2011/04/24

金持ちにゃなれんな

先週の続き。 ≪金持ち父さんシリーズ≫は、四冊で飽きてしまいましたが、その前後に、同じカテゴリーの本を三冊読んだので、その感想も載せておきます。




≪あなたに金持ちになってほしい≫
  わはは。 思わず、「そりゃまた、どうして?」と聞き返したくなるタイトルですな。 読者を金持ちにして、この人達に何の得があるのか? と、

  それが、あるらしいんですよ。 アメリカにも、第二次世界大戦後のベビーブームでどっと人口が増えた、≪団塊の世代≫があるらしいのですが、今後、その人々が定年を迎えると、老後の蓄えが足りず、生活に行き詰る世帯が大量に出現し、アメリカ経済を破綻させてしまうというのです。 そうなると、彼ら資産家も困るので、今の内に、団塊世代の皆さんに金持ちになって欲しいというわけ。

  ドナルド・トランプという人は、アメリカでは知らない人がいない、世界的にも有名な不動産王。 ロバート・キヨサキ氏は、ハワイ出身の日系四世で、≪金持ち父さん 貧乏父さん≫というベストセラー本を書いた人。 ただし、キヨサキ氏は、本を書く前から金持ちであり、印税で潤って、財を築いたわけではありません。

  キヨサキ氏は百万長者、トランプ氏は億万長者で、この本は、トランプ氏がキヨサキ氏に、共著の出版を持ちかけたもの。 ベストセラー作家にあやかろうというわけですな。 トランプ氏も本を出していますが、筆はキヨサキ氏の方が立つので、この本ではまず、キヨサキ氏が文章を書き、各テーマごとに、後からトランプ氏が加筆する形を取っています。

  キヨサキ氏の文章は、≪金持ち父さん 貧乏父さん≫シリーズを通した内容を要約したもので、さほど新味はありません。 トランプ氏が何を考えているか、その方が興味深いですが、隠しているのか、言葉にするような考え方をしていないのか、書いている事に、あまり特徴は感じられません。

  金持ちになる方法が書いてあるわけですが、株の選び方とか、不動産物件の見つけ方とか、具体的な事ではなく、発想の転換という基本的なレベルについて、ヒントを与えてくれるだけなので、期待のしすぎは禁物です。




≪となりの億万長者≫
  書名には、「億万長者」とありますが、実際には、100万ドル以上の資産を持っている人を対象にしているので、「百万長者」ですな。 90年代後半に書かれた本ですから、当時の相場で考えると、日本円では、大体、一億円くらい。 著者は、アメリカの経済学者二人で、マーケティングが専門です。 富裕層相手の商売ノウハウを研究する過程で分かった、実際の金持ち達の生態をまとめたもの。

  アメリカで、百万長者になっている人達の大半は、必ずしも収入が多いわけではなく、いわゆる、「締まり屋」で、支出の方を抑えて、比較的質素な生活をしているのだそうです。 逆に、収入は多いけれど、金持ちぶって、片っ端から使ってしまうために、資産がほとんど無い、≪似非金持ち≫も多いのだとか。 ≪刑事コロンボ≫で犯人になるような人達は、この、似非金持ちですな。 貯める事を知らないわけで、資産家ではないのです。

  面接調査の際、金持ちをもてなそうと思って、高級ワインやキャビアを用意しておいたら、呼んだ金持ち達は、そんな物には一切手をつけず、クラッカーばかり食べていたのだとか。 金持ちのイメージとして、世間一般に想像されているのとは、生活レベルが全く違うんですねえ。 車に金を掛け過ぎないのも特徴で、みんな国産(アメ車)の大型車に乗っているのだとか。 外車を買う場合でも、中古を狙うのだそうです。 うーむ、金持ちらしくない。

  ただし、支出を押さえると言っても、必ずしも、ケチというわけではなく、教育費などには、支出を惜しまないのだとか。 その一方で、子供に財産を渡す事には慎重で、経済的に完全に一人立ちしてからでないと、遺産が受け取れないようにしておくのだそうです。 子供に金を好きなだけ与えていると、駄目人間になってしまう事を知っているんですな。

