2009/09/27

無念の断念

  執念深く検討を続けて来た、≪一眼デジカメ購入計画≫ですが、思わぬ方面から障碍が立ち現れ、頓挫しかけています。 それは、浪費を避けようという理性でもなく、要求に合致する性能のカメラが無いという事情でもなく、私の健康状態でした。 具体的に言うと、腰痛です。

  私はフィルム一眼時代に買った、ウエスト・バッグを持っています。 標準のズーム・レンズを着けた一眼レフ一台と、小物がちょっと入れられる程度の大きさです。 それを押入れから引っ張り出して、デジビノのセットを入れ、ここ一ヶ月ばかり、休みの日になると出かけていたのですが、大した重さでないにも拘らず、腰へ来てしまったのです。 コンパクト・デジカメの≪オリンパス C-2≫と、双眼鏡の≪ビクセン FOKUS 9×21≫と、木で作ったアタッチメントだけですから、合計450グラムくらいしかないのに、ほんの二時間程度、徒歩や自転車で動き回っただけで、参ってしまいました。

  肉体労働をしているので、休みに腰を痛めると、翌日から地獄が待っています。 私の腰痛は、20代前半からの年代物でして、一度起してしまうと、回復は遅々としたもので、ひどい場合は、三ヶ月くらい痛みが取れない事もあります。 たった450グラムで、この様ですから、一眼デジカメを持ち歩けるとは、到底思えません。 一眼デジカメの重さといったら、本体だけで500グラム、それにレンズが標準ズームでも200グラム以上しますから、最軽量の組み合わせでも、デジビノよりずっと重いのです。 その上に、三脚なんざ担いだ日には、もう10分も動けますまい。

  私が、一眼デジカメで撮りたいと思っている写真というと、フィルム一眼の頃にやっていたのと同じように、ISO感度を下げて画質を緻密にし、絞りを限界まで絞って全域にピントを合わせた、極力鮮明な写真ですが、それを撮るには、三脚は必須でして、手持ちでは話になりません。 私の趣味に関係なく、一眼レフというのは、三脚とセットにした時に、その特徴的機能が発揮される機械なので、手持ちでは宝の持ち腐れになってしまうのです。 一眼レフの手持ちで撮れる写真は、コンパクト・デジカメでも撮れるはず、どころの話ではなく、むしろ、コンパクト・デジカメの方が、ずっとうまく撮れます。

  一眼デジカメをすでに所有している方々にお薦めしたいのですが、ちょっとした散歩や、他の人と一緒に行動しなければならない旅行など、三脚を持って行けない状況である事が分かっていたら、一眼より、コンパクト・デジカメを持って行った方が、断然、有効に使えると思います。 三脚使用と手持ちとでは、「あ! これは撮れそうだ!」と思う光景に出会う確率が、5倍くらい違うんじゃないでしょうか。 特に、仰角撮影になると、三脚では最初から諦めてしまう事が多いです。 脚を全展長し、エレベーターもいっぱいに延ばして、高い木の枝に咲いた花を撮る自分の姿を想像すると、あまりの面倒臭さに、撮る前からうんざりしてしまうのです。

  「手ブレ補正があるから、三脚無しでも、大丈夫」と思うでしょうが、手ブレ補正は、コンパクト・デジカメにもついていますから、同一条件の勝負となれば、軽い方が勝ちます。 それに、一眼デジカメは、ミラーの動作がある分、より不利になります。 そういえば、キャノンやペンタックスの一眼デジカメでは、入門機種から、≪ミラー・アップ機構≫が搭載されているようですな。 無いよりはあった方が、ずっと有用ですが、ミラー・アップしている間はファインダーは真っ暗ですから、出番はセルフタイマー使用時などに限られるわけで、やはり、手持ち向けではありません。

  ああ、この種の、カメラに関する能書きは、今までさんざん書いて来ましたねえ。 こういう事は、写真趣味をやっている人なら、大抵頭に入っているのですが、写真に興味が無い人は全然知らないし、これから写真を始めようという人も、ほとんど知りません。 でもって、「せっかく新しい趣味を始めるのだから、道具はいい物を揃えよう。 途中で買い直す事になったりしたら、却って高くつくし」といった、その時点に於ける最も合理的な判断を下して、最初から一眼デジカメの、Wズーム・キットを買ってしまうのです。

  ところが、その、安くても5万円以上する、高級感たっぷりの一眼デジカメで、「とりあえず、庭の花でも撮ろうかな」と思い、サンダルをつっかけて、庭に出て、花に近づいて、いざ撮ろうとすると、あら、どうしましょ! ピントが合わせられない事に気付くんですな。 18-55ミリの標準ズームじゃ、最短撮影距離は、せいぜい寄っても、ワイド端で25センチでしょう。 花撮影で25センチも離れたら、花の写真というより、植物の写真になってしまいます。 ここに於いて、5万円も出して買った高級カメラなのに、マクロ撮影ができない事を知って、驚愕するわけですな。 こと、マクロに関しては、一万円以下の特売・投売りコンパクト・デジカメにも劣るわけです。

