錆との戦い⑩ 【披露編 人の巻】
レストア後のお披露目、第三回です。 延々と続けて来た、旧母自のレストア記事も、今回で終わりです。 寂しいような・・・、嬉しいような・・・、いや、実は、寂しくも嬉しくもありません。 なぜなら、旧母自が終わっても、まだ、父自のレストア記事があるからです。 年初から、まるまる2ヵ月も、レストア作業を続けていたわけですから、書くネタは、いくらでもあるわけだ。
とはいえ、自転車ネタばかり続けるのも曲がないので、父自の方は、しばらく間をおいてから出そうと思います。 ネタ切れした時の為に、キープしておこうというつもり。 では、旧母自レストアの最終記事を、お楽しみ下さい。 ・・・、楽しかないか、別に。
≪馬蹄錠≫
馬蹄錠。 上段がビフォー、下段がアフターです。 荷台やスタンドが、メッキ仕上げになっているタイプの自転車は、馬蹄錠の表側が、グレーで塗装されているのが普通です。 ちなみに、裏側は、クローム・メッキ。
錆で、あちこち、グレーの塗料が浮いていたのを、金ブラシでこすったら、全体の半分くらいは落ちて、鉄の地肌が出ました。 残った部分が、しぶとかったので、グラインダーに、ナイロン・ディスクを着けて、削り取りました。 細部は、金ブラシや紙鑢で、チマチマと落としました。
鉄の地肌を活かそうと思って、透明錆どめを塗ったのですが、それは、暴風雨で溶けてしまいました。 もう一度、塗り直した上から、クリヤーを塗って、現在に至るのですが、それでも駄目なら、カラー錆どめのグレーで塗り直すしかありません。
キーも錆びていたので、酸に浸けて溶かし、透明錆どめとクリヤーを塗ってあります。 操作ラベルは、一度剥がして、錆を取った後、透明錆どめの粘着力を利用して、貼り付けたのですが、果たして、いつまでもつやら・・・。
≪シート・ピン≫
シート・ピン。 上段がビフォー、下段がアフターです。 シート・ポストを固定する部品なので、私は、「シート・ポスト・アジャスター」と呼んでいたのですが、調べてみたら、「シート・ピン」という短い名前があると分かりました。 だけど、写真なしで、名前だけ聞いたのでは、どの部品の事か、ピンと来る人はいないでしょうなあ。
ちなみに、更に細かく言うと、このタイプは、「レバー固定式 シート・ピン」です。 他に、レバーがない、「ナット固定式」や、ワン・タッチで固定できる、「クイック・レバー式」というのがあります。 私の折自には、クイック・レバー式が付いています。
これは、結構錆びていたので、ビフォー・アフターの差が歴然と出ました。 長ナットの端のキャップだけ外し、酸にドブ浸けしたら、綺麗に落ちました。 その後、透明錆どめを塗って仕上げにしておいたのですが、暴風雨で流れてしまい、塗り直して、その上からクリヤーを塗ったのは、他の元メッキ部品と同じです。 ボルトの方は、錆びていなかったので、そのまま使っています。
≪前籠ブラケット≫
前籠ブラケット。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ハンドルの前に付いているこの部品ですが、形は見知っていても、「前籠ブラケット」という名前を知らない人は多いと思います。 「ブラケット(bracket)」というのは、棚などを支える、「腕木(うでぎ)」の事でして、工業製品の部品名としては、よく使われています。 自転車用語では、他に、「ボトム・ブラケット」がありますな。 しかし、所詮、業界用語の域を出ず、一般化している外来語とは言えません。
それ以前に、「腕木」という日本語にしてからが、何を表しているのか、ピンと来る人が少なくなっていると思います。 家の作りが変わってしまって、後付けで棚を作るような事がなくなってしまいましたからのう。 ちなみに、「ブランケット(blanket)」は、カタカナだと似ていますが、元の英語では、全然、別系統の単語で、「毛布」の事です。
