北京五輪
北京五輪が終りました。 見所も見切れないほど多く、大変良かったと思います。 いつも思うんですが、オリンピックというのは、見ているだけでも何となくお祭り気分になり楽しいものですな。
開会式は凄かったです。 凄いを通り越して、度肝を抜かれたというのが的確か。 恐らく、全人類の全歴史を通じて、この地球上において、最も精緻に企画され、最も大規模に繰り広げられたページェントと言えるでしょう。 ショー・アップとは、ここまで突きつめられるものかと呆気に取られる華やかさ。 理論的には、これを超えるショーも作れない事はないと思いますが、資金的にも、才能的にも、しばらくは抜けますまい。 次のロンドンでは、もはや逆方向の、≪エコ開会式≫に走る以外、選択の余地はないのではありますまいか。
演出は、≪初恋の来た道≫、≪英雄(HERO)≫などを撮った、張藝謀監督。 映画監督なので、畑違いであるショーの演出はどうするんだろうと思っていたんですが、こりゃ、ショー演出家に転身しても、莫大な釣りが来るくらいの素晴らしい腕の冴えですな。 なるほど、天才とは確かにいるものです。
夜を選んだのは大正解で、花火にせよ、電飾にせよ、光の効果を利用したかったら、舞台が夜になるのは当然のこと。 さすが映画監督の発想らしく、ショーを映像として捉えた点が、今までにない工夫です。 競技場に敷かれた巻物状の大スクリーンを中心に、観客席を取り巻く壁上のスクリーンを合わせて、会場全体を立体的な映画館にしてしまったんですな。 実際の人間の動きだけでも凄いのに、それに映像が被さっているので、いとも鮮やかに幻想的な雰囲気を現出させています。
ショー企画の精緻さにも驚きますが、これだけ大勢の出演者に、どうやって段取りを覚えさせ、練習させたのか、それも驚異的です。 おそらく、監督の手足になって奔走した演出スタッフが無数にいたのでしょう。 いずれも、天才級の知能と、超人的な体力・精神力が無ければ出来る事ではありますまい。
ショーがあまりにも素晴らしいので、いざ主役の選手入場となったら、白ける白ける。 ショーだけで終わりにしても良かったのではないかと思うほど。 とはいえ、入場の見所はやはり衣装でしょうか。 いつもの事ですが、中南部アフリカ諸国の衣装は、やはり圧倒的に美しいですな。 ヨーロッパでは、ハンガリーの服がデザイン良し。 スエーデンの女子選手の旗袍風の服は、自国文化の主張ではなく、開催国の文化に合わせるという逆転の発想が面白いです。
聖火点灯は 元体操選手の李寧さんでしたが、解説をしていた谷村新司さんが、名前を知らなかったのに意外でした。 ロス五輪やソウル五輪の頃の中国体操界のエースで、私でさえ名前を覚えていたくらいの有名人なんですが。
私の場合、大会の前半は夏の連休の内で、外出が多く、後半は仕事で夜しか家におらず、肝心の競技の方はそんなには見られなかったんですが、いくつか印象に残ったものを書きましょうか。
≪自転車 ロードレース≫
コースが見ものでした。 万里の長城付近の道を使って行なわれたんですが、城壁のある町の中を通ったりして、普通の旅番組などでは写さないようなリアルな風景が見られました。 高速道路の崖側の壁の作り方も、石積みか、もしくは石積み風に仕上げてあって、日本では見られないような質感を持っています。 競技そのものも、スピード感溢れ、競技場の中の種目とは全く違った魅力がありました。
≪アーチェリー≫
恐ろしく静かな競技ですが、正真正銘の真剣勝負だねえ。 対戦者と戦っているというより、自分と戦っているんですな、彼らは。 結局、ほとんど表情に変化が無く、最も落ち着いていた選手が勝ちましたけど。
≪マラソン≫
これも、コースが見もの。 天安門広場はもちろん、北京大学や清華大学のキャンパス内を通過するなど、サービスたっぷりのコース設定ですな。 やっぱり、明清の都・北京だけあって、この空間の広さが魅力です。 ≪出口≫や、≪入口≫といった漢字の標識があって、当然と言えば当然の事ながら、何の抵抗も無く漢字が読めるのが、得をしたような気分がして面白いです。
≪女子サッカー≫
【ブラジル×ドイツ戦】。 凄いな、ブラジル女子。 グリグリ動く。 ドイツを手玉にとっていました。 概ね、ブラジル選手の方が、ドイツ選手より小柄ですが、≪体格差≫の優劣が逆転しているとしか思えません。 小さい方が動きが良いのです。 実に美しい! かっこいい! 超絶美技! 残念ながら、アメリカとの決勝を見れなかったんですが、このブラジルに勝ったアメリカというのは、どういうチームだったのよ?