  もう、10年以上前の本なので、経済状況などの細部に、少々ズレが出ていますが、おおまかに、金持ちの実態を知る分には、面白い本だと思います。




≪敗者復活≫
  アメリカでは、その名を知らない人が無い不動産王、ドナルド・トランプ氏の著書。

  ・・・なんですが、これは、改まって感想を書くような内容ではありませんでした。 一言で表現すると、「個人的な、ビジネスに関する思い出話」でして、学術的研究でもなければ、ハウツー本でもなく、およそ、参考になるところが見当たりません。

  この本を読んでも、不動産取引に関して詳しくなるわけではなく、ただ、トランプ氏の大胆なビジネス手法を、ごく表面的に見せつけられるだけ。 「一目見て、その建物が気に入った」というような、感覚的な表現が多いのですが、もちろん、感覚のみに頼って、莫大な金額が動かせるわけがないですから、他にも、裏づけのある調査をしているのでしょう。

  この人、ロバート・キヨサキ氏とは全く違っていて、自分の手の内を公にするつもりは、全く無いようです。 逆に言えば、同じビジネスマンであっても、トランプ氏の方が、厳しい世界に住んでいるんですな。 一歩間違えれば、莫大な資産が、一夜にして、莫大な負債に化けてしまうような。

  この書名は、90年頃に不動産不況に見舞われて、借金だらけになってしまってから、再び事業を立て直した事を指しているのですが、本の全体がその事について書かれているわけではありません。 女性遍歴や、芸能人、スポーツ選手との交友など、雑多なテーマで、細切れのエピソードを寄せ集めたという体裁です。 

  はっきり言って、鼻摘みなのであって、知的な面白さを全く感じません。 トランプ氏は、ビジネスマンとしては超一流ですが、本の書き手としては、明らかに三流です。 もっとも、大変忙しい人ですから、本人が書いているかどうかすら怪しいですけど。


  とまあ、以上、三冊でした。 最後に読んだ≪敗者復活≫がつまらな過ぎたせいも多分にあるのですが、いい加減、金持ちになる空想を膨らませるのにも飽きてしまい、ここで、パッタリと、その路線は途絶えてしまいました。 どうして、金持ちになる話に飽きてしまったのかというと、違和感がどんどん増幅してきて、自分を騙せなくなってしまったからだと思います。 

  ロバート・キヨサキ氏は、至って真面目に、金持ちになる方法を読者に伝授しようとしているのですが、キヨサキ氏当人も経験している通り、ただ考え方を変えるだけでは駄目で、リーダーシップを身につけたり、セールス技術を会得したりするには、馬鹿にならない時間と労力がかかります。 それが、私にできるとはとても思えないのです。 私だけでなく、すでに大人になっていて、Eクワドラントや、Sクワドラントで働いている人達の大部分が、この条件を欠いていると思います。 おいそれと真似られるような事ではないのです。

  次に、もっと根本的な問題として、「金持ちになろうとしている人間の全てが、金持ちになれるわけではない」という、摂理があります。 金持ち父さんが教える金持ちになる方法は、≪起業≫と、≪投資≫が両輪を成していますが、どちらにも、勝者と敗者が存在します。 特に、投資の方は、「敗者がいるからこそ、勝者が存在しえる」というシステムになっています。

  投資というと聞こえがいいですが、やっている事は、ギャンブルと同じなのであって、原理的には、競馬や競輪と、全く変わりません。 勝者が得るお金はどこから出て来たかといえば、敗者が賭けたお金なのです。 たくさんの敗者がいるからこそ、僅かの勝者が成立するんですな。 宝くじの原理も似ていますが、宝くじの場合、賭ける際に技量は関係してこないので、やはり、競馬・競輪の方が近いです。

  金持ちゲームに参加する事は誰にでもできますが、金持ち父さんの分析では、参加者の9割は敗者になり、勝者は残りの1割だけという事になります。 ゲームの参加者は、多ければ多いほど、勝者の取り分は大きくなるので、キヨサキ氏やトランプ氏が、参加者を増やすために、自著の読者にノウハウを教える事は、必ずしも、利他行為とは言えません。 彼らは、ゲームの勝者になる自信があるので、カモの数は多ければ多いほどいいのです。

  私も、金持ちにはなりたいのは山々ですが、才覚も無いのに、鵜の目鷹の目で他人の財産を分捕ってやろうと狙っている連中の中に入って行ったのでは、身包み剥がされる危険性が、非常~に高い。 自殺行為にも等しいです。 投資には、ある程度、元手が必要なわけですが、今まで、骨身を削ってコツコツ稼いで来たお金を、そんな危なっかしい事に使えますかね? ライバルがみんな間抜けだと言うなら、「ちっと、出し抜いてやろうか」とも思いますが、実際には、その逆でしょう。 間抜けは新参者の方であって、周りはほとんど、百戦錬磨のつわものなわけだ。 とてもと~ても、渡り合えたもんじゃないですよ。

