2011/03/30

震災中の風景

  自動車関連の会社に勤めているので、震災以来、ほとんど休み。 出勤したのは、一日半だけです。 まあ、私としては、仕事人間の対極にいるような勤労意識の持ち主なので、一向に構わないんですが、毎日、だらだらと時間が過ぎて、メリハリが無いのが、問題と言えば問題です。

  忌々しい事に、東京電力の管内に住んでいるので、計画停電は、今までに4回経験しました。 富士川以西の人には分からないと思うので、ちょっと書きますと、「○時○分から、○時○分まで」と決められていても、時間通りに始まる事は、まずありません。 というか、今までのところ、一回もありませんでした。 大抵は、7時とか、1時とか、切りのいい時刻に、突然、「ブツッ!」と切れます。 これが、困るんだわ。

  「予告された時間に始まらないのなら、暫くの間、電気が使えるんだから、ありがたい事じゃないか。 文句は無いだろう」

  というような事を言う人がいますが、それは、計画停電区域外に住んでいる人間の、無知から来る思い違いです。 予告したら、予告した時間に切れてくれないと、却って困るのです。 厳密に、何時何分から切れるという事が分からないのが、一番困る。

  人間というのは、一日分と言わず、一時間分と言わず、一分分と言わず、常に先々の計画を立てて暮らしているのであって、時間通りに停電が起こらないと、その計画が全て狂ってしまいます。 たとえば、「夜の6時20分から停電」と予告されていたのが、6時20分になっても切れないと、「おお、切れないじゃないか。 それじゃあ、もう暫く、テレビを見よう」と、居間に残っています。 ところが、それが、7時になると、「ブツッ!」と切れる。 いきなり、真っ暗です。 困るんですよ、そういうのが。

  「じゃあ、予告通り、6時20分から停電した事にして、実際には電気が来ていても、真っ暗生活をしていればいじゃないか」

  それそれ! そういう指摘こそが、計画停電区域外に住んでいる人の、≪他人事的感覚≫なのです。 実際には電気が来ているのに、使わないで、真っ暗生活をする人間なんて、いやしませんよ。 自分の所もやられてみれば、すぐに分かります。

  正に、≪計画停電≫とは名ばかりで、≪無計画停電≫としか言いようがないのですが、なんで、東電が、予告通りに停電開始しないかというと、二通りの理由が考えられます。 一つは、

「利用者の皆様に、極力、停電の御不便をおかけしないように、需給状況をこまめに予測して、開始時間をギリギリまで調整させていただいております」

  というもの。 これは、良心的な見方ですな。 しかし、それでなくても、原発でアップアップの東電が、そんな細かい配慮をするとは思えないような気もします。 で、もう一つの可能性は、

「それでなくても、原発で大減収になるのに、これ以上、利益が減ってはたまらん。 一円でも多く、利用者から料金を取れるように、停電時間は、必要最小限ギリギリにしろ」

  うーむ、いかにも、切羽詰った会社らしい考え方だ。 大方、こちらの方が正解ではないでしょうか。 そう思うと、東電の懐事情に振り回されているわけで、ますます、ムカムカして来ます。 どうせ、突然、「ブツッ!」と行くなら、いっそ、計画停電なんぞやめて、突発大停電の方が小気味いいとすら思えます。

  ちなみに、会社の同僚の話によると、富士川以西では、停電はもちろん、節電もまるで関係なく、「ごくふつーに」 暮らしているそうで、思わず、「せめて、静岡県東部だけでも、中部電力に入れて貰えんかの~」 と、涎が垂れるところ。 それを聞いていた横須賀出身の人が、「それなら、神奈川県も、中部電力に入れて下さいよ~」 と縋って来ましたが、「いやあ、神奈川は、どう考えても、≪中部≫とは言えないでしょう」 と、静岡県民に拒絶されていました。

  まだまだあります、計画停電の問題点。 最初、第1から第5までの5グループに分かれていたのが、更に各グループを5分割して、25グループになりました。 これが困るんだわ。 その日に停電があるかどうかは、前日の夜や、その日の昼に発表されるので、そのつど、テレビを見ていなければならないのですが、細分化されていると、自分のグループが表示されるまで、テレビを見続けていなければなりません。 あの時間の無駄な事、無為な事!