≪女子体操≫
なんつーか、その~、今頃こんな感想を言うのも遙かな話ですが、やっぱり、ルーマニアの妖精・コマネチ選手は、すば抜けて魅力があったんですなあ。 演技も素晴らしかったけど、顔もスタイルも、ケチのつけどころが無かったです。 だから、≪妖精≫と呼ばれたわけですよ。 今の選手を見ても、そういう三拍子揃ったっていう人はいないものね。
≪シンクロ≫
相変わらず、醜い競技だのう。 元の顔の良し悪しに全く関係なく、あの鼻挟みをつけた時点で、もはや人間の顔とは思えません。 さっさと五輪種目から外すべきでしょう。 五輪種目でなくなってしまえば、こんな陳腐な競技をやりたがる人間などいなくなるに決まってます。 そもそも、これってスポーツなの? 軽業のような大道芸に近いと思いますが。
≪卓球・女子≫
準々決勝、中国の張怡寧選手とシンガポールのホン選手の試合を見ましたが、速過ぎて、何が行なわれているのか、全然見えませんな。 日本の卓球関係者である解説者が、あまりの高度なラリーに、言葉を失ってばかり。 中国の卓球が図抜けているのは有名ですが、互角に戦っているシンガポール選手のこの強さは、一体どこから出て来ているのか。
順序が逆になりましたが、福原愛さん、張怡寧選手とその前に対戦していたんですね。 3セット先取されて、第4セットは取り、第5セットで撃破されたとか。 その後の張選手とホン選手の対戦を見ているので、思うんですが、第4セットは、譲ってもらった可能性が高いですな。 福原さんは、中国でも人気があるので、向こうのコーチが花を持たせてくれたんでしょう。
福原さんの卓球、というより、日本式の卓球ですが、このスタイルを守っている限りは、とても世界のトップクラスと戦うのは無理ではありますまいか。 投げ上げサーブなんて、もうそんな時代じゃないですぜ。 もはや、単なるパフォーマンスですな。 全く効果が出ておらず、アホ臭そうにつきあっている張選手の顔を見るにつけ、思わず赤面してしまいます。 もっとも、張怡寧選手は無表情が特徴らしく、常にアホ臭そうな顔で試合をしているという感じもしますが。
≪卓球・男子≫
当然、中国選手同士の戦いになりましたが、すっげー試合ですな。 人間技に見えません。 卓球は、メダリストが一国に集中してしまっているので、その点、種目整理の対象になりかねませんが、こういう超高レベルな試合を見せている限り、外されるような事は無いでしょう。
≪ビーチバレー≫
アメリカが金メダル。 圧倒的な強さで、今大会通じて、1セットも落さずに、金まで行ってしまいました。 決勝は中国チームが相手で、接戦でしたが、どうもアメリカ側が接戦になるように配慮したような感あり。 アメリカのペアは、超がつくようなベテランで、百戦錬磨、その程度の演技はお手の物という感じです。 もう歳が歳ですから、いずれ、世代交代の波に洗われると思いますが、まだ暫くは無敵なんじゃないでしょうか。
シャワーと見まがうような強い雨の中でやっているんですが、サーブに使うボールをタオルで拭く係のお姉さんが、一生懸命で大変健気。 こういう裏方さんが無数にいて、スポーツ大会というのは支えられているんですなあ。
どの競技も、日本向け放送の解説と実況は日本人がやっているわけですが、日本選手が早々と脱落してしまうと、気楽になるのか、解説の内容が濃くなって面白くなります。 こういう時が聞き時でして、その競技についての専門的な知識や、試合の見所を知る事が出来ます。 「日本選手がいなくなってからが、オリンピックの醍醐味」とはこの事を言うんですな。
≪野球≫
準決勝の【キューバ×アメリカ戦】を見ていたので、「アメリカは二流選手だけ連れて来たんじゃないか?」と思っていたんですが、どうしてどうして、日本相手だと滅法強いじゃござんせんか。 実況は、「アメリカ野球の意地」なんて言ってましたが、意地で倍点取れるほど、日本代表は弱かねえすよ。 実力が出たからこそ、圧倒したんでしょう。