  金持ち父さんは、「だから、ファイナンシャル・リテラシーを高めるための勉強が必要なのだ」と言うわけですが、それも、どーだか・・・。 これから死ぬまで、不断の努力で、金持ちになるための勉強を続けるんですか? それは確かに、≪勉強≫ではあるけれど、≪学問≫ではないですよね。 どんなに高度なレベルに達しても、人に教えるわけには行きませんから、自分と自分の子供くらいにしか伝えられません。 何だか、意義の無い研究だとは思いませんか。

  現に、キヨサキ氏は、ただ金持ちになるだけでは飽き足らず、実の父親の職業であった、≪教師≫にもなりたいと思って、金持ちになるためのノウハウを教えるボード・ゲームを作ったり、金持ち講座を開いたりしているわけですが、それ即ち、金持ちになる事が、それだけでは、人生の目標となりえない事の証明ではありますまいか。

  実感として、近所に、金持ちが住んでいたとして、その人を無条件に尊敬できるかというと、そんな事は全然無いでしょう。 むしろ、金持ちというのは、近所の人から、忌み嫌われているのが普通です。 人間というのは、お金だけ持っていても、評価はされないんですな。

  こういう事を書くと、金持ちの方は、「他人から評価されるためではなく、自分の人生のために、金持ちになるんだ」と言うでしょうが、単に自分の人生のためだけなら、一生かかっても使い切れないような資産は、不要ではありませんか? どんなにお金を儲けても、食べられる物の量や、楽しめる時間の長さは、普通の人達と変わらないんですから。

  一千万円を超える高級車でも、50万円の中古軽自動車でも、車としての用途に変わりはありません。 クルーザーか、ヘリコプターでも買いますか? そんなもの、ただの厄介物でしょう。 いちいち、乗りに行くのも面倒くさい。 豪華客船でクルージング? 死ぬほど退屈な日々になりそうですねえ。 あ゛~、想像するだけで、うんざりだ。 人間が貪れる楽しみなんて、高が知れているんですよ。

  惨めな敗者になる危険を冒してまで、挑戦するような事ですかね、金持ちになるという目標は? 要は、借金をするほど貧乏にならなければいいのであって、金持ちになる必要は無いと思うのです。 「金はいくらあっても困らない」とか、「あればあるほどいい」というのは、真っ赤な嘘であって、あり過ぎると、金銭感覚が麻痺して、間違いを起こし易くなります。 両津勘吉化するといえば、ピンと来るでしょうか。 何事も、≪ほどほど、適度≫に優る事は無いんですな。

  ただ、借金地獄に堕ちて人生を棒に振ってしまわないために、ファイナンシャル・インテリジェンスを磨いておくというなら、それは有益だと思います。 「起業や投資で儲けて、楽して暮らそう」などと不埒な考えを抱くのではなく、世の中に張り巡らされたお金絡みの罠を避けるために、その仕組みを知っておくのです。 もっとも、防御目的で身につけた武術でも、攻撃用に簡単に転用できるのと同じで、「絶対に、金儲けには使わない」という、強い自制心が必要になり、そこが結構難題で、「むしろ、何も知らないでいた方が、人生通して見れば、いい結果になるのでは」という気もせんでもないですが。

  とにかく、「金持ちになる方法はある。 しかし、全ての人間が金持ちになれるわけではない」という事は、よーく肝に銘じておくべきですな。 単に、能力の有無の問題ではなく、起業や投資で金持ちになるという事は、他人に物を売ったり、他人からお金を分捕ったりする事に他ならず、そういう行為は、物を買ったり、お金を分捕られる側の人間がいなければ、成立しません。 全員が全員、儲ける側に回るという事は、原理的・構造的に不可能なのです。

  そして、その割合は、儲ける側が1に対して、喰われる側が9だというのです。 随分と割に合わない賭けではありませんか。 10人で1脚を奪い合う、椅子取りゲームだと言っても宜しい。 勝つ自信がありますか? 私は、ありません。 年中無休、朝から晩まで、お金の事ばかり考えている連中と、勝負なんて、とてもできませんよ。 ゲームの達人から身を守る唯一の方法は、ゲームに参加しない事なのです。

