バブルの逆襲
ただ、金融緩和しているだけで、何か特別な理論に基づいた経済政策を実践しているわけではないのに、「~ミクス」などという、御大層な名称を付けられると、赤面してしまうのは、私だけか・・・。 そういや、「レーガノミクス」の時も、あの当人と、言葉の持つ知的イメージが合わずに、気持ちの悪い思いをしていた記憶があります。
やっている事は、どう見ても、≪為替操作≫だと思うのですが、外国からの抗議が思ったより少ないのは、意外な気がします。 「円は、今まで、実力より高過ぎた」とか言ってますが、変動相場制なのですから、高いか安いか決めるのは市場であって、個人の見立てではありますまい。
ジョージ・ソロス氏が、日銀の金融緩和について、円安が止まらなくなる可能性を指摘し、「日本が行なっている事は極めて危険だ。 大変驚く内容で、非常に大胆なものだ」と言い、「日本は緩やかに死に向かっていたが、今や目が覚めた」と付け加えたとか。 ズバリとは言ってませんが、「えらい事になるぜ」と思っているのでしょう。
まあ、その辺が、事態を客観視している人達の本音の感想なんじゃないでしょうか。 「日本の金融緩和政策を、高く評価している」と、正反対の事を言っているのは、大抵、外国の政府関係者ですが、この人達は、日本経済がどうなろうが構わないと思っているか、むしろ、破綻してくれた方が、自国に利益があると考えているのかもしれません。
インフレ目標を掲げているわけですが、2パーセントというのは、随分と控え目な数字で、たとえ実現しても、「誤差の内」のような気がせんでもなし。 とかく、経済関係の数字は、操作され易く、GDPや成長率なんて、統計の結果というより、政治家や官僚の都合で決められているのではないかと思えるくらいですから。
いや、それ以前の問題として、果たして、本当に、インフレにできるのかどうか、それも怪しい。 インフレになる為には、お金の流通量が増える以外に、もう一つ、非常に重要な条件が必要です。 それは、市場に出回る商品の量が減る事。 この二つはセットになっていて、片方だけでは、インフレになりません。
お金を増やす方は、日銀の胸三寸でできますが、商品を減らす方は、普通に考えたら、不可能です。 日本経済は、貿易で成立しているのですから、物の値段が上がっても、より安い商品が、外国から入って来れば、また値段が下がってしまいます。 すでに、日本製は高過ぎるので、対象外として、韓国製や台湾製が高くれば、中国製。 中国製が高くなれば、タイやインドネシア製。 それも高くなれば、インド製と、より安い製品は、後ろに列を成しています。
「インフレ目標を達成するまで、金融緩和を続ける」つもりのようですが、もしやまさか、経済の作用範囲を、国内だけに限定して考えているのではありますまいね? 「≪消費税還元セール≫という言葉を使わないように」などという、戦時中みたいな話が出ていますが、言葉狩りは容易にできても、国の屋台骨に関わる自由貿易は止められますまい。
預金で資産を持っている者にとっては、ハイパー・インフレになってしまう事が、一番迷惑なのですが、それは杞憂で、もしかしたら、いくら金融緩和されても、インフレには、ならないのかもしれませんな。 安い品物が、外国から輸入され続ける限り。
それはともかく、今現在、円が安くなり、株価が上がったのは、確かに事実。 で、問われているのが、次の一言です。
「これは、バブルか?」
わざわざ、答えるのも馬鹿馬鹿しいくらい、明々白々に、バブルですな。 単に貨幣の流通量を増やしただけで、実体経済が成長しているわけでもないのに、株価が上がり始めたら、それは単なる、投資家の期待の表出に過ぎない事は、よほどの経済音痴でも分かる事。
円安の結果、輸出産業は、何もしなくても利益が増えて、青息吐息だった経営状態が、何とか一息つけるところまで好転したわけですが、そういう企業の株が買われて、株式市場全体の株価を押し上げているのでしょう。 しかし、それらは、「額面のマジック」の結果であって、実体経済の成長とは、全く関係ありません。
以下、私家版定義。
≪バブル景気とは?≫
金融商品、不動産、投機対象製品、特定の権利などに、本来の価値以上の値段がついてしまう現象が社会全体で起こる事。 価値の実体が存在せず、ただ人々の、「それを手にしていれば、必ず値上がりするはずだから、将来もっと大きな利益を得られるはずだ」という期待が増幅する事により、値段だけが上がって行く。
