2019/10/27

EN125-2A補修 ①

  で、今回から、新たに買った中古バイク、EN125-2Aの補修記事が始まるわけですが、組み写真1枚の写真数が多いので、一回当たり、3枚程度に抑えようと思います。 それでも、多過ぎる感じがしないでもないですが・・・。

  組み合わせの関係で、作業した日付が、前後する事があります。 組み写真にせずに、バラバラにして、一枚ずつ解説文をつけた方が、読み易いとは思うのですが、それをやると、画像のアップがどえらい苦労になってしまうので、勘弁して下さい。




【ライト・ボルト / ナンバー裏板 / 書類入れ】

  9月19日から、21日にかけて、やった事。

≪写真1左≫
  エンジンの前側に付いていた、アンダー・カウルは、撤去しました。 左右は、こんな金属板のブラケットで留められていました。 エンジンのボルトに共締め。 前側は、同じ金属板を曲げて、フレームの隙間に挿し込んであるだけでした。

≪写真1右≫
  ビキニ・カウルは、ヘッド・ライトのボルトに共締めされていました。 これが、カウルの付属品の特殊なボルト。 ビキニ・カウルを撤去すると、このボルトは使えません。 外に飛び出す部分が長過ぎて、カッコがつかないからです。

≪写真2左≫
  で、ホーム・センターに行って、ボルトを買って来ました。 バイクの・ヘッド・ライト用のボルトは、普通の六角ボルトの頭の部分が球面になっている物が普通ですが、それは、単独では売っていないようです。 そこで、ヘキサゴンのボルトを買って来ました。 ステンレス製、径8ミリ×長さ25ミリ。 3本入りで、250円。

≪写真2右≫
  買って来たボルトで、締め直しました。 ライト・ブラケットが錆びているので、パッとしません。 このブラケットも、後で塗り直す事になります。

  ヘッド・ライトですが、バルブの色が黄色くなっています。 どうやら、H4化して、LEDバルブにしてある模様。 明るいですが、中を開けると、配線がグジャグジャ状態。 デフォルトのバルブは、「12V 35W/35W」という、日本では手に入り難い品で、しかも、明るさが足りないらしく、H4に変える人が多いようです。

  私は、夜は乗らないから、ヘッド・ライトなんて、点いている事が分れば充分でして、できれば、デフォルトに戻したいところ。 しかし、グジャグジャの配線を見て、とても、戻せないと思い、そこは諦めました。 もちろん、グジャグジャと言っても、見た目の話で、ハイ&ローはもちろん、スモールもウインカーも、ちゃんと、点きます。

≪写真3≫
  ナンバー・プレートのブラケット。 錆びていたので、酸に浸けておきました。

≪写真4≫
  で、一晩経ったら、黒い塗料まで、全部落ちてしまいました。 まあ、どうせ、塗り直すつもりだったから、いいんですが。 さすが、酸というべきか。 自転車レストアの時に、100円ショップで買って来た、トイレの洗浄用ですけど。

≪写真5≫
  自転車レストアの時に買った、水性・艶消し黒を、筆で塗りました。 どうせ、見えなくなってしまうので、手塗りで充分です。

≪写真6左≫
  ナンバー・プレートが、ちょっとした接触で曲がってしまわないように、父の遺品のアクリル板で、裏板を作りました。 アクリカッターで切って、錐と電動ドリルで、穴を開けました。

  下のピンク色のは、市役所で交付してもらったナンバー。 半透明ビニールに入っています。 上のボルト・ナットも、市役所でくれました。 鉄製ですが、雨の日は乗らないので、錆びて来るまでには、何年か間があると思います。

≪写真6右≫
  ナンバー・プレートを取り付けました。 ピンク・ナンバーは、未だに違和感がありますが、致し方ありません。 車体色の黒と、ピンクは、存外、合うような気もして来ました。 リヤ・サイド・フェンダーのデカールに、赤いラインが入っており、多少、馴染ませてくれています。

≪写真7左≫
  裏板の様子。 ナンバーの縁から、食み出ない大きさにしてあります。 これだけでも、相当には、折れ難くなっているはず。 アクリルは硬いので、ボルト・ナットで締めても、潰れて行きません。 柔らかいプラスチックで作る場合、ボルト・ナットに締めつけられる部分だけ、刳り抜いて、ワッシャーを入れた方がいいです。 セローの時は、そうしていました。

≪写真7右≫
  自賠責ステッカー。 セブンイレブンで手続きしてきたので、その場で貰えました。 自分で貼ります。 入る年数分によって、色が異なります。 緑色は、5年分。 16990円。 一年当りにして、3398円。 期間が長いほど、割引率が高くなります。 1年分だけ入ると、7500円。 それが、5年分だと、半額以下になっているわけで、考えてみると、凄い割引だ。

  ナンバーの数字を消してあるから、この写真では分かりませんが、このステッカー、余白にギリギリです。 上のボルトのワッシャーが重なってしまうので、ワッシャーを持ち上げながら、裏のナットを回して締め付けました。

≪写真8≫
  EN125-2Aは、ヘルメット・ホルダーのキー・シリンダーで、シートを簡単に外せるようになっています。 シートの下に、書類入れが設けられています。 標識交付証明書と、自賠責証明書をビニールに入れ、更に、自作した厚紙のケースに入れて、収めました。 無用心な感じもしますが、大きなバイクでも、車でも、書類は、車両に備え付けておかないと、違法になるようなので、致し方ありません。

  この書類入れを、物入れだと思って、「小さくて使えない」と、文句をつける人が多いようですが、見れば分かるように、どう考えても、書類入れでしょうに。 他に何か入れようと思っても、文庫本一冊くらいしか入りません。

  また、シートを外さなければならないわけで、出先で開けるような所ではないです。 シートを変な所に置くと、いとも容易に、ビニール・レザーが破れてしまいます。



【タンク・パッド剥がし】

  9月20日に、タンクに貼られた、パッドを剥がしました。 えらい、苦労しました。

≪写真1≫
  厚さ1センチ、幅30センチくらいの、硬いスポンジです。 ベッタリ、貼られています。 この時点で、私は、このバイクに一回も乗っていないのですが、乗る前に剥がすと決めていました。 ヤフオクの画像で見た時には、うっかり、気づかなかったのです。 パッドの下に凹みやキズがない事を祈るのみ。

≪写真2≫
  中途段階。 綺麗にぺろぺろ剥がれてくれるわけもなく、指先で少しずつ、スポンジを毟って行きました。 糊と、糊のベースになる紙の部分が残ってしまいました。