2011/04/17

金持ちになる本

震災前からですが、暫くの間、≪金持ち父さん≫シリーズを読んでいました。 ベストセラーにして、ロングセラーなので、聞いた事がある人も多いと思います。 私も、書名を聞いた事はあったんですが、金持ちの事を宇宙人と同一カテゴリーに入れていたため、全く興味が無く、どんな本なのかすら知らずにいました。 10年以上経ってから、読む気になったのは、たまたま、図書館で、≪あなたに金持ちになってほしい≫という、一見、アホみたいな書名の本を見つけ、借りてみた事がきっかけです。

  ≪あなたに金持ちになってほしい≫は、≪金持ち父さん≫シリーズの著者、ロバート・キヨサキ氏と、アメリカの不動産王、ドナルド・トランプ氏の共著でしたが、読んでみると、軸足がロバート・キヨサキ氏の担当パートにあるのは明らかで、俄然、≪金持父さん≫シリーズの方に興味が湧きました。 私は、ある程度知識がある分野に関しては、新しい展開などを受け付けにくい、疑り深い性格なのですが、何も知らない白紙の世界だと、簡単に影響を受ける傾向があります。

  で、金持ちになる事について少々考えるところがあったわけですが、とりあえず、読書感想文から掲載してみましょう。




≪金持ち父さん 貧乏父さん≫
  うーむ、目からウロコですな。 これぞ、正しく、コロンブスの卵。 もはや、≪奇書≫と言ってもいいくらい、印象的で、インパクトの強い本です。 投資に興味がある無しに関わらず、誰でも一度は読んでみた方がよいでしょう。 日本では2001年に発行された本ですが、いまだに、投資関係書籍のベストセラーに入っている模様。

  「貧乏父さん」というのは、著者の実の父です。 貧乏と言っても、「赤貧洗うが如し」といったレベルではなく、金持ちではなかったという、相対的な意味での貧乏でして、一流の大学を最高の成績で出て、ハワイで教育行政のトップまで上り詰めた、大変知的な人物だったそうです。

  一方、「金持ち父さん」の方は、著者の友人の父親で、高校も出ていなかったそうですが、金持ちになる方法を独学で研究して、ほとんど資産の無い状態から這い上がり、最終的には、ハワイ一の金持ちになった人。 この本は、著者が、金持ち父さんから教えてもらった、金持ちになるための方法について、その端緒の部分を記したものです。

  方法と言っても、具体的に何をするかを書いてあるわけではなく、「まず、考え方を根本から変えなければならない」と、そういうレベルで話が進んで行きます。 財務諸表というのが出て来て、その見方が説明されますが、損益計算書と賃借対照表という、たった二つの表で、金持ちと貧乏人のお金の使い方を鮮やかに区別するところは、魔法を見せられているよう。 なるほど、そうだったのか。 道理で、貧乏人がいつまで経っても、金持ちになれないわけだ。

  「90対10の法則」というのがあり、この世の中では、10%の人間が90%の富を持ち、残りの90%の人間が10%の富を分け合っているのだそうな。 凄く理不尽なようですが、金持ち父さんは、それを理不尽として社会の方を変えるのではなく、自分の考え方を変えて、90%の富を握る10%の人間の方へ入ろうとし、それに成功したというわけ。 凄い人ですな。

  しかも、金持ち父さんの取った手段は、金持ち父さん個人の才能に頼ったのではなく、金持ちになるには方法があり、人に伝える事も可能だとして、著者にそれを教え、著者も大金持ちにしてしまったのです。 ますます凄い。 あるんですねえ、金持ちになる方法って。

  とにかく、本が読める人なら、読んでおいて、損はないです。 お金の事は、誰にでも興味があると思うので、絶対に喰い付くと思います。




≪金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント≫
  ≪金持ち父さん 貧乏父さん≫の続編。 「前作が売れたから、続きを書いた」というパターンではなく、最初に、非常に長い著作があって、それを切り分けて、小出しに本にして行ったというふうに見受けられます。

  この本でも、金持ちと貧乏人の考え方の違いを浮き彫りにする事がテーマになっていますが、新たに、≪キャッシュフロー・クワドラント≫という分類概念が登場します。 「キャッシュフロー」というのは、お金の流れの事。 「クワドラント」というのは、円状に4分割されたカテゴリーの事。

