錆との戦い⑥ 【塗装編】
前々回・前回と同じような書き出しになりますが、これを書いているのは、2月26日で、すでに、自転車の錆取り計画は、ほぼ終了しています。 旧母自と父自は、完全レストアし、母自(電動アシスト車)は、錆が目立つ部分だけ処置して、自転車の方は、完全におしまい。 なぜ、「ほぼ」なのかと言うと、今は、自転車置場に風雨が吹き込まないように、屋根や壁の隙間塞ぎをしているからです。 次回の更新までには、完全に終わっている事でしょう。
すでに、閑人生活に戻りつつあるのですが、もはや、恒例になってしまったので、レストアの過程を、日記の方から移植して紹介するパターンを続けようと思います。 例によって、日記の後に、解説を付けます。
≪2016/01/30 (土)≫
旧母自の本体塗装面を、どう処置するか、今頃になって、ようやく、方針が決まりました。
フォークだけは、金ブラシと布鑢でこすり、鉄の地肌を出して、透明錆どめを塗ってありますが、フレームの方は、遥かに大きいので、同じやり方では、手間的にとても無理です。 暖かくなってから、剥離剤を使うつもりでいたんですが、高い割には、細部まで綺麗になる保証がなくて、あれこれ、工具を買い足すとなると、コスト的に、見合わなくなってしまいます。 高い自転車ならともかく、1万円以下で買った軽快車の錆取りに、何千円も使うのは、どう考えても、馬鹿げています。
また、ポリッシュ仕上げの軽快車というのが、ちと奇矯でして、分かる人が見れば、「こいつ、変人だ」と思われる可能性が非常に高い。 これが、20歳前後の頃であれば、「変人上等」で、大喜びでやったと思うのですが、私はすでに、分別あって然るべき年齢でして、変わった事をやって、個性を主張したいなどとは、金輪際、思いません。 やはり、色を塗った方が常識的でしょう。 せっかく、苦労して地肌を出したフォークを塗りつぶしてしまうのは惜しいですが、致し方ありません。 傷は小さい内に、処置しなければ。
で、フレームの方は、錆を極力落とした上で、表面を布鑢で均し、カラー錆どめの灰色を買って来て、塗ってしまう事にしました。 できれば、元の色のシルバーに近い、ライト・グレーの方がいいのですが、カラー錆どめは、基本的に錆どめなので、そんなに色の種類がないのです。 もちろん、シルバーはありません。 灰色と白を買って来て、混ぜる事も検討しましたが、それでは、値段が2倍になってしまいます。
カラー錆どめのいいところは、下地と上塗りを兼ねている点でして、それ一種類だけ塗れば、完成します。 鉄の地肌でも、錆の上からでも、塗装の上からでも塗れます。 ものぐさな人間用に開発されたんでしょうな。 だけど、ものぐさは発明の母でして、普通に塗装するとなると、下地(錆どめ)、色塗料、クリアと、三回も塗り重ねなければなりません。 また錆びて来る事を考えると、次の錆取りで、一からやり直すのは、大変です。
ちなみに、私は、車を持っていた頃に、塗装面の錆と、数年に渡って格闘し続けた経験があり、錆取りをして塗り直したからと言って、何ヵ月も綺麗でいられるとは、最初から思っていません。 必ず、また、錆びて来ます。 設備の整った工場でプロが塗ったものでも、年月が経てば錆びて来るのに、素人がやった再塗装が、それ以上もつはずかないのは、当然の理というもの。
カラー錆どめだけを塗るのなら、また錆びて来ても、簡単に補修ができます。 そこだけ、布鑢をかけて、塗り直せばいいのですから。 シルバーから灰色では、色調がだいぶ変わってしまいますが、錆の処置が楽になるのなら、背に腹は代えられません。 念の為、旧母自を買った本人である母に、色を変える事を伝えたところ、「もう、捨てたつもりだった自転車だから、好きにせよ」との返事でした。
≪2016/01/31 (日)≫
午前中は、部屋掃除と亀の水換え。 布団干しは、晴れ間が少なくて、明日に延期。 午後は、バイクを出し、買い物と、犬の墓参に行きました。
ホーム・センターのカーマで、とうとう、カラー錆どめのグレーを買って来ました。 200ml缶で、税込み、820円。 これを買ってしまえば、もう、「鉄の地肌を出して、ポリッシュ仕上げにしたい」などという変人的欲望と葛藤せずに済みます。
