2007/06/24

サブ・カルチャー

  漫画とアニメが、日本文化の世界発信として持ち上げられるようになってから、二十年くらいたちますかねえ。 未だに同じような論調で、「日本はサブカルチャーで世界を制した」などと解説していている文章を見かけますが、そんな事今更言われなくても、誰でも知ってるって。 こういう事を書く連中は、十人中十人が自国文化に自己陶酔しているわけですが、それでいて自分自身が漫画やアニメの製作に関わっているわけではなく、他人の褌で相撲を取っているわけですな。 何とも、恥かしい奴ら。

  私は、漫画の方はもう二十年も前に読むのをやめてしまいましたが、アニメはずっと見続けてきたので、人並みより詳しいつもりです。 私がアニメを見続けてきた最大の理由は、純粋に、「面白かったから」です。 実際には、アニメの質は時代によって激しい浮き沈みがあり、見るに値する作品が全然無い時期もあったのですが、そんな有様でも、実写映画・ドラマよりはマシだったので、今に至るまで見続けて来たわけです。 すなわち、アニメが優れていたというより、実写映画・ドラマがつまらなかったので、自動的にアニメを見ざるを得なかったんですな。

  見続けてきたからこそ言える事ですが、「日本のアニメはすべて良い」といった雑な括り方をする輩がいると、カチンと来ます。 実際には、十本放送されていれば、九本はスカなのであって、本当にアニメを見て楽しんでいる者は、絶対にそんな雑な事は言わないからです。 日本アニメをべた誉めする連中は、「外国作品と比べれば、日本のアニメの方が優れている」という言い方をするわけですが、この≪外国≫というのが、どこを指しているのかはっきりしません。 比較する場合には、条件を合わせなければなりませんが、日本と比較できるほどのアニメ業界が存在する国というとアメリカだけです。 そしてアメリカのアニメは、日本のアニメに劣るという事はありません。

  アメリカのアニメは、キャラクター・デザインこそ見るに耐えないほど下手なものの、ストーリーの構成は素晴らしく、私の評価点で90点以下をつけた作品は一本もありません。 実写映画で培った脚本のノウハウがアニメにも応用されているので、つまらなくなりようがないんですな。 実写映画がスカばかりで、脚本といえば個人の才能に頼っているような日本では到底真似が出来ない高水準です。 たとえば、宮崎駿作品なども、「もののけ姫」や「紅の豚」などはひどくお粗末なストーリー展開ですが、脚本の段階でディズニーの脚本チームに見せれば、ジブリのスタッフが「えっ!」と驚くような、まとまりのいいストーリーに修正してくれたんじゃないでしょうか。 脚本に関する日米の実力差は、幼稚園児と大学教授くらいの開きがあると思います。

  他に業界が成立するような規模でアニメを作っている国というと、ちょっと思いつきません。 フランスやロシアなどヨーロッパ諸国にもアニメはありますが、業界ではなく、専ら個人が中心になって映像作品の一ジャンルとして作っています。 韓国アニメは近年高水準なものが増えましたが、日本のようにアニメがうじゃうじゃ作られるという環境ではありません。 韓国のアニメ業界は、日本の下請けとして発達したもので、言わば輸出産業でした。 そのシステムを利用して、韓国製のアニメも作られるようになったわけですが、韓国では実写で出来るものは実写で作ってしまうので、アニメはあくまでマイナーに存在です。 この事情は中国でも同様。 そもそも、これらの国やアメリカでは、アニメは大人が見る物とは思われていません。

  「アニメは子供向け」というのは、実は日本にも当て嵌まります。 「日本のアニメは大人の鑑賞に耐える」などと言う人も多いですが、昨今、歳はとっても頭の中が大人になれない日本人が増えた為に、錯覚を起こしているのです。 それが証拠に現在40歳以上の人にアンケートを取ってみれば、日常的にアニメを見ている人の割合は1パーセントにも満たないはずです。 日本アニメを正確に言い表すなら、「日本のアニメは、学生以上の鑑賞に耐える」というべきでしょう。 この場合の≪学生以上≫とは、中学生から20代後半くらいまでを指します。 ちょっと脱線しますが、「アニメに夢中」という人間を結婚相手に選ばない方がいいです。 大人になっていないというよりも、現実世界から逃避する傾向が見られるので、何か重大な問題が起こった時に、対処できない可能性が高いからです。

