塗っていません。 当初、ポリッシュ仕上げにするつもりで、苦労して、鉄肌を出し、透明錆どめを塗ってあったのですが、フレームの方の塗装を落としきれないと思って、断念し、その上から、カラーサビ・グレーを塗りました。 諦めて応じ合わせで、もし、フレームまで、ポリッシュにしていたら、雨で透明錆どめが溶けて、どえらい事になるところでした。

≪写真右≫
  組み立て中。 まず、フレームを上下引っ繰り返して、後ろ泥除けを着け、元に戻して、後輪周りを着けて行きます。 そこまでは、濡れ縁で行ない、スタンドが着いてから、この場所に移動。 ヘッド・チューブの下に入れるワンがなかなか入っていかなくて、ハンマーで、ガンガン叩いている途中です。

  組み立て中の写真は、これだけしか撮りませんでした。 早く、原形に戻そうと必死で、途中で手を止めて、カメラを持って来る余裕がなかったというわけです。

2016/03/06

錆との戦い⑦ 【復活編】

  いよいよ、旧母自を組み立てるところまで来ました。 ちなみに、今現在、自転車関係の作業は、全て終わり、元の生活パターンに戻っています。 また錆びて来ても、一年くらいは、何もしないつもりでいます。 そうそう、錆取りばかりしていられません。 猿にラッキョじゃあるまいし、錆が出るたびに取っていたら、しまいにゃ、自転車がなくなってしまいますがな。

  ・・・・、いや、そーれほどは、取りきれんかな? 大袈裟な事を書いて、失敬失敬。




≪2016/02/03 (水)≫
  台所のポットとジャーの延長コードが壊れたのを交換したり、天気の関係で先延ばしにしていた布団干しをしたりしていたので、朝から何者かに追い立てられるような気分で過ごしました。 勤めていた頃には、一日最低、8時間は肉体労働していたわけですが、今は、ほんの2時間くらい動いただけで、へばってしまうのも、問題。 引退すると、心身ともに、衰えますなあ。


  自転車の方は、ちょこちょこと、できる事を進めました。 旧母自のブロック・ダイナモ・ライトですが、去年の暮れの時点では、全く点かなかったのが、今日、リード線だけでなく、ダイナモ側の接点まで鑢で削ってみたら、なんと、ライトが点きました。 なんだ、ただの接触不良だったのか! 壊れていないのなら、買い換える必要はありません。

  ところが、去年の暮れから今までの間に、自転車を分解する過程で、ライトを落下させて、プラスチック部分が更にひどく壊れており、破片を集めて、復元するのが、大変。 もはや、発掘土器の復元作業のようです。 何とか、くっつけましたが、振動で走行中に分解する恐れあり。 まあ、その時はその時ですが。

  サドルのスプリングは、一晩、酸に浸けましたが、まだ、錆がとれません。 トイレ・クリーナーを、もう一本買って来て、酸を追加し、もう一晩浸ける予定。 ボルト・ナットでなければ、浸け過ぎて、部品が痩せてしまっても、さほど、問題はないはず。



≪2016/02/04 (木)≫
  サドルのスプリングを酸から出しました。 錆は取れたものの、穴だらけでボコボコ。 しかも、クローム・メッキの下から、銅メッキが出て来て、全体が、見事に赤っぽく輝いています。 銅メッキを溶かす方法が分からないので、スプリングの外側はグラインダーで削り、内側は、父が持っていた丸棒鑢で削りました。 えらい手間を喰って、それだけで、昼過ぎまでかかりました。 透明錆どめを塗って、仕上げ。

  これで、部品の錆取りは、全部終わりました。 フレームやフォークの塗装も、乾いたので、明日は組み立てられそうです。 いよいよ、終わりが見えてきたか。 問題は、初めの頃にバラした部分が、どういう順序で組まれていたか、忘れかけている事ですな。 まあ、組み立て始めれば、おいおい、思い出すと思うのですが。

  どこから組むかも、意外と難問。 せっかく塗り直した本体に、キズをつけないように、順序に気をつけなければなりません。 後ろ泥除けを最後に外したので、組み立てる時には、それを最初に着けるわけですが、フレームも泥除けも、塗装した物だから、いきなりキズをつけそうな気がします。