  5グループの時でさえ、イライラしていましたが、事もあろうに、それを25グループに増やすとは、正気の沙汰とも思えません。 もしかしたら、東電の奴らって、自分の所は停電させてないんじゃないの? というか、停電していても、社内情報で公表前に時間が分かるから、不便していないのでしょう。 まったく、腹が立つったら、ありゃしない。 ほんっとに、電気とはおさらばして、≪オール・ガスの家≫にリフォームしようかしら。 そういや、往年の名作少女漫画、≪パタリロ≫に、「ガス・テレビ」というのが出て来ましたな。 原理は分からんが。


  ちょっと、話が変わりますが、我が家では、震災直後に、地震とは全く関係ない事情で、洗面台の排水口が壊れてしまいました。 すぐに、業者の人に来て貰ったんですが、古い洗面台なので、修理できないとの事。 やむなく、新しい洗面台を注文する事になったのですが、契約書に判までついたにも拘わらず、一週間後に、業者の方から、契約の一時停止を通告して来ました。 商品が無いというのです。 どうやら、北関東や東北に工場があったらしく、四つくらいあるメーカーが、全て駄目。 当面、入荷する見込みが無いのだとか。

  これにも参りました。 今は、応急修理だけして貰って使っていますが、水漏れ対策に、配管の下にバケツを置いている有様。 やれやれ。 それでも、被災地に比べれば、贅沢な悩みである事は疑いないですけど・・・。  静岡県東部人の感覚だと、「工業製品は、ほとんど、西の方からやって来る」という、≪上方信仰≫があるのですが、関東以北で作っている物も、結構あるんですねえ。


  またまた、話が変わりますが、えらい事になっていますねえ、福島第一原発。 ズブドロ泥沼という感じ。

  外部電源が引き込まれて、中央制御室に照明が点いた時には、テレビも新聞も、「これで、復旧する!」と、まるで、全て解決したかのような喜び方をしていました。 しかし、私は、無数にある障壁の一つを越えただけで、解決には程遠いと思っていました。 案の定、その後、次から次へと、新しい問題が発生しています。

  なんで、マスコミが、照明の点灯だけで、あんなに喜んでいたのか、とことん、とんと解せません。 技術関連の常識が全然無いんでしょうか? 「あとは、冷却系統を復帰させるだけ」などと、さながら、自宅に帰って、部屋の電器を点けるようなノリで、お気楽に笑っていましたが、冷却系統が損傷していないと信じ込んでいる、その頭の構造が分からん。 建屋の外観だけ見ても、あれだけメチャメチャに壊れているのに、格納容器や配管が全く無事など、考えられないではありませんか。 爆発の破壊力をなめているんじゃないの?

  汚染された水を入れるために、いくつかあるタンクの水を、玉突き式に隣へ引越しさせる計画を立てているとか。 いやはや、そんな事を始めるようでは、いよいよ、追い詰められていますな。 で、一番最後のタンクが一杯になったら、次は、どこへ移すのよ? 一方で新しい水を続々と原子炉に送り込み続けているのだから、そこから新たな汚染水が続々と漏れて来るわけで、いくつタンクがあっても、足りますまい。

  現場で指揮を執っている連中も、そんな事は分かっていると思いますが、それでも、そんな先が見えている手段しか取れないのでしょう。 正に、≪場当たり的対応≫の典型事例。 学者が、「タンカーを持って来て、一時的に、その中に溜めろ」とか言ってますが、そのタンカーが一杯になったら、どうするんですかね? 伝説の、出来損ない原子力船、≪むつ≫みたいに、あっちへやったり、こっちへやったり、港を盥回しにするんですか? いっそ、イスカンダルに旅立たせて、≪放射能除去装置≫を取って来させては如何か?

  ある原子力専門の学者が、笑いながら、さらっと、「水を移しかえるなんていうのは、原子力工学の領分じゃないですよ。 その分野の専門家に任せるべきでしょう」と言っていました。 なーに、言ってんですか! 放射性物質に汚染された水だから、問題になってんでしょうが。 ただの水なら、何のためらいも無く、そのまま海へ捨てているよ。 原子力工学は、原発の安全管理技術も含んでいるんだから、放射性物質に汚染された水が大量に出てしまった場合の対処法も研究しておくのが、当然じゃないのかね? 無責任極まりない!

  迂闊にも、ここ数日で気付いた事なんですが、ニュース番組の解説に出て来る原子力関連の学者というのは、基本的に、原発推進派、もしくは、容認派なんですな。 反対派なら、うるさいくらいに、はっきりと原発批判をするはずですから、すぐ分かると思うのです。 つまり、客観的に解説をしている人でさえ、少なくとも、容認派なわけです。 大学というのは、金になる学問しかやらないわけですが、原発を作る方の研究は金になるのに対し、反対するための研究なんて一円にもなりませんから、そもそも、反対派の学者なんて、この世に存在し得ないのかも知れません。