で、決勝の【キューバ×韓国戦】ですが、凄まじく緊迫した試合になりましたな。 八回九回のリュ・ヒョンジン投手にかかったプレッシャーが、並大抵ではありません。 負けても銀メダルで、充分な名誉ですが、そんな事は一切念頭に無い投げっぷりが賞賛に値します。
九回の捕手退場&投捕手交代劇ですが、あの悶着で、一見韓国側に不利になったように見えて、その実、あそこで試合が一旦途切れた事で、キューバ側の緊張の糸が切れて追撃ムードが萎んだ為に、むしろ韓国側に有利になったんですな。 交代した投手がサイド・スローで、先発のリュ投手に感覚を合わせていたキューバの打者達が、調整する暇が無かったのも影響したと思われます。
いや、これだけの試合はなかなか見られるものではありませんよ。 古田さんが感動していましたが、見所を知り尽くしている元プロだけでなく、ほぼ門外漢に近い、というか、ぶっちゃけ野球に興味が無い私ですら引き込まれて目が離せなくなってしまったのですから。
≪格闘技≫
これは毎度思っている事なんですが、格闘技系の競技で、階級ごとに銅メダルが必ず二つ出るものがあるは、どう考えてもおかしいです。 それでなくても、体重別になっていて、メダルの数が多すぎると言うのに。 バレー、バスケットなどは、男女合わせても、金銀銅×2で、6個しかメダルが無いのに、レスリングや柔道は、何十個出るか分かりません。 国際オリンピック委員会が、こんな不公平な状況を放置しているのが不思議。 「競技の性質上やむをえない」などというのは、考えが足りないのであって、思い切って、団体戦にしてしまえば、メダルの数を減らせます。
それはさておき、今回は柔道での日本のメダル数がだいぶ減りましたが、柔道という競技の行く末を考えれば、良い傾向です。 従来、「柔道は日本のお家芸だから、メダル独占が当たり前」などという無神経な言動が日本国内で大っぴらに口にされていましたが、馬鹿は死ぬまで寝ていた方がいいのであって、オリンピックの種目は、一国にメダルをくれてやるために、選ばれているのではありません。 採用されてから40年以上経つのに、未だに発祥国がメダル独占をしていたら、それはオリンピック種目として不適当である事の証明でしかないのです。 発祥国以外の国の選手がメダルの多くを取るようになって、初めて国際的になったと喜ぶべきでしょう。
もっとも、私は、柔道という競技、見ていてちっとも面白くないので、どうにも好きになれません。 まず、決まり手が分からないです。 実況ばかりか、解説者まで、しょっちゅう決まり手の判断を間違えますが、プロが見ても分かり難いものを素人が分かるはずがありません。 ≪効果・有効・技あり・一本≫の境目も審判の主観に委ねられていて、あやふやこの下無し。 よく、こんなルーズなルールでやっとるのう。 寝技があるのも、いやらしいです。 倒したら勝ちでいいじゃん。
日本発祥の格闘技と言ったら、柔道より相撲の方が、ずっと分かり易く、面白いと思いますが、なんでまた柔道なんか入れたのか、とんと理由が解せません。 「○○選手が金メダル!」とかいって、狂ったようにはしゃいでいる人達に聞きたいのですが、本当に柔道という競技を観戦していますか? ただ、勝ったか負けたかだけで、騒いでるんじゃないの? それは、スポーツ観戦とは言いませんぜ。 毎朝、順意表だけ見て、プロ野球を論じている似非ファンどもと、選ぶ所がありますまい。
メダル取得競争は、金メダルでは中国が勝ち、総数ではアメリカが首位を守りました。 この競争、面白くなるのは、次のロンドン大会でして、ホームでない場所でも中国が同じくらいのパーセンテージを占められるかどうかに興味があります。 ソウル五輪以降、上位陣の常連になった韓国を見ると、中国もずっとトップに君臨しそうですが。