≪写真3≫
  紙の部分を、爪や、プラスチック・カードで、掻き落としていきます。 プラスチック・カードは、かなり、ガジガジかじっても、塗装面にキズはつきません。 それは、セルボ・モードのエンブレムを剥がした時に、経験済み。 結果、糊だけが残りました。 糊と言っても、接着剤ですけど。 この状態を見ると、とんでもない大失敗をやらかしたように思えますなあ。 「こんなにしてしまうのなら、パッドのままにしておけば良かったのに」と、誰もが思う事でしょう。

≪写真4≫
  ペイントうすめ液を、筆で塗り、綺麗なウエスで拭き取って行きました。 糊が一旦溶けて、塊になります。 G17というボンドを、指で丸めた状態と、似たような感触。 急がず焦らず、少しずつ取って行ったら、こうなりました。 おお! 綺麗になったじゃありませんか! ペイントうすめ液は、偉い。 ちなみに、ラッカーうすめ液は、もっと強い成分なので、塗装面に使うと、塗装を溶かしてしまう恐れがあります。   パッドの下に、恐れていた、凹みやキズはありませんでした。 思い切って、剥がして良かったです。 パッドを貼る好みには賛同できませんが、前の持ち主が、このバイクを大切に扱ってくれていた点には、感謝しなければなりません。



【夏用上着修繕 / Мテック / バイク用スニーカー】

  9月23日、3年前まで使っていた、バイクの夏用上着を修繕しました。

≪写真1左≫
  2000年4月8日、近所のショッピンク・センターにて、2900円で買った、春物のジャンパー。 勤めている間、ずっと、夏場の上着として使っていました。 ツーリングも、大抵、これを着て行きました。 バイク・ツーリングは、夏がメインなので、どれだけの場所に、この上着で出かけたか、分からないほどです。

  布地が、大変、丈夫。 内ポケットを自作して、取り付けてあり、そこに、免許入れを収められます。

≪写真1右上≫
  袖のゴムが伸びて、ビロビロになっていたのを、Z形に折って、縫い詰めました。 妥協修繕ですが、こんな幅の広いゴムは、手に入らないので、致し方ない。 バイクに乗っている間は、必ず、手袋をするから、どうせ、袖口は見えません。

≪写真1右下≫
  裾の左右のゴムも、すっかり、伸びていました。 ここは、ゴムを交換して、元の姿に復元しました。


  この服を見ていると、泣けて来ます。 確かに私は、再びバイクを手に入れて、バイク生活を復活させた。 しかし、私のバイク人生は、、やはり、通勤や、野宿ツーリングをしていた時代が中心なのであって、その時が戻るわけではありません。 今後10年、EN125-2Aに乗っても、ボリューム的には、中心時代の思い出に、遠く及ばないでしょう。

  乗り始めたのは、遅かったけれど、バイクが、私の人生の大きな部分を占めていた事が、今なら分かります。

≪写真2左≫
  9月24日に買って来た、バイクの夏用手袋。 ホーム・センターで売っている、「Мテック」という品です。 作業用手袋ですが、そう言われなければ分からない、高級な質感があります。 3年前までも、使っていたのですが、初乗りの時に出して使ったら、ゴムがボロボロになっていたので、新調したもの。 同じ製品が、ほぼ、同じ値段で売っていました。 998円。

≪写真2右≫
  同じく、24日に、ショッピンク・モールで、バイク用の靴も買って来ました。 1080円のスニーカーで、普段履きにしているものと、全く同じ物です。 変えるつもりでいたんですが、他の品は、紐靴だったり、マジック・テープ式には金具が付いていたりと、不適当だったので、同じ物になってしまったのです。 紐靴は、紐がペダルに引っかかって、危険。 金具がついた靴は、バイクにキズがついてしまいます。

  3年前まで、冬は、バイク用のブーツを履いていたのですが、セローを下取りに出した後、もう要らないと思って、ハードオフで売ってしまったのです。 ブーツを買い直すのは高くつくので、今後の冬は、靴はこのまま、レッグ・ウォーマーなどで、足首を風から守って乗ろうかと思っています。

  真冬は、バイクを冬眠させてしまうという手もありますが、まだ、どうするか、決めていません。




  今回は、ここまで。 最後の一件は、EN125-2Aの補修とは関係ないですが、まあ、バイクには関係あるから、そういった事も、織り交ぜて行きます。

2019/10/20

バイクが届く

  9月5日に、ヤフオクで落札した中古バイク、スズキの「EN125-2A」が、9月17日の早朝、6時15分頃に、届けられました。 本体価格70200円。 陸送費が、埼玉県北部から、沼津市まで、14000円。 ヤフオクの簡単決済手数料が、4210円。 合計、88410円。

  運んで来たのは、トラックではなく、ワン・ボックス・カーで、ミラーを取り外して載せ、下ろしてから、取り付け直していました。 陸送会社の人は一人。 簡単な説明を受け、エンジンの始動まで、見せてもらいました。

  EN125-2Aは、スズキ・ブランドになっていますが、開発も生産も、中国の「大長江集団」という会社で、日本には、販売業者が、並行輸入の形で入れていてます。 現役モデルでして、定価で買うと、15万円前後。 スズキの正規店で売っている125ccバイクと比べると、半額以下ではないかと思います。

  ちなみに、EN125シリーズの漢名は、「鋭爽」です。 ピンイン表記だと、「rui\ shuang_」。 日本語で近い音を当てると、「ルイシュワン」。 念の為に書いておきますと、日本語の音読みでは、「えいそう」です。 




【外観の概観】

  とりあえず、どの程度の補修が必要か、あちこち、観察します。

≪写真1≫
  届いた時の姿。 汎用のビキニ・カウルと、アンダー・カウルが付いています。 ビキニ・カウルは、思っていたより小振りで、さほど違和感がある見てくれではありませんでしたが、割れた部分を、結束バンドで縛って補修してある事が分かり、結局、外す事にしました。

  ミラーは、デフォルトでは、楕円黒プラ・ミラーですが、このバイクでは、台形メッキ・ミラーに換えてありました。 それ以外は、デフォルトのままに見えました。

≪写真2≫
  ところが、届いてから、気づいたのが、これ。 なんと、リヤ・ブレーキが、ドラムから、ディスクに換えてあります。 これは、大掛かりな改造だわ。 これを見た時点で、デフォルトに戻す計画は、断念しました。 ここから、ドラムに戻すのでは、何万円かかるか分かりません。