  で、その後、どういう行動を取るかというと、気が動転してしまうんでしょうねえ、何と、やしやし、マクロ・レンズを買いに行くのですよ。 マクロ・レンズもピンキリですが、平均的な品で3万円くらいするでしょう。 ほーら、もう8万円消えてしまった。 これと全く同じパターンで、望遠ズームが、テレ端300ミリくらいでは、撮れる物が無い事に気付き、レンズと同じくらいのお金を出して、テレ・コンバーターを買ったりしてしまいます。 更に、ネットで知り合った写真趣味の先輩から、「やっぱ、レンズは、単焦点の方がボケ味がいいですよ」などと唆され、よせばいいのに、広角・標準・中望遠・望遠と、単焦点レンズを揃えてしまったりします。 中には、魚眼レンズまで買って、一度しか撮らずにしまいこんでいる馬鹿もいる。 あんなもんで、何を撮るんじゃい? 買う前に、ちっと考えてみりゃ、分かりそうなもんだ。

  こういう状態を、カメラ病用語で、「≪レンズ沼≫に嵌まった」というらしいですが、一度嵌まると、破産するまで抜け出せないらしいです。 これねえ、カメラ・メーカーが仕掛けている、一眼レフの罠でして、レンズ・キットや、Wズーム・キットというのは、わざと、そういう不満が出るような組み合わせにしてあるんですな。 もし、良心的な技術者なら、コンパクト・デジカメの高倍率ズーム機につけているような、マクロから広角・望遠までカバーできるレンズをセットするでしょう。 ところが、それではレンズ沼に嵌められないので、そもそもそういうレンズを作っていないのです。 恐ろしい話じゃありませんか。 どれだけの人間が、この罠のせいで、身上潰したことか。

  だけどねー、趣味というのは、そういう方向に行きがちなものなのですよ。 だから、レンズ沼に嵌まってしまった人達を、あまり責めるのも、気の毒な気はするのです。 趣味は、徐々にうまくなって、自分の成長が実感できる間は面白いのですが、当初の目標を達成してしまうと、そこから飽き始めます。 特に、大人の趣味は、その傾向が強い。 飽きてしまっているものを、更に続けようとしたら、道具を変えたり、場所を変えたりする以外に無いのです。 釣り、ゴルフ、走り屋、パソコン、みんな同じですな。 本当は飽きているくせに、それを認めるとやめなければならないので、道具を変えて延命を図っておるのです。

  カメラの機構について知識がある人達は、一眼レフもコンパクト・カメラも、撮れる写真の95パーセントくらいは、同じである事を知っています。 デジカメの場合、むしろ、コンパクトの方が、カバー範囲が広い事も承知の上。 それでも、一眼レフを使いたくなるのは、写真趣味に飽きるのが嫌だからです。 新しいレンズやボディーを買い続けていれば、常に新鮮な気持ちで撮影に出かけられるからです。 まあ、一回撮ってしまえば、それで飽きてしまうという、非常にコスト・パフォーマンスの低いリフレッシュ方法なわけですけど。


  おっと、何だか、途方もなく脱線しておりますな。 一眼レフ批判は、もうええっちゅうに。 なんてったって、つい先週まで、私自身、一眼デジカメのボディーが欲しくて、閑さえありゃあ、中古品市場を調べてたんだから。 くっそー、腰さえ丈夫なら、買えたのになー。 これも、運命か。 ああ、断っておきますが、私は別に、自分が腰が悪くて重い器材を持ち運べないから、腹癒せに一眼レフを貶しているわけではありません。 私が繰り返し書いている一眼レフの欠点は、すべて、実際に存在するものです。

  でねー、諦めるしかないんですよ。 だって、買ったとなれば、外へ持ち出さなければ、意味がありませんし、持ち出せば、確実に腰を潰してしまうのだから、もう買わない以外に選択肢がないじゃないですか。 せっかく高い金出して買ったカメラなのに、家の中だけでしか撮れないなんて、馬鹿馬鹿しいにも程があります。 家の中で、何を撮るっちゅーねん? 出掛けてナンボなんですよ、写真趣味は。 で、泣く泣く諦めたってわけですよ。 厳しいねえ、現実は。