ロシアのメダル数が思ったより伸びなかったのは、紛争の心理的影響でしょうか。 後半追い上げて、三位まで上がりましたけど、実力的には、もっと取れても良かったような気がします。 ちなみに、人口比から言うと、韓国が日本の3倍取っている事はすぐに気付きますが、もっと凄い所では、オーストラリアが日本の12倍で、ダントツです。 他、イギリスは5倍、アメリカは6倍、中国は0.4倍になります。 どの国を基準と考えるかで、感じ方がだいぶ変わって来ますが。
もっとも、メダル数という奴、選手の才能より、その国のスポーツ強化に対する予算の違いで決まるような所もあり、金をかけている国が強いのは当然という気もしますが。 インドの相変わらずの少なさには、逆にびっくりしますが、あれだけの人口があって、才能ある人材がいないはずがないので、強化に問題があるのは疑いないと思います。
閉会式は、やはり開会式ほど驚きはしませんな。 依然として、ショーは凄いですが、やはり、閉幕のうら寂しい雰囲気には勝てません。 それにしても、世界中で、最も華やかな舞台はどこかといえば、やはりオリンピックの開会式か閉会式に決まりでしょうねえ。 あれだけの大観衆に囲まれ、全世界にテレビ中継されている所でスポットライトを浴びるなど、国連演説やノーベル賞授賞式でも、遠く及ばないでしょう。
昨今、オリンピック閉会式の恒例のようになった歌謡ショーが、割合短かったのは助かりました。 シドニーの時には、うんざりするほど長かったですから。 せいぜい、二三曲が程よいんじゃないでしょうか。 歌手を呼ぶと、開催国の人は盛り上がりますが、外国人には全くピンと来ず、聞いているだけで苦痛になってしまうのです。 歌手が主役のようになってしまうのも、違和感あり。 オリンピックの主役は最後まで選手でしょう。
開会式は凄かったです。 凄いを通り越して、度肝を抜かれたというのが的確か。 恐らく、全人類の全歴史を通じて、この地球上において、最も精緻に企画され、最も大規模に繰り広げられたページェントと言えるでしょう。 ショー・アップとは、ここまで突きつめられるものかと呆気に取られる華やかさ。 理論的には、これを超えるショーも作れない事はないと思いますが、資金的にも、才能的にも、しばらくは抜けますまい。 次のロンドンでは、もはや逆方向の、≪エコ開会式≫に走る以外、選択の余地はないのではありますまいか。
演出は、≪初恋の来た道≫、≪英雄(HERO)≫などを撮った、張藝謀監督。 映画監督なので、畑違いであるショーの演出はどうするんだろうと思っていたんですが、こりゃ、ショー演出家に転身しても、莫大な釣りが来るくらいの素晴らしい腕の冴えですな。 なるほど、天才とは確かにいるものです。
夜を選んだのは大正解で、花火にせよ、電飾にせよ、光の効果を利用したかったら、舞台が夜になるのは当然のこと。 さすが映画監督の発想らしく、ショーを映像として捉えた点が、今までにない工夫です。 競技場に敷かれた巻物状の大スクリーンを中心に、観客席を取り巻く壁上のスクリーンを合わせて、会場全体を立体的な映画館にしてしまったんですな。 実際の人間の動きだけでも凄いのに、それに映像が被さっているので、いとも鮮やかに幻想的な雰囲気を現出させています。
ショー企画の精緻さにも驚きますが、これだけ大勢の出演者に、どうやって段取りを覚えさせ、練習させたのか、それも驚異的です。 おそらく、監督の手足になって奔走した演出スタッフが無数にいたのでしょう。 いずれも、天才級の知能と、超人的な体力・精神力が無ければ出来る事ではありますまい。
ショーがあまりにも素晴らしいので、いざ主役の選手入場となったら、白ける白ける。 ショーだけで終わりにしても良かったのではないかと思うほど。 とはいえ、入場の見所はやはり衣装でしょうか。 いつもの事ですが、中南部アフリカ諸国の衣装は、やはり圧倒的に美しいですな。 ヨーロッパでは、ハンガリーの服がデザイン良し。 スエーデンの女子選手の旗袍風の服は、自国文化の主張ではなく、開催国の文化に合わせるという逆転の発想が面白いです。