後輪の泥除けを留めてあるボルトが、またしても、9ミリだったのですが、場所が狭くて、モンキーでは、なかなか回せません。 しかも、ロック・ナットを使ってあって、硬いもんだから、ナットも一緒に回ってしまうんですわ。 仕方なく、9ミリのスパナを買う事にし、ダイソーに寄ったのですが、なんと、9ミリだけ、置いてありませんでした。 無理もないか。 9ミリの、ボルト・ナットなんて、ほとんど、使われていませんから。
やむなく、近所のホーム・センターに寄ってみたら、あるにはあったものの、600円以上します。 冗談じゃないよ。 たかが、二ヵ所のボルトを緩める為だけに、そんな高い物が買えるもんですか。 その時、ふと、少し離れた所を見ると、「超薄スパナ」という名前で、8-9ミリの両口スパナがあるのが目にとまりました。 210円。 それでも高いと思いますが、まあ、仕方ありません。 それを買いました。
家に帰って、午後3時頃から、解体開始。
といっても、全体の7割くらいの部品は、すでに取り外してあります。 残っているのは、後ろと下の方だけ。 ペダルとクランクを外し、後輪を抜きます。 シート・ポストをサドルごと撤去。
そこまでは良かったのですが、チェーンとチェーン・ケースが、右のチェーンステーと咬み合っていていて、外れない事が分かり、青くなりました。 考えてみれば、咬み合っているのは当たり前なんですが、過去に、ここまで分解した経験がなかったので、一度も考えた事がなかったんですな。 このままでは、サビ落としも塗装もできません。 落ち着いて少し考えたら、チェーンを外せば、両方取れる事に気づきました。 なんだ、そうだったのか。
自室に上がって、ネットのハウツー・サイトを開き、チェーンの外し方を調べました。 チェーンのピンは、ラジオ・ペンチで挟めば外れるとの事。 プレハブにあった父のラジペンを持って来て挟んだら、果たして、簡単に外れました。 チェーンを抜くと、無事、ケースが外れました。
やれやれ、一時はどうなるかと思った。 考えてみれば、全く大した事ではないのに、いい歳扱いて、オロオロした自分が恥ずかしい。 伊達政宗は、高価な茶碗を取り落としそうになって、動揺した自分に腹が立ち、動揺させた茶碗を叩き割ってしまったそうですが、その例に倣うなら、私も、自転車を叩き壊さねばなりませんな。 伊達政宗でなくて良かった。
フレームを引っ繰り返して、後ろ泥除けのボルトを、今日買って来た、9ミリのスパナで緩めます。 裏側のナットが回らないように、モンキーで押さえました。 工具があっても、ロック・ナットは手強かったですが、なんとか外せました。 これで、フレームは、素っ裸になりました。 旧母自にとっては、工場以来の大事件ですな。 鉄ですが、フレームだけだと、思っていたよりも軽かったです。 片手で持てるくらい。
今日は、ここまで。 順調に行って、明日、錆取りと鑢がけが終われば、明後日には、塗装にかかれると思います。 別に、急ぐ理由はないのですが、もう、長い事、自転車ばかり弄っているので、早く解放されたいというのが、本音です。
≪2016/02/01 (月)≫
今日こそは晴れるかと思っていたら、朝から、どす曇りで、昼頃には、雨までパラつく始末。 布団が干せんというに。
自転車の方は、進みました。 一日かけて、チェーン・ケースと前後泥除けの表面に紙鑢をかけ、フレームは、スクレイパー、金ブラシで錆を落とし、紙鑢で均しました。 スクレイパーが、結構、強力で、錆はもちろん、塗装もプライマーも剥がれてしまったのには驚きました。 ただし、狭い所には入りませんし、凸凹している溶接痕の部分には、使えません。
今日は、そこまでやって、おしまい。 明日、道具と心の準備を整えてから、カラー錆どめを塗ります。
≪2016/02/02 (月)≫
今日は晴れましたが、塗装の日なので、埃が着く事を恐れて、布団干しはしませんでした。
午前中は、サドルの解体。 錆びていた裏側のバネを全部外し、コイル・スプリングは酸に浸け、他の部品は、グラインダーで削りました。 先日買って来たナイロン・ディスクを、グラインダーに装着して、初めて使いました。 綺麗にはなるんですが、鉄の本体も削ってしまうので、やり過ぎに注意しなければならないと知りました。