私が子供の頃の前籠ブラケットは、垂直になった部分が縦長の長方形で、元々は、砲弾型ライトを取り付ける為の部品だったのを、前籠用に流用していたようでした。 穴は開いておらず、前籠の方に、ブラケットに差し込む為の部品が付いていたように記憶しています。 現在、普及している、垂直部分が横長で、二つ穴が開いた物は、「ブタ穴タイプ」と呼ぶそうです。
これは、早い段階で取り外しました。 旧母自では、唯一、シルバーで塗装されていた部品で、耐水ペーパーで削り落とし、その後、酸に浸けました。 ちなみに、塗料は、酸では溶けないようです。 錆が落ちて、鉄肌が出てから、透明錆どめを塗ったものの、その後、暴風雨を喰らい、透明錆どめを塗り直して、その上からクリヤーでコートしたのは、他の部品と同じ。
前籠後ろ側の締め付けナットも、酸に浸けました。 ロック・ナットだったので、プラスチック部分は溶ける事がなく、再組み立てした時にも、締め付けの強さは、変わりませんでした。 ナットやワッシャー、スプリング・ワッシャーが小さくて、透明錆どめを塗るのが大変でねえ。 いや、塗るのはいいんですが、乾かすのに、困るんですよ。 銅線に通したり、持つ所だけ残して、後で塗ったり、あれこれ工夫しましたけど。 その後、クリヤーも塗りましたが、そちらは、すぐに乾くので、始末が良い半面、塗った所と塗ってない所の区別がつかなくなって、それなりに苦労しました。
ついでに写っているから、ヘッド・セットのワンにも触れておきましょうか。 旧母自は、フォークを抜いて作業したので、ヘッド・セットも全部、バラしました。 「ワン」、「コーン」、「ベアリング・リテーナー」が、ヘッド・チューブの上下にある上に、ワンとコーンの形や向きが、上下で違っていたので、組み直す時に間違えないように、写真を撮ってから、バラしました。
錆取りは、酸に浸けましたが、ワンの中に入っていたグリスを洗い落とすのが面倒で、そのまま浸けたところ、錆が全部落ちた後でも、グリスは、全く変わらずに残っていました。 酸は、塗料にも、グリスにも、何の影響も与えないわけですな。 一つ、経験値が増えました。 ちなみに、これは、私がやったわけではありませんが、ステッカー・ラベル類も、酸ではビクともしないそうです。
錆取り後の処置は、他の部品と同じ。 だけど、フォークを抜かなくても、本体の塗り替えは可能なので、ヘッド・セットをバラす事自体、人様にはお勧めしません。 ワンやコーンの錆取りは、まず、コンパウンドで挑戦してみるのがいいと思います。 相当には、綺麗なるはず。 それでも駄目なら、バラして酸浸け、という作戦で、どうでしょう。
≪サドル≫
サドルの金具部品。 上段がビフォー、下段がアフターです。 おや? 「金具(かなぐ)」というのは、もはや、死語なのかな? 通じるには通じるけど、古臭い感じがするのかも。 だけど、わざわざ、「金属部品」と言うのは、面倒臭いなあ。 まったく、言葉というのは、寿命があるから厄介だ。 「金具」なんて、ゆうに1500年以上使われて来たと思うのですが、ここへ来て用済みとは、気の毒な。
で、サドルの金属部品ですが、恐らく、自転車の部品の中では、錆び易いものの筆頭ではないかと思います。 直接、雨がかかるわけでもないのに、なぜ、こんなに錆び易いのか、原因が分からない。 本体以外の部品がメッキ系の車種では、クローム・メッキされ、黒塗装系の車種では、黒に塗ってあるわけですが、どちらであっても、やはり、イの一番に錆び始めます。
シート・ポストを入れる部分の事を、「ヤグラ」と言いますが、ヤグラは、亜鉛メッキでして、なぜか、サドルに関しては、クローム・メッキの部品よりも、亜鉛メッキのヤグラの方が錆び難いように見えます。 旧母自では、ヤグラは、全く錆びてなくて、そのまま、再組み立てに回しました。
クローム・メッキの金属部品の内、横棒とスプリングは、酸に浸けました。 V字棒は、大きい上に、立体的な形が邪魔をして、酸に浸けられず、グラインダーで削り落として、鉄肌を出しました。 横棒とスプリングも、酸から出したら、クローム・メッキの下の銅メッキが出てしまい、そこだけ銅色では、様にならないので、結局、全部、グラインダーで削る事になりました。 スプリングの内側には、グラインダーが入らず、父が持っていた、丸棒形の金属鑢で、銅色を落としました。 防錆処置に関しては、他の部品と同じ。