  で、この、最低限容認派の学者達ですが、いよいよ対策が行き詰ってくると、自分にも批判の矛先が向いてくるのを恐れて、責任逃れを始めると思うのです。 テレビに出て来なくなる人も、いるかもしれませんな。 最悪の事態、たとえば、原発の半径20キロ圏内が、半永久的に居住不能になってしまうとか、再臨界で、≪チャイナ・シンドローム≫ならぬ、≪ブラジル・シンドローム≫になるとか、そういう事態に至った時に備えて、学者達の名前と顔を、よーく覚えておくべきでしょう。 おっと、顔を覚えても、石なんか投げてはいけませんよ。 怪我をさせたら犯罪になってしまいますから。 ここは一つ、放射能に汚染された野菜を投げつけてやるべきでしょう。

  そういえば、原発の地元自治体で、圏外避難している人達に対し、地震・津波の被災者に対するのと、ほとんど変わらない同情の声が集まっていますが、よくよく考えてみると、この人達の半数以上は、原発推進派か容認派だったわけです。 事故が起こる前までは、「原発は絶対に安全だ」と言って、反対派の事を、「地元経済の敵」だの、「ヒステリー」だの、「キチガイ」だのと、扱き下ろしていた人達なんですな。

  どーしたもんかねー。 少なくとも、同情の余地は無いねえ。 自業自得ですから。 いくらでも、苦労してください。 というか、「絶対に安全」と言っていたんだから、自宅に戻って貰ったらいいんじゃないの? 絶対安全なのに、なんで、避難したんだろう?

  問題は、誰が推進・容認派で、誰が反対派だったのか、外見では区別がつかない事です。 たぶん、推進・容認派の連中は、少しずつ、≪転向≫の根回しをしていると思うんですよ。 最初の内、

「さすがの原発も、想定外の津波じゃ、敵わないよなあ」
「東電の職員は、命がけで働いていると思うよ」

  と言っていたのが、事態が悪化するにつれ、

「いやあ、まさか、こんな事になるとは思わなかった」
「東電には、すっかり騙された」

  に変わっていくと思うのです。 こういうのを、≪保身≫と言います。 戦後も、こういう卑怯者がうじゃうじゃいたそうです。 まったく、人間は醜い。 人間に比べたら、今まさに仔鹿を食い殺しているライオンですら、まだ清らかに感じられます。


  しかし、物事には、必ず、終わりがあります。 この原発事故にも、きっと、終息する時が来ると思います。 気が遠くなるほど、膨大な数の、≪場当たり的対策≫を積み重ねて行けば、どうにかこうにか、安定的に核燃料を冷却できる状態に漕ぎ付けられる可能性はあります。 

  事態はもはや、日本だけでは、手に負えないかもしれませんが、アメリカに泣きついても、向こうも経験が無いから、手の貸しようがないでしょう。 東電が、フランスの原子力関連企業に技術支援を要請したらしいですが、フランスでは過去に、こんな大規模な事故が起こっていないので、対策ノウハウなど、持っていないのではないでしょうか。 しかし、事によったら、日本人では思いつかないような方法を提案してくれるかもしれないので、世界中の学者に声を掛けてみる価値はあります。

  ここまで汚染範囲が広がってしまうと、参考になるのは、スリーマイル島より、チェルノブイリの方です。  ≪石棺≫に倣って、1号炉から4号炉までをすっぽり覆う巨大なプールを作り、水を満たして、核燃料が冷えるのを待つのが、一番確実な対策ではないかと思います。 スマートに解決しようとすればするほど、土壷に嵌っていく恐れあり。 現実的に考えて、高濃度の放射線を避けながら、どれだけ壊れているか分からない原子炉本来の冷却設備を復旧させるのは、困難の極みでしょう。

  だけどねー、日本人に限って、チェルノブイリの対策を参考にしないんじゃないかと思うんですよ。 学者達が、未だに、繰り返し言っているでしょう。 「チェルノブイリの事故とは、本質的に違うんだ」と。 頭の中が、そこで停まってしまっているんですな。 「あんなにひどい事故ではないんだ」と、それを強調したいばかりに、思考停止を起こしているのです。 このままで行けば、チェルノブイリ以上の事故にならないとも限らないというのに。

2011/03/17

命の価値

  福島第一原発の放水。 警察と自衛隊が引っ張り出されましたが、本来なら、原発関係者が負うべき危険を押し付けられたわけで、同情に耐えません。 幹部の方は、「苦渋の決断」をすればそれで済みますが、実際に作業に当たる人間の方は、被曝を避けられないわけで、「死んでくれ」とまでは行かなくても、「健康被害を覚悟してくれ」と言われているのと大差無いです。

  自分達の責任で引き受けたのなら、警察庁長官や防衛相が、自分で行けばいいのに。 それが嫌なら、部下の命を預かる責任者として、はっきり断るべきでしょう。 総理や官房長官が、「どうしても、行かせろ」と言うのなら、「あなたが行って下さい」と、きっぱり、言い返してやればいいのです。 肩書きや立場に関係なく、命の価値に違いは無いのですから。