馬蹄錠も錆が出ていたので、グラインダーで塗装ごと落としたら、ビカビカになりました。 怖いくらいです。 透明錆どめを塗っておきます。 以前から、馬蹄錠のシリンダーが、指先で持ち上げてやらなければ、向こう側に入らなくなってしまっていたのですが、今日、ふと思いついて、全体を捩って見たら、正常な状態に戻りました。 なんだ、こんな単純な事だったのか。
午後から、塗装開始。 グレーですが、思っていたよりも、明るい色でした。 乾くと、少し暗めになります。 まあ、こんなものでしょうか。 絵筆の太いのを使い、チェーン・ケースの蓋、チェーン・ケース、前後泥除け、フォーク、フレームの順で塗って行きました。 塗り終わると、部品の適当な孔に、銅線を通し、黄楊の木の枝に引っ掛けて乾かします。 フレームだけは、吊るすには重過ぎるので、地面にハーフのレンガを二つ置いて、その上に、クランク・シャフトを載せ、乾かしました。
手塗りにしては、まあまあ、うまく塗れた方だと思います。 というか、あまり、高いレベルを狙っていないので、よほどひどくない限り、OKにしてしまうわけですがね。 午後1時に始めて、塗装が終わったのが、3時くらい。 塗装作業は、運動量が少ないので、寒くなってしまいました。 とにかく、苦手意識のある塗装作業が終わって、良かったです。
明日、塗り残しをチェックして、塗り足し、それから、完全に乾くまで待つので、組み立てるのは、金曜日になりそうです。 なんとも、時間のかかる作業である事よ。 勤め人では、とても、こんな事はできませんな。
日記は以上です。 前回の解説で書いたように、透明錆どめで仕上げにしてしまっている件りは、その時点では問題ないと思っていたものの、後に、雨で溶けてしまい、仕上げには使えない事が判明しました。 くれぐれも、真似しないで下さい。
今回のメインは、本体部分の塗装ですな。 カラー錆どめの存在は、ホーム・センターを巡っている内に知ったのですが、本来、これは、門扉や鉄製フェンスのような、屋外設備用でして、自転車用の塗料ではありません。 私が自己責任で選んだ物ですから、真似て、後々、問題が出ても、責任は取れませんので、悪しからず。
自転車を塗り替える場合、自転車専用の塗料というのは市販されておらず、車用を使うのが普通です。 車用塗料は、ホーム・センターなら大抵置いてありますが、スプレー缶オンリーで、うちの近所の店では、一本、1350円します。 ネット情報によると、自転車のフレーム・フォークを一台分塗る場合、「スプレー缶、3本あれば、足りる」のだそうで、それだけで、4050円・・・。
・・・顔色、真っ青ですな。 クリヤーは省くとしても、下地のプライマーは必需品なので、それも、3本となると、合計で、7・8000円行ってしまいます。 じょじょじょーだんじゃねーよ! 一万円以下で買った自転車を塗り替えるのに、そんなに払う馬鹿なんぞ、三千世界に一人としているものかね!
ネットで、塗り替え方法を紹介している人達は、スポ自を塗り替えているわけでして、元の値段が、10万とか、20万とか、充分に高いから、塗り替えに、7・8千円かけても、惜しい感じがしないのでしょう。 私のように、軽快車を塗り替えようという人間は、驚くほど少ない様子。 安い自転車の場合、塗り替えるくらいなら、買い換えてしまうんでしょうな。
ちなみに、子供自転車の塗り替えは、自分でやる父親がいるようですが、大抵、見るも無残な、ぐっちゃぐちゃの仕上がりになっています。 「子供用なんて、こんなんで、充分」と思っておるのでしょう。 ステッカー・ラベル類すら剥がさないまま、でかい刷毛で、決まって派手な色のペンキをベタ塗りして、「はい、綺麗になった」とか書いているから、子供もなめられたもんです。
おっと、それで思い出しました。 私の旧母自ですが、本体の塗り替えが決定した結果、自動的に、ステッカー・ラベル類は、全て剥がす事になり、うまく剥がせるとは限らないので、その前に撮影しておく事にしました。 一部ですが、↓に出します。
≪上左≫
ヘッド・チューブの前面に貼ってあったステッカー。 「URBAN」という会社が、企画した製品のようです。 これは、原形を留めて剥がせたのですが、汚らしくなってしまったので、塗り替え後、貼り直しませんでした。
≪上右≫
ダウン・チューブ左右に貼ってあった、車種名「FRESCO」のステッカー。 これは、左右共、ちりぢりに切れてしまい、やむなく、スクレイパーで掻き落としました。 同じステッカーが、チェーン・ケースの横にも貼ってあって、それは、うまく剥がせたので、保存してあります。 地が透明なステッカーは、一度剥がすと、汚くなってしまって、貼り直す気になりません。