  しかも、ブレーキのリザーバー・タンクが、リヤ・サスペンションの上側ボルトに、結束バンドで吊るされています。 これは、どうにかせねばなりますまい。

≪写真3左≫
  タンク右側のデカールが、色褪せしていました。 左側は、大丈夫。 白くなっている部分は、元は、赤だったのです。 これも、このままでは、みっともなくて、乗れませんなあ。 タンク以外にも、同じ右側で、リヤ・サイド・フェンダーのデカールが、赤と黒の一部が色褪せていました。

  あと、タンクの後ろの方に、パッドが貼り付けてあるのが分かるでしょうか。 1センチくらいの厚みがあります。 これも、要りません。 どうして、こういうものを貼るかな。 剥がすに決定ですが、べったり貼りついており、見るからに手強そうです。

≪写真3右≫
  シートに、光る点があるので、汚れだろうと思っていたのですが、よく見ると、補修シールを小さく切って、貼ってあるのでした。 たぶん、小さな穴が開いているのでしょう。 できれば、艶消しのシールでやってもらいたかった。 しかし、補修としては、かなり、巧い方で、あまり目立たないので、これは、このままで行こうと思います。

≪写真4≫
  メーター周り。 走行キロ数は、26294キロ。 バイクのメーターは、そっくり交換されてしまう事があるのですが、このバイクの場合、他の部分のヤレ具合から見て、たぶん、実走行距離だと思います。 中古バイクとしては、多くも少なくもない数値です。

  メーター・レンズに、割れやヒビはなし。 速度計、回転計、距離計、シフト・インジケーター、全て、正常に作動します。 キーは、ポジション・シールが剥がれていますが、まあ、大体分かるから、問題ないです。 ハンドル・ロックがかかります。 オン位置で、ニュートラル・ランプがチラチラ点滅してしまいますが、エンジンはかかるので、大した問題ではないです。

  キーの周辺に、キズが多いのは、前の持ち主が、キー・ホルダーに、他のキーを付けて、鍵束にしていたからでしょう。 車の場合、鍵束は、下に垂れるから、問題ありませんが、バイクの場合、上に載るので、振動でガチャガチャ当たって、キズが付くのです。 バイクのキーは、単独で使うか、何か付けるにしても、布製のストラップくらいにしておくのが、正解です。



【市役所で登録】

  125ccまでは、自分で役所に行って、登録手続きをする事ができます。 バイクが届いた9月17日に、早速、市役所に行って来ました。

≪写真上≫
  ヤフオクでの出品者である、バイク店発行の「販売証明書」。 バイクと一緒に届けられました。 この写真よりも、少し大きい程度の薄い紙でした。 こういう、出来あいの書式があるんでしょうな。 右下の欄に、バイク店のスタンプが押されていました。

  ネットでバイクを買った場合、販売証明書か、廃車証明書がないと、登録ができません。 相手が個人で、向こう名義のまま、譲渡証明書を渡された場合、まず、廃車してから、登録し直す事になります。

  それらの書類と、認印を持って、役所に行きます。 念の為、免許証も持って行きましたが、必要ありませんでした。 提出した書類は、役所の方で保管されてしまうので、予め、コピーや写真をとっておいた方がいいです。 別に、使う用事はありませんが。

≪写真中≫
  「軽自動車税申告書兼標識交付申請書」。 これは、かなり、縮小してあります。 自分で用意する必要はなくて、役所の税務課に行けば、くれます。 職員の指示に従って、氏名・住所などを、数箇所書き込むだけ。 バイクの情報は、メーカー名、車台番号、排気量だけで、車種名は不要。

≪写真下≫
  「標識交付証明書」。 車検証のようなもので、バイクに備え付けておかなければなりません。 この写真は、コピーで、しかも、縮小してあります。 元は、A4サイズ。 手続きが済むと、この証明書と、ナンバー、ボルト・ナットをくれます。 ナンバーの数字は、希望できません。 手続きは、無料で、3分くらいで終わりました。


  同じ日に、ネットとコンビニで、自賠責保険に入って来ました。 最も割安になる5年分で、16990円。 1年分当たりにすると、3398円。

  任意保険は、車の保険に、ファミリーバイク特約を追加しました。 特約の追加手続きは、電話をかける必要はなく、ネット上の「契約内容変更」で、操作できます。  この特約は、車の保険のオマケなので、バイクの車種、車台番号、ナンバーなどの情報は、一切、関係ありません。 そもそも、そういう情報を打ち込む画面がないです。 つまり、その人が乗っている原付なら、何にでも、適用されるのでしょう。

  車の方の契約内容によって、特約の値段も変わるらしくて、私の場合、7410円もしました。 高いな。 お金が、どんどん出て行きます。 払い込み票を送ってもらう方式を選び、19日に、コンビニで払って来ました。

  単独のバイク保険も検討しましたが、見積もりしたら、ファミリーバイク特約よりも高くなってしまうので、やめました。 3年前、セローを手放した時に、ノンフリート等級を保存する手続きをしてあったのですが、それでも、高いのだから、致し方ありません。 ネット情報では、「乗る期間が、5年以内なら、ファミリーバイク特約の方が、得。 それ以上なら、単独のバイク保険の方が、得になる」とあったのですが、私の場合、当て嵌まらない様子。 保険会社によっても、違うのかもしれません。



【ミラーとカバー】

≪写真1左≫
  とりあえず、バイクには、折自に使っていたカバーを掛けました。 折自は、バイクが届く前に、プレハブ離屋の中へ移動。 しかし、このカバー、サイズが小さくて、バイクを覆いきれませんでした。 やむなく、ミラーを外しましたが、それでも、まだ小さくて、下の方まで下がりません。

≪写真1右≫
  バイクが届いた9月17日に、アマゾンで、カバーとミラーを注文したのが、19日には到着しました。 一抱えくらいある箱で、隙間を、空気パックで埋めてありました。 

≪写真2左≫
  大阪繊維資材の、「スマート・バイク・カバー」。 厚手の布を使ってあるタイプ。 サイズは、ゆとりを見て、3Lにしました。 荷台が付いている場合、車種別サイズ表に出ているよりも、一つ上のサイズにしておいた方が無難です。 2299円。

≪写真2右≫
  掛けた様子。 前の方は、裾が少し余りますが、後ろの方は、やはり、荷台が嵩張るようで、ギリギリという感じです。 腹の部分に、ワンタッチ・ジョイント付きの、平紐が付いています。 ワイヤー・ロックなどを通す為の穴が前後にあるのですが、その穴の周囲が、前は赤、後ろは黄色と、色分けされていて、掛ける時に、前後を簡単に見分けられるようになっています。