  私は、外国人相手に日本のアニメをあまり誇り過ぎない方がいいと思っています。 先に述べた「全体の九割はスカ」だからという事もありますが、そういうこちらの事情ではなく、日本のアニメに夢中になる外国人側に些か問題があるからです。 フランスは日本アニメの人気が高い国ですが、私がネット上で話をしたフランス人達の印象から言うと、アニメに夢中になっているようなフランス人は、軒並み知能レベルが低い連中でした。 「日本のアニメが好きです」と日本語で書いてきたり、具体的な作品名を出して誉めたりするわけですが、文章の書き方にしても、批評の内容にしても、稚拙なレベルに留まっており、とてもまともに話が出来る相手ではありませんでした。 一言で言うと、≪子供≫なのです。 フランスに限らず、日本のアニメを誉めている外国人というのは、大抵こういう手合いだと思うのですよ。

  今度、新聞やテレビで、「○○国で、日本のアニメが大人気!」といった内容の記事や特集があったら、一体その国の≪どんな連中に≫大人気なのか、注意して見てみるのが良いと思います。 対象は一般的な大人では絶対ありえないと思います。 レンタル・ショップに来ている青少年にインタビューしていたら、「ああ、つまり、こういうガキどもに受けてるんだな」くらいに思って、軽く捉えておくのがよいでしょう。 サブ・カルチャーは所詮サブ・カルチャーだという事を忘れてしまうと、とんだ大恥を掻く事になります。

  私が心配しているのは、漫画、アニメ、ゲームなど、日本発のサブ・カルチャーが、人類全体の知能レベルを下げる方向に働いているのではないかという事です。 日本人は、思想・哲学方面で全く適合性が無く、人類文明の進歩に何の寄与もしていないのですが、単に寄与しないばかりでなく、足を引っ張っているのではないかと懸念しているわけです。 ゲームは典型的ですが、漫画でもアニメでも、耽溺して知能が上がるという事はまずありえませんから。 そういえば、もう一つ、日本発で世界的に評価されているジャンルに、アダルト・ビデオがありますが、あれに至っては、サブ・カルチャーとすら言えず、害毒を垂れ流しているとしか思えません。 何だか、そんなのばっかりだねえ。

2007/06/17

嫁き遅れ哀歌

  私の従妹の一人が結婚するそうです。 私には、35歳過ぎて嫁き遅れの従妹が三人いたんですが、去年一人結婚し、「へえー! よく相手が見つかったなあ!」と驚いていたら、今回二人目が成婚と相成り、立て続けにびっくり仰天。 もはや、口あんぐりの次元ですな。

  35歳過ぎてから結婚したというと、10年前だったら、「ああ、見合いしたんだろう」と誰でも思ったでしょうが、今まで何度かこのコラムで指摘してきたとおり、すでに≪見合い≫という風習は絶滅しており、この二人も見合い結婚ではありませんでした。 だからあ、今時見合いなんてやってるのは、ドラマや映画の中だけなんですよ。 監督やプロデューサーが世間知らずで、見合いが滅んだ事を知らないまま、単なるストーリー上のモチーフとして使っているだけなんですよ。

  そうそう、ちょっと脱線しますが、ここで以前に、≪滅び行く見合い≫という文章を書いたんですが、ある時、その文にトラックバックが入りました。 トラックバックといっても、ただの宣伝リンクだったので、即座に削除しましたが、そこは見合いに関する作法を教えているサイトでした。 「今でもやってる所があるのか?」と思って、ちょっと読んでみたんですが、どうも見合いを拡大解釈しているようでした。 結婚相談所で紹介された相手と最初に会う事を、見合いの内に入れてしまっているのです。 見合いの概念がはっきり分かっていない人は混同しているかもしれませんが、そういうのは見合いとは言いません。 見合いとは、親や親戚、勤め先の上司・同僚などが中介して、互いに縁談を紹介しあう社会システム全体を指す言葉です。 結婚相談所が主催する≪お見合いパーティー≫なども、言葉を流用しているだけで、本来の見合いシステムとは関係ありません。 見合いは、≪家系≫を維持する為に、社会の仕組みとして機能するものですが、結婚相談所は≪個人≫を対象としており、根本的に異質なものです。