  警官や自衛隊員は、行けと言われれば行くでしょうが、それは、「誰かがやらなければ、大惨事になってしまう」という犠牲的精神や、義務感・使命感だけではありますまい。 特攻隊員の立場と全く同じで、断ったら世間から非難されるので、「臆病者扱いされるくらいなら、一か八か行って、英雄扱いされた方がいい」と、究極の選択を迫られるのだと思います。

  しかし、本来、彼らには、原発に対して、命を危険に曝さねばならないような責任はありません。 特攻隊のような、理不尽な死を強要されない社会を、戦後の日本は目指して来たんじゃないですかね? 66年間かけて、営々と積み上げてきた価値観を、ここで捨てるんですか?

  「それじゃあ、誰がやるんだ?」とは、誰でも思うと思いますが、東電の幹部や原発推進派の政治家など、原発に対して責任がある人達に、放水車の操作方法を教えて、やって貰うのが一番だと思います。 皮肉や嫌味で言っているのではなく、命が掛かっている以上、責任者が最初に犠牲になるのが、当然の筋だと思うのです。

  一般から志願者を募ったら、結構、手を挙げる人がいるかもしれませんな。 何の為に生きているのか分からない若者など、「自分の存在に何か意味を与えられるのなら」と考えて、出て来る可能性があります。 もっとも、彼らが犠牲になって死んだ後で、生き残った人々は、一ヶ月もしない内に、そんな事は忘れて、のうのうと日常生活を生きていくわけで、それを考えると、馬鹿馬鹿しくも割に合わない献身だと思いますが。

  そういえば、チェルノブイリ事故の時は、爆発した原子炉に砂をかけるために、ヘリコプターが何度も上空まで往復しましたが、パイロットは死を覚悟して任務に当たったそうです。 そして、実際に、ほとんどのパイロットは、大量被曝し、その後、死んだのだとか。 こう書くと、「犠牲は尊いな」と思いますが、今、どれだけの人が、彼らの犠牲に感謝して生きているかと考えると、ほとんど思い出す事さえ無いと思うのです。 それでは、ただの死に損になってしまうではありませんか。

楽観癖のある人達

  大震災の影響で、会社が休みになり、日がな一日、テレビを見て暮らしています。 これは、カタストロフですな。 高校の時、古典の先生が、「地獄は、あの世にあるんじゃないよ。 今生きている、この世にあるんだ」と言っていたのを思い出しました。

  福島第一原発・・・・、 正に、泣きっ面に蜂。 最悪の情況まで、首の皮一枚しか残っていないという感じで、ぞーっとします。

  相次ぐ爆発・火災で、続々と原子炉が破損していますが、洒落になりませんな、あれは。 爆発時の映像や、ボロボロ・グジャグジャになった建屋の写真を見て、「原発は安全です」と言われても、説得力ゼロです。 おそらく、世界中の原子力関係者が、顔面蒼白、背中びっしょりになっている事と思われます。 ビジュアル的には、スリーマイル島はもちろん、チェルノブイリよりも恐ろしい。

  あれだけの爆発があって、格納容器や配管が正常に機能しているというのは、俄かには信じ難いです。 格納容器の鋼鉄の厚さは、3センチでしたっけ? 装甲車レベルですが、鉄コンの建屋が消し飛ぶような爆発で、無傷という事は無いでしょう。 それとも、素人の感覚では想像もつかないような強度を持たせてあるのか。 そうであって貰わないと困りますが。


  今回の事故について、テレビで、いろんな人がいろんな事を言っています。 純然たる素人に過ぎないアナウンサーなどの報道関係者や、全く畑違いのコメンテーターの言う事は、単なる雑音ですから、一切真に受けないとして、原発関係者や学者などであっても、こういう事故が起こると、必ず見られる傾向として、意見が二つに分かれます。

「予断を許さない。 大惨事になる前に、避難など、できる限りの手を打つべきだ」
  という人と、

「そんなに大騒ぎするような事態ではない。 むしろ、パニックになる方が怖い」
  という人に。

  前者は、事態を重く見ており、後者は軽く見ています。 パターンとしては、事故直後には、雨後の筍のように前者が現れ、それにブレーキをかける形で、後者が登場して来ます。 福島第一原発の場合、目下、後者が続々と出て来ている局面ですな。

  後者は、「落ち着け。 冷静になれ」と言っているわけですが、一見、訳知り顔の大人の態度のように見えて、実は、この人達も事態がよく分かっておらず、単なる天邪鬼で、前者を批判しているだけである可能性が高いので、注意が必要だと思います。