≪下左≫
ボトム・ブラケットに貼られていた、ラベル類。 一番上の、防犯登録ステッカーだけ、うまく剥がせました。 他は、スクレイパーで、粉々に。 防犯登録ステッカーは、本体を塗り替えた後、ビニール・ボンドで、貼り直しました。
≪下右≫
後ろ泥除けに貼ってあった、メーカー名のラベル。 貼り方が、ひん曲がってますな。 テキトーな仕事、しやがって。 だけど、自転車のラベルなんて、大抵、こんなものです。 車だと、もっと品質基準が厳しいんですがね。 私も、仕事で貼っていた事がありますが、注意書きのラベルはともかく、ステッカーやエンブレムは、ちょっと傾いただけでも、検査を通りませんでした。 エンブレムには、定位置に貼る為の治具が用意されているのが普通です。
剥がし方ですが、「中性洗剤を塗って、しばらく置いておけば、剥がれる」と、ネットで読んだので、その通りにしましたが、全部で10枚ほどあった内、原形を留めて剥がせたのは、たった4枚でした。 その内、塗り替え後に貼り直したのは、防犯登録ステッカーと、馬蹄錠の操作説明ラベルの、2枚だけ。 写真を撮っておいて、良かったです。
チェーンの切り離し方は、日記にある通り、泥縄を地で行く俄か調べで対応したものの、思っていたより、ずっと簡単で、驚いた次第。 ピンの開いている方の端と、一番近くの軸を、ラジオ・ペンチで挟むだけです。 ピンが飛んでしまう事はありませんでした。 それほどのバネ力がないのではないかと思われました。 着ける時は、ピンの閉じた方の端と、そちらに近い軸を、ラジペンで挟んでやれば、これまた、いとも容易に入ります。
それを知って、ふと思ったんですが、スポ自やシティー・サイクルの、露出しているチェーンを盗むなんてーのは、ラジペン一本あれば、10秒もかからずに、できるわけだ。 いや、私は、そんな事はしませんがね。 下らん。 たかが、自転車の部品を盗んで、窃盗罪で捕まるなんぞ、人生的に、割に合わないにも程がある。
塗装作業そのものですが、太筆を使って、少しずつ塗って行きました。 筆目が残るかと思いきや、ちょっと置くと、ペンキの粘性で、自然に均されてしまい、ほとんど筆の跡が見えなくなったのは、想定外の好都合でした。 ただし、塗り過ぎた所は、やはり、垂れてしまい、垂れ痕は残りました。 だけど、色が地味なせいか、しげしげ見ないと分からないレベルでした。
塗装なんて作業は、そんなに年中するものではないですから、慣れている人の方が珍しいです。 年に一回もやらないという人の場合、経験値的に、巧い・下手を云々するレベルまで上達するはずがないのであって、たとえ、うまく塗れたとしても、ペンキの粘度がちょうど良かったとか、気温や湿度が適当だったとか、技能とは無関係な要素に助けられたと見るのが、妥当です。
私は、中高生の時に、プラ・モデルの塗装を、さんざん、やりましたが、塗料の良し悪しで、仕上がりの状態が、9割方、左右されてしまうのを、その頃、つくづく思い知りました。 手塗りの仕上がり品質には、限界があり、素人では、売り物になるようなレベルには、決して到達しないと思います。
しかし、スプレーを使えるのなら、話は別です。 前述したように、お金に糸目をつけないのなら、スプレー缶の塗料を買って来れば、遥かに綺麗に塗れるはず。 ただし、スプレーというのは、20センチくらい離して吹くものなので、自転車を塗る場合、内容量の、5分の1くらいしか、対象に着かず、残りの5分の4は、空気中や地面に消えてしまいます。 一台分に、3本も必要になるのは、そのせいでして、ほとんどを捨てる為に買って来ているようなものです。
もし、これから、軽快車を塗り替えようとしている方がいたら、基本的に、スプレー缶は、やめた方がいいと思います。 とにかく、高くつく。 また、綺麗に塗れると言っても、所詮、レストアですから、他の部品は、ボロのままでして、新品同様には、決してなりません。 新品同様に拘るのなら、自転車ごと買い換えた方が、断然、得だと思います。
手塗りならば、コスト的には、割に合いますが、仕上がりに期待し過ぎていると、これまた、「やらなきゃ良かった」と、臍を噛む事になります。 やはり、軽快車の塗り替えは、一か八か的な賭けになってしまうんですな。