だけど、後で考えると、サドルの下まで、ポリッシュ仕上げに拘る事はなかったと思います。 大体、錆を落としたら、錆どめを塗り、上から、シルバーで塗装してしまえば、それで充分だったはず。 ポリッシュ仕上げにしようと思うと、手間はかかるわ、雨には弱いわで、いい事がほとんどありません。
ちなみに、旧母自の場合、サドルの金属部品は、全部バラせましたが、スプリングとV字棒が、外せないサドルもあるので、要注意です。 無理に外そうとすると、ベースのプラスチック部分を、割ってしまいかねません。 そういうサドルの場合は、分解せずに、大体の錆を取って、錆どめを塗り、任意の色で塗装する以外ありません。
≪防犯登録ステッカー≫
ボトム・ブラケット付近の様子。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ビフォーでは、「PLS登録ナンバー」や「JISナンバー」のラベルも貼ってあったのですが、それらは、剥がす時に、ビリビリに裂けてしまい、スクレイパーで掻き取ったので、もはや、この世に存在しません。 防犯登録ステッカーだけ、ほぼ、原形のまま剥がせました。
再組み立てした後、防犯登録ステッカーを貼り直したわけですが、当初、透明錆どめに粘着力があるので、それを裏に塗って、貼ろうかと思っていたのですが、それをやる前に、例の暴風雨事件で、透明錆どめが使えないと判明。 ビニール・ボンドという製品があり、それなら、接着できそうなので、ネットで購入しました。 送料が捻出できるのか、こちらが心配になるくらい、安かったです。 ステッカーの裏側に、ボンドを塗り伸ばし、ベタつかなくなる程度に乾かしてから貼ったら、ぴったり着きました。
ただねえ・・・。 防犯登録には、有効期限がありまして、静岡県の場合、「概ね10年」で、登録情報が抹消されてしまうとの事。 旧母自は、11年半経っていますから、もう、このナンバーに意味はないんですな。 それでも、貼り直したのは、見せかけだけでも、これを貼っておけば、多少の防犯効果が期待できるから、・・・というより、一枚でもいいから、ラベル・ステッカー類を復帰させて、本体を塗り直した事を気取られ難くしたかったからです。
≪ビニール・ボンド≫
旧母自の防犯登録ステッカーを貼り直す為に買った、コニシの、「ボンド ビニル用接着剤 20ml 」。 なぜか、実店舗には置いてなくて、アマゾンに注文しました。 送料込みで、111円。 この値段では、実店舗より安いのでは? ホーム・センターを3軒梯子したのは、完全に無駄なエネルギーでした。
使い方は、G17と同じで、両面に塗り伸ばして、ベタつかなくなる程度まで乾かし、貼り付けるわけですが、ステッカーの場合、ステッカーの裏面だけに塗れば充分だと思い、そうしました。 これなら、雨に濡れても、剥がれません。
下の写真は、アマゾンのダンボール箱。 中身が小さいので、最小サイズの箱で届きました。 大きさを測らなかったのですが、最長辺が、20センチくらいでした。 それまでの最小は、A4サイズでしたが、下には下があるんですな。 中身の大きさに合わせて、小さい箱に入れても、運送業者の方に、そんなに細かいサイズ区分がなくて、送料は同じになってしまうのかもしれませんが、ダンボール自体の価格は、幾分、安くなると思います。
各部の解説は、以上です。 ビニール・ボンドまで解説してしまいましたが、別に、「写真を撮ったから、ついでに出してしまえ」などという、軽はずみな気持ちで書いたわけではありません。 中には、ステッカー・ラベル類を、うまく剥がせたはいいが、貼り直す方法が分からずに、諦めてしまったという人もいるかと思い、参考までに、「ビニール・ボンドで、着きますよ」と、お知らせした次第です。