  人間には、

E 従業員(employee)
S 自営業者(self-employed)
B ビジネス・オーナー(business owner)
I 投資家(investor)

  の四種類があり、E・Sに所属している人間は、常に貧乏。 B・Iの方にいる者が、常に金持ちになるというのです。 「金持ちになる」とは、E・Sから、B・Iへ、クワドラントを移動する事なのだとか。

  資産というのは、お金や、お金に換えられる物を、ただ持っているだけでは駄目で、資産そのものが収入を生むようにならないと、資産とは言わないのだそうです。 たとえば、持ち家は、普通、資産の最たる物と見られていますが、金持ち父さんの考え方では、ローンや維持費が出て行ってしまうので、むしろ、負債と見做すべきだというのです。

  金持ち父さんの教えを受けた著者は、現在、大金持ちなわけですが、一時期、ビジネスに失敗して、ホームレスになり、車の中で暮らしていた経験もあるとの事。 いい大学を出ていたので、従業員としてなら、どこにでも就職できたのですが、新しいビジネス・システムを構築するために、敢えてホームレス状態を耐え忍んだというから、筋金入りですな。

  このシリーズ、お金の話だけでなく、人生観そのものを変える事を目標としており、読んでいると、自分が今まで通して来た生き方に、疑問符がいくつも付き始めます。 金持ちになるという事が、人生目標になりうるのかどうかは、人によって意見が分かれると思いますが、発想の転換方法としてなら、お金以外の事にも、いろいろと応用が利くような気がします。




≪金持ち父さんの投資ガイド入門編≫
  投資ガイドと言っても、「こういう株を買え」とか、「ああいう不動産が狙い目だ」といった具体的な投資ノウハウを書いてあるわけではありません。 やはり、発想の転換が最大のテーマです。

  「投資はプランだ」と言い、まず、自分が投資によってどんな結果を得たいか、そのプランを立てなければ、始められないのだそうです。 株の上がり下がりに一喜一憂している人間などは、投資家とは言えず、単なる取引屋かギャンブラーに過ぎないのだとか。

  「言葉が人を金持ちにする」というのも面白い。 そんなに深い意味ではなく、その分野の専門用語を頭に入れておけ、という話。 投資家には、投資家が使う言葉があり、それらに精通していなければ、投資で成果を出すことなど、とてもできないらしいです。 なるほど、ごもっとも。

  つまり、投資の世界に入るなら、その世界について、よく知ってからでないと、お金を儲けるシステムを自由自在に活用することはできないんですな。 ところが、現実には、ただ手っ取り早く大儲けしたくて、値上がりしそうな株にだけ目をつけて、無手勝流で飛び込んで来る輩が多いのだそうです。 当然、カモになるだけらしいですが。

  「投資が危険なのではなく、無知な投資家が危険なのだ」とは、含蓄がある言葉です。 何事も、勉強しなければ、うまく進められないんですねえ。 そう考えると、投資の世界について、まるっきり無知な私なんぞ、危険の権化のようなもので、現状では、近寄る事もできません。

  「失敗を恐れるな。 失敗しない事よりも、失敗して、そこから教訓を得る方が、ずっと大事だ」というのも、大いに頷けます。 自転車の乗り方を覚える時、最初は何度も転びますが、その内、体がコツを覚えると、何も考えなくても乗れるようになります。 投資もそれと同じで、何度も失敗しては再挑戦している内に、体が覚えて、何も考えなくても儲けられるようになるのだそうです。

  しかし、この本を読んで、即、投資家になるのは不可能ですな。 この本は、金持ち父さんの教えの、ほんの一部を紹介しているに過ぎません。 「勉強せよ」という事を勉強するには、非常に良い本です。




≪金持ち父さんの投資ガイド上級編≫
  さすがの≪金持ち父さん≫シリーズも、四冊目となると、インパクトが薄くなって来るのは否めませんな。 私も、そろそろ飽きてきました。

  この本では、新たに、≪B-I トライアングル≫という、図が出てきます。 これは、ビジネスを始める際に必要な要素を、重要度順に、ピラミッド状に積み上げたもの。 下から順に、