  くれぐれも注意しておきますが、「焦って結婚しなくても、30過ぎたら親戚が見合いの話をわんさか持って来る」などという期待はしないように。 当人だけでなく、親までそんなつもりで呑気に構えているケースが多く見られますが、とんだ思い違いです。 見合いなんて、もうどこでもやっちゃあいないのです。 もし見合い全盛の頃だったら、「30過ぎたら・・・」どころではなく、20代の頃から、縁談が続々と持ちかけられたはずです。 今じゃそんな話来ないでしょう? やってないからなんですよ。 ドラマや映画にごまかされてはいけません。 えらい事になるでよ。

  で、私の従妹の話なんですが、去年結婚した奴は、職場結婚でした。 フリーターで働きに行っていた事務所で知り合ったのだそうです。 私の感覚から言うと、相手の男の気が知れず、「よく、35過ぎた女に近づく気になったなあ」と呆れるのですが、おそらく相手の男も結婚できずに困っていて、妥協に妥協を重ねて、半ババアでも手を打たざるを得なかったんでしょう。 何だか、凄く失礼な言い方をしているようですが、本音で書いているので御酌量あれ。 ぶっちゃけた話、30過ぎて、笑っただけで顔中に皺が寄るような女と結婚しても、性の悦びはほとんど期待できますまい。 本来なら、10代半ばの互いにまだ成長期にある頃にすべき事を、20年も過ぎてからやろうというのですから、そりゃ、楽しみも半減するでしょう。 「醜い物を見てしまった・・・・」、「おぞましい物に触れてしまった・・・・」てな感じですな。 何かの映画で聞いたセリフですが、「青春は、箱にしまって取っておける物ではない」というのは、否定のしようがない真実なのです。

  で、今回の従妹ですが、たぶん、去年、自分の従妹が結婚したという話を聞いて、焦りに焦ったのでしょう。 尻に火がついて、「もう相手は誰でもいい」と思ったんでしょうね。 なんと、農家の長男と結婚するのだそうです。 いやあ、追い詰められたねえ。 逃げ場を失って、火の中に飛び込んでしまったわけですな。 いや、柳川鍋の泥鰌の方が譬えがいいかな? まあ、普通に考えて、35過ぎるまで親元でぬくぬく遊んでいた女に、農家の嫁が務まるわけがありませんな。 よほどの働き者でも、奴隷同然にこき使われて、みるみる性根が拗けてしまうのに、自分の部屋でごろごろテレビ見て暮らし、24時間食うか寝るかで、ぶくぶく太るのが仕事だったような女が、野良仕事なんて出来るわけねーじゃん。 金輪際無理無理。 農家の嫁どころか、サラリーマン家庭の専業主婦ですら務まりますまい。

  でね、その従妹の父親、つまり私の伯父さんですが、その人が、子供の自慢が好きな人でねえ。 昔は、うちに来れば子供の自慢話ばっかり。 今回、三人いる子供の内、最後の一人が片付いたもんだから、恐らく、べえらべらって自慢話を垂れると思うんですよ。 全くみっともない。 口の回る伯父さんというのは、子供の頃には甥や姪から好かれるものですが、大人になってから観察すると、軽薄すぎて全く尊敬できず、よーく権威失墜してしまうものです。 いやあ、今から何を喋るか想像がつきますよ。 たぶん、自分の娘の嫁ぎ先が、どれだけ土地を持っているか、自慢の嵐になるでしょうね。 ろっくでもない。 その内、「離婚した」なんて言って、愚痴をこぼしに来るなよ。

  どうも取り止めが無い話ばかりで恐縮ですが、取り止め無いついでに、三人目の従妹の事も書いておきましょう。 その従妹、最後の嫁き遅れになったわけですが、当人は「一生結婚しない」と言ってました。 父親がドメスティック・バイオレンスの人で、反目が絶えず、若い頃に家を飛び出してしまったのです。 別に喧嘩しているわけではないが、一緒に暮らすのは耐えられないのだとか。 今は、職を転々としながら、一人で暮らしています。 この従妹、親戚筋の中では最も顔立ちが整っている美形だったのですが、勿体無い事に、暴力を振るう父親を見て育ったので、「自分は結婚しない」と誓ってしまったのです。 一応筋が通っているんですが、今35歳過ぎて、果たしてまだそう思っているのかどうか・・・・。