  というわけで、ここから先は、私がここ2週間ほどの間にネット上で集めた、一眼デジカメに関する情報を元にした、純粋な余談です。

  ペンタックスの一眼デジカメですが、610万画素の、≪ist≫系列機や、≪K100D≫系列機は、ISO感度が、最低で200なんですね。 やはり、私としては、100は欲しいところです。 ちなみに、私はフィルム時代には、100を使ってました。 暗くなっちゃって、スローシャッターしか切れないんですが、動かない物しか撮らなかったので、そちらは問題なし。 ただ、三脚必須で、セットするまでの時間がかかってしまって、それが面倒でした。 半日歩いて、7・8構図しか撮れないのが普通。 1構図辺り、露出をずらして、3枚ずつ撮るので、それだけでも、24枚撮りフィルムが、ほぼ消えてしまいましたけど。

  「結構、高級なデジカメを持っているけど、ISO感度なんていじった事が無い」という方は、一度、マニュアル設定で、100以下にして撮ってみると、面白いですよ。 画質がポンと上がるから。 手ブレ補正があれば、手持ちでも何とかいけるでしょう。 キャノンの一眼デジカメは、入門機の≪EOS Kiss≫でも、100まで下げられます。 ペンタックスの入門機も、≪K-m≫以降の機種なら、OK。 厳しいのがニコンで、中級機以上でないと100が選べません。 ニコンの一眼デジカメは、デザインが私好みなんですが、スペックを仔細に見ると、思わぬ所に落とし穴があります。 だけど、≪D二桁≫系列機を買っている人達は、そんな所、気にもしないんでしょう、きっと。

  そういや、≪カメラのキタムラ≫の、アウトレット・コーナーに、≪EOS Kiss F≫の、レンズ・キットやWズーム・キットが大量に出ているの、知ってます? 安い店舗だと、Wズーム・キットで56000円などというのがありましたが、相当お買い得ではありますまいか。 ≪EOS Kiss F≫は、すでにカタログ落ちしていますが、現行機の≪X2≫より、画素数が少し落ちるだけで、他のスペックは大して変わりません。 レンズは全く同じですから、どう考えても、お買い得でしょう。 しかし、どうして、あんなにたくさん、アウトレットに出て来たのか、それが不思議です。 捌き切らない内に、≪X2≫を発売しなければならない事情でも出来したんでしょうか。

  キャノンといえば、最近出た、≪EOS 5D MarkⅡ≫という機種は、撮像センサーの大きさが、フィルムの35ミリ判と同じ面積だそうですな。 「おっ! とうとう、そんなのが出たか!」と目を見開きました。 普通、一眼デジカメの撮像センサーは、≪APS-C≫サイズといって、35ミリ判の半分くらいの面積しかなく、そのせいで、同じレンズをつけても、焦点距離が約1.5倍になってしまいます。 それが、≪EOS 5D MarkⅡ≫では、35ミリ判と全く同じ焦点距離で撮れるというわけです。

  望遠系レンズの場合、撮像センサーが≪APS-C≫サイズなら、200ミリのレンズが、実質300ミリ相当の画角になっていたため、お得だったわけですが、≪EOS 5D MarkⅡ≫では、そのメリットが無くなります。 また、≪APS-C≫サイズ用に作られた、≪18-55ミリ≫といった標準ズームを、≪EOS 5D MarkⅡ≫につけた場合、広角に寄り過ぎていて、18ミリで撮ったりしたら、見るに耐えないくらい画像が歪む事と思われます。 うーむ、良い事なんだか、悪い事なんだか。

  とはいえ、一旦フルサイズが登場したからには、今後、各社雪崩を打って、右倣えするものと思われます。 最初は、プロ向けやハイアマ向け機種に導入され、いずれは、ローアマ向けにも普通に搭載されるようになるでしょう。 というか、フルサイズが定着すれば、≪APS-C≫サイズの撮像センサーは、生産中止になってしまう可能性が高いです。

  そういや、キャノンの交換レンズ群を見ると、従来の一眼デジカメ専用のレンズだけ、≪EF-S≫レンズとして別扱いにしていますが、あれは、35ミリ判サイズの撮像センサーが主流になったら、お払い箱にする準備なのかもしれませんな。 現在、キャノンが売っている一眼デジカメ用レンズの大半が、≪EF-S≫レンズなのに、そのドル箱商品ですら、際物視しかしていないところが、トップ・メーカーの冷徹さを物語っています。

  デザインだけ見ると、オリンパスの≪E-三桁≫系列機もカッコいいと思うんですが、オリンパスは、独自規格の落とし穴があるので、ホイホイ飛びつくわけにいかんのですよ。 あの、≪XDピクチャー・カード≫が、果たして、いつまで店頭に置かれている事やら。 もしオリンパス製品を買うなら、先々不足すると思われる物や、消耗品の類は、多めに買い溜めておいた方が無難だと思います。 デザインは、いいんだけどねえ。 ≪E-P1≫は、薦めません。 前にも書きましたが、あれは、機構的に、一眼レフではないですから、一眼レフの利点を備えていませんし、コンパクト・デジカメとしては重すぎで、ノスタルジックな外観以外、いい所がありません。