・コミニュケーション
・キャッシュフロー
・システム
・法律
・製品

  と並び、そのトライアングルの三辺に、

・使命
・チーム
・リーダーシップ

  の三要素が、囲んでいる図です。

  これだけでは、分からんでしょう?  実は私も、よく分かっていません。 ビジネス構築に、そういう要素が必要な事は分かりますが、そもそも、こちとら、金持ちにはなりたくても、会社を起こす気など毛頭無いので、真剣に勉強しましょうという熱意に欠けており、それが、より深い理解を妨げてしまうのです。

  そもそも、「投資ガイドなのに、どうして、会社を作らねばならんの」とは誰でも思う疑問。 それは、「良い投資家になるためには、ビジネスの裏側が分かっていなければならず、それを知るためには、自分で会社を作るのが一番だ」という、金持ち父さんの考え方から来ているのですが、なかなか、そこまでは踏み切れませんなあ。

  ロバート・キヨサキ氏は、金持ち父さんの教えに従い、リーダーシップを身につけるために、海兵隊に入ってベトナム戦争へ行ったり、コミニュケーション能力を高めるために、ゼロックスに入社して、セールスマンをやったりしているのですが、お気楽な読者である当方としては、とてもとても、そんな膨大なエネルギーを投じる気にはなれません。

  ≪金持ち父さん≫シリーズは、「信者」とも言うべき熱烈な読者を生み出す魅力がありますが、実際に金持ちになるためには、やはり、大きなハードルをいくつも越えなければならないんですねえ。 私がついて来れたのは、≪投資ガイド入門編≫までだったという事なのでしょう。

  この本も、前三著と同様、具体的に、「何に投資しろ」といったような事は書いてないので、その種の指導を期待している方には、不向きです。


  というわけで、今回は以上、四冊まで。 他にも、金持ち関係の本を何冊か読んだのですが、少し長くなってしまったので、次週に回します。

2011/04/10

お金の話

  ずううぅぅーーーーっと休み。 入社以来、こんなに長い休みは、もちろん初めて。 言うに及ばず、今後も退職するまで二度と経験できないと思われます。 もっとも、週に一回くらい、雑用で出勤はしているのですが、本当に雑用としか形容できない、≪真・雑用≫なので、あんな事では、とてもとても、働いたなどとは申せません。

  この雑用、単に、「ずっと休みでは、給料が減ってしまって困るだろう」という、上層部の余計なお節介で、無理やり捻り出された仕事なのです。 ラインの作り替えだの、床のペンキ剥がしだの、しなくてもいいばかりか、するとお金が掛かってしまって、会社に損害を齎すような事ばかり。 工場というのは、ラインが動いて、製品が外へ出荷されなければ、一円も儲けられないのだという事を、認識していないのです。

  ヒラ社員は不出勤の場合、≪休業≫扱いになるため、給料は90%支給。 それに対し、職制は基本的に、毎日出勤しているので、給料は、定時分までとはいえ、100%出ます。 それも奇妙なのであって、工場が動いていないのですから、職制も出勤に及ばないはず。 会社に来ても、雑用しかやる事が無い点は、ヒラと変わらないのですから。 思うに、自分達が100%貰っていて、後ろめたさを感じるのが嫌なので、罪滅ぼしとして、ヒラにも週一で出勤させているのではありますまいか。

  そもそも、会社が一円も儲けていないのに、従業員に給料が支払われるというのがおかしいです。 たとえ90%であっても、休んでいる人間に金をくれてやるというのは、札束をドブに捨てているのと変わりありません。 どうも、自然災害などの外部要因で操業を停めざるを得なくなると、国から補助金が出るらしいのですが、それでなくても借金で全身ギプス状態の国に、よくそんなお金があるものです。 一応、資本主義のはずなのに、民間企業を国が助けるというのは、どういう事でしょう?


  金といえば、≪復興財源≫ですが、あれも、どこから持って来るつもりなんですかねえ。 とても、とーても足りないと思うのですよ。 何度も言うように、日本は震災前でも、超特大スケールの借金国だったのであって、その上更に、復興用の資金が必要になるんですよ。 義援金が1兆や2兆集まったところで、あの見渡す限りの瓦礫の原が、元に戻せるとは、到底思えません。 一体、どうするつもりなんでしょう?