≪バブル崩壊とは?≫
ところが、「もしかしたら、もう、これ以上、値上がりしないのではあるまいか?」という不安が一旦芽生え始めると、全員が早く売ろうとするので、上がっていた値段が一気に実体価値まで落ちてしまう。 その際、早く手放した者ほど得をし、遅くまで持っていた者ほど損をする。 社会全体の富の総量は変わらないのだが、得した者も損した者も、それ以上損をする事を恐れて、お金を使わなくなるので、社会全体の経済活動が不活発になる。
何年か前に、自分で書いた文ですが、こうやって、読み返してみると、意外に分かり易いですな。 侮れんな、昔の私・・・。 と言う事はつまり、昔の私より、今の私の方が、思考力が弱っているという事か・・・、いや、歳を取ったのだから、別段、不思議はないのじゃがのう・・・。
そんな事はどうでもいいとして・・・、大変面白いのは、現在起こっている経済の状況について、ごく一部を除き、ほとんどの識者が、「これは、バブルだ」という、正確な判断を下している事です。 うーむ、心強い。 日本の識者も、強ち、政府の宣伝マシーンばかりというわけではなかったのか。 というか、それらの識者は、ほぼ全員、40歳を超えていて、前回のバブル時代を経験しているため、バブルの空気感や、バブル崩壊の恐ろしさを、はっきり覚えており、警鐘を鳴らさないではいられないんでしょうな。
ちなみに、「現状は、バブルではない」と言っている、ごく一部の人というのは、有り体に指摘すれば、日銀総裁一人だけです。 しかし、その総裁であっても、物の言い方自体が、バブルを良い事だとは思っていない証明でして、日銀総裁が、「バブルの何が悪い」と言い始めたら、もうおしまいですな。
実際のところ、もし、今後、本格的に大きなバブルに膨らんでしまって、その崩壊によって、前回と同じくらいの甚大な被害を社会に及ぼしてしまったら、どう考えても、事態の元凶と見做さざるを得ないこの総裁が、どうやって責任を取るのか、大変興味深いです。 なまじ、名前が覚え易いだけに、SP無しでは、表を歩けなくなるのでは? その時には、当然、退任しているでしょうから、SPを用意してもらえるかどうか、疑わしいですが。
バブル時代に、まだ大人になっていなかった年代の人達には、ピンと来ないかもしれませんが、「バブルに浮かれる」という現象は、それほどまでに、警戒を要する事なのです。 終末的なのです。 お先真っ暗なのです。 単に、タクシーに只で乗れる時代ではないのです。
他に、あるエコノミストの言で、「バブルの初期と、好景気は、区別し難いものであり、景気がよくなったからと言って、すぐに、『バブル、バブル』と、警戒心を剥き出しにする必要は無い」という意見がありました。 こういう人は、洒落にならず、怖い・・・。 仮にも、経済の専門家なのですから、好景気になるには、経済成長が不可欠で、それが見当たらない現状は、単なる好景気ではありえず、バブル以外に考えられない、という事くらい、百も承知しているはず。
にも拘らず、現状を歓迎するような事を言っているという事は、つまり、この人にとって、バブルは、危機ではなく、好機なのです。 バブル局面を利用して、一儲けも二儲けもできる自信があるのです。 いや、バブルの特徴は、一や二といった、小さな数字では言い表せませんな。 百儲けも千儲けも、夢ではないと思っているのです。
バブルの特性として、大多数の者が大損する一方で、大儲けする人もいるわけでして、社会全体の富の総量は変わらないけれど、富の再分配が行われるという面があります。 問題は、富が、全体に平均化するのではなく、経済的才覚のある人間の元に、より多くの富が集中し、そうでない人間が素寒貧になる点が、困るのです。 しかも、その現象が、数年という短期間に、急激に、且つ、極端に起こるから、恐ろしい。
実際、今、株式市場を沸かせているのは、この種の才覚がある人達だと思います。 一方、その様子を横目で見ていて、「じゃ、俺もやってみようかな・・・」などと、株と蕪の区別もつかんボンクラのくせに、猫にお招ばれした鼠のようにおどおどしながら、証券会社の門を叩きに来る連中は、バブルの崩壊局面で、逃げ出すのが遅れ、有り金そっくり持って行かれる口なのです。