旧母自のレストア作業を、通して評価しますと、実際、綺麗になりましたから、やって良かったとは思ってます。 かかったお金は、前輪タイヤを別にすると、2500円くらいでしょうか。 その程度の出費で、一応、錆が全く見えないところまで、持って行ったわけですから、まずまずの費用対効果と言うべきでしょう。 前輪タイヤは、907円したのですが、なぜ、それが別扱いになるかというと、前から付いていた物を取ってあって、今後、後輪タイヤが磨り減ったら、そちらに付けるつもりだからです。
錆取り自体は、まあまあ、よくやったと思いますが、透明錆どめが雨で溶けて、また錆びて来てしまったのには、参りました。 その後、もう一度、分解し、各部品の錆を取り直し、透明錆どめを塗り直し、クリヤーでコートしたのですが、完璧な対策とは言えず、雨はクリヤーが弾いてくれるものの、湿度が高くなると、クリヤーの下で、透明錆どめが白化して来ます。 やむなく、雨が続きそうな時には、予め、プレハブの中に旧母自を避難させるようにしています。
私は、引退者で、ほとんどの時間、家にいますし、雨の日には自転車に乗らないから、そういう事ができるわけですが、通勤や通学に自転車を使っている人は、雨でも乗らなければなりませんから、よしんば、錆取りを思い立っても、透明錆どめは、使わない方がいいと思います。 ポリッシュ仕上げには、魅力を感じるものの、すぐに錆びて来てしまうのでは、苦労して錆を取った意味がありません。
小さい部品や、細い部品であれば、シルバーのペンキで塗ってしまっても、ほとんど、目立たない事が、今回の経験で分かりました。 ただし、シルバーのペンキで仕上げる場合でも、何かしら、錆どめを下に塗る必要はあります。 そして、ここが肝腎ですが、たとえ、どんなに念入りな防錆処置を施したとしても、月日が経てば、やはり、また錆びて来るのだという事を、覚悟していなければなりません。
錆取りを始める前に、次に錆びて来たら、どう処置するかを考えて、方針を決めた方がいいと思います。 何重にも塗り重ねたり、特殊な色を使ったりすると、部分的に補修するという事ができなくなってしまいます。 「また、全部剥がして、やり直し」なんて事になると思うと、頭がクラクラして来ます。
とはいえ、自転車ネタばかり続けるのも曲がないので、父自の方は、しばらく間をおいてから出そうと思います。 ネタ切れした時の為に、キープしておこうというつもり。 では、旧母自レストアの最終記事を、お楽しみ下さい。 ・・・、楽しかないか、別に。
≪馬蹄錠≫
馬蹄錠。 上段がビフォー、下段がアフターです。 荷台やスタンドが、メッキ仕上げになっているタイプの自転車は、馬蹄錠の表側が、グレーで塗装されているのが普通です。 ちなみに、裏側は、クローム・メッキ。
錆で、あちこち、グレーの塗料が浮いていたのを、金ブラシでこすったら、全体の半分くらいは落ちて、鉄の地肌が出ました。 残った部分が、しぶとかったので、グラインダーに、ナイロン・ディスクを着けて、削り取りました。 細部は、金ブラシや紙鑢で、チマチマと落としました。
鉄の地肌を活かそうと思って、透明錆どめを塗ったのですが、それは、暴風雨で溶けてしまいました。 もう一度、塗り直した上から、クリヤーを塗って、現在に至るのですが、それでも駄目なら、カラー錆どめのグレーで塗り直すしかありません。
キーも錆びていたので、酸に浸けて溶かし、透明錆どめとクリヤーを塗ってあります。 操作ラベルは、一度剥がして、錆を取った後、透明錆どめの粘着力を利用して、貼り付けたのですが、果たして、いつまでもつやら・・・。
≪シート・ピン≫
シート・ピン。 上段がビフォー、下段がアフターです。 シート・ポストを固定する部品なので、私は、「シート・ポスト・アジャスター」と呼んでいたのですが、調べてみたら、「シート・ピン」という短い名前があると分かりました。 だけど、写真なしで、名前だけ聞いたのでは、どの部品の事か、ピンと来る人はいないでしょうなあ。