≪2016/02/05 (金)≫
  いよいよ、旧母自の組み立てを開始。 錆どめを塗った部品が、他にくっついてしまわないように、グリスを塗りながら組んで行きます。 前ブレーキのユニットが、スムーズに動かずに、調整に苦労しました。 チェーンをチェーン・ケースに入れるのにも一苦労。 そのままでは入っていかないので、銅線を結んで案内にし、何とか通しました。

  塗って間もない塗装面がまだ弱いので、部品を当てると、すぐに傷が着いてしまいます。 組み終わったら、塗り足して、手直ししなければ。

  最後に残ったのは、サドル。 組み上げたものの、なぜか、ヤグラにシート・ポストが入って行きません。 少し入ったところで、自転車に着けて、試し乗りしてみましたが、サドルが高過ぎて、漕ぎ難いったらない。 やむなく、ポストの下側から、ハンマーで叩いたら、ハンマーの頭が抜けて、泣きっ面に蜂。 他のハンマーで何とか奥まで入れましたが、今度は、叩いたせいでパイプの下の端が捲くれてしまい、シート・チューブに入って行きません。 金属鑢で削ったけれど、やはり入らない。 ここで、時間切れ。 片付けました。

  錆取り作業と違い、組み立て作業は、体力を消耗するらしく、ふらふらになってしまいました。 こんなに疲れたのは、一昨年、北海道旅行で、札幌と小樽を歩いて以来です。



≪2016/02/06 (土)≫
  旧母自ですが、今日の午前中、最後まで残った、前籠とサドルを取り付け、組み立てが完了しました。 正味、20日間くらい、かかったでしょうか。 もし、私自身の手間賃を1日1万円で計算するなら、20万円もかけて、8千円台で買った自転車をレストアした事になります。 なんたる、無駄なエネルギー!

  閑だからやったわけですが、私は、手を着け始めると早く仕上げてしまわなければ気がすまない性分でして、暇潰しとはとても言えないような、苦しい日々になってしまいました。 苦しいだけでは、そもそも、続けられなかったと思うのですが、楽しさ2分、苦しさ8分というところだったでしょうか。

  これで、ペンキや薄め液のにおいとも、おさらばしたいところですが、うちにはまだ、父自という錆の塊があるので、そちらも片付けなければ、私の心に平穏は訪れません。 ま、とりあえず、少し休みますけど。

  ちなみに、午後、シュンの墓参に、お寺まで、試し乗りして来たんですが、行きは良かったものの、帰りに、左のペダルがぐらぐらし始め、途中で、クランクごとが外れてしまいました。 どうやら、クランク・ナットの締め付けを忘れたようです。 油断大敵ですな。 乗り物の場合、命に関わるから怖い。




  日記は以上です。 例の如く、内容を補足しますと、まず、ブロック・ダイナモ・ライトですな。 以前、私は、「リム・ダイナモ・ライト」と呼んでいましたが、正式名称は、「ブロック・ダイナモ・ライト」だそうなので、そちらに変えます。 いや、「正式」って言っても、誰が名称の管理をしているのか分からんですけど。 「名前なんか、通じればいいのであって、何と呼ぼうが、個人の勝手」という言語学的見解も添えておきましょうか。

  そのライトがねえ、去年の暮れに、前後ブレーキ・ワイヤーの交換をした時に、ふと気になって、点けてみようとしたら、点かなかったんですよ。 リード線に紙鑢をかけても、点かないので、てっきり壊れたのだと思って、買い換える為に、ホーム・センターやネットで、安いのを物色していたんですが、最も安くても、1100円くらいする一方で、私は、夜に自転車に乗る事はないので、ライトは無用の重物でして、気が進まず、そのままにしてあったのです。

  錆取りの為に分解している途中、フォークが抜けた拍子に、ライトが地面のコンクリートに当たって、レンズ周りが壊れ、破片が四散。 幸い、ほとんどの破片が回収できたので、保存しておいたのですが、それを、瞬間接着剤で貼り合わせたついでに、ダイナモの下の、リード線を咬ませる部分に鑢をかけてみたら、あら、びっくり、ライトが点いたというわけです。 新しいのを買わない内で良かった。


  サドルは、手強かった。 そもそも、サドルをバラせると思っていなかったので、錆取りを諦めていたんですが、やってみたら、案外簡単にバラバラになりました。 ただ、バラす前に、写真を撮っておかないと、復元できなくなる恐れは、濃厚にあります。 サドルの金属部品は、ヤグラを除くと、コイル・スプリング二つ、横棒一つ、V字棒一つで構成されていて、この内、棒は簡単ですが、コイル・スプリングが難題。