「チェルノブイリとは、全く異なる事故だ」
  それは、あくまでも、現状の話であって、今後、臨界が起こり、さらに、火災が重なれば、ほとんど同じ状態になる危険性はあります。 どうも、こういう事を言う時の学者の口ぶりを見ていると、科学的見地から物を言っているというより、単にソ連の原発技術を扱き下ろしたいだけのようで、「こいつら、本当に科学者か?」と、額に縦線が入ってしまいます。


「スリーマイル島よりも、深刻な事故ではない」
  それも、現状の話に過ぎません。 圧力容器と格納容器の両方が壊れる炉が出て来れば、あっさりと、スリーマイル島のレベルを超えてしまいます。 怖いのは、「どちらが深刻か」といった、下らない競争意識ばかり働かせていて、今後の展開を想像しようという気がまるで感じられない事です。 楽観視ばかりしていたのでは、止められる臨界も止められますまい。


「現場の職員は、必死で働いている」
  そんなの当然です。 自分達が作った原発なんだから。 首相のセリフじゃありませんが、他に誰がやるんですか? 「命懸けで働いているんだから、感謝して欲しい」とでも言う気ですかね? そもそも、そんな危ない物を作ったのは、一体、誰なんですか?

  現場で人手が足りない場合、電力会社幹部でも、政治家でも、学者でも、土建屋でも、地元の名士でも、「原発? 私は賛成ですよ。 だって、電気が無くちゃ暮らせないでしょ」と、澄まし顔でコメントしていたインテリ婆あでも、元刑事のタクシー・ドライバーでも、原発推進に尽力、もしくは賛成して来た人間を、一人残らず駆り集めて、有無を言わせずドシドシ送り込むべきでしょう。 だって、「原発は安全」なんだろう? 致死量の放射線なんて出てるわけないよな。 安全なんだから。 原子力の原理も知らんド素人でも、バルブを閉めてくる事くらいできるだろう。 ほれ、行け。

  ちなみに私は、原発という物の恐ろしさを知った砌から、かれこれ30年以上、原発には反対して来たので、現場に行く義理など毛頭ありません。 もちろん、「原発があるから、電気のある生活を享受してこれたんじゃないか」などという輩には、ごまかされも、言い負かされもしません。 原発の分、発電量が減るというのなら、停電させてくれて、結構。 電気に頼らない生活に戻る方が、放射能で死ぬより、遥かにマシです。 何なら、勝負してみますか? 私は、電気を使わない生活をする。 あなたは、電気を使うと同時に放射能を浴びる生活をする。 期限を決める必要は無いでしょう。 あなたが先に死んで、勝負は終わります。


「水を入れて、冷やし続けていれば、大丈夫」
  んなこた、全員分かっとるわ、ボケ。 それがうまく行かないから、こんな事故になっているんだろうが。 アメリカから戻ったばかりという学者が、まさに、このセリフを口にして、「まだまだ、打つ手はあります」などと、お気楽な事を言っていましたが、現場の人間を、赤ん坊並みの知能しかない馬鹿だと思ってるんじゃないんですか? やってるよ、そんな事は。 その水が入って行かないんだよ。 そんなに自信たっぷりだったら、お前が行って、指揮しろよ。


「検出されている放射線量は、健康に全く影響を及ぼさない」
  だからよー、今はそうでも、今後のなりゆきによっては、健康を及ぼす量が出る可能性が高いんだよ。 どっぷり浴びてから逃げても遅いでしょ? 「慌てて避難する必要は無い」なんて無責任な事を、よく言えるな。 どの口が言うんだ。 この口か? それとも、こっちの口か? えー、おいこら、ああん?


「日本の原子力技術は、世界的に見ても高い」
  初耳ですな。 そうだったんですか? 普通か、平均以下だと思いますけど。 なぜ、平均以下だと思うかというと、過去に事故を起こしているからです。 ≪バケツ事件≫は、まだ記憶に新しいですが、あの事件を思い出すにつけ、日本人には、原子力のような、失敗が許されない、≪ビッグ・サイエンス≫は手に余ると痛感します。

  日本の技術は、科学的技術というよりは、「小さな工夫の積み重ね」であって、「失敗したら、条件を変えてやり直し、それを繰り返して、最終的にうまく行けば、それで良し」といったパターンで、ここまで来たのです。 「失敗したら、それまで」という危険性が高い分野では、目立った成果を上げていないばかりか、無残な失敗例を積み重ねています。

  原子力に限ってみても、原子力船≪むつ≫の失敗は、その代表例です。 面白いから、「日本の原子力技術は高い」という人達に、「なんで、日本には原子力船が無いんですか?」と訊いてみましょう。 鉛でも呑まされたような顔をするから。 ふふふ、作れないんだよ。 事故が怖くて。 もっとも、日本に原子力船が無い事すら知らず、不安げに視線をさまよわせながら、「いやあ、あるだろう」なんて、トンデモな答えを返して来るかもしれませんが。