前のバブルで儲けた人間が、「そろそろ、ほとぼりが冷めたから、夢をもう一度」と企んでいる事は、充分に考えられる事です。 しかし、この人達は、ほんの一握りでしょう。 経済的才覚がある人間が、そんなに大勢いるわけはないですから。 問題は、「バブルで儲けた経験は無いけれど、自分にもできるはず」と思っている連中でして、この未熟者どもが、バブルを膨らませてしまう危険性が、極めて大きいです。 ギャンブルやネズミ講と同じでして、参加者が多いほど、バブルは大きくなります。
はっきり言わせて貰いますと、「今までに、投資で、資産を10倍以上に増やした事がある」というレベルの人でもない限り、「バブルで儲けよう」などという、浅はかな考えは抱かないでいただきたい。 やめて下さい。 あなたには無理です。 あなたが今、思い描いているような、倍々ゲーム式のボロ儲け青写真は、あなたと同レベルの才覚しか持っていてない人達が、全員、思い描いているのであって、その程度の能力では、上位の人達を出し抜くなんて事は、金輪際できません。
バブル・ゲームとは、プレーヤーの1パーセントが勝ち、99パーセントが負ける、大変シビアな世界なのです。 全体の富が100だとすれば、上位1パーセントの者が、100を取ってしまいます。 百人で一脚の椅子を奪い合うゲームだとしたら、そんな無謀なギャンブルに、自分の資産を投入したりしないでしょう? やめておきなさい、悪い事は言わないから。 1パーセントの者が、バブル再来を望んでも、99パーセントが、ゲームに参加しなければ、バブルが膨らまないので、悲劇も起こりません。
とはいうものの、政府が音頭を取っている有様では、やはり、ある程度の膨張は避けられんかもしれませんなあ。 全く、愚かというか、奇妙というか、普通、バブルが発生したら、政府は、大きく膨らまない内に、それを潰さなければいけないのですが、日本では、「バブルでもいいから、景気が良くなって欲しい」と願う企業経営者が多いせいか、政治家にも、危機感が足りません。
ちなみに、前回のバブルの時には、不動産価格が暴騰する≪地上げ≫が、あまりにもひどくなり、一般人が家を買う事ができなくなってしまったため、ようやく、政府が対策に乗り出しましたが、それまでは、「高天原以来の好景気!」などと言って、経済閣僚まで浮かれまくっていました。 ちなみに、今と同じ、自民党政権でした。 何だか、経済のケの字も分かってない人が、たくさん、いそうだなあ・・・。
で、バブルで儲けようという考えは、是非、捨てて欲しいのですが、バブルの時にしか起こらない、別の現象もあり、人によっては、それで人生が好転するかもしれないので、少し、入れ知恵しておきます。
それは、就職がし易くなる事です。 企業というのは、ちょっと景気が良くなると、利益を増やそうと思って、必ず、事業拡大に乗り出します。 経営者の方針に関係なく、これは、どの会社でも同じです。 営利団体というのは、そもそも、そういう生き物なんですな。 事業拡大するとなれば、社員の頭数が要るので、新卒採用を増やしたり、中途採用を募集したりします。 ここが狙い目。
フリーターや、派遣社員、期間社員で喰い繋いでいる方々は、社会の潮目の変化を見極めて、ここを先途と、求人広告と向き合い、ハロー・ワークに日参しなければなりません。 前のバブルは、20年前でしたから、20年に一回しか巡って来ないわけで、年齢の事も考え合わせれば、一生に一度のチャンスだと思っても良いでしょう。
景気が良くなると、仕事が増えるので、「フリーターでも、充分」とか、「派遣会社にも、義理があるから」などと、おっとり構えていると、一生に一度のチャンスを、見す見す逃す事になります。 だからよー、当面の仕事があるかないかが問題なんじゃないんだよ。 正社員になれるかどうかが、肝心なんですよ。 そして、その機会は、バブルの時にしか、やって来ないのよ。 残念ながら。
かくいう私も、前のバブルの時に、どさくさに紛れて、中途採用で製造業の会社に潜り込む事に成功した、バブル社員です。 以来、20数年、会社に齧りついて、何とか暮らして来ました。 入社のきっかけなんて、どうでもいいんですよ。 同期がいなくたって、出世資格が無くたって、正社員でありさえすれば、給料やボーナスは貰えるんだから、勝ったも同然です。