  ペンタックスの新製品、≪K-X≫ですが、ボディーとグリップの色を組み合わせて、100タイプ選べるそうです。 ペンタックスの一眼デジカメは、ラインナップがシンプルで、お客を迷わせない所が良かったんですが、今回は、全然別の方向性で、大いに迷わせる事になりそうですな。 だけど、色なんかはどうでもいいとして、≪K-X≫は、性能的には申し分無いと思います。 買って損という事はないでしょう。 ちょっと、高いけどね。 乾電池モデルは、バッテリーの劣化を気にしないで済む点が優れています。

2009/09/20

キレた

  いやはや、久しぶりにキレてしまいましたよ。 ネット上ではなく、現実生活での話。 言うまでもなく、気分が悪い事があったからキレたのであって、そんな事をここに書いて、わざわざ記録に留めてしまうのもどうかと思うんですが、さりとて、他に書く事も無いので、背に腹は代えられぬままに書く事にします。

  事の発端から述べますと、勤め先で、ひと月くらい前に、≪身だしなみを整えよ≫という、何とも時代錯誤な通達が出されたのです。 そのきっかけが、グループ企業のある工場に社会科見学にやって来た小学生の一人が、見学後の感想で、こんな事を言ったからなのだとか。

「この工場は、外国人が多いんですね」

  実際に外国人従業員が多い工場もあるので、少々紛らわしいですが、この場合の、≪外国人≫というのは、茶髪にしている日本人の事です。 つまり、「小学生がそんな風に思うくらいだから、従業員の身だしなみが乱れているという証拠なのであって、子供達に恥かしく無いように、風紀を改めなければならない」という理屈で、その通達が出されたらしいのです。

  だけど、実際に、こんな事を言う小学生がいるとは思えません。 今の小学生の親の世代なら、茶髪・金髪などいくらでもいるのであって、「外国人みたい」などという感じ方をするわけが無いのです。 私の世代ですら、茶髪・金髪の風景にはとっくに慣れてしまって、「外国人みたい」なんて事は全く思いません。 こういう感じ方を未だにしているというのは、最低でも50歳以上の世代でしょう。

  つまりね、この小学生の指摘自体が、捏造である可能性が極めて高いのです。 茶髪やピアスが気に食わないジジイが、風紀に指示を出せる役職に就き、「今こそ、攻め時!」とばかりに、捏造した小学生の指摘をダシにして、身だしなみ通達を出したんですな。 十中八九、そうに違いないです。

  よしんば、実際にそんな事を言う小学生がいたとしても、皮肉で言ったに決まっているのであって、そんな根性が捻くれ曲がったクソガキの意見を真に受けるなど、大人の態度とは言えますまい。 「社会では、個人の自由も尊重しなければなりませんからね」とでも言って、無礼な事を言わないように、逆に窘めてやるのが大人の責任というものです。

  で、そういう流れで、みだしなみ通達が出ていたんですが、企業ではよくある事に、それが徐々にエスカレートして、「ズボンの裾を折り返すな」だの、「踝までしかない短い靴下を穿くな」だの、「通勤時は、私服を着るように」だの、およそ下らない方向へ拡大して行きました。 夏場なわけですから、空調が無い工場でズボンの裾を折り返すのは当然なのですが、こういうルールを作っている連中というのは、肉体労働をしているわけではなく、エアコンの効いた部屋で机仕事をしているので、その辺の事情が全く理解できないのです。

  半月くらい前からは、退勤時に、工場の出口に監視人が5人くらい立ち、身だしなみのチェックを始めました。 監視人の身分は、元中間管理職で、現在は部下を持たず、役職格だけ保持している、いわば、≪社内閑人≫どもです。 その中には、私の元上司もいたので、私が会社指定作業服のズボンのまま帰っていても、何も言われませんでした。 先週の金曜日まではね。

  さて、悶着が発生したのは、今週の月曜日です。 ライン停止が重なって、仕事の終了が定時を過ぎてしまい、私は少しイライラしていました。 大急ぎで帰ろうとして、その監視人どもが立ち並んでいる中を突っ切ろうとしたのですが、なんと、その中の顔を知らない一人に呼び止められてしまったのです。