  どんな結果になるにせよ、今後、原発建設の推進を主張する声は鈍るでしょうな。 感覚的に、「怖い・・・」という体験をしてしまったわけですから。 「津波対策を取ります」くらいでは、自治体も住民も説得できなくなるでしょう。

  ところで、首相や官房長官の記者会見は、不要なんじゃないでしょうか。 原発の事について発表するのなら、専門知識を持った人に限って貰いたいです。 素人では、技術的な事を質問されても、答えられんでしょうが。 答えられるのに、深刻な情況を報告したくないために答えないというのも怖いですが、元々知識が無くて答えられないのに、体裁を繕おうとして、適当な事を答えてしまっているのも、同じくらい怖いです。

2011/03/07

時事1103

  昨年の九月まで週一だったこのブログの更新を、岩手応援のドサクサ紛れに、月一に変更したため、土曜日が大変気楽になりました。 これは、解放の喜びだね。 街頭に繰り出し、輪になって踊りたいくらいに。 全国の、いや、全世界の、≪一人相撲型ブログ≫の作者諸君に告ぐ。 更新が苦しくなったら、ザクザク頻度を落とすのが利口だぞ。 楽になれよ。 カツ丼、喰うか?

  実は、月一でも面倒なのですが、あまり書かないと、死んだと思われるので、たまには、更新しましょう。 時事問題で、お茶を濁すくらいなら、大した手間ではないですから。


≪外相辞任≫
  在日韓国人の献金を、他の外国人の献金と同列に扱うのは、歴史的経緯から考えて、何となく釈然としませんし、素性に関わらず、献金自体が問題だろう、という気もしますが、それをさておけば、M氏の閣僚辞任は、歓迎すべき事だと思います。 この人、閣僚はおろか、国会議員は勿論、政治家そのものに向いていないのではありますまいか。

  例の中国漁船事件を大ごとにしてしまった最大の責任者ですし、外相になってからも、対中・対ロ関係を全く改善できません。 当たり前だよな、最初から喧嘩腰なんだから。 アメリカへ行って、向こうの言う通りにハイハイ頷くのは、誰にでもできる事。 外交音痴の典型だと思うのですが、なぜ、外相に任命したのか、実に不可解。

  だいぶ昔の話ですが、野党時代、党代表を務めていた時に起きた、≪捏造メール事件≫での、稚拙極まりない対応も、強く印象に残っています。 つい先日は、「ニュージーランド地震の被害者家族を、政府専用機で現地に送れないか」と提案したものの、法的根拠が無くて没。 無用の混乱を引き起こしたのは、記憶に新しいところです。 考える事が、悉く浅薄で、子供っぽいと感じるのは、私だけかいな?

  これだけ、いろいろあれば、「政治家として、不適当」と見做されても仕方ないのでは? この人よりも、もっと向いていない政治家もたくさんいると思いますが、そういう人達は普通、閣僚クラスまで上がって来ないから、問題にならないのです。

  政治家は、≪馬鹿タイプ≫と、≪悪党タイプ≫に大別されますが、この人は、そのどちらでもなく、強いて名付けるなら、≪危険タイプ≫とでも申しましょうか。 やる事なす事、危なっかしさばかり感じるのです。 この人を、次の首相にと考えていた人も多いようですが、いくら、日本の首相が誰でも務まるとはいえ、悪い事は言わない、やめといた方がいいと思いますぜ。


≪知恵袋カンニング≫
  アホなのか、凄いのか分からん男ですな。 アホというのは、知恵袋へ質問して、バレないと思っているその間抜けぶりが、アホだと思うわけです。 問題そのままだから、即バレするのであって、数学なら数字を変えるとか、英語なら単語を入れ替えるとか、検索ソフトに引っ掛からない方法は、ちょっと考えれば思いつくと思うんですがね。

  凄いと思うのは、打ち込みの速さです。 数式の打ち込みなんて、キーボードでやっても気が遠くなりますが、あの制約の多い携帯で、よく打ちましたねえ。 その点に関しては、素直に敬服します。 私には、絶対できません。 石の上で三年練習してもできないでしょう。 というか、練習しようにも、携帯そのものを持っていませんが。

  カチンと来たのは、逮捕されるとすぐに、「反省しています」と、コメントした事です。 嘘つけ。 本当に反省してたら、自首するだろうが。 発覚しなかったら、そのまま入学するつもりだったのは、明白。 「バレたから反省する」というのは、自分が犯した罪に関しては悪いと思っておらず、バレた事に関して、「失敗した」と思っているだけではないでしょうか。