  義援金といえば、私も、会社でちょこっと出しましたけど、一人千円くらいでは、焼け石に水だと思いますぜ。 俄かに義侠心に駆られて、何万円とか何十万円とか、一人で出そうとしている方もいると思いますが、あまり先走らない方がいいです。 その内、増税でがっぽり持って行かれる可能性があるので、そうなると、二重取りされたような、嫌~な気分になること請け合いです。

  つまらん事に拘るようですが、義援金というのは、いくら出しても、表彰されるわけでもなければ、礼状一枚貰えるわけでもないので、時間が経てば経つほど、「ああ、私の出した、あのお金は、どうなったんでしょうねえ・・・」と、虚しい気分が盛り上がって来るものです。 礼状を出せばいいと思うんですがね。 たとえ、印刷された葉書一枚であっても、「ありがとうございました。 有効に使わせていただきました」という文面を見れば、誰でも、「ああ、出して良かったなあ」と、満足できると思うのですよ。

  そういや、新聞社を通して義援金を出すと、≪希望者に限り≫、紙面に名前が掲載されるのだとか。 うう・・・・、新聞社めらが、巧みに人の弱みを突いて来るのう。 そうまでして、名前を出したいとは思わないのですよ。 何だか、いやらしいですわなあ。 ≪希望者に限り≫というのが、さりげなくも大きな落とし穴でして、そんなのに名前が載った日には、世間に恥を曝すようなものですぜ。 もっとも、そんな名簿なんざ、≪希望者≫当人以外、誰も読まないと思いますけど。 ああ、いやらしい! 鳥肌立つ!


  「復興させるなら、津波に耐えられる街にすべきだ」という事で、高床式の人工地盤を設け、その上に街を作る案を出していてる学者がいましたが、いやはや、参りましたね。 バブルの頃に流行った、≪千メートル・ビル計画≫を思い出しましたよ。 今では信じられない話ですが、バブル最盛期には、階層式に人工地盤を積み重ねた、超巨大ビルの建設計画が、かなり真面目に検討されていたのです。 もちろん、莫大な資金が必要とされるのであって、金が唸っていた当時ですら、到底、現実の話にはなりませんでした。

  まして、国が借金で押し潰される寸前の情況にある今、どうして、そんな物が作れるのか・・・。 資金の事を一切考えずに提案しているとしか思えません。 津波でやられた地域が、どれだけ広大か、テレビを見ていないんでしょうか。 その全てに、高床式人工地盤を立ち上げるんですか? 全世界の全ての国の予算を百年分注ぎ込んでも、とてもできないと思いますがねえ。

  経済的に、もっと現実的な案としては、

1・ 津波被害地域に街を再建するのは諦め、住民は他の地域へ移住する。
2・ 津波被害地域に、そのまま街を再建し、今までよりも高さ厚さ共に頑丈な堤防を作り直す。

  のどちらかという事になると思います。

  1案は、被災者の心情からすれば、非現実的なようですが、津波対策としては完璧になります。 究極の津波対策は、津波が来ない所に住む事だからです。 土地の所有権の問題や、故郷への愛着を考えると、実行は難しいと思いますが、街の再建はしないで済みますから、資金的には一番安く上がります。

  2案は、現実的といえば最も現実的で、たぶん、実際にそうなるのではないかと予想されますが、「今回より大きな津波は、向こう百年くらいは来ないだろう」という、≪楽観的見込み≫に大きく依存する事になります。 この場合でも、高床式人工地盤ほどではないにせよ、大変なお金が掛かるわけですが、現実的で、尚且つ、住民の理解が得やすいという点では、断然優れています。

  今回の津波が今までと違うのは、「これで充分」と思われていた堤防が、破られてしまった事にあります。 「今回のような津波に耐え得る堤防を作るのは不可能」と、土木業界が言っているそうですが、実際、そうなのでしょう。 いつか破られると分かっている堤防を再建して、不安と背中合わせで暮らすか、移住の苦難を乗り越えて、安心を手に入れるか・・・、それは、難しい選択になるでしょうな。


  お金の話に戻りますが、復興資金を、増税ではなく、国債発行で賄う案が出ているのだとか。 結局、お金の出所は国民の財布なので、国債であっても、いずれは税金で払わなければならなくなります。 一体、何十兆何百兆かかるのか分かりませんが、今までにも到底返せない金額だった借金が、輪を掛けて到底返せなくなるわけで、それでも、国債を引き受けましょうという金融機関の気が知れません。