≪写真3左≫
  ミラーの箱。 品名と品番を書いたラベルが貼ってあるだけで、何の装飾もありませんが、用があるのは中身なので、これで、充分です。

≪写真3右≫
  中身。 楕円メッキ・ミラーです。 本当なら、デフォルトの楕円黒プラ・ミラーが欲しいのですが、日本国内では、新品が売っておらず、ヤフオクの中古はあるものの、左右で、5千円近くするので、断念。 タオパオには、純正品が、500円くらいで出ていますが、送料や手数料を入れると、やはり、3千円以上にはなるはず。 その点、この楕円メッキ・ミラーは、左右セットで、1299円と、破格の安値でした。

  EN125-2Aは、逆輸入125の中では、メッキ部品が多い方なので、楕円でさえあれば、メッキ・ミラーでも、そんなに、おかしくはなかろうと思い、安い方を選びました。

≪写真4≫
  カウルを外し、楕円メッキ・ミラーを付けた様子。 見違えるように、ネイキッドらしい姿になりました。 バイクが届く前までは、純正の専用ビキニ・カウルを付けようかと思っていたのですが、この姿が気に入ってしまい、そんな計画は雲散霧消しました。 やっぱり、オンロード・バイクは、こういう格好をしていないと、らしくありませんな。




  今回は、ここまで。   ヤフオクで、バイクを買ったわけですが、買う前には、画像だけ見て、「ほとんど、直す所はないだろう」とお気楽な気分でいました。 本体だけで、70200円も払ったのだから、ほぼ、完品を期待していたわけです。 その一方、ノー・クレームだから、たとえ、問題箇所があっても、出品者に文句を言う気は、全くありませんでした。 ネット・オークションは、買い手側の方が立場が弱いのは、致し方ないところです。

  届いて、現物を見た瞬間から、なし崩しに、補修せざるを得ない状況に落ち込んで行きました。 壊れているところを、そのままにして、乗るわけには行きませんから。 問題箇所は、まだ、序の口で、この後、一ヵ月までは行かないものの、3分の2ヵ月くらい、補修に明け暮れる事になります。

2019/10/13

バイクを買う

  一度は諦めたバイク生活復活計画。 その後も、ヤフオクでのバイク吟味を未練たらしく続け、二度、入札を試みて、惨敗し、結局、「5万円以下で、バイクを買おうなどという考え方が、間違っているのだ」という教訓を得ました。 なぜなら、まともに動くバイクの場合、安い物件は、大勢が狙っているのであって、たとえ、1万円以下でスタートしても、必ず、競りになり、3万円、5万円、行ってしまうのです。

  そして、スタート価格が安い物件には、必ず、どこかしら不具合があり、買った後、補修しなければなりませんから、その為に、1・2万円は、加算されます。 部品が手に入らず、フェイク修理で我慢せざるをえないものもあります。 そんな事を考えていると、「5万円以上出しても、まだ、完全にならないのか・・・」と、げんなりしてしまいます。




  それにつけても、競りになるような物件に限って、オークション期間が一週間もあるのに、早々と入札して来て、値段を上げてしまう輩が多いのには、呆れ果てる。 たとえば、3万円スタートの物件に、1日目から入札すれば、すぐに対抗して来る者が出て、日当たり、5千円くらい上がって、終了日までには、6・7万円になってしまいます。 その上更に、終了間際の争いもあるわけだから、もっと高くなる。

  早く入札したからって、優先権が発生するわけでもないのに、一体、おのれに、何の得があるのじゃ? 馬鹿じゃなかろうか。 いや、そのものズバリ、馬鹿でしょう。 馬鹿としか言いようがありません。 大方、ネット・オークションのシステムが理解できておらず、テレビなどで見る、生のオークションと勘違いしていて、早く札を挙げなければ、他の者に落とされてしまうと思っているのでしょう。 凄い馬鹿。 凄じい馬鹿。 苛烈なまでの馬鹿。

  ネット・オークションは、誰が幾らをつけようが、終了期限までは終わらないのだという、子供でも分かるような事が、分かっていないのです。 安く買いたいから、安い物件に入札して来るのじゃろうが。 それを、自分で値段を上げてしまって、どうする? 入札なんて、終了1分前でいいのです。 終了までに、入札が間に合えばいいんだわ。 終了直前に、入札が立て込んだとしても、大抵の物件には、「自動延長」の設定が入っているから、間に合わないなんて事はありません。

  早々と入札して来る人間が、単なる馬鹿ではなく、その行為に何らかの理由があるのだとすれば、「自分は、これを欲しいと思っている。 だから、他のやつらは、手を出すな」という、示威目的が考えられます。 実生活でも、「俺が!俺が!」と、他人を押し退けて、利益を掻い込んでいる、ふてぶてしい性格の人間なんでしょう。

  だけど、ネット・オークションじゃ、ライバルの顔なんか見えませんし、どこの誰かも分かりません。 分かるのは、暗号化された記号IDだけです。 そんな相手を怖がる者なんか、いるわけがない。 つける値段だけが武器になる、完全に対等な戦いなのです。 示威行為など、何の意味もありません。 そんな事を当てにしている奴など、やはり、馬鹿でしょう。 ネット・オークションの何たるかが、理解できていないのです。

  それからねえ。 値段を上げる時には、できる限り、刻んでくれな。 1万円からだったら、次は、10500円で入札できるのに、どうして、一気に2万円とかつけるんだよ? 馬鹿か? 繰り返す。 安く買いたいから、安い物件を狙っているのに、自分で高くしていて、どうするんだ? 一気に高値を付ければ、ライバルが諦めると思っているのか? そんなこた、ないわ。 予算までは競ってくるわ。 ポンポン上げれば、高くなる一方だ。

  早々と入札してくる行為にせよ、一気に値段を上げる行為にせよ、他人をナメていて、脅せば言う事をきく、自分の思い通りになると思っているのだとしたら、処世観そのものが間違っている。 他人は、そんなに甘くないわ。 世の中は、そんなに甘くないわ。 実際、そんな事していたって、本当に欲しがっていて、充分な予算を用意しているライバルがいたら、そっちに、みーんな、持ってかれてしまうだろうが。 ネット・オークションのシステム上、コケ脅ししかできないのに、そんなんで、ひるむ大人がいるものかね。