聖火点灯は 元体操選手の李寧さんでしたが、解説をしていた谷村新司さんが、名前を知らなかったのに意外でした。 ロス五輪やソウル五輪の頃の中国体操界のエースで、私でさえ名前を覚えていたくらいの有名人なんですが。
私の場合、大会の前半は夏の連休の内で、外出が多く、後半は仕事で夜しか家におらず、肝心の競技の方はそんなには見られなかったんですが、いくつか印象に残ったものを書きましょうか。
≪自転車 ロードレース≫
コースが見ものでした。 万里の長城付近の道を使って行なわれたんですが、城壁のある町の中を通ったりして、普通の旅番組などでは写さないようなリアルな風景が見られました。 高速道路の崖側の壁の作り方も、石積みか、もしくは石積み風に仕上げてあって、日本では見られないような質感を持っています。 競技そのものも、スピード感溢れ、競技場の中の種目とは全く違った魅力がありました。
≪アーチェリー≫
恐ろしく静かな競技ですが、正真正銘の真剣勝負だねえ。 対戦者と戦っているというより、自分と戦っているんですな、彼らは。 結局、ほとんど表情に変化が無く、最も落ち着いていた選手が勝ちましたけど。
≪マラソン≫
これも、コースが見もの。 天安門広場はもちろん、北京大学や清華大学のキャンパス内を通過するなど、サービスたっぷりのコース設定ですな。 やっぱり、明清の都・北京だけあって、この空間の広さが魅力です。 ≪出口≫や、≪入口≫といった漢字の標識があって、当然と言えば当然の事ながら、何の抵抗も無く漢字が読めるのが、得をしたような気分がして面白いです。
≪女子サッカー≫
【ブラジル×ドイツ戦】。 凄いな、ブラジル女子。 グリグリ動く。 ドイツを手玉にとっていました。 概ね、ブラジル選手の方が、ドイツ選手より小柄ですが、≪体格差≫の優劣が逆転しているとしか思えません。 小さい方が動きが良いのです。 実に美しい! かっこいい! 超絶美技! 残念ながら、アメリカとの決勝を見れなかったんですが、このブラジルに勝ったアメリカというのは、どういうチームだったのよ?
≪女子体操≫
なんつーか、その~、今頃こんな感想を言うのも遙かな話ですが、やっぱり、ルーマニアの妖精・コマネチ選手は、すば抜けて魅力があったんですなあ。 演技も素晴らしかったけど、顔もスタイルも、ケチのつけどころが無かったです。 だから、≪妖精≫と呼ばれたわけですよ。 今の選手を見ても、そういう三拍子揃ったっていう人はいないものね。
≪シンクロ≫
相変わらず、醜い競技だのう。 元の顔の良し悪しに全く関係なく、あの鼻挟みをつけた時点で、もはや人間の顔とは思えません。 さっさと五輪種目から外すべきでしょう。 五輪種目でなくなってしまえば、こんな陳腐な競技をやりたがる人間などいなくなるに決まってます。 そもそも、これってスポーツなの? 軽業のような大道芸に近いと思いますが。
≪卓球・女子≫
準々決勝、中国の張怡寧選手とシンガポールのホン選手の試合を見ましたが、速過ぎて、何が行なわれているのか、全然見えませんな。 日本の卓球関係者である解説者が、あまりの高度なラリーに、言葉を失ってばかり。 中国の卓球が図抜けているのは有名ですが、互角に戦っているシンガポール選手のこの強さは、一体どこから出て来ているのか。
順序が逆になりましたが、福原愛さん、張怡寧選手とその前に対戦していたんですね。 3セット先取されて、第4セットは取り、第5セットで撃破されたとか。 その後の張選手とホン選手の対戦を見ているので、思うんですが、第4セットは、譲ってもらった可能性が高いですな。 福原さんは、中国でも人気があるので、向こうのコーチが花を持たせてくれたんでしょう。