  お金というのは、数字だけ見ていると、実際に存在するのかしないのかピンと来ませんが、家に借金取りが押し掛けて来ると、自分がそれを持っていない事を実感できるのだとか。 大方、日本の金融機関も、自分達が動かしているお金が、実際には、すでに存在しないという事に気付いていないのでしょう。 気付いた時が、日本経済が破綻する時なわけだ。 復興国債の発行が、その引き金になってしまわなければいいんですがね。 もし、そうなったら、泣きっ面に蜂に藪蛇ですぜ。


  オマケ。

「使っていない電気はこまめに消そう」
「その買い物は、本当に必要ですか?」
  テレビの震災後CMで、芸能人が真面目ぶって、問いかけていますが、あれには、腹の底から片腹痛いです。 あんたらみたいに、金をジャブジャブ使って暮らしているやつらに、そんな事言われたかないよ。 そうゆうCMの仕事を引き受ける前に、自分の生活レベルを落としてみなよ。 とても、できまいて。

「日本は一つ」
  これも、噴飯物。 実際問題、富士川から西に住んでいる人達は、震災前と何の変わりもなく、「ふつーに」暮らしているわけで、そんな事、口にできる立場ではないでしょう。 冷静且つ客観的に見ると、今現在、「日本は三つ」に分かれています。 被災地、停電地域、それ以外の地域に。 被災地に住んでいなくても、そんなに後ろめたさを感じる必要はありません。 天災は回り持ちでやって来ますし、復興費用は、全国一律に税金で取られるからです。 そうなってから税務署が使うコピーなら、まだ分かりますが。

「日本は強い国」
  馬鹿めが。 戦争でも始めるつもりか。 大体、元から強い国なら、おまえに励まされる必要などないではないか。 それ以前に、地震・津波の被害が、強い弱いの問題か? 相手は天災だぞ。 強くたって死ぬし、弱くたって生き残るわ。 まったく、馬鹿で、馬鹿で・・・、そんな脳足りんなコピーしか思いつかんのか。

「こんな時だからこそ、花見をしてください」
  いやいやいや、それは、こちらで決めます。 自粛するかどうかは、自粛する側が判断する事です。 逆に訊きたいのですが、こういう時に自粛しないで、どういう時に自粛するんですか? 自粛と言えば、昭和天皇が死んだ時を思い出しますが、あの時はたった一人、今回は死者・行方不明者だけでも3万人近い人数ですぜ。 3万倍自粛してもいいくらいです。 人の命に、価値の差はありますまい。

「自分が頑張る事で、被災者を励ましたい」
  昨今のスポーツ選手が、まじないのように唱えるセリフですが・・・、いやあ、あなたの成績と、被災者とは、全然関係ないと思いますよ。 中には、あなたのライバルのファンもいると思いますが、そういう人達は、あなたが頑張れば頑張るほど、胸糞悪いだけじゃないですかね? 自分の仕事と、被災者応援を勝手に結びつけるのは、控えるべきでしょう。

  傍から見ると、被災者応援を売名に利用しているように見えてしまうんですが、それは錯覚ですか? 少しでも、自分の心に恥じるところがあったら、考え足らずの言動は慎んだ方がいいですよ。 体育会系好みの聞こえのいいセリフを鵜呑みにするほど、世間の人間は馬鹿じゃないですから。 心配しなくても、スポーツ選手がスポーツをやるのは当たり前なのであって、被災者応援を口実にしなくたって、誰も批判などしませんよ。 実際問題、「仕事をやるな」とは言えないでしょう?

「世界が、日本人の冷静な対応を賞賛している」
  アホけ? 天災に見舞われたら、助け合うのはどの国だって同じだよ。 空き巣狙いや、瓦礫場泥棒が出るのもな。 誰が何を賞賛してるって? その馬鹿は、福島第一の放射能だだ漏れも誉めてるのかい? まったく、日本にいる者ですら、情報が少なくて困っているというのに、外国にいる人間が、何を知っていると言うのだね?

  無資格批評者に誉められて、喜んでいる方も喜んでいる方だ。 そんなに誉めて欲しいのかね? 「誉めて、誉めて! 日本人て凄いでしょ! 俺も日本人! 偉いでしょ?」 くぅぅ・・・、およそ、奥ゆかしさのかけらもない・・・。 自家撞着を恐れず言わせて貰えば、「おまいら、ほんとに日本人か?」 は、は、は、耳~心を知るべし! 東照神君家康公に顔向けできぬ! いや、この恥ずかしい実態こそ、真の日本人の姿なのだと思えば、矛盾もないが・・・。