  私、断言してもいいですが、この世に生物として生まれて来て、「結婚したくない」なんて本気で思っている奴は、存在しないと思うんですよ。 そんなの、自然の摂理に反しますからね。 植物ですら、子孫を残す為に、毎年必死で花を咲かせるじゃありませんか。 況や人間に於いてをや。 極端な事を言えば、生物たるもの、交配する為に生まれて来るのだといっても過言ではない。 結婚しても、結果的に子供が出来ない場合はありますが、それと、最初から結婚しないというのは全然次元が違う事です。 最初から結婚する気が無いなんて奴は、死んでいるのと大差ないんじゃないですかね? ひどい言い方のようですが、こう言われて、最も深く頷いているのは、結婚できないまま人生を折り返そうとしている人達だと思います。 既に結婚した人達には、感覚的にこの虚しさが理解できないようですな。 よく、「結婚は地獄だよ」なんて言う人がいますが、結婚しているからそんな事が言えるのであって、結婚しないまま死ぬのは、もっと地獄です。

  さて、この三人目の従妹、風の便りに自分が最後の嫁き遅れになった事を耳にするでしょうが、どうするつもりか実に興味深いです。

  だけど、親が子供の結婚に腐心しないというのは、奇怪な現象ですよねえ。 子供が結婚しなければ、孫も出来ないわけで、場合によっては子孫が絶えるわけですが、そんな事になったら困るでしょうが。 自分達はせっせと盆暮彼岸に墓の掃除にせいを出していますが、子孫がいなくなれば、そんな墓見る者がいなくなって、野晒しの末に他人の手で毀たれるんですぜ。 当然自分の骨も、ゴミ同様に処分されるわけです。 自分は先祖の骨を守っているのに、自分の骨はゴミになるなんて、なんか理不尽だと感じないんですかね? 無宗教者らしく、「死んだ後の心配なんて、してもしょうがない」と開き直るなら、先祖の墓を守る必要もありますまい。

2007/06/10

熱川バナナワニ園

2007年5月3日に、東伊豆町の≪熱川バナナワニ園≫に行って来ました。 7時に家を出て、伊豆半島を斜めに横断し、9時ちょっと前に着きました。

  ≪熱川バナナワニ園≫は、本園(ワニ園、熱帯植物園)と分園に分かれていて、かなり広いですが、水槽、温室、池、檻などがぎっちり押し込まれているので、展示内容の密度は高いです。

  まずはワニ園。 ワニは何十種類もいましたが、「ガビアルとそれ以外」くらいしか区別がつきません。 ガビアルは口が細長いので、すぐに分かるのです。 みんな寝ていました。 ほとんど置き物状態。 ただし、寝ていても迫力はあります。 こんな生物が現に地球上に存在するという事が信じられぬ。 40万年前の日本にいたというマチカネワニの骨格標本がありましたが、やたらと大きかったです。 いたんですねえ、こんな怪物が、そこら辺に・・・・。 他にピラルクやアロワナが飼われていました。

  次に熱帯植物園。 大きな温室が八棟も連なっていて、「こんなにあるのか?」と思うくらい様々な熱帯植物が揃っていました。 途中、マナティーの水槽がありました。 水槽がちと狭そうでしたが、そこそこ気持ちよさそうに泳いでました。 他に、熱帯睡蓮の温室が広々していて、睡蓮の花も美しかったです。

  無料の連絡バスに乗って、ちょっと離れた所にある分園へ。 こちらではワニを自然仕立ての池で飼っています。 レッサーパンダが30匹くらいました。 よく見えるようにケージを工夫してあり、初めてレッサーパンダをしげしげ観察できました。 もっとも、ワニ同様、こちらも大半が眠っていましたが・・・・。 他に、ゾウガメ、ケヅメリクガメ、ワニガメもいました。 全部で10匹くらいと少ないせいか、飼育環境は悪くありません。 あとフラミンゴや黒トキも。 よく集めたもんです。