「それはいいから、塗り替えた後の写真を出さんかい」と、イラつく諸兄よ。 そちらは、組み立て直した後で、まとめて、ビフォー・アフターで見せる予定なので、しばらく、お待ち下さい。
すでに、閑人生活に戻りつつあるのですが、もはや、恒例になってしまったので、レストアの過程を、日記の方から移植して紹介するパターンを続けようと思います。 例によって、日記の後に、解説を付けます。
≪2016/01/30 (土)≫
旧母自の本体塗装面を、どう処置するか、今頃になって、ようやく、方針が決まりました。
フォークだけは、金ブラシと布鑢でこすり、鉄の地肌を出して、透明錆どめを塗ってありますが、フレームの方は、遥かに大きいので、同じやり方では、手間的にとても無理です。 暖かくなってから、剥離剤を使うつもりでいたんですが、高い割には、細部まで綺麗になる保証がなくて、あれこれ、工具を買い足すとなると、コスト的に、見合わなくなってしまいます。 高い自転車ならともかく、1万円以下で買った軽快車の錆取りに、何千円も使うのは、どう考えても、馬鹿げています。
また、ポリッシュ仕上げの軽快車というのが、ちと奇矯でして、分かる人が見れば、「こいつ、変人だ」と思われる可能性が非常に高い。 これが、20歳前後の頃であれば、「変人上等」で、大喜びでやったと思うのですが、私はすでに、分別あって然るべき年齢でして、変わった事をやって、個性を主張したいなどとは、金輪際、思いません。 やはり、色を塗った方が常識的でしょう。 せっかく、苦労して地肌を出したフォークを塗りつぶしてしまうのは惜しいですが、致し方ありません。 傷は小さい内に、処置しなければ。
で、フレームの方は、錆を極力落とした上で、表面を布鑢で均し、カラー錆どめの灰色を買って来て、塗ってしまう事にしました。 できれば、元の色のシルバーに近い、ライト・グレーの方がいいのですが、カラー錆どめは、基本的に錆どめなので、そんなに色の種類がないのです。 もちろん、シルバーはありません。 灰色と白を買って来て、混ぜる事も検討しましたが、それでは、値段が2倍になってしまいます。
カラー錆どめのいいところは、下地と上塗りを兼ねている点でして、それ一種類だけ塗れば、完成します。 鉄の地肌でも、錆の上からでも、塗装の上からでも塗れます。 ものぐさな人間用に開発されたんでしょうな。 だけど、ものぐさは発明の母でして、普通に塗装するとなると、下地(錆どめ)、色塗料、クリアと、三回も塗り重ねなければなりません。 また錆びて来る事を考えると、次の錆取りで、一からやり直すのは、大変です。
ちなみに、私は、車を持っていた頃に、塗装面の錆と、数年に渡って格闘し続けた経験があり、錆取りをして塗り直したからと言って、何ヵ月も綺麗でいられるとは、最初から思っていません。 必ず、また、錆びて来ます。 設備の整った工場でプロが塗ったものでも、年月が経てば錆びて来るのに、素人がやった再塗装が、それ以上もつはずかないのは、当然の理というもの。
カラー錆どめだけを塗るのなら、また錆びて来ても、簡単に補修ができます。 そこだけ、布鑢をかけて、塗り直せばいいのですから。 シルバーから灰色では、色調がだいぶ変わってしまいますが、錆の処置が楽になるのなら、背に腹は代えられません。 念の為、旧母自を買った本人である母に、色を変える事を伝えたところ、「もう、捨てたつもりだった自転車だから、好きにせよ」との返事でした。
≪2016/01/31 (日)≫
午前中は、部屋掃除と亀の水換え。 布団干しは、晴れ間が少なくて、明日に延期。 午後は、バイクを出し、買い物と、犬の墓参に行きました。
ホーム・センターのカーマで、とうとう、カラー錆どめのグレーを買って来ました。 200ml缶で、税込み、820円。 これを買ってしまえば、もう、「鉄の地肌を出して、ポリッシュ仕上げにしたい」などという変人的欲望と葛藤せずに済みます。
後輪の泥除けを留めてあるボルトが、またしても、9ミリだったのですが、場所が狭くて、モンキーでは、なかなか回せません。 しかも、ロック・ナットを使ってあって、硬いもんだから、ナットも一緒に回ってしまうんですわ。 仕方なく、9ミリのスパナを買う事にし、ダイソーに寄ったのですが、なんと、9ミリだけ、置いてありませんでした。 無理もないか。 9ミリの、ボルト・ナットなんて、ほとんど、使われていませんから。