  うーむ、胸糞悪くなるばかりなので、怒りの発散は、このくらいにしておきますか。 どうせ、馬鹿につける薬はない事だし。



  バイク吟味の末期には、「スズキ GS125E」という超ロング・セラー車種が気に入り、あちこち見ていたのですが、安いのが出て来ません。 程度が悪くても、7万円。 部品が揃ったものだと、ヤフオクにはなくて、バイク店の通販ならあったものの、12万円などという、えらい値段になってしまいます。 しかも、陸送費は別です。 とても、買えぬ・・・。

  日本で生産していたのは、1982年から、1990年代末までで、その頃の物件は、出て来たとしても、年式が古過ぎて、買うのはためらわれます。 「直すのが好き」という人もいますが、私は、そういうタイプではありませんし、引退者なので、補修にお金をかけられるほど、ゆとりがありません。 日本での生産・販売が終わった後、しばらく、間が開いて、ごく近年になって、中国から輸入され始めたようですが、逆輸入なので、数が少なく、まだ、中古車が出回っていない様子。 私が欲しがり始めた、タイミングが悪かったわけだ。


  感覚というのは奇妙なもので、10万円を超える物件ばかり見ていると、7・8万円が、安く思えて来ます。 そんな時、埼玉県のバイク店がヤフオクに出している、「スズキ EN125-2A」というのが、税込み70200円なのに気づきました。 以前は、高過ぎると思って、候補に入れてなかったものです。 前の持ち主が後付けした、汎用のビキニ・カウルと、アンダー・カウルが付いていますが、それは、取り外し可能。 部品は完備していて、キズや凹みも見当たりません。 これなら、補修なしでも乗れると見ました。

  陸送費用を質問したところ、自宅まで、14000円だとの事。 自走引き取りの場合、電車で埼玉県まで行くと、3000円くらい。 帰りのガソリン代が1000円として、4000円。 差額が、1万円程度なら、初めての車種で、初めての道を帰るリスクと比べて、そんなに高いとは思えません。 マジな話、100キロ近い距離を走る場合、「初めての~」が二つ重なると、どんな事故が起こっても、不思議ではないです。

  バイクの陸送には、陸送業者の駅になっているデポまで運ぶ、「デポ止め」と、自宅まで運ぶ、「toドア」の2種類があります。 デポ止めだと、デポから自宅まで持ち帰るのに、軽トラを手配するか、書類を先に送ってもらって、予め登録を済ませ、ナンバーを付けて、自走して来なければなりません。 その点、「toドア」なら、宅配便と同じで、ただ家で待っていれば、届けて貰えます。 登録も、好きな時にやればいいわけです。

  で、その物件に決め、9月5日、終了期限直前の、夜8時半頃に入札。 競らずに落札しました。 競りなんか、好んでやるもんじゃありませんな。 勝てば、一瞬、気持ちいいですが、相手は嫌な思いをしているわけで、恨みを買っていい事なんか、何もありません。 少々、高くなっても、競らずに欲しい物が手に入るなら、それに越した事はないです。 「犬が西向きゃ、尾は東」も分からんような馬鹿どもの相手なんかしてられん。

  オーダー・フォームに必要事項を書き込んだら、翌6日の午前11時頃、送料確認の連絡があり、質問の回答通り、14000円だとの事。 ヤフオク・カテゴリーが、「バイク車体」の場合、簡単決済の手数料がかかり、金額が3万円以上なら、5%で、4210円も取られましたが、まあ、ヤフオクでバイクを買うのは、これが最初で最後なわけで、気にしない事にしましょう。 合計、88410円。 昼過ぎに、コンビニで払って来ました。

  早速、出品者から連絡があり、配送手配したとの事。 次は、陸送業者からの電話があるから、納車日時を決めて欲しいとの事でした。 了解、了解。

  で、その後、陸送業者から電話があったのですが、配達日が決まるまでに、三回もかかりました。 8月・9月は、繁忙期だそうで、最も早くても、9月16日になるとの事。 で、最終的に決まったのが、9月17日の午前7時頃という時刻でした。 早いな。 夜通し、走って来るんですかね? 夜の方が、道路はすいているでしょうけど。 7時というと、小学生の登校時間と重なってしまいますが、まあ、それは、大した問題ではないです。

  私の場合、何か用事があって使うわけではないから、遅れても構わないんですが、バイクは生き物なので、あまり、遅くなると、バッテリーが死んでしまいます。 私が落札するまでに、かなり長い間、出品者の店にあったのだから、もう、死んでいるかも知れませんが、充電して復活させるにも、早い方がいいのは、当然の事。




  さて、これで、再び、バイクに乗る事になったわけですが、その時点ではまだ、バイクの受け取り、役所への登録とナンバー取得、自賠責保険、任意保険と、実際に乗れるようになるまでに、やる事が多くあったせいか、実感が湧きませんでした。

2019/10/06

読書感想文・蔵出し (56)

  読書感想文です。 前回に引き続き、前文に書く事がないので、私の近況を書きますと、ヤフオクで買ったバイクの補修を続けています。 中古ですから、承知してはいたものの、新車ならありえない問題点が続々と見つかり、「なるほど、これでは、前の持ち主が手放したのも、出品者のバイク店が、ノークレーム・ノーリターンを断っているのも、むべなるかな」と、つくづく納得した次第。 まあ、直して、乗りますけどね。




≪赤い水泳着≫

横溝正史探偵小説コレクション①
出版芸術社 2004年9月15日/初版
横溝正史 著

  沼津市立図書館で借りて来た本。 角川旧版の終了後、割と近年になって発行された、落穂拾い的な短編集です。 横溝さんの、投稿時代から、戦中までの作品、14作を収録。 一応、ページ数を書きますが、二段組なので、そのつもりで。 【悲しき郵便屋】は、角川文庫版、≪恐ろしき四月馬鹿≫で、【薔薇王】は、同、≪悪魔の家≫で、感想を書いているので、省きます。


  以下、ネタバレ、あり。 数が多いので、いちいち、気にしてられません。 大丈夫。 ショートショートではなく、短編ですから、ネタバレしても、大した問題はありません。 面白いものは面白いし、つまらないものはつまらないです。 発表年と掲載雑誌のデータは、ややこしくなるので、割愛。


【一個のナイフより】 約7ページ
  手に入れた、一本のナイフの様子から、その持ち主を推理する話。

  ホームズがよくやる、観察と分析で、相手の素性を言い当てる、あれですな。 元を辿れば、デュパンの特技ですが。 推理は当たっていたが、犯人ではなかったという、毒気の薄い話になっています。