まあ、バブルのいいところって言ったら、それくらいですかねえ。 他に思いつきません。
やっている事は、どう見ても、≪為替操作≫だと思うのですが、外国からの抗議が思ったより少ないのは、意外な気がします。 「円は、今まで、実力より高過ぎた」とか言ってますが、変動相場制なのですから、高いか安いか決めるのは市場であって、個人の見立てではありますまい。
ジョージ・ソロス氏が、日銀の金融緩和について、円安が止まらなくなる可能性を指摘し、「日本が行なっている事は極めて危険だ。 大変驚く内容で、非常に大胆なものだ」と言い、「日本は緩やかに死に向かっていたが、今や目が覚めた」と付け加えたとか。 ズバリとは言ってませんが、「えらい事になるぜ」と思っているのでしょう。
まあ、その辺が、事態を客観視している人達の本音の感想なんじゃないでしょうか。 「日本の金融緩和政策を、高く評価している」と、正反対の事を言っているのは、大抵、外国の政府関係者ですが、この人達は、日本経済がどうなろうが構わないと思っているか、むしろ、破綻してくれた方が、自国に利益があると考えているのかもしれません。
インフレ目標を掲げているわけですが、2パーセントというのは、随分と控え目な数字で、たとえ実現しても、「誤差の内」のような気がせんでもなし。 とかく、経済関係の数字は、操作され易く、GDPや成長率なんて、統計の結果というより、政治家や官僚の都合で決められているのではないかと思えるくらいですから。
いや、それ以前の問題として、果たして、本当に、インフレにできるのかどうか、それも怪しい。 インフレになる為には、お金の流通量が増える以外に、もう一つ、非常に重要な条件が必要です。 それは、市場に出回る商品の量が減る事。 この二つはセットになっていて、片方だけでは、インフレになりません。
お金を増やす方は、日銀の胸三寸でできますが、商品を減らす方は、普通に考えたら、不可能です。 日本経済は、貿易で成立しているのですから、物の値段が上がっても、より安い商品が、外国から入って来れば、また値段が下がってしまいます。 すでに、日本製は高過ぎるので、対象外として、韓国製や台湾製が高くれば、中国製。 中国製が高くなれば、タイやインドネシア製。 それも高くなれば、インド製と、より安い製品は、後ろに列を成しています。
「インフレ目標を達成するまで、金融緩和を続ける」つもりのようですが、もしやまさか、経済の作用範囲を、国内だけに限定して考えているのではありますまいね? 「≪消費税還元セール≫という言葉を使わないように」などという、戦時中みたいな話が出ていますが、言葉狩りは容易にできても、国の屋台骨に関わる自由貿易は止められますまい。
預金で資産を持っている者にとっては、ハイパー・インフレになってしまう事が、一番迷惑なのですが、それは杞憂で、もしかしたら、いくら金融緩和されても、インフレには、ならないのかもしれませんな。 安い品物が、外国から輸入され続ける限り。
それはともかく、今現在、円が安くなり、株価が上がったのは、確かに事実。 で、問われているのが、次の一言です。
「これは、バブルか?」
わざわざ、答えるのも馬鹿馬鹿しいくらい、明々白々に、バブルですな。 単に貨幣の流通量を増やしただけで、実体経済が成長しているわけでもないのに、株価が上がり始めたら、それは単なる、投資家の期待の表出に過ぎない事は、よほどの経済音痴でも分かる事。
円安の結果、輸出産業は、何もしなくても利益が増えて、青息吐息だった経営状態が、何とか一息つけるところまで好転したわけですが、そういう企業の株が買われて、株式市場全体の株価を押し上げているのでしょう。 しかし、それらは、「額面のマジック」の結果であって、実体経済の成長とは、全く関係ありません。
以下、私家版定義。
≪バブル景気とは?≫
金融商品、不動産、投機対象製品、特定の権利などに、本来の価値以上の値段がついてしまう現象が社会全体で起こる事。 価値の実体が存在せず、ただ人々の、「それを手にしていれば、必ず値上がりするはずだから、将来もっと大きな利益を得られるはずだ」という期待が増幅する事により、値段だけが上がって行く。
≪バブル崩壊とは?≫