ちなみに、更に細かく言うと、このタイプは、「レバー固定式 シート・ピン」です。 他に、レバーがない、「ナット固定式」や、ワン・タッチで固定できる、「クイック・レバー式」というのがあります。 私の折自には、クイック・レバー式が付いています。
これは、結構錆びていたので、ビフォー・アフターの差が歴然と出ました。 長ナットの端のキャップだけ外し、酸にドブ浸けしたら、綺麗に落ちました。 その後、透明錆どめを塗って仕上げにしておいたのですが、暴風雨で流れてしまい、塗り直して、その上からクリヤーを塗ったのは、他の元メッキ部品と同じです。 ボルトの方は、錆びていなかったので、そのまま使っています。
≪前籠ブラケット≫
前籠ブラケット。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ハンドルの前に付いているこの部品ですが、形は見知っていても、「前籠ブラケット」という名前を知らない人は多いと思います。 「ブラケット(bracket)」というのは、棚などを支える、「腕木(うでぎ)」の事でして、工業製品の部品名としては、よく使われています。 自転車用語では、他に、「ボトム・ブラケット」がありますな。 しかし、所詮、業界用語の域を出ず、一般化している外来語とは言えません。
それ以前に、「腕木」という日本語にしてからが、何を表しているのか、ピンと来る人が少なくなっていると思います。 家の作りが変わってしまって、後付けで棚を作るような事がなくなってしまいましたからのう。 ちなみに、「ブランケット(blanket)」は、カタカナだと似ていますが、元の英語では、全然、別系統の単語で、「毛布」の事です。
私が子供の頃の前籠ブラケットは、垂直になった部分が縦長の長方形で、元々は、砲弾型ライトを取り付ける為の部品だったのを、前籠用に流用していたようでした。 穴は開いておらず、前籠の方に、ブラケットに差し込む為の部品が付いていたように記憶しています。 現在、普及している、垂直部分が横長で、二つ穴が開いた物は、「ブタ穴タイプ」と呼ぶそうです。
これは、早い段階で取り外しました。 旧母自では、唯一、シルバーで塗装されていた部品で、耐水ペーパーで削り落とし、その後、酸に浸けました。 ちなみに、塗料は、酸では溶けないようです。 錆が落ちて、鉄肌が出てから、透明錆どめを塗ったものの、その後、暴風雨を喰らい、透明錆どめを塗り直して、その上からクリヤーでコートしたのは、他の部品と同じ。
前籠後ろ側の締め付けナットも、酸に浸けました。 ロック・ナットだったので、プラスチック部分は溶ける事がなく、再組み立てした時にも、締め付けの強さは、変わりませんでした。 ナットやワッシャー、スプリング・ワッシャーが小さくて、透明錆どめを塗るのが大変でねえ。 いや、塗るのはいいんですが、乾かすのに、困るんですよ。 銅線に通したり、持つ所だけ残して、後で塗ったり、あれこれ工夫しましたけど。 その後、クリヤーも塗りましたが、そちらは、すぐに乾くので、始末が良い半面、塗った所と塗ってない所の区別がつかなくなって、それなりに苦労しました。
ついでに写っているから、ヘッド・セットのワンにも触れておきましょうか。 旧母自は、フォークを抜いて作業したので、ヘッド・セットも全部、バラしました。 「ワン」、「コーン」、「ベアリング・リテーナー」が、ヘッド・チューブの上下にある上に、ワンとコーンの形や向きが、上下で違っていたので、組み直す時に間違えないように、写真を撮ってから、バラしました。
錆取りは、酸に浸けましたが、ワンの中に入っていたグリスを洗い落とすのが面倒で、そのまま浸けたところ、錆が全部落ちた後でも、グリスは、全く変わらずに残っていました。 酸は、塗料にも、グリスにも、何の影響も与えないわけですな。 一つ、経験値が増えました。 ちなみに、これは、私がやったわけではありませんが、ステッカー・ラベル類も、酸ではビクともしないそうです。