【紫の道化師】 約21ページ
  スリが、すろうとした相手に捕まり、ある屋敷に連れて行かれて、命令のような言葉を羅列した文章を読まされる。 その翌日、検事の屋敷で、その息子が殺される。 数年前に姿を消した凶賊、「紫の道化師」が、犯人かと思われたが、実は・・・、という話。

  草双紙趣味の活劇です。 なので、面白いといっても、知れています。 催眠術と、マイク、スピーカーを使い、遠隔殺人を行なわせるというのは、戦後の少年向け作品で再利用されています。 電気仕掛けは、当時としては、最先端のトリックだったのでしょう。


【乗合自動車の客】 約11ページ
  終列車を逃した客が利用するバスで、たまたま乗り合わせた男に、一ヵ月前に手術した腕の傷痕を見せてくれと言われた人物が、しぶしぶ、見せようとすると、突然、相手の男が、刑事に逮捕されてしまい・・・、という話。

  ほんの短い話なりに、内容が希薄。 そもそも、不思議なところも、奇妙なところもないのだから、面白がりようがありません。  


【赤い水泳着】 約15ページ
  海辺のホテルで、風景画を描いていた女性が、遠くに干してあった赤い水泳着から、赤い液体が垂れているのを見て、犯罪が行なわれた事に気づく話。

  表題作ですが、全然、大した事はありません。 この作品、戦後になって、【赤の中の女】という、金田一物の短編に書き改められますが、さすがに、「赤い水着なので、付着した血が分からなかった」という謎は、子供騙しっぽいと思ったのか、謎の部分は、他の物に入れ替えられています。


【死屍を喰う虫】 約17ページ
  丘の上にある、三軒の家。 一軒の主が、掘っている途中の井戸に落ちて死に、事故死として処理されたのを、その息子が、罠を仕掛けて、犯人を炙り出す話。

  登場人物が少ないので、犯人はすぐに分かります。 この作品の読ませ所は、犯人を炙り出す方法と、井戸にどうやって落としたか、その謎なのですが、どちらも、至って他愛ないもので、一見面白そうに感じられる舞台設定の細かさと、吊り合っていません。

  角川文庫版、≪恐ろしき四月馬鹿≫収録の【丘の三軒家】が原型になったらしいです。 梗概と感想は同じなので、そちらから、移植しました。


【髑髏鬼】 約24ページ
  髑髏のような顔をした人物が、夜な夜な目撃され、騒ぎになっている界隈。 資産家の屋敷で、その家の令嬢が、秘密を握る男に脅され、結婚を迫られていた。 それ以前に、その屋敷で養われていた兄妹の内、兄の方が行方不明になっていて・・・、という話。

  髑髏男が不気味なだけで、別に、面白いところはありません。


【迷路の三人】 約23ページ
  ある夜、廃墟の迷路へ、肝試しに行った三人連れの内、一人が殺される。 たまたま、近くにいた由利先生が、ショールに付いた燐から、犯人を特定する話。

  これは、外国作品の翻案らしいです。 由利先生を引っ張り出すほどのボリュームではないです。 好ましい性格の人物が殺されてしまうので、何となく、読後感が悪いです。


【ある戦死】 約14ページ
  新聞を読んでいて、かつて、友人の妻を奪って逃げた男が戦死した事を知った主人公が、病身の友人から、雑誌に出ていた映画女優のしている指輪の出所を調べてくれるように頼まれる。 その指輪は、友人が妻に贈った物だった。 ある青年が指輪を手に入れた経緯を語り、真相が明らかになる話。

  面白いです。 この短編集の中だけでなく、私が今までに読んだ横溝さんの短編の中で、最も面白かったです。 書き方が巧みで、事件の様子が、少しずつ分かって来るところが、秀逸。


【盲人の手】 約12ページ
  本州で食い詰めて、北海道へ流れて行く船の中で、小金を持っている老人に誘われ、妻になった女が、老人が変死した後、一人で、本州へ戻る船に乗るが、その船には、老人が飼っていた犬も乗っていて・・・、という話。

  作品よりも、この梗概の方が面白そうだな。 一見、社会派風ですが、シンプルなストーリーに、それっぽく肉付けしただけです。 ラストは、なぜ、そうなるのか、よく理解できません。


【木馬に乗る令嬢】 約14ページ
  毎日、アメリカ人女性と、回転木馬に乗りに行く令嬢が、実は、スパイの手伝いをさせられていた、という話。

  回転木馬の、様々な色の木馬に乗り移る事で、暗号を伝えていたというトリック。 横溝さんが書きたかったのは、トリックの方で、スパイの暗号にしたのは、戦時下に、戦争協力しているように装わないと、作品が検閲で落とされる恐れがあったからだと思います。


【八百八十番目の護謨の木】 約ページ
  ある殺人事件で残された、「○谷」というダイイング・メッセージが、「大谷」ではなく、ボルネオ島のゴム農園にある、「○八八○」番の木の事ではないかと気づいて、わざわざ、ボルネオまで訪ねて行く話。

  これも、戦時下シフトの作品。 謎が、子供騙し過ぎます。 これなら、【木馬に乗る令嬢】の方が、よく出来ていました。


【二千六百万年】 約17ページ
  遠い未来に、人類社会がどうなっているかを、睡眠によって、時を超え、見に行く話。

  もろ、SF。 自力で空を飛べる未来人類が出て来ますが、背中に翼を付けるのではなく、蝙蝠に近い皮膜にしてあるのは、さすが、理系の作者だと思わせます。 全体のアイデアは、ユートピア小説というより、ウェルズの、≪タイムマシン≫が元になっているのではないでしょうか。

  実は、これも、戦時下シフト作品で、どうせ、探偵小説が検閲で落とされるのなら、SFにしてしまえという、開き直りで書いたもののようです。 そんなに面白いものではないです。 ちなみに、横溝さんのSF趣味は、戦後の少年向け作品で、いくらも見る事ができます。



≪深夜の魔術師≫

横溝正史探偵小説コレクション②
出版芸術社 2004年10月20日/初版
横溝正史 著

  沼津市立図書館で借りて来た本。 角川旧版の終了後、割と近年になって発行された、落穂拾い的な短編集です。 戦中期の作品、11作を収録。 表題作の、【深夜の魔術師】だけ、中編。 他は、短編。 2段組みです。