「おい、おまえ! そのズボンは会社のだろう!」

  もう、この第一声で、カチンと来ましたね。 全く知らない相手ですぜ。 赤の他人を掴まえて、「おい、おまえ!」ですと。 マジマジ相手の顔を見ましたよ。 小太りの醜い鼻をしたオッサンでした。 まあ、醜いか美しいかは関係ないですが、無礼千万な態度が重なると、その人間の何もかもが醜く見えて来るものです。

「おまえ、どこの職場だ? 上司の名前は誰だ?」

  ルール違反だから、まず注意するというのなら分かりますが、最初の第一声から犯罪者扱いで、上司の名前を聴取して、上から処罰させようというのです。 世の中には、こういう風に、裏へ裏へ、悪い方へ悪い方へとしか物事を持って行けない、はらわたの腐った糞野郎がいるのですよ。

  イライラしていた時にこれを喰らったので、キレないわけにはいきませんでした。 もともと、身だしなみ通達自体が、不合理極まりないと思っていたので、こんな扱いを受けて、キレ易い性質の私が平静でいられる道理がありません。

「このズボンの何が悪いんだ! 会社の支給品ならいざしらず、単に会社の売店でしか変えない指定品だというだけで、自分の金を出して買った物ではないか! つまり、これは私有物なのだ! 私有物を外で穿いて何が悪い!」

「ズボンに会社のロゴでも入っているなら話は別だが、ただの無地のズボンではないか! こんな外観のズボンは、普通の衣料品店でもいくらでも売っているのであって、外で穿いたって、会社に迷惑などかかるはずがない!」

「もし外で、これとそっくりのズボンを穿いている人物に出くわしたら、その人物をこの会社の人間だと見做して糾弾するのか? えーおい!」

  といったような事を並べ立てると、オッサンは、目を白黒させました。 たぶん、私の外見を見て、「こいつは大人しそうな奴だ」と見くびっていたんでしょうな。 まさか、逆襲されるとは思ってもいないものだから、反論するセリフを用意していなかったのは、無理も無いことです。 しかし、すでにキレている私は、手加減する気持ちなど、これっぽっちもありません。

「大体、俺は、仕事をして疲れているんだ! こんな下らない事で呼び止めるな! おまえ、仕事してるのか?」

  これは、社内閑人に対しては言ってはいけないセリフなんですが、何せキレているから、自制が利きません。 で、オッサンが何と言い返してくるか、数秒待ったのですが、何も言いませんでした。 笑ってしまうではありませんか。 本当に仕事をしていないので、言い返せなかったのです。 何という馬鹿な会社でしょう。 自分が仕事をしていない事を自覚しているような穀潰しを、高い給料出して、雇っているのですよ。 これだもの、黒字転換なんてできるわけがありません。

  更に、畳みかけ、

「ルールというなら、根拠があるだろう! その根拠を述べてみよ!」

  と言ってやったところ、ちょっと考え込んでから、相手が言った最初の言葉が、

「やっぱり~・・・・」

  もう、すかさず突っ込ませてもらいましたね。

「何が、『やっぱり』だ! ビシッと言え! いいか、おまえが今考えた理屈を訊いているんじゃないんだ! 元から決まっているルールの根拠を言ってみろと言っているんだ!」

  その後は、相手はもう何も答えませんでした。 私の独擅場。 一人で一方的に捲くし立て、最後には、

「よーし、それじゃあ、そのルールを決めた奴というのを、ここへ連れて来い! どういうつもりでこんな馬鹿な事をやらせてるのか、直接訊いてやるから! いいや、連れて来いと言っても、来やしないだろう。 こっちから、行こうぜ! ほら、来い!」

  と言って、オッサンの腕を取り、社屋の方へ、5歩ばかり引っ張って行きました。 その時のオッサンの困った顔といったら、写真に撮っておきたいくらいでしたよ。 自分の上司の所へ連れて行かれるとは思ってもいなかったのでしょう。 想定外の椿事に、震え上がったに違いありません。 他の監視人達は、事態の成り行きの意外さに、呆気に取られています。 そりゃ、そうだわな。 吊るし上げるつもりで呼び止めた方が、ほんの3分ほどの間に完全に形勢逆転して、平社員に吊るし上げられ、上司のところへ連行されようとしているのですから。

  ここで、監視人の一人だった私の元上司が割って入りました。

「いや、もういいから、今日は帰れ! もう、いいから!」

  この元上司、私が追い詰められるとキレる性格である事を知っていたので、最初にオッサンが私を呼び止めてしまった時から、「やばい奴に声をかけたな・・・」と、まずそ~な顔をしていたのです。 別に、私を助けたのではなく、私に連行されそうになったオッサンの方を助けたのだと思いますが、結果的には、私も助ける事になりました。