やむなく、近所のホーム・センターに寄ってみたら、あるにはあったものの、600円以上します。 冗談じゃないよ。 たかが、二ヵ所のボルトを緩める為だけに、そんな高い物が買えるもんですか。 その時、ふと、少し離れた所を見ると、「超薄スパナ」という名前で、8-9ミリの両口スパナがあるのが目にとまりました。 210円。 それでも高いと思いますが、まあ、仕方ありません。 それを買いました。
家に帰って、午後3時頃から、解体開始。
といっても、全体の7割くらいの部品は、すでに取り外してあります。 残っているのは、後ろと下の方だけ。 ペダルとクランクを外し、後輪を抜きます。 シート・ポストをサドルごと撤去。
そこまでは良かったのですが、チェーンとチェーン・ケースが、右のチェーンステーと咬み合っていていて、外れない事が分かり、青くなりました。 考えてみれば、咬み合っているのは当たり前なんですが、過去に、ここまで分解した経験がなかったので、一度も考えた事がなかったんですな。 このままでは、サビ落としも塗装もできません。 落ち着いて少し考えたら、チェーンを外せば、両方取れる事に気づきました。 なんだ、そうだったのか。
自室に上がって、ネットのハウツー・サイトを開き、チェーンの外し方を調べました。 チェーンのピンは、ラジオ・ペンチで挟めば外れるとの事。 プレハブにあった父のラジペンを持って来て挟んだら、果たして、簡単に外れました。 チェーンを抜くと、無事、ケースが外れました。
やれやれ、一時はどうなるかと思った。 考えてみれば、全く大した事ではないのに、いい歳扱いて、オロオロした自分が恥ずかしい。 伊達政宗は、高価な茶碗を取り落としそうになって、動揺した自分に腹が立ち、動揺させた茶碗を叩き割ってしまったそうですが、その例に倣うなら、私も、自転車を叩き壊さねばなりませんな。 伊達政宗でなくて良かった。
フレームを引っ繰り返して、後ろ泥除けのボルトを、今日買って来た、9ミリのスパナで緩めます。 裏側のナットが回らないように、モンキーで押さえました。 工具があっても、ロック・ナットは手強かったですが、なんとか外せました。 これで、フレームは、素っ裸になりました。 旧母自にとっては、工場以来の大事件ですな。 鉄ですが、フレームだけだと、思っていたよりも軽かったです。 片手で持てるくらい。
今日は、ここまで。 順調に行って、明日、錆取りと鑢がけが終われば、明後日には、塗装にかかれると思います。 別に、急ぐ理由はないのですが、もう、長い事、自転車ばかり弄っているので、早く解放されたいというのが、本音です。
≪2016/02/01 (月)≫
今日こそは晴れるかと思っていたら、朝から、どす曇りで、昼頃には、雨までパラつく始末。 布団が干せんというに。
自転車の方は、進みました。 一日かけて、チェーン・ケースと前後泥除けの表面に紙鑢をかけ、フレームは、スクレイパー、金ブラシで錆を落とし、紙鑢で均しました。 スクレイパーが、結構、強力で、錆はもちろん、塗装もプライマーも剥がれてしまったのには驚きました。 ただし、狭い所には入りませんし、凸凹している溶接痕の部分には、使えません。
今日は、そこまでやって、おしまい。 明日、道具と心の準備を整えてから、カラー錆どめを塗ります。
≪2016/02/02 (月)≫
今日は晴れましたが、塗装の日なので、埃が着く事を恐れて、布団干しはしませんでした。
午前中は、サドルの解体。 錆びていた裏側のバネを全部外し、コイル・スプリングは酸に浸け、他の部品は、グラインダーで削りました。 先日買って来たナイロン・ディスクを、グラインダーに装着して、初めて使いました。 綺麗にはなるんですが、鉄の本体も削ってしまうので、やり過ぎに注意しなければならないと知りました。
馬蹄錠も錆が出ていたので、グラインダーで塗装ごと落としたら、ビカビカになりました。 怖いくらいです。 透明錆どめを塗っておきます。 以前から、馬蹄錠のシリンダーが、指先で持ち上げてやらなければ、向こう側に入らなくなってしまっていたのですが、今日、ふと思いついて、全体を捩って見たら、正常な状態に戻りました。 なんだ、こんな単純な事だったのか。