【深夜の魔術師】 約82ページ
  1938年(昭和13年)8月から、1939年1月まで、「新少年」に連載されたもの。

  無音航空機の設計図を狙って、「深夜の魔術師」と名乗る怪人が凶行を繰り返し、由利・三津木コンビが、翻弄される話。

  活劇で、戦前の、大人向けの由利・三津木物と、戦後の少年向け作品を足して、2で割ったような内容です。 地下通路で水攻めとか、川の上の追撃戦とか、お決まりのパターンも含まれています。 軍事技術がモチーフになっている点や、犯人の国籍など、いかにも、戦時下シフトという感じの設定。


【広東の鸚鵡】
【三代の桜】
【御朱印地図】
【沙漠の呼声】
【焔の漂流船】
【慰問文】
【神兵東より来る】
【玄米食婦人】
【大鵬丸消息なし】
【亜細亜の日月】

  タイトルを見ても分かると思いますが、この10作は、戦時下シフトを通り越して、国策賛美小説として、書かれたもの。 国策を皮肉ったようなところはなく、純然たるプロパガンダです。 解説によると、国策協力の作品を載せないと、雑誌を発行できなくなってしまっていたようです。

  横溝さんは、戦争は虫唾が走るほど嫌いで、とりわけ、探偵小説を発表できない状況に追い込まれた事で、軍部に対する恨みには、ドス黒いほどのものがあり、こんな小説を好んで書くわけがないのですが、出版社の都合とか、家族を養う為に致し方なくとか、そういった理由で書いたのではないかと思います。

  戦争嫌いの横溝さんですら、こういう作品を書かざるを得なかったのですから、他の作家は、どんなものを書いていたのか、想像するのも恐ろしい。 言うまでもなく、自ら進んで、戦争賛美をやっていた作家は、敗戦と同時に息の根を止められて、廃業。 今では、古書を漁らない限り、その作品を読む事はできなくなっています。 戦後から見ると、嘘や妄想を事実のように書いたものばかりなので、研究者以外は、価値を認めないでしょう。

  横溝さんの作品に話を戻しますが、「横溝さんの作品だから、プロパガンダでも、読む価値がある」という事はないです。 国策賛美小説である事が前面に出ていて、そこだけ外して、他の部分を楽しむという事はできません。 プロパガンダの浸潤が甚だし過ぎるのです。 ちなみに、活劇部分はありますが、トリックは見られず、謎も希薄です。

  角川文庫・旧版は、批評家の中島河太郎さんが、全作網羅を目指していたとの事ですが、こういう国策賛美作品は、入っていません。 中島さんが、これらの作品の存在を知らなかったとは思えませんから、意識して外したのでしょう。 おそらく、これらの作品は、横溝さんが、最も、後世に残したくなかったものなのではないかと思います。 もし、ご本人が存命だったら、この本の出版を許さなかったんじゃないでしょうか。



≪扉の影の女≫

角川文庫
角川書店 1975年10月30日/初版
横溝正史 著

  私の手持ちの本。 1995年9月頃に、沼津・三島の古本屋を回って、横溝正史作品を買い漁った内の一冊です。 長編2作が、収録されていて、どちらも、この24年の間に、何回か読み返しています。 にも拘らず、話の内容をすっかり忘れてしまうのは、不思議です。 逆に考えると、忘れ易い話だからこそ、何度も読み返したくなるのかも知れません。


【扉の影の女】 約248ページ
  1961年(昭和36年)1月に刊行。 元は、短編だったのを、長編化したもの。

  築地入船橋下で水死体となって発見されたホステスが、実は、西銀座の袋小路にある稲荷神社の境内で殺されていた事が分かる。 犯人らしき人影を目撃してしまったという、別のホステスの依頼で、事件に関った金田一が、すぐ近くにあるレストランの店員や客、依頼人の色であるボクサー、事件現場にいた車の持ち主など、多過ぎる関係者を相手に、警察とは適度な距離を置きつつ、多門修を使って、捜査を進める話。

  これ、ほんとに、何度も読んでいます。 レストランの裏口のドアが、タイトルにある「扉」でして、その辺が細かく書き込まれているので、ビジュアル的に、頭に焼き付いているのだと思います。 だけど、犯人は誰か、謎は何だったか、その辺のところは、何度読んでも、すぐに忘れてしまいます。

  短編だったものを、長編化した横溝作品に、共通していますが、後から、エピソードを足しているせいか、二つの話がダブっているような感じがします。 絡め合わせ、結び付けてあるんですが、紐帯が弱く、最初から長編として考案した作品と比べると、分裂感を覚えるのです。 それが複雑な印象を与えるのだと思うのですが、面白さに繋がっていない複雑さは、美点とは言えません。

  これまた、短編を長編化した横溝作品によく見られる事ですが、会話が多くなるのも、弱点になります。 聞き取りの会話場面というのは、長引くと、読むのがつらくなって来ます。 この作品では、ボクサーの青年と、多門修が、若者言葉で喋るのですが、それが、また、口語丸出しで、長ったらしいので、しんどい。

  だけど、この作品、内容的には、メジャー長編に負けないものがあると思います。 都会を舞台にした金田一物の代表作と言ってもいいのでは? 出来は、【夜の黒豹】よりも、上なんじゃないでしょうか。


【鏡が浦の殺人】 約101ページ
  1957年(昭和32年)8月に、「オール読物」に掲載されたもの。

  鏡が浦の海水浴場。 読唇術を会得している大学教授が、海に浮かぶヨットを双眼鏡で見ていて、乗っている二人が、殺人計画について話しているのを、読み取ってしまう。 その翌日に開催された、ミス・カガミガウラ・コンクールの会場で、教授が死亡し、当初、心臓発作かと思われたが、ある人物の強い要請で、高名な法医学者が呼ばれ、検死がやり直された結果、毒殺と分かり・・・、という話。

  休暇で滞在していた金田一と、招待された等々力警部が出てきます。 海辺を舞台にした話として、【赤の中の女】や、【死神の矢】がありますが、舞台設定は、みな、よく似ています。 トリックや謎は、違いますけど。 等々力警部は、いつも、金田一に誘われて、遊びにやって来ては、事件が起こってしまい、地元署の捜査に引きずり込まれるというパターン。 でも、警部は何もせず、全て、金田一が片付けます。

  トリックは、子供騙しレベルですが、それが話の中心ではないので、問題ありません。 むしろ、分裂感の方が、問題です。 事件が起こった後に、犯人候補の面々が集まって来るので、何となく、後出しをされたような気分になります。 しかし、それは、錯覚で、事件が起こる前に、リップ・リーディングの場面が一山あるせいで、推理小説の定番ストーリー・パターンが崩されているだけなんですな。