  とうわけで、私は窮地を脱し、家に帰る事ができたわけです。 だけど、いくら圧倒的な勝利に終わったとはいえ、こんな殺伐とした悶着があって、気分がいいわけがないのであって、それから二三日、相当には落ち込みましたよ。 下手をすれば、クビという結果も考えられるわけで、そうなれば、かなり厄介な事態になります。 喧嘩をしてスカッしてばかりいるほど、子供でもないわけです。

  事件のあった翌朝、直属の上司に呼ばれ、事情を訊かれましたが、その上司はその場にいなかったわけですから、喧嘩をする理由は無く、「犯罪者扱いされたので、図らずもキレてしまいました。 あなたには迷惑をかける事になってしまって申し訳ない」と、その点についてだけ謝り、ごく温和に話は済みました。 ただ、上司から、「つっばり続けると、却って面倒な事になるから、ズボンは私服にしてくれないか」と言われ、それには従う事にしました。 私だって、理屈は理屈、現実は現実と割り切る事はできます。 礼儀正しく温厚に言ってくれれば、上の指示に従うのに吝かではありません。 赤の他人に向かって、「おい、おまえ!」と呼び止める奴が問題なのです。


  その後、笑ってしまう事に、この退勤時の、≪身だしなみチェック活動≫は、廃止になりました。 タイミング的に見て、私がキレた事件が影響したのは、間違いないです。 一番には、監視人どもが、ビビッたんでしょうな。 あの連中、もう20年以上、中間管理職をやっていて、会社で人から怒鳴られた事など無かったので、「それでなくても、他の社員から鬱陶しがられているのに、こんな恐ろしい目に合わされたのでは、割に合わない。 それに、平社員に怒鳴られている所を知人に見られたら、恥かしくて顔も合わせられないではないか」とでも思ったんでしょう。 また、会社としても、門の外から見える場所で、怒鳴り合いなど繰り広げられては敵わないと思ったのだと思います。 とにかく、合理性の無い活動が廃止になったのは良かったです。

  それにしても、この不景気で、生産量が減り、業績低迷、赤字を垂れ流し続けているという折に、よくもこんな一円の利益にも繋がらない活動を思いついたものです。 こういう事を言い出す奴というのは、会社の利益など全く考えておらず、とにかく、自分がある役職に就いている意義を確認したいために、また、自分の発案で、ある活動を行なったという実績が欲しいために、こんな事をやらせているのです。 話になりませんな。 獅子身中の虫! 即刻クビにすべきでしょう。

  それと、あの監視人どもが、頭が回らない事にも呆れました。 言い争っていた3分間の内、相手のオッサンが答えたセリフは、「やっぱり~・・・」と、「ルールだから・・・」の二言だけでした。 信じられないでしょう? 50代半ばくらいの、いい歳こいた大人ですぜ。 そもそも、自分が始めた争いだろうが。 なぜ、もっと言い返して来ない? 理由は一つしかありません。 頭の回転が鈍くて、セリフを思いつかないのです。 そんな知能の弱い人間が、中間管理職とは、片腹痛いわ。 3分間の言い争いに二言しか答えられないような奴に、一体どんな仕事ができるんじゃい!

  上司の所へ連れて行かれそうになって、ビビるというのも、人格の小ささを露呈していますなあ。 口論のセオリーとして、相手の寄って立つ地盤を崩してしまうという手法があります。 上からの命令で動いている人間は、「その上の奴と話をするから、連れて行け」と言うと、自分が戦う理由を奪われてしまい、この上無い困惑に陥るのです。 中間管理職というのは、十人が十人、出世第一の輩ですから、下には強いが、上には滅法弱い。 上司の前で面目を潰されかねない事態に陥ると、大いに焦り、狼狽しまくります。 面白いといえば面白いですが、まあ、不様なものですよ。

  この連中が思い違いをしているのは、自分が上司が怖いのと同じように、平社員も自分を怖がってくれるだろうと、期待している点です。 何が、怖いものか! 終身平社員は、いつクビになっても困らないように、覚悟して生きているのであって、社長・会長ですら、ただの他人に過ぎません。 ましてや、部下がいない名前だけの肩書きなんぞ、まったく恐るるに足りません。 なんで、それが分からないかなあ?