福原さんの卓球、というより、日本式の卓球ですが、このスタイルを守っている限りは、とても世界のトップクラスと戦うのは無理ではありますまいか。 投げ上げサーブなんて、もうそんな時代じゃないですぜ。 もはや、単なるパフォーマンスですな。 全く効果が出ておらず、アホ臭そうにつきあっている張選手の顔を見るにつけ、思わず赤面してしまいます。 もっとも、張怡寧選手は無表情が特徴らしく、常にアホ臭そうな顔で試合をしているという感じもしますが。
≪卓球・男子≫
当然、中国選手同士の戦いになりましたが、すっげー試合ですな。 人間技に見えません。 卓球は、メダリストが一国に集中してしまっているので、その点、種目整理の対象になりかねませんが、こういう超高レベルな試合を見せている限り、外されるような事は無いでしょう。
≪ビーチバレー≫
アメリカが金メダル。 圧倒的な強さで、今大会通じて、1セットも落さずに、金まで行ってしまいました。 決勝は中国チームが相手で、接戦でしたが、どうもアメリカ側が接戦になるように配慮したような感あり。 アメリカのペアは、超がつくようなベテランで、百戦錬磨、その程度の演技はお手の物という感じです。 もう歳が歳ですから、いずれ、世代交代の波に洗われると思いますが、まだ暫くは無敵なんじゃないでしょうか。
シャワーと見まがうような強い雨の中でやっているんですが、サーブに使うボールをタオルで拭く係のお姉さんが、一生懸命で大変健気。 こういう裏方さんが無数にいて、スポーツ大会というのは支えられているんですなあ。
どの競技も、日本向け放送の解説と実況は日本人がやっているわけですが、日本選手が早々と脱落してしまうと、気楽になるのか、解説の内容が濃くなって面白くなります。 こういう時が聞き時でして、その競技についての専門的な知識や、試合の見所を知る事が出来ます。 「日本選手がいなくなってからが、オリンピックの醍醐味」とはこの事を言うんですな。
≪野球≫
準決勝の【キューバ×アメリカ戦】を見ていたので、「アメリカは二流選手だけ連れて来たんじゃないか?」と思っていたんですが、どうしてどうして、日本相手だと滅法強いじゃござんせんか。 実況は、「アメリカ野球の意地」なんて言ってましたが、意地で倍点取れるほど、日本代表は弱かねえすよ。 実力が出たからこそ、圧倒したんでしょう。
で、決勝の【キューバ×韓国戦】ですが、凄まじく緊迫した試合になりましたな。 八回九回のリュ・ヒョンジン投手にかかったプレッシャーが、並大抵ではありません。 負けても銀メダルで、充分な名誉ですが、そんな事は一切念頭に無い投げっぷりが賞賛に値します。
九回の捕手退場&投捕手交代劇ですが、あの悶着で、一見韓国側に不利になったように見えて、その実、あそこで試合が一旦途切れた事で、キューバ側の緊張の糸が切れて追撃ムードが萎んだ為に、むしろ韓国側に有利になったんですな。 交代した投手がサイド・スローで、先発のリュ投手に感覚を合わせていたキューバの打者達が、調整する暇が無かったのも影響したと思われます。
いや、これだけの試合はなかなか見られるものではありませんよ。 古田さんが感動していましたが、見所を知り尽くしている元プロだけでなく、ほぼ門外漢に近い、というか、ぶっちゃけ野球に興味が無い私ですら引き込まれて目が離せなくなってしまったのですから。
≪格闘技≫
これは毎度思っている事なんですが、格闘技系の競技で、階級ごとに銅メダルが必ず二つ出るものがあるは、どう考えてもおかしいです。 それでなくても、体重別になっていて、メダルの数が多すぎると言うのに。 バレー、バスケットなどは、男女合わせても、金銀銅×2で、6個しかメダルが無いのに、レスリングや柔道は、何十個出るか分かりません。 国際オリンピック委員会が、こんな不公平な状況を放置しているのが不思議。 「競技の性質上やむをえない」などというのは、考えが足りないのであって、思い切って、団体戦にしてしまえば、メダルの数を減らせます。