  リップ・リーディングが、メインのモチーフで、初めて、読んだ時には、ゾクゾクしました。 大学教授の他に、もう一人、それを会得している子供が出て来て、後半で、一場面、盛り上げますが、そちらは、オマケのようなもので、その子供のお陰で、事件が解決するわけではありません。

  終わりの方、お涙頂戴に流れそうになる当たり、【死神の矢】に少し似ていますが、【死神の矢】ほど、不自然ではないです。 やっぱり、犯人は悪党でなければ、いけませんねえ。 その点、まともな話です。



≪聖女の首≫

横溝正史探偵小説コレクション③
出版芸術社 2004年11月20日/初版
横溝正史 著

  沼津市立図書館で借りて来た本。 角川旧版の終了後、割と近年になって発行された、落穂拾い的な短編集です。 戦中期から、戦後間もない頃までの短編・中編、11作を収録。 2段組みです。


【金襴護符】 約24ページ
  1943年(昭和18年)5月、「新青年」に掲載されたもの。

  慰問袋に入れられていたお守りに隠された、家宝の地図を巡って、滑稽な奪い合いが演じられる話。

  戦時下作品にしては、オチのある喜劇で、まともな作品です。 しかし、最終的には、「欲しがりません、勝つまでは」という国の宣伝を援ける内容になっており、苦しさは隠せません。


【海の一族】
【ナミ子さん一家】
【剣の系図】
【竹槍】

  この4作は、国策賛美小説として書かれ、いずれも、「新青年」に掲載されたもの。 検閲を突破する為に、いろいろと工夫を凝らしたのは分かりますが、戦争協力してしまっている事に変わりはなく、評価のしようがありません。 これらも、横溝さんは、後世に残したくなかったでしょうねえ。 この本を出版した人達は、あの世で、横溝さんに、口も利いてもらえないと思います。


【聖女の首】 約24ページ
  1948年(昭和23年)2月、「東京」に掲載されたもの。

  実家の牧場が傾いて、東京の喫茶店で働いていた美しい娘が、彫刻家のモデルになって、胸像を作ってもらった後、三人の男から求婚されるが、ある時を境に、三人から一遍に、フラれてしまう。 実は彫刻家は、他にも、娘をモデルに、様々な表情の胸像を作っていて・・・という話。

  後に、金田一物に書き改められて、【七つの仮面】になります。 そちらの方が、長いです。 こちらは、原型短編という事になりますが、先に、【七つの仮面】を読んでいると、エピソードが少ないせいで、ちょっと、物足りなく感じます。 アイデアは、面白いです。


【車井戸は何故軋る】 約51ページ
  1949年(昭和24年)1月、「読物春秋」に掲載されたもの。

  後に、金田一物に書き改められて、【車井戸はなぜ軋る】になります。 ≪本陣殺人事件≫の時に、梗概と感想を書いているので、繰り返しません。


【悪霊】 約27ページ
  1949年(昭和24年)2月、「キング・夏の増刊」に掲載されたもの。

  後に、金田一物に書き改められて、【首】になります。 ≪首≫の時に、梗概と感想を書いているので、繰り返しません。


【人面瘡】 約32ページ
  1949年(昭和24年)12月、「講談倶楽部」に掲載されたもの。

  後に、金田一物に書き改められて、同題異作の、【人面瘡】になります。 ≪人面瘡≫の時に、梗概と感想を書いているので、繰り返しません。


【肖像画】 約16ページ
  1952年(昭和27年)7月、「りべらる・増刊」に掲載されたもの。

  後に、金田一物に書き改められて、【ペルシャ猫を抱く女】になります。 ≪ペルシャ猫を抱く女≫の時に、梗概と感想を書いているので、繰り返しません。


  以上、原型短編の5作ですが、長さが異なる【聖女の首 → 七つの仮面】は別として、【車井戸は何故軋る → 車井戸はなぜ軋る】、【悪霊 → 首】、【人面瘡 → 人面瘡】、【肖像画 → ペルシャ猫を抱く女】は、改作後も、内容は、ほとんど同じです。 無理やり、登場人物の一人を、金田一に差し替えたもので、改作後の方が、むしろ、出来が悪いです。 金田一物に書き換えざるを得ない理由が、何かあったんでしょうねえ。


【黄金の花びら】 約18ページ
 1953年(昭和28年)1月、「少年クラブ・増刊」に掲載されたもの。

  以下、ネタバレ、あり。

  仏像蒐集家の屋敷に泥棒が入り、射撃がうまい少年が、2階から威嚇射撃したところ、犯人の背中にあたり、殺してしまった。 屋敷にいた自称・小説家の男が、実験を行なって、銃弾の角度から、少年が撃った弾が殺したわけではない事を証明する話。

  少年向けの作品。 金田一が出て来ますが、最後まで、名前と職業を詐称しているので、読んでいる間は分かりません。 服装は、金田一そのものなんですが、それだけでは、確信が持てないので・・・。

  死体に撃ち込まれた弾丸の角度が、60度で、直立した人形で実験したら、同じ60度だったから、「それ見た事か、少年が撃った弾だ」と言うのを、自称・小説家が、「逃げる時には、前傾姿勢になるから、60度では、おかしい」と指摘するのですが、それも、おかしな話です。 走っている土地が下り坂になっているのなら、前傾姿勢で走ったら、怖いでしょうに。 下り坂では、体を起こし気味で走る事になるから、直立姿勢に近くなるんじゃないでしょうか。

  そういう事は、承知の上で、少年向けだから、シンプルな話にしたのだと思いますが、ちょっと、安直過ぎる感じがしないではないですねえ。




  以上、四作です。 読んだ期間は、今年、つまり、2019年の、

≪赤い水泳着≫が、5月31日から、6月6日にかけて。
≪深夜の魔術師≫が、6月6日から、9日まで。
≪扉の影の女≫が、4月28日から、6月12日。
≪聖女の首≫が、6月12日から、13日にかけて。

  ≪扉の影の女≫は、図書館で借りてきた本の合間に、ちょこちょこと読んでいたので、期間が長くなっています。 すでに、何度か読んでいる作品の読み返しだから、一気に読んでしまおうという気にならないのです。

  日記ブログの方にアップした、読書感想文に追いついてしまったので、とりあえず、このシリーズは、今回まで。 次回からは、バイク生活復活計画の話になります。