  だからよー、社内で知らない人間に出会ったら、とりあえず、礼儀正しく接しておけっていうのよ。 そうすりゃ、噛み付かれる事なんてないんだから。 「おい、おまえ!」で呼び止めて、ホイホイ言う事を聞く他人なんているわけないだろが! まったく、今までの人生で、何を学んで来たのやら。 大方、会社の中の狭~い社会で、自分と関わりの深い人間とだけ付き合って来たんで、他人とどう接していいか真剣に考えた事も無かったのじゃろう。 哀れなものよのう。

2009/09/13

一眼デジカメ欲しい病

  いや、ちょっと困っておるのですよ。 欲望とは本当に恐ろしいものです。 私なんざ、すっかり枯れきって、物欲なんぞ、もう欠片も残っていないと思っていたんですが、そうではなかったんですねえ。 困った、困った。 何にどう困っているのかは、順を追って説明しなければなりませんな。

  実はその、昔使っていた一眼レフの中に、まだフィルムが残っているのを、何とかしなければいけないと思いつつ、7~8年経過してしまっていたのですが、去る夏休みに、とうとう意を決して、カメラを押入れから出してみたのです。 リコーの≪XR-8 SUPER≫という、マニュアル・カメラです。 電気を使うのは、露出計だけ。 24枚撮りのコダック・フィルムを、14枚だけ撮って、そのままになっていました。 ほとんど、ツタンカーメン王の墓を発掘した気分。

  で、残りのフィルムを家の中で撮ってしまおうと思い、三脚も出して来て、セットしたまではよかったんですが、いざ撮ろうとすると、なんと、レリーズが下りません。 巻き上げレバーは動かないので、巻き忘れでない事は確か。 「寝かし過ぎて、壊れたか! いや、それならそれで、別にいいけれど・・・」と思いつつ、レンズを外してみたら、カシャッとミラーが下がりました。 「あれ? やっぱり、撮れるのか?」と思い、もう一度トライしましたが、やはり駄目。 ミラーが上がったままで止まってしまい、レンズを外さなければ、下がりません。

  よくよく、ミラーを見てみると、固定枠から5ミリくらいズリ落ちているのを発見。 接着剤が融けて、固定枠の上を流れ下ったようです。 「こんな壊れ方があるのか!」と、しばし目を見張りました。 修理に出せば、直ると思いますが、そもそも、今後フィルムで撮るつもりが全く無いので、何万かかるか分からない修理など、検討の対象にもなりません。 カメラには気の毒ですが、このまま眠ってもらうしかありませんな。

  14枚撮影済みのフィルムを取り出して、昔利用していた近所のカメラ屋へ持って行ったんですが、ここで、またビックリ! いつの間にか、閉店していたのです。 確か、一年くらい前に見た時には、DPEのみに規模を縮小しながらも営業を続けていたような気がするんですが、その後、力尽きた模様。 うーむ、フィルム時代は遠くなりにけり。 やむなく、他の店に持って行きました。 そちらの店も、以前は、≪カメラのキムラ≫だった看板が、いつの間にか、≪カメラのキタムラ≫に変わっており、何やら隔世の感あり。 でも、まだカメラも扱っており、堅調に営業しているようでした。

  現プリ代、1185円。 高いのか安いのか分かりません。 7~8年放置されていたにも拘らず、14枚は無事に撮れていました。 ここで、またまたビックリ! 全部、我が家の犬を撮ったものだったんですが、画質が異様に良いのです。 アングルから見て、全て手持ち撮影と思われるのに、毛の一本一本まで、くっきり見えるから驚き。 コンパクト・デジカメにしてからも、犬は何十回も撮りましたが、こんな細密な写真は撮れた例しがありません。 フィルムの粒子というのは、細かかったんですねえ。 お見せしたいところですが、パソコンで表示すると、ピクセル数の制限があるので、どうせ潰れてしまうでしょう。 ≪フィルム・紙・化学反応≫という、アナログ処理だからこそ可能な画質なんですな。

  それと、一眼レフはレンズ径が大きいだけあって、開放で撮ると、ボカシがたっぷり利く事を再認識させられました。 コンパクト・デジカメだと、開放でも充分暗いので、被写界深度が広がって、綺麗にボケてくれません。 ついでに気付いたんですが、動物の写真というのは、目にピントを合わせて、開放で撮れば、とにもかくにも芸術作品風に見えるようですな。 もっとも、今のコンパクト・デジカメでは、マニュアル露出モード自体が省かれているので、開放にしようがないですけど。


  とまあ、そんな事が夏休みにあったのです。 「最後のフィルムは処理した。 フィルム一眼レフは押入れ深くにしまった。 よし、これで片付いたぞ」で、済むはずだったんですが・・・、済まなかったんですな。 久しぶりに一眼レフとレンズをいじり、それで撮った写真を目にしたばっかりに、日頃あれほど警戒していた、≪一眼デジカメ欲しい病≫に感染してしまったのです。 他人には、「一眼デジカメなんて、ガラクタだ」とか何とか言って、買わないように言って来たのに、自分が欲しがっていてどうする? 立場上、やばいじゃん!