  500ccのペット・ボトルを半分に切って、二つのスプリングを咬み合わせて、その中に入れ、酸に浸けたのですが、クローム・メッキは錆ごと落ちたものの、下から、綺麗な銅メッキが出て来まして、その銅色を落とさなければ、他と色が合いません。 で、グラインダーと棒鑢で、削って行ったのですが、これが手間がかかる割に、甲斐のない作業でして・・・、結局、錆に冒された所は、ボコボコのまま、ただ、鉄の地肌の色を出しただけで、妥協せねばなりませんでした。

  削らなくても、上から、グレーのカラー錆どめを塗ってしまえば、簡単だったのに。 分解する必要すらなかったくらいです。 今、ホーム・センターで軽快車用の交換サドルを探すと、スプリングが、グレーで塗装されている物や、グレーのプラスチックでコートされている物がありますが、それと同じ仕上がりになるわけですから、何の問題もないわけです。


  組み立ては、一日で終わらせるつもりだったんですが、日記にあるように、いろいろと、障碍が発生して、結局、一日半かかってしまいました。 途方に暮れそうになったのが、チェーンの入れ方。 後輪とチェーン・ケースを着けてから、チェーン・ケースの後ろの開口部からチェーンを入れます。 ちなみに、前側の開口部からだと、チェーン・ケースの塗装面をこすりそうで、怖くて、入れられません。 チェーンは、横には曲がらないから、紐のように自在には扱えないのです。

  というわけで、後ろから入れるわけですが、チェーンだけだと、下へ曲がってしまって、入って行きません。 自転車を縦にして、重力を利用すれば、入ったかもしれませんが、塗装したばかりの自転車では、とても、そんな荒技を繰り出す気になれないじゃありませんか。 キズだらけになってしまいますがな。

  で、頭を使う事にし、しばらく考えて、思いついたのが、銅線をチェーンの端に結び付けて、先にチェーン・ケースの中に挿し込み、案内させるという方法です。 一応、その手で、通す事に成功しましたが、なんとも、稚稚拙拙たるやり方です。 これも、工場では、どうやっているんでしょうねえ。 つくづく、一度、自転車の組み立て工場を見学してみたい。 国内には、量産ラインなんて、もうないかな?

  話が前後しますが、チェーンは、分解して外した後、綺麗にしておきました。


  錆は、ほとんど出ていなかったのですが、再組み立てする時に、汚れたグリスがあちこちに着くのが嫌なので、一旦、落とす事にしたのです。 パーツ・クリーナーというスプレー式の洗浄剤が売っているのですが、買いに行くのが面倒なのと、僅かばかりのお金を惜しんで、他に何かで代用できないかと思い、試しに、ペイント薄め液でこすってみたら、落ちる様子。

  チェーンを渦巻状に巻いて、ちょうど収まる大きさの容器を探したら、植木鉢の受け皿にちょうど良いのがあったので、それを使いました。 薄め液が勿体ないから、液量は浅くして、裏表半分ずつ浸けました。 汚れが大方落ちた後、中性洗剤で洗って、干しましたが、水が着くと錆びて来ますから、水洗いはしなくてもいいのかも知れません。

  綺麗にしておいて、応じ合わせ。 グリスで汚れたまま、ガチャガチャやっていたら、せっかくの塗装面が、あちこち、べったべたに汚れてしまうところでした。 備えあれば、憂いなし。 問題は、想定外の事態には備えようがない事でして、自転車の組み立てなどという、普段滅多にやらない作業では、そういう事が、いくらでも出て来るのです。


  実際、塗装面の最大の敵は、チェーンではありませんでした。 部品もあろうに、スカート・ガードだったのです。 旧母自は、もはや、私の所有になったも同然ですから、スカート・ガードなんて、不要なのですが、なぜ、また着けたかというと、塗り替えた本体の色が、軽快車らしくないので、せめて、部品だけでも、元から付いていた物を全部着けて、それっぽく見せようとしたのです。