ところが、「もしかしたら、もう、これ以上、値上がりしないのではあるまいか?」という不安が一旦芽生え始めると、全員が早く売ろうとするので、上がっていた値段が一気に実体価値まで落ちてしまう。 その際、早く手放した者ほど得をし、遅くまで持っていた者ほど損をする。 社会全体の富の総量は変わらないのだが、得した者も損した者も、それ以上損をする事を恐れて、お金を使わなくなるので、社会全体の経済活動が不活発になる。
何年か前に、自分で書いた文ですが、こうやって、読み返してみると、意外に分かり易いですな。 侮れんな、昔の私・・・。 と言う事はつまり、昔の私より、今の私の方が、思考力が弱っているという事か・・・、いや、歳を取ったのだから、別段、不思議はないのじゃがのう・・・。
そんな事はどうでもいいとして・・・、大変面白いのは、現在起こっている経済の状況について、ごく一部を除き、ほとんどの識者が、「これは、バブルだ」という、正確な判断を下している事です。 うーむ、心強い。 日本の識者も、強ち、政府の宣伝マシーンばかりというわけではなかったのか。 というか、それらの識者は、ほぼ全員、40歳を超えていて、前回のバブル時代を経験しているため、バブルの空気感や、バブル崩壊の恐ろしさを、はっきり覚えており、警鐘を鳴らさないではいられないんでしょうな。
ちなみに、「現状は、バブルではない」と言っている、ごく一部の人というのは、有り体に指摘すれば、日銀総裁一人だけです。 しかし、その総裁であっても、物の言い方自体が、バブルを良い事だとは思っていない証明でして、日銀総裁が、「バブルの何が悪い」と言い始めたら、もうおしまいですな。
実際のところ、もし、今後、本格的に大きなバブルに膨らんでしまって、その崩壊によって、前回と同じくらいの甚大な被害を社会に及ぼしてしまったら、どう考えても、事態の元凶と見做さざるを得ないこの総裁が、どうやって責任を取るのか、大変興味深いです。 なまじ、名前が覚え易いだけに、SP無しでは、表を歩けなくなるのでは? その時には、当然、退任しているでしょうから、SPを用意してもらえるかどうか、疑わしいですが。
バブル時代に、まだ大人になっていなかった年代の人達には、ピンと来ないかもしれませんが、「バブルに浮かれる」という現象は、それほどまでに、警戒を要する事なのです。 終末的なのです。 お先真っ暗なのです。 単に、タクシーに只で乗れる時代ではないのです。
他に、あるエコノミストの言で、「バブルの初期と、好景気は、区別し難いものであり、景気がよくなったからと言って、すぐに、『バブル、バブル』と、警戒心を剥き出しにする必要は無い」という意見がありました。 こういう人は、洒落にならず、怖い・・・。 仮にも、経済の専門家なのですから、好景気になるには、経済成長が不可欠で、それが見当たらない現状は、単なる好景気ではありえず、バブル以外に考えられない、という事くらい、百も承知しているはず。
にも拘らず、現状を歓迎するような事を言っているという事は、つまり、この人にとって、バブルは、危機ではなく、好機なのです。 バブル局面を利用して、一儲けも二儲けもできる自信があるのです。 いや、バブルの特徴は、一や二といった、小さな数字では言い表せませんな。 百儲けも千儲けも、夢ではないと思っているのです。
バブルの特性として、大多数の者が大損する一方で、大儲けする人もいるわけでして、社会全体の富の総量は変わらないけれど、富の再分配が行われるという面があります。 問題は、富が、全体に平均化するのではなく、経済的才覚のある人間の元に、より多くの富が集中し、そうでない人間が素寒貧になる点が、困るのです。 しかも、その現象が、数年という短期間に、急激に、且つ、極端に起こるから、恐ろしい。
実際、今、株式市場を沸かせているのは、この種の才覚がある人達だと思います。 一方、その様子を横目で見ていて、「じゃ、俺もやってみようかな・・・」などと、株と蕪の区別もつかんボンクラのくせに、猫にお招ばれした鼠のようにおどおどしながら、証券会社の門を叩きに来る連中は、バブルの崩壊局面で、逃げ出すのが遅れ、有り金そっくり持って行かれる口なのです。