錆取り後の処置は、他の部品と同じ。 だけど、フォークを抜かなくても、本体の塗り替えは可能なので、ヘッド・セットをバラす事自体、人様にはお勧めしません。 ワンやコーンの錆取りは、まず、コンパウンドで挑戦してみるのがいいと思います。 相当には、綺麗なるはず。 それでも駄目なら、バラして酸浸け、という作戦で、どうでしょう。
≪サドル≫
サドルの金具部品。 上段がビフォー、下段がアフターです。 おや? 「金具(かなぐ)」というのは、もはや、死語なのかな? 通じるには通じるけど、古臭い感じがするのかも。 だけど、わざわざ、「金属部品」と言うのは、面倒臭いなあ。 まったく、言葉というのは、寿命があるから厄介だ。 「金具」なんて、ゆうに1500年以上使われて来たと思うのですが、ここへ来て用済みとは、気の毒な。
で、サドルの金属部品ですが、恐らく、自転車の部品の中では、錆び易いものの筆頭ではないかと思います。 直接、雨がかかるわけでもないのに、なぜ、こんなに錆び易いのか、原因が分からない。 本体以外の部品がメッキ系の車種では、クローム・メッキされ、黒塗装系の車種では、黒に塗ってあるわけですが、どちらであっても、やはり、イの一番に錆び始めます。
シート・ポストを入れる部分の事を、「ヤグラ」と言いますが、ヤグラは、亜鉛メッキでして、なぜか、サドルに関しては、クローム・メッキの部品よりも、亜鉛メッキのヤグラの方が錆び難いように見えます。 旧母自では、ヤグラは、全く錆びてなくて、そのまま、再組み立てに回しました。
クローム・メッキの金属部品の内、横棒とスプリングは、酸に浸けました。 V字棒は、大きい上に、立体的な形が邪魔をして、酸に浸けられず、グラインダーで削り落として、鉄肌を出しました。 横棒とスプリングも、酸から出したら、クローム・メッキの下の銅メッキが出てしまい、そこだけ銅色では、様にならないので、結局、全部、グラインダーで削る事になりました。 スプリングの内側には、グラインダーが入らず、父が持っていた、丸棒形の金属鑢で、銅色を落としました。 防錆処置に関しては、他の部品と同じ。
だけど、後で考えると、サドルの下まで、ポリッシュ仕上げに拘る事はなかったと思います。 大体、錆を落としたら、錆どめを塗り、上から、シルバーで塗装してしまえば、それで充分だったはず。 ポリッシュ仕上げにしようと思うと、手間はかかるわ、雨には弱いわで、いい事がほとんどありません。
ちなみに、旧母自の場合、サドルの金属部品は、全部バラせましたが、スプリングとV字棒が、外せないサドルもあるので、要注意です。 無理に外そうとすると、ベースのプラスチック部分を、割ってしまいかねません。 そういうサドルの場合は、分解せずに、大体の錆を取って、錆どめを塗り、任意の色で塗装する以外ありません。
≪防犯登録ステッカー≫
ボトム・ブラケット付近の様子。 上段がビフォー、下段がアフターです。 ビフォーでは、「PLS登録ナンバー」や「JISナンバー」のラベルも貼ってあったのですが、それらは、剥がす時に、ビリビリに裂けてしまい、スクレイパーで掻き取ったので、もはや、この世に存在しません。 防犯登録ステッカーだけ、ほぼ、原形のまま剥がせました。
再組み立てした後、防犯登録ステッカーを貼り直したわけですが、当初、透明錆どめに粘着力があるので、それを裏に塗って、貼ろうかと思っていたのですが、それをやる前に、例の暴風雨事件で、透明錆どめが使えないと判明。 ビニール・ボンドという製品があり、それなら、接着できそうなので、ネットで購入しました。 送料が捻出できるのか、こちらが心配になるくらい、安かったです。 ステッカーの裏側に、ボンドを塗り伸ばし、ベタつかなくなる程度に乾かしてから貼ったら、ぴったり着きました。
ただねえ・・・。 防犯登録には、有効期限がありまして、静岡県の場合、「概ね10年」で、登録情報が抹消されてしまうとの事。 旧母自は、11年半経っていますから、もう、このナンバーに意味はないんですな。 それでも、貼り直したのは、見せかけだけでも、これを貼っておけば、多少の防犯効果が期待できるから、・・・というより、一枚でもいいから、ラベル・ステッカー類を復帰させて、本体を塗り直した事を気取られ難くしたかったからです。