  しかし、ここが一番力を入れているのはやはり熱帯植物ですな。 温室設備の充実度は並大抵ではありません。 植物園が基本で、動物は付加コンテンツなのでしょう。

  11時40分に全部見終わって、本園の駐車場に戻りました。 結構な人出で無料バスが満員だったので、帰りは歩きました。 大した距離ではないんですが、歩いている間にバスに二回抜かれました。 そんなもんですな、人生は。

  ここからは、写真でご案内。


  これはバナナワニ園の本園の内、ワニ園の入口。 ややこしいですが、まず、≪本園≫と≪分園≫がそれぞれ離れた所にありまして、その≪本園≫の方が更に道路で二つに隔てられて、≪ワニ園≫と≪熱帯植物園≫になっているのです。 で、この写真は、≪本園≫の方の≪ワニ園≫の入口というわけです。
  入場券は三ヶ所共通で大人1300円の所を、私は園のサイトで割引券を印刷して行ったので1200円でした。 三ヶ所どの入口でも売っていて、どこから見てもオーケー。
  かなり前からある観光地なので、見ての通り、建物は小規模で古びています。 だけど、昨今の広いばかりで中身の薄いテーマパークとは段違いの充実したコンテンツを誇ります。


  熱川バナナワニ園の駐輪場。 意外なようですが、駐輪場が設けてある観光地は非常に少ないです。 よく観光地の入口近くの歩道にバイクが並んでいて歩行者の邪魔になっている光景を見ますが、あれは別に嫌がらせやモラル無視でやっているわけではなく、他に置く所が無いのです。 観光地側がバイクで来る客を計算に入れていないんですな。 バナナワニ園でも、特に駐輪場は決めていないようで、空いているスペースに置く事になりました。 でも、駐車係の人は真面目で、20メートルほど歩いて、ここまで案内してくれました。


  熱川バナナワニ園の、本園の、ワニ園の入口です。 もう、ややこしい! 園全体が谷間にへばりつくように作られているので、入ってすぐに階段で下へ降りることになります。

「よその人が写真に入っているが、いいのか?」
  いいんです。 観光地というのは、誰が画面に入ろうがお咎め無しなんです。 そんな事を気にしていると、10枚も撮れずに出てくる破目になります。 とにかく、入場料の元を取るつもりで、撮って撮って撮りまくるのが観光地の作法なんです。 ちなみに私は、この日一日で225枚撮って来ました。


  ワニ園の大体の様子。 全面コンクリートのベタ基礎を打った上で、ケージの部分だけ掘り下げて水槽を作り、青い金網で囲んでいます。 ケージの数は20くらいあったような気がします。 もちろんワニの種類ごとに分けてあります。 ワニの専門園だけあって、客とワニの隔離は完璧で、金網の上に乗り出して手でも伸ばさない限り、事故が起こるような事はなさそうです。


  ワニというのは、何とも写真向けじゃない被写体なんですな。 ワニの写真は30枚くらい撮ってきましたが、たぶん、5枚も使わないと思います。 見たくないでしょ? あんまり。


  ワニは合計100匹くらいいたと思いますが、その内95匹前後が眠っていました。 思うに、日本の今の季節では、気温が低くて活動エネルギーが湧いて来ないのでしょう。 いや、その方が客には好都合というもの。 ワニが本領発揮した日にゃあーた、人間なんてただのエサですからのう。 ワニをなめたらあきまへんで!


  さて、ワニの写真も三枚目となると、そろそろ、「また、ワニか~~」とお思いでしょう。 でも、ワニなんですよ、ワニ園シリーズだから。 これは私が記憶している中で最も大きかったワニです。 カンボジアからいらっしゃった、イリエワニのアルビノさんです。 ワニもカメと同じで、長時間水中にいても、呼吸に支障を来たさないようです。


  ガラスが嵌まったケージの中にいたので、ちょっと写真が悪いんですが、これがヨウスコウワニです。 アメリカ大陸以外にいる唯一のアリゲーター科のワニです。
  中国で描かれる竜の絵は、口の辺りがワニに似ていますが、たぶん、このワニがモデルになっていると思われます。 ≪西遊記≫の沙悟浄のモデルについて、ヨウスコウカワイルカではないかという説がありますが、「出家する前には、たくさんの殺生をした」という沙悟浄の経歴から考えると、ヨウスコウワニの方がイメージが近いような気がします。 ちなみに、沙悟浄をカッパとして描くのは、日本だけの習慣です。