  あの、スカート・ガードというのが、外し難いなんてもんじゃないし、着け難いなんてもんじゃない。 まー、あーた、いっぺん、やってみんさいな。 外しただけで、後ろ泥除けとシート・ステーが、キズだらけですよ。 それもそのはず、もし、これが、車だったら、塗装面の上に、プラスチック部品を嵌め込むなんて、乱暴な設計は、絶対しません。 キズがつくに決まっているからです。 それが、自転車の世界では、ごく当たり前に行なわれているんですな。

  着ける時が、また、グジャグジャという感じ。 塗装面にキズをつけずに、スカート・ガードを着けるのは、神ならでは不可能と思えるほど、キズだらけになります。 だけど、自転車の組み立て工場には、その「神」がいるんでしょうなあ。 だって、新品の自転車では、スカート・ガードを着けた後で、塗装の修正なんてできないものねえ。 神が毎日、出勤して来て、タイム・カード押して、安全体操して、社食でうどん食ったりしてるわけだ。 なんとも、フレンドリーであることよ。


  他に、組み立てで手こずったのは、ヘッド・チューブの上下に付く、ベアリングのワンですかね。 特に、下側が入らなくて、往生しました。 外す時には、ヘッド・チューブの中に長いマイナス・ドライバーを差し込んで、ワンに当て、ハンマーで叩いて、割とすんなり取れたのですが、入れようとすると、どんなにハンマーで叩いても、入って行きません。

  たぶん、ワンの錆を取った後、透明錆どめを塗ったから、ワンの方の径が大きくなってしまったんでしょうなあ。 差し込む部分には、塗料や錆どめを塗ってはいけないんでしょう。 大きなハンマーを持って来て、何とか入れましたが、ガンガンガンガン、何回叩いた事か。 近所迷惑も甚だしい。


  それに関連して、日記の最後に出ている、クランクが外れてしまったという問題も、塗ってはいけない所に塗料を塗ったのが原因でした。 クランクが外れた数日後、着け直して、出かけたのですが、また、外れてしまい、ナットの締め忘れが原因ではない事が分かりました。 二回連続で起こると、「自分の力では、直せないのではないか・・・?」と思って、顔色が真っ青になりますな。

  思い当たる事というと、ボトム・ブラケットのシャフトが赤錆色になっていたので、黒の水性塗料を塗ったのですが、それが抵抗になって、クランクが入っていかないとしか考えられません。 で、スクレイパーで塗料を掻き落としてから、着け直したら、今度は、外れなくなりました。 やはり、嵌め込む部分に、塗料や錆どめを塗ってはいけないのでしょう。


  そうそう、サドルのヤグラに、シート・ポストが入って行かず、ハンマーで叩き込んだら、もう一方の端が広がって、今度は、シート・チューブに入っていかなくなった件は、広がってしまったシート・ポストの下端を、鉄鋸で切り落として、解決しました。 元々、資材用のパイプを自分で切ったものだから、こういう荒っぽい対策が取れた次第。 市販されているシート・ポストの場合、そもそも、ハンマーで叩くこと自体、薦めません。


  日記には出て来ませんが、前ブレーキ・ユニットの調整にも苦労しました。 一度、バラバラにしてから、酸に浸けて錆を落とし、透明錆どめを塗って、組み直したわけですが、一番先頭の回り止めナットを除いて、全ての部品が、スムーズに動かないと、ブレーキがうまくかからないのですよ。 片側に寄ってしまったり、戻らなくなってしまったりします。 全ての部品が動くように、部品を別にしてあるのだから、当然といえば当然なのですがね。

  透明錆どめを塗った部品同士は、くっついてしまうので、間にグリスを塗って、動くようにし、何とか、使えるところまで調整しましたが、ナットが緩んで来る恐れがあるので、注意しながら乗らなければならなくなりました。 そういうわけで、「バラさない方が良かったかな」と、後悔したのですが、先に立ちませんでした。


  「それはいいから、いい加減、塗り替えた後の写真を出さんかい」と、もはや、怒髪天を衝かんばかりの諸兄よ。 全く申し訳ないのですが、今回、長くなり過ぎたので、それは、次回に回します。 もう、しばらく、お待ち下さい。

  結局、今回は、写真が一枚きりになってしまいましたな。 作業中、ほとんど、撮影しなかったんですよ。 初めての体験で、うまく行くかどうか分からない事に取り組んでいると、全神経が作業の方に集中して、記録を残すどころではなくなってしまうのです。