≪ビニール・ボンド≫
旧母自の防犯登録ステッカーを貼り直す為に買った、コニシの、「ボンド ビニル用接着剤 20ml 」。 なぜか、実店舗には置いてなくて、アマゾンに注文しました。 送料込みで、111円。 この値段では、実店舗より安いのでは? ホーム・センターを3軒梯子したのは、完全に無駄なエネルギーでした。
使い方は、G17と同じで、両面に塗り伸ばして、ベタつかなくなる程度まで乾かし、貼り付けるわけですが、ステッカーの場合、ステッカーの裏面だけに塗れば充分だと思い、そうしました。 これなら、雨に濡れても、剥がれません。
下の写真は、アマゾンのダンボール箱。 中身が小さいので、最小サイズの箱で届きました。 大きさを測らなかったのですが、最長辺が、20センチくらいでした。 それまでの最小は、A4サイズでしたが、下には下があるんですな。 中身の大きさに合わせて、小さい箱に入れても、運送業者の方に、そんなに細かいサイズ区分がなくて、送料は同じになってしまうのかもしれませんが、ダンボール自体の価格は、幾分、安くなると思います。
各部の解説は、以上です。 ビニール・ボンドまで解説してしまいましたが、別に、「写真を撮ったから、ついでに出してしまえ」などという、軽はずみな気持ちで書いたわけではありません。 中には、ステッカー・ラベル類を、うまく剥がせたはいいが、貼り直す方法が分からずに、諦めてしまったという人もいるかと思い、参考までに、「ビニール・ボンドで、着きますよ」と、お知らせした次第です。
旧母自のレストア作業を、通して評価しますと、実際、綺麗になりましたから、やって良かったとは思ってます。 かかったお金は、前輪タイヤを別にすると、2500円くらいでしょうか。 その程度の出費で、一応、錆が全く見えないところまで、持って行ったわけですから、まずまずの費用対効果と言うべきでしょう。 前輪タイヤは、907円したのですが、なぜ、それが別扱いになるかというと、前から付いていた物を取ってあって、今後、後輪タイヤが磨り減ったら、そちらに付けるつもりだからです。
錆取り自体は、まあまあ、よくやったと思いますが、透明錆どめが雨で溶けて、また錆びて来てしまったのには、参りました。 その後、もう一度、分解し、各部品の錆を取り直し、透明錆どめを塗り直し、クリヤーでコートしたのですが、完璧な対策とは言えず、雨はクリヤーが弾いてくれるものの、湿度が高くなると、クリヤーの下で、透明錆どめが白化して来ます。 やむなく、雨が続きそうな時には、予め、プレハブの中に旧母自を避難させるようにしています。
私は、引退者で、ほとんどの時間、家にいますし、雨の日には自転車に乗らないから、そういう事ができるわけですが、通勤や通学に自転車を使っている人は、雨でも乗らなければなりませんから、よしんば、錆取りを思い立っても、透明錆どめは、使わない方がいいと思います。 ポリッシュ仕上げには、魅力を感じるものの、すぐに錆びて来てしまうのでは、苦労して錆を取った意味がありません。
小さい部品や、細い部品であれば、シルバーのペンキで塗ってしまっても、ほとんど、目立たない事が、今回の経験で分かりました。 ただし、シルバーのペンキで仕上げる場合でも、何かしら、錆どめを下に塗る必要はあります。 そして、ここが肝腎ですが、たとえ、どんなに念入りな防錆処置を施したとしても、月日が経てば、やはり、また錆びて来るのだという事を、覚悟していなければなりません。
錆取りを始める前に、次に錆びて来たら、どう処置するかを考えて、方針を決めた方がいいと思います。 何重にも塗り重ねたり、特殊な色を使ったりすると、部分的に補修するという事ができなくなってしまいます。 「また、全部剥がして、やり直し」なんて事になると思うと、頭がクラクラして来ます。