  ワニ園の片隅にいたオウムの一種、≪オオバタン≫です。 喋る鳥なのですが、こんな具合に子供が群がっていると、鳥が喋っているのか子供が喋っているのか分からないケースがままあります。 なんで子供というのは、鳥に話し掛ける時に、わざわざ鳥の声を真似るんですかね? 外国人に外国人訛りの日本語で話しかけるのと同じで、全く無意味なんですが。
  この写真は、手前のピンクの子と、鳥のポーズがそっくりなのが面白くて撮ってきました。


  最近の水族館やそれに類する施設では、淡水熱帯魚を客寄せに利用している所が多いです。 入手にせよ、飼育にせよ、扱い易いんでしょう、きっと。 これはアマゾンに棲む≪ピラルク≫です。 2メートルくらいのが二匹いました。 しかし・・・頭が写っていないと、ピラルクだかナマズだか分かりませんな。


  ワニ園ですが、カメも何種類かいました。 これは、南米に棲む≪マタマタ≫。 甲長30センチくらいありました。 ちょっと水槽が狭いかな? 平べったい頭と、小さな目が特徴です。 その名前のせいで、亀業界ではダジャレのネタに引っ張りだこ。


  最低の写真が続いて申し訳ないとは思うのですが、光の加減をどうにも出来んのですな、こういう所では。
  で、これは≪マチカネワニ≫の骨格です。 40万年前に日本列島にいたワニ。 名の由来は、いつも獲物を待ち兼ねているからではなく、大阪府豊中市・待兼山町の大阪大学豊中キャンパス内で出土したからです。 体長7メートル。 大きいようですが、現在の他のワニも、最大に成長するとこのくらいになりますから、まあ標準といった所のようです。


  これも思いっきり露出が飛んでますが、売店の写真はこれ一枚しか撮って来なかったから、もう開き直りで出します。
  動物園や水族館の売店に必ず置いてあるのが、ぬいぐるみ。 ここでは当然、ワニが主役ですが・・・・ワニはぬいぐるみにしても、そんなに可愛くはならないですね。 他に、レッサーパンダのぬいぐるみもありました。


  ワニ園としては、子供客を喜ばせる為に、こういう絵を描きたいのでしょう。 その気持ちは分かるんですがねえ。 どうにもこうにも可愛くないんですねえ。 それに、ワニを可愛いと感じてしまうと、危険さを忘れてしまうので、却って良くないんじゃないでしょうか? ワニの頭を撫でに行く子供が出たら、一大事ですぜ。


  ここからは、道路を挟んで山側にある熱帯植物園に移ります。 山の斜面に温室が八棟あり、通路やエレベーターで連結されています。

  これは、第一温室のブーゲンビレア。 ピンク色の花のように見える部分は実は葉っぱで、本物の花は先端の白い小さな部分なのだそうです。


  ブーゲンビレアの株。 温室の全幅を八割方埋め尽くしていました。 確認して来なかったんですが、これ全体で一株だとしたら、大変な植物ですな。 そういえば、根がどこにあるかも見て来ませんでした。 やっぱり、駆け足見物はよくありませんな。 もっとも、普通一時間で見終わる所を二時間以上粘っていたから、そんなにいい加減な見物人ではなかったと思うんですが。


  こちらは、ハイビスカス。 こうしてしげしげ見ると、イメージよりも迫力ある花ですな。 どう譲っても、可憐とは言い難い。 撮って来た花が、たまたま深紅だったのが、よくなかったですかね。


  熱帯植物温室の狭間にいたマナティー。 人魚に間違われるという点で、ジュゴンとよく似ていますが、ジュゴンが海洋性なのに対し、こちらはアメリカ大陸やアフリカ大陸の川に住んでいます。 ジュゴン目マナティー科だそうです。


  何号温室だったか忘れましたが、熱帯睡蓮の専用温室になってました。 ここは一見の価値ありです。 温室というと植物で埋っている事が多いですから、こういう大空間があると、何となく不思議な感じがします。


  熱帯睡蓮の一つ。 他にも、何十種類も咲いていましたが、いずれ劣らぬ美花揃いでした。 ま、とにかく、繊細且つ華麗! 素晴しいの一語。 とてもじゃないが、写真が追っつかないです。