≪ニュージーランド地震≫
  地震そのものは、自然災害なので仕方ないとして、マスコミの報道は、明らかに、騒ぎ過ぎだったと思います。 被害の大きさから言ったら、ハイチ地震の方が比較にならないほど甚だしかったのに、日本人留学生が被害に遭ったというだけの理由で、この報道規模の差はないでしょう。 確かに、日本人が海外で事故や事件に巻き込まれた場合、日本のマスコミには、国内に情報を伝える義務がありますが、これといった新展開が無かったにも拘らず、連日、怒涛のような報道を繰り返したのには、呆れてしまいました。

  行方不明になっている被害者を、まるで、悲劇のヒーローのように持ち上げる風潮がありますが、あれは、おかしいのではないでしょうか。 語学留学というのは、留学の中では最低レベルの部類で、それ自体を褒め称えるのには、明らかに無理があります。 看護士だった人達ですが、地震の被害者だから、「これから、海外で活躍しようとしていた」と、マスコミはその志を賞賛していましたが、もし、これが犯罪の加害者だったら、「日本国内ですら看護士が不足しているのに、どういうつもりで海外へ行こうとしていたのか」などと、扱き下ろしたに違いありません。

  地震でビルの倒壊に巻き込まれたのは、全くの偶然であって、被害者達の為人とは、何の関係もありますまい。 マスコミのやっている事は、悲劇のクライマックスを与えられたので、その物語の足りない部分を書き加えて、起承転結を揃えたがっているだけのように見えます。 なんでもかんでも、≪一杯のかけそば≫に仕立ててしまおうとする、その発想の低劣さには、吐き気すら覚えます。


≪リビア≫
  これも、起こっている事より、マスコミの取り上げ方の方が問題。 チュニジア、エジプトと、独裁政権が倒されたので、「リビアでも、同じパターンになるに違いない」と決め付けて、早々と、「カダフィ政権の終焉は時間の問題」だの、「カダフィ包囲網は狭まっている」だの、「最後に勝つのは民主主義」だのと、軽薄な報道をしていますが、勇み足もいいところです。 そんな記事を書いていた記者どもは、ここ数日、カダフィ政権側が反撃に転じ、拠点の奪回を始めたのを見て、青くなっている事でしょう。

  いやいや、大丈夫だって。 そんなに心配すんなよ。 カダフィ大佐がリビア全土を再掌握しても、お前らが死ぬわけじゃない。 せいぜい、社内や局内で大恥を掻いて、二度と人前で大口叩けなくなるだけだよ。 だーからよー、材料が揃ってないのに、なんで、未来予測なんてしようと思うのかなあ? 自分を預言者とでも思っているのか? 別に、大勢がはっきりしてから記事を書いても、誰も批判しやせんだろうに。

  エジプトとリビアで、情況が最も違うのは、エジプトでは、軍が一体の組織として動いていたのに対し、リビアでは、分裂してしまった事です。 反政府側は、迂闊にも気付いていなかったようですが、軍の一部が離反して、自分達の味方についた時、彼らはもはや、≪平和的デモ隊≫ではなく、≪反政府軍≫になってしまったのです。 反政府軍が出現した以上、政府側には自分を守る権利が生ずるわけで、軍の兵器を使って戦っても、差支えが無くなります。 それが、名分というものです。

  この点について、国連も、欧米の自称・国際世論も、よく分かっていないようですが、自分の国で同じ事が起きた時、政府がどう反応するかを想像してみれば、カダフィ政権がやっている事が、一概に非人道行為とは断じ難いという事が分かると思います。 さあ、想像してみましょう。 日本の一地方で、反政府デモが起こり、自衛隊の一部が、その勢力について、東京を目指して進撃してくる様相を見せている。 日本政府はどうするか? 指をくわえて見ているのか? ありえんわな。 政府が掌握している自衛隊や警察を使って、鎮圧しようとするわな。 そんなの当然だわな。 なぜ、リビアで、カダフィ政権が同じ事をやったら、いかんのだ?