  「カメラは壊れてしまったが、レンズはまだ使えるのだから、一眼デジカメの中古を買って来て、復活させてみちゃあどうか」 一旦そう思ったら、その計画が脳裏から離れなくなってしまったのです。 思いついた当初は、中古カメラなど、どこで売っているのか知らなかったので、そこから先へ進まなかったんですが、二週間ほどたった頃、とあるカメラ・チェーン店のサイトを見ていたら、中古品のページがあるのを発見。 どうやら、全国規模の中古品売買システムを構築している模様なのです。 試しに、私の持っているレンズを着けられる一眼デジカメの機種を調べてみたら、あるわあるわ、選びようがないくらい、うじゃうじゃ出ているじゃないですか。

  私の持っているレンズは、リコーの≪リケノン・レンズ≫なんですが、リコーのマウントはペンタックスの≪Kマウント≫と同じなので、ペンタックス機なら、着くには着くのです。 一番安い、≪ist≫系列のボディーで、18000円から、23000円くらい。 新品を買うのに比べたら、タダみたいなもんですな。 ≪ist≫系列機は、610万画素しかありませんが、私の望みは、「眠っていたレンズに、もう一度光を通してやりたい」という事だけなので、600万画素だろうが、200万画素だろうが、どうでもいいのです。

  というわけで、ふらふらと予約を入れかけて、はっと気付いたのが、≪レンズ付きキット≫の存在です。 ボディーと標準ズームのレンズがセットになっている奴。 「いや、レンズはいらないから・・・」とパスしかけて、値段を見てビックリ! なんと、ボディーのみの場合と、大して変わらないのです。 「げっ!」と、思いましたよ。 そうなんです。 一眼デジカメを手放す人には二種類いるのです。 同じメーカーの新機種を買うために、ボディーだけ売って、レンズを残す人と、他のメーカーに乗り換えるために、レンズごと売ってしまう人が。 そして、もともと、カメラとセットで販売された標準ズーム系のレンズは、大量に世に出ているため、単独では値段が付かないほど、価値が低くなっているんですな。

  「それでも、レンズはいらない!」と初心を貫徹したい所ですが、実は、まだ他に問題があるのです。 私の持っているレンズは、28-70ミリで、フィルム・カメラなら標準域なんですが、デジカメで使うと中望遠域になってしまい、非常に使い難い事が予想されるのです。 具体的に言うと、比較的近くにある物を全体を入れて撮るという事ができません。 コンパクト・デジカメで言えば、常にズーム域の真ん中辺りで撮っているようなものです。 想像するだに、不便そうでしょう?

  「それなら、保険のつもりで、レンズ付きの方にしておこうかなあ」などと、心が揺れるわけですが、今のレンズは、ピントも露出もオートですから、使い始めれば、そちらの方が便利に決まっており、私が持っているマニュアル・レンズなんぞ、押入れに逆戻りになるのは、使う前から決まったようなものです。 ダメじゃん! それじゃ、意味無いじゃん!

  自己矛盾という大きな壁にぶち当たったお蔭で、ここで一旦、欲の悪夢から覚めました。 諦めてみると、「新品に比べたら、タダみたいなもの」なんてセリフが、よく口から出たもので、冷静に考えれば、2万円前後がタダみたいものであるはずがありませんわなあ。 呆れた失言だね。 うーむ、欲に突き動かされている時には、感覚が麻痺してしまうものなんですねえ。


  というわけで、計画はあえなく頓挫し、雲散霧消したかに見えたのですが、そうはイカのキンダーランドだったんですねえ。 もう一方で、平行して進んでいた、≪野鳥撮影器材購入計画≫が破綻しやがったのです。 これは、≪デジビノ≫の回で書いたように、野鳥観察に興味を覚え始めた私が、コンパクト・デジカメと双眼鏡を組み合わせる不様な撮影器材に嫌気が差し、「高倍率ズーム機か、一眼デジカメ+超望遠レンズを買ってしまおう」と思い立ったあの一件から、しぶとく心の隅でくすぶり続けていた計画です。

  単に、「昔のレンズをもう一度使ってみたい」という動機だけで始まった、≪一眼デジカメ購入計画≫とは違い、≪野鳥撮影器材購入計画≫には、野鳥撮影という目的があるので、むしろ、そちらの方が実現性は高かったのですが、これが、完膚なきまでにコケてしまったんですな。 それはなぜかというと、野鳥サイトを作っている方々が使っているのと同じ器材を揃えようとすると、必要最低限でも10万円を超し、充分条件を揃えるとなれば、60万円くらいかかってしまう事が分かったのです。

  いくら興味が湧いたとはいえ、たかが趣味に、そんな大金をはたくわけには行きません。 それでなくても、仕事が暇で、給料が少ないというのに、趣味に10万円? わははは! 冗談も休み休み言えよ。 ちなみに野鳥を画面いっぱいの大きさで、鮮明に撮