  奥に見えるのは、お馴染み、オオオニバス。 手前の紫の花は、また別の蓮です。 オオオニバスの花というのは見た事がありませんが、百科事典によると、直径が、25~40センチにもなるそうです。


  熱帯植物園の中ほどに設けられている休憩室。 眺望抜群。 山の上に家を建てたがる人の気持ちがよく分かります。 家まで建てなくてもいいから、一日だけでもこういう所を独占して、ゆったり過ごしてみたいものです。


  胡蝶蘭・ピンク。 よーく見ると、確かに飛んでいる蝶々に似ていますね。 高い物は、ン百万円とか、ン千万円とか、本当でしょうか?


  胡蝶蘭・白。 たぶん、この写真が熱川バナナ・ワニ園で撮ったベスト・ショットだと思います。
  正直な感想、ほんの半年前まで、HDC-2のマクロ・モードでこういう写真が撮れるとは思ってもいませんでした。 カメラの実力というのは奥の方に眠っているもののようです。


  本園・熱帯植物園を見終わり、無料シャトル・バスに乗って、分園に向かいます。 所要時間3分。 マイクロ・バスは、補助席まで使って満員でした。


  ここが分園の入口。 本園が谷の傾斜にへばりつくように作られているのに対し、分園は山の頂にあり、ほぼ平らに広がっています。 敷地面積からいうと、本園よりも分園の方が広いです。 恐らく、最初、本園だけでやっていたのが手狭になり、山の上を切り開いて分園を付け足したのでしょう。


  分園には20×10mくらいの大きなケージがあります。 ワニが三々五々、昼寝したり、水面に浮かんだりしていました。 ワニは獲物を狙う為に、水面近くに浮く能力があるらしく、完全に脱力した状態で、プカ~ンと浮いてました。 自然に頭を寄せて集まる様子は、魚と同じですな。 脚の生えたオタマジャクシに、より近いですか。


  ワニ園ですが、分園の方にはレッサー・パンダがたくさん飼われていました。 正確には西レッサー・パンダだそうです。 ワニの影響を受けたわけでもないんでしょうが、ほぼ全匹、昼寝していました。 たぶん、夜行性なんでしょうな。
  パンダは中国語で≪熊猫≫ですが、本来はレッサー・パンダの事を指していた名称が、ジャイアント・パンダ(大熊猫)にも流用されたものと思われます。 ジャイアント・パンダはどう見ても、猫には見えませんが、レッサー・パンダなら、「熊っぽい猫」という形容が納得行きますから。
  ただ、系統学的には、ジャイアント・パンダに近いという説と、アライグマに近いという説の両方があるそうです。


  たまには幻想的な写真を。
  バナナワニ園のもう一方の主役はバナナ。 これはその葉っぱです。


  バナナの実も撮影したんですが、順路の南側にあったので、もろ逆光になってしまいました。 でも、主役なので、一応出します。 見事な房ですが、スーパーで売っているバナナは、一把150円くらいですから、これだけあっても5000円くらいにしかならないんですな。


  ワニ園ですが、ゾウガメもいました。 ゾウガメというと、ガラパゴスが有名ですが、こちらはインド洋のアルダブラ島に棲息する、アルダブラ・ゾウガメです。 この個体は日本で育ったものらしく、甲羅の年輪がはっきり見えます。


  同じアルダブラでも原産地で育った個体には甲羅に年輪が見えません。 特に左手前の亀の甲羅は、形といい艶といい、実に見事。 この丸みを見ていると、何だか、≪かもめの卵≫が食べたくなって来ます。


  ここは、分園の出口の上にある展望テラスです。 熱川の街と相模湾が一望できます。 このコイン双眼鏡はニコン製ですな。 「絶対に太陽は・・・」とわざわざ書いてあるところを見ると、見る奴がいるんでしょう。


  テラスで寛ぐ観光客の皆さん。 ですが、少々天気が良すぎて、長居出来る状況ではありませんでした。 ベンチの上だけでも廂をつければいいと思いますが、吹きっ曝しなので、風で飛んでしまうのかもしれませんな。


  展望テラスから見下ろした分園の駐車場。 左上に入口の門が見えます。

  以上、熱川バナナワニ園でした。