  外国による飛行禁止区域の設定など、とんでもない話で、もう完全に、リビアに対する侵略になってしまいます。 サダム・フセイン政権のイラクにも、飛行禁止区域が設定されていましたが、あちらは、クウェート侵略に対する制裁措置として、国連で認められたのであって、今のリビアとは事情が違います。 そもそも、カダフィ政権は、外国を攻めているわけではないのですから、国際紛争の調停が本来の目的である国連が、あれこれ言うのは、筋違いでしょう。 安易に原則を曲げたら、それこそ、国際ルールも何も無くなってしまいます。

  反政府軍は、「カダフィの宮殿を爆撃して欲しい」などと外国に要請していますが、はっきり言って、そういうのは、売国行為なんじゃないでしょうか。 植民地化されていた屈辱の歴史を忘れたわけでもありますまいに。 外国軍、とりわけ、欧米の軍隊が乗り込んで来たら、それこそ、カダフィ大佐の復権は決まったようなものです。 反政府側の中に、欧米軍を引き入れた指導部への反発が生まれ、勢力が分裂して、内ゲバを始めるに違いないからです。 アラブ諸国の軍なら、受け入れやすいかもしれませんが、あいにく、アラブ諸国は、どこも自国のデモでてんてこまいで、リビアに派兵する余裕などありません。

  そういえば、キューバのフィデル・カストロ氏が、リビアの騒乱が始まって間もない時点で、「リビアには石油があるから、アメリカが侵略してくるだろう」と言っていました。 その時は、「ちょっと極端な見方かな」と思ったんですが、その後、オバマ政権が飛行禁止区域の設定を言い出したのを見て、背筋がぞーっとしました。 イラクと同じパターンだとすれば、その後に続くのは、侵略以外に無いという事になります。

  旧宗主国、つまり、かつて、リビアを植民地にしていた国ですが、そのイタリア政府が、リビア情勢について、やけに詳しく探っているのも不気味な動きです。 なんだなんだ、帝国主義時代に逆戻りさせるつもりなのか? イタリアは、外国の事よりも、自国の政治混乱を処置すべきでしょう。 頭の上の蝿を追いなよ。

  リビアの反政府側の問題点は、チュニジアやエジプトと、自国の事情が違うという点に配慮していなかった事です。 ベンガジから政府勢力を追い出した時点で、喜び過ぎたんですな。 王政時代の国旗を振って、浮かれ騒いでいましたが、そんな古臭い価値観がこびりついた旗を持ち出してくる事自体、反政府側に中心核が無い証明のようなものです。 特にまずかったのは、離反した軍の一部を、考え無しに受け入れてしまった事でしょう。 「味方になってくれなくてもいいから、中立していてくれ」と、距離を置いておけば、反政府軍にならなくて済んだのに。

  もう、こうなってしまった以上、戦い続けるしかありませんが、カダフィ政権が軍の主力を掌握しているとなると、武器弾薬の供給が無い反政府軍側は、今後、苦しくなる一方だと思います。 当然の事ですが、弾丸や砲弾は、撃ってしまえば無くなります。 外国から買う事ができなければ、自力で作るしかないですが、製造設備を持っているのかどうか。 カダフィ大佐の絶叫演説とは裏腹に、政府軍の行動が冷静で、きちんと作戦を立てて、着々と拠点の奪回を進めている点は、烏合の衆に限りなく近い反政府側にとって、最大の恐怖でしょう。

  マルタへ逃げた戦闘機のパイロット達も、事態の推移を固唾を呑んで見守っている事でしょう。 反政府側が勝てば、英雄として凱旋できますが、政府側が勝てば、二度と国に帰れなくなります。 戦闘機という国の財産を盗んだ犯罪者として、マルタからリビアへ引き渡されれば、帰るには帰れますが、逃げ出す前とは、全く違う人生になるのは確実。

  今後、政府側の反撃が続かなくなり、また反政府側が主導権を取り返すかもしれないので、リビアがどうなるかは、まだ分かりませんが、もし、世界の安定を優先して考えるのなら、カダフィ政権に踏ん張って貰った方が、一連の騒乱は早く収まると思います。 ドミノの連鎖が止まるわけですから。 「独裁政権の崩壊は、歴史の流れ」などと、青臭いばかりで脳足りんな事を抜かしている連中も、事がサウジやイランに波及したら、対岸の火事では済まなくなる事くらい想像できるでしょう。

  リビアも駄目、サウジやイランも駄目では、世界から石油が無くなってしまいます。 石油が無いのでは、文明社会は立ち行きません。 「一時的に混乱しても、民主化が進んだ方がいい」? アホか。 その一時的の間に、日本の会社は、全部潰れてしまうわ。 いいや、世界中の会社が潰れてしまうわ。 石油の存在がどれだけ大きいか、知らんわけでもあるまい。 燃料だけではないのだぞ。 プラスチックも繊維も、みんな石油から作っておるのだぞ。 それらが無くなる事を想像してみい。

  大体、民主化すれば、何もかもよくなるなんて、今の日本の政治を見ていて、よく言えるな? 観察力ゼロか? 民主化すれば、政治家は人気取りばかり考えて、国が借金だらけになるに決まっているのであって、その例が、デカデカと目の前にあるではないか。 中東諸国にも、そうなれというのか? 無責任極まりない。