前のバブルで儲けた人間が、「そろそろ、ほとぼりが冷めたから、夢をもう一度」と企んでいる事は、充分に考えられる事です。 しかし、この人達は、ほんの一握りでしょう。 経済的才覚がある人間が、そんなに大勢いるわけはないですから。 問題は、「バブルで儲けた経験は無いけれど、自分にもできるはず」と思っている連中でして、この未熟者どもが、バブルを膨らませてしまう危険性が、極めて大きいです。 ギャンブルやネズミ講と同じでして、参加者が多いほど、バブルは大きくなります。
はっきり言わせて貰いますと、「今までに、投資で、資産を10倍以上に増やした事がある」というレベルの人でもない限り、「バブルで儲けよう」などという、浅はかな考えは抱かないでいただきたい。 やめて下さい。 あなたには無理です。 あなたが今、思い描いているような、倍々ゲーム式のボロ儲け青写真は、あなたと同レベルの才覚しか持っていてない人達が、全員、思い描いているのであって、その程度の能力では、上位の人達を出し抜くなんて事は、金輪際できません。
バブル・ゲームとは、プレーヤーの1パーセントが勝ち、99パーセントが負ける、大変シビアな世界なのです。 全体の富が100だとすれば、上位1パーセントの者が、100を取ってしまいます。 百人で一脚の椅子を奪い合うゲームだとしたら、そんな無謀なギャンブルに、自分の資産を投入したりしないでしょう? やめておきなさい、悪い事は言わないから。 1パーセントの者が、バブル再来を望んでも、99パーセントが、ゲームに参加しなければ、バブルが膨らまないので、悲劇も起こりません。
とはいうものの、政府が音頭を取っている有様では、やはり、ある程度の膨張は避けられんかもしれませんなあ。 全く、愚かというか、奇妙というか、普通、バブルが発生したら、政府は、大きく膨らまない内に、それを潰さなければいけないのですが、日本では、「バブルでもいいから、景気が良くなって欲しい」と願う企業経営者が多いせいか、政治家にも、危機感が足りません。
ちなみに、前回のバブルの時には、不動産価格が暴騰する≪地上げ≫が、あまりにもひどくなり、一般人が家を買う事ができなくなってしまったため、ようやく、政府が対策に乗り出しましたが、それまでは、「高天原以来の好景気!」などと言って、経済閣僚まで浮かれまくっていました。 ちなみに、今と同じ、自民党政権でした。 何だか、経済のケの字も分かってない人が、たくさん、いそうだなあ・・・。
で、バブルで儲けようという考えは、是非、捨てて欲しいのですが、バブルの時にしか起こらない、別の現象もあり、人によっては、それで人生が好転するかもしれないので、少し、入れ知恵しておきます。
それは、就職がし易くなる事です。 企業というのは、ちょっと景気が良くなると、利益を増やそうと思って、必ず、事業拡大に乗り出します。 経営者の方針に関係なく、これは、どの会社でも同じです。 営利団体というのは、そもそも、そういう生き物なんですな。 事業拡大するとなれば、社員の頭数が要るので、新卒採用を増やしたり、中途採用を募集したりします。 ここが狙い目。
フリーターや、派遣社員、期間社員で喰い繋いでいる方々は、社会の潮目の変化を見極めて、ここを先途と、求人広告と向き合い、ハロー・ワークに日参しなければなりません。 前のバブルは、20年前でしたから、20年に一回しか巡って来ないわけで、年齢の事も考え合わせれば、一生に一度のチャンスだと思っても良いでしょう。
景気が良くなると、仕事が増えるので、「フリーターでも、充分」とか、「派遣会社にも、義理があるから」などと、おっとり構えていると、一生に一度のチャンスを、見す見す逃す事になります。 だからよー、当面の仕事があるかないかが問題なんじゃないんだよ。 正社員になれるかどうかが、肝心なんですよ。 そして、その機会は、バブルの時にしか、やって来ないのよ。 残念ながら。
かくいう私も、前のバブルの時に、どさくさに紛れて、中途採用で製造業の会社に潜り込む事に成功した、バブル社員です。 以来、20数年、会社に齧りついて、何とか暮らして来ました。 入社のきっかけなんて、どうでもいいんですよ。 同期がいなくたって、出世資格が無くたって、正社員でありさえすれば、給料やボーナスは貰えるんだから、勝ったも同然です。
まあ、バブルのいいところって言ったら、それくらいですかねえ。 他に思いつきません。