それはさておき、今回は柔道での日本のメダル数がだいぶ減りましたが、柔道という競技の行く末を考えれば、良い傾向です。 従来、「柔道は日本のお家芸だから、メダル独占が当たり前」などという無神経な言動が日本国内で大っぴらに口にされていましたが、馬鹿は死ぬまで寝ていた方がいいのであって、オリンピックの種目は、一国にメダルをくれてやるために、選ばれているのではありません。 採用されてから40年以上経つのに、未だに発祥国がメダル独占をしていたら、それはオリンピック種目として不適当である事の証明でしかないのです。 発祥国以外の国の選手がメダルの多くを取るようになって、初めて国際的になったと喜ぶべきでしょう。
もっとも、私は、柔道という競技、見ていてちっとも面白くないので、どうにも好きになれません。 まず、決まり手が分からないです。 実況ばかりか、解説者まで、しょっちゅう決まり手の判断を間違えますが、プロが見ても分かり難いものを素人が分かるはずがありません。 ≪効果・有効・技あり・一本≫の境目も審判の主観に委ねられていて、あやふやこの下無し。 よく、こんなルーズなルールでやっとるのう。 寝技があるのも、いやらしいです。 倒したら勝ちでいいじゃん。
日本発祥の格闘技と言ったら、柔道より相撲の方が、ずっと分かり易く、面白いと思いますが、なんでまた柔道なんか入れたのか、とんと理由が解せません。 「○○選手が金メダル!」とかいって、狂ったようにはしゃいでいる人達に聞きたいのですが、本当に柔道という競技を観戦していますか? ただ、勝ったか負けたかだけで、騒いでるんじゃないの? それは、スポーツ観戦とは言いませんぜ。 毎朝、順意表だけ見て、プロ野球を論じている似非ファンどもと、選ぶ所がありますまい。
メダル取得競争は、金メダルでは中国が勝ち、総数ではアメリカが首位を守りました。 この競争、面白くなるのは、次のロンドン大会でして、ホームでない場所でも中国が同じくらいのパーセンテージを占められるかどうかに興味があります。 ソウル五輪以降、上位陣の常連になった韓国を見ると、中国もずっとトップに君臨しそうですが。
ロシアのメダル数が思ったより伸びなかったのは、紛争の心理的影響でしょうか。 後半追い上げて、三位まで上がりましたけど、実力的には、もっと取れても良かったような気がします。 ちなみに、人口比から言うと、韓国が日本の3倍取っている事はすぐに気付きますが、もっと凄い所では、オーストラリアが日本の12倍で、ダントツです。 他、イギリスは5倍、アメリカは6倍、中国は0.4倍になります。 どの国を基準と考えるかで、感じ方がだいぶ変わって来ますが。
もっとも、メダル数という奴、選手の才能より、その国のスポーツ強化に対する予算の違いで決まるような所もあり、金をかけている国が強いのは当然という気もしますが。 インドの相変わらずの少なさには、逆にびっくりしますが、あれだけの人口があって、才能ある人材がいないはずがないので、強化に問題があるのは疑いないと思います。
閉会式は、やはり開会式ほど驚きはしませんな。 依然として、ショーは凄いですが、やはり、閉幕のうら寂しい雰囲気には勝てません。 それにしても、世界中で、最も華やかな舞台はどこかといえば、やはりオリンピックの開会式か閉会式に決まりでしょうねえ。 あれだけの大観衆に囲まれ、全世界にテレビ中継されている所でスポットライトを浴びるなど、国連演説やノーベル賞授賞式でも、遠く及ばないでしょう。
昨今、オリンピック閉会式の恒例のようになった歌謡ショーが、割合短かったのは助かりました。 シドニーの時には、うんざりするほど長かったですから。 せいぜい、二三曲が程よいんじゃないでしょうか。 歌手を呼ぶと、開催国の人は盛り上がりますが、外国人には全くピンと来ず、聞いているだけで苦痛になってしまうのです。 歌手が主役のようになってしまうのも、違和感あり。 オリンピックの主役は最後まで選手でしょう。