午後から、塗装開始。 グレーですが、思っていたよりも、明るい色でした。 乾くと、少し暗めになります。 まあ、こんなものでしょうか。 絵筆の太いのを使い、チェーン・ケースの蓋、チェーン・ケース、前後泥除け、フォーク、フレームの順で塗って行きました。 塗り終わると、部品の適当な孔に、銅線を通し、黄楊の木の枝に引っ掛けて乾かします。 フレームだけは、吊るすには重過ぎるので、地面にハーフのレンガを二つ置いて、その上に、クランク・シャフトを載せ、乾かしました。
手塗りにしては、まあまあ、うまく塗れた方だと思います。 というか、あまり、高いレベルを狙っていないので、よほどひどくない限り、OKにしてしまうわけですがね。 午後1時に始めて、塗装が終わったのが、3時くらい。 塗装作業は、運動量が少ないので、寒くなってしまいました。 とにかく、苦手意識のある塗装作業が終わって、良かったです。
明日、塗り残しをチェックして、塗り足し、それから、完全に乾くまで待つので、組み立てるのは、金曜日になりそうです。 なんとも、時間のかかる作業である事よ。 勤め人では、とても、こんな事はできませんな。
日記は以上です。 前回の解説で書いたように、透明錆どめで仕上げにしてしまっている件りは、その時点では問題ないと思っていたものの、後に、雨で溶けてしまい、仕上げには使えない事が判明しました。 くれぐれも、真似しないで下さい。
今回のメインは、本体部分の塗装ですな。 カラー錆どめの存在は、ホーム・センターを巡っている内に知ったのですが、本来、これは、門扉や鉄製フェンスのような、屋外設備用でして、自転車用の塗料ではありません。 私が自己責任で選んだ物ですから、真似て、後々、問題が出ても、責任は取れませんので、悪しからず。
自転車を塗り替える場合、自転車専用の塗料というのは市販されておらず、車用を使うのが普通です。 車用塗料は、ホーム・センターなら大抵置いてありますが、スプレー缶オンリーで、うちの近所の店では、一本、1350円します。 ネット情報によると、自転車のフレーム・フォークを一台分塗る場合、「スプレー缶、3本あれば、足りる」のだそうで、それだけで、4050円・・・。
・・・顔色、真っ青ですな。 クリヤーは省くとしても、下地のプライマーは必需品なので、それも、3本となると、合計で、7・8000円行ってしまいます。 じょじょじょーだんじゃねーよ! 一万円以下で買った自転車を塗り替えるのに、そんなに払う馬鹿なんぞ、三千世界に一人としているものかね!
ネットで、塗り替え方法を紹介している人達は、スポ自を塗り替えているわけでして、元の値段が、10万とか、20万とか、充分に高いから、塗り替えに、7・8千円かけても、惜しい感じがしないのでしょう。 私のように、軽快車を塗り替えようという人間は、驚くほど少ない様子。 安い自転車の場合、塗り替えるくらいなら、買い換えてしまうんでしょうな。
ちなみに、子供自転車の塗り替えは、自分でやる父親がいるようですが、大抵、見るも無残な、ぐっちゃぐちゃの仕上がりになっています。 「子供用なんて、こんなんで、充分」と思っておるのでしょう。 ステッカー・ラベル類すら剥がさないまま、でかい刷毛で、決まって派手な色のペンキをベタ塗りして、「はい、綺麗になった」とか書いているから、子供もなめられたもんです。
おっと、それで思い出しました。 私の旧母自ですが、本体の塗り替えが決定した結果、自動的に、ステッカー・ラベル類は、全て剥がす事になり、うまく剥がせるとは限らないので、その前に撮影しておく事にしました。 一部ですが、↓に出します。
≪上左≫
ヘッド・チューブの前面に貼ってあったステッカー。 「URBAN」という会社が、企画した製品のようです。 これは、原形を留めて剥がせたのですが、汚らしくなってしまったので、塗り替え後、貼り直しませんでした。
≪上右≫
ダウン・チューブ左右に貼ってあった、車種名「FRESCO」のステッカー。 これは、左右共、ちりぢりに切れてしまい、やむなく、スクレイパーで掻き落としました。 同じステッカーが、チェーン・ケースの横にも貼ってあって、それは、うまく剥がせたので、保存してあります。 地が透明なステッカーは、一度剥がすと、汚くなってしまって、貼り直す気になりません。
≪下左≫
ボトム・ブラケットに貼られていた、ラベル類。 一番上の、防犯登録ステッカーだけ、うまく剥がせました。 他は、スクレイパーで、粉々に。 防犯登録ステッカーは、本体を塗り替えた後、ビニール・ボンドで、貼り直しました。
≪下右≫
後ろ泥除けに貼ってあった、メーカー名のラベル。 貼り方が、ひん曲がってますな。 テキトーな仕事、しやがって。 だけど、自転車のラベルなんて、大抵、こんなものです。 車だと、もっと品質基準が厳しいんですがね。 私も、仕事で貼っていた事がありますが、注意書きのラベルはともかく、ステッカーやエンブレムは、ちょっと傾いただけでも、検査を通りませんでした。 エンブレムには、定位置に貼る為の治具が用意されているのが普通です。
剥がし方ですが、「中性洗剤を塗って、しばらく置いておけば、剥がれる」と、ネットで読んだので、その通りにしましたが、全部で10枚ほどあった内、原形を留めて剥がせたのは、たった4枚でした。 その内、塗り替え後に貼り直したのは、防犯登録ステッカーと、馬蹄錠の操作説明ラベルの、2枚だけ。 写真を撮っておいて、良かったです。
チェーンの切り離し方は、日記にある通り、泥縄を地で行く俄か調べで対応したものの、思っていたより、ずっと簡単で、驚いた次第。 ピンの開いている方の端と、一番近くの軸を、ラジオ・ペンチで挟むだけです。 ピンが飛んでしまう事はありませんでした。 それほどのバネ力がないのではないかと思われました。 着ける時は、ピンの閉じた方の端と、そちらに近い軸を、ラジペンで挟んでやれば、これまた、いとも容易に入ります。
それを知って、ふと思ったんですが、スポ自やシティー・サイクルの、露出しているチェーンを盗むなんてーのは、ラジペン一本あれば、10秒もかからずに、できるわけだ。 いや、私は、そんな事はしませんがね。 下らん。 たかが、自転車の部品を盗んで、窃盗罪で捕まるなんぞ、人生的に、割に合わないにも程がある。
塗装作業そのものですが、太筆を使って、少しずつ塗って行きました。 筆目が残るかと思いきや、ちょっと置くと、ペンキの粘性で、自然に均されてしまい、ほとんど筆の跡が見えなくなったのは、想定外の好都合でした。 ただし、塗り過ぎた所は、やはり、垂れてしまい、垂れ痕は残りました。 だけど、色が地味なせいか、しげしげ見ないと分からないレベルでした。
塗装なんて作業は、そんなに年中するものではないですから、慣れている人の方が珍しいです。 年に一回もやらないという人の場合、経験値的に、巧い・下手を云々するレベルまで上達するはずがないのであって、たとえ、うまく塗れたとしても、ペンキの粘度がちょうど良かったとか、気温や湿度が適当だったとか、技能とは無関係な要素に助けられたと見るのが、妥当です。
私は、中高生の時に、プラ・モデルの塗装を、さんざん、やりましたが、塗料の良し悪しで、仕上がりの状態が、9割方、左右されてしまうのを、その頃、つくづく思い知りました。 手塗りの仕上がり品質には、限界があり、素人では、売り物になるようなレベルには、決して到達しないと思います。
しかし、スプレーを使えるのなら、話は別です。 前述したように、お金に糸目をつけないのなら、スプレー缶の塗料を買って来れば、遥かに綺麗に塗れるはず。 ただし、スプレーというのは、20センチくらい離して吹くものなので、自転車を塗る場合、内容量の、5分の1くらいしか、対象に着かず、残りの5分の4は、空気中や地面に消えてしまいます。 一台分に、3本も必要になるのは、そのせいでして、ほとんどを捨てる為に買って来ているようなものです。
もし、これから、軽快車を塗り替えようとしている方がいたら、基本的に、スプレー缶は、やめた方がいいと思います。 とにかく、高くつく。 また、綺麗に塗れると言っても、所詮、レストアですから、他の部品は、ボロのままでして、新品同様には、決してなりません。 新品同様に拘るのなら、自転車ごと買い換えた方が、断然、得だと思います。
手塗りならば、コスト的には、割に合いますが、仕上がりに期待し過ぎていると、これまた、「やらなきゃ良かった」と、臍を噛む事になります。 やはり、軽快車の塗り替えは、一か八か的な賭けになってしまうんですな。
「それはいいから、塗り替えた後の写真を出さんかい」と、イラつく諸兄よ。 そちらは、組み立て直した後で、まとめて、ビフォー・アフターで見せる予定なので、しばらく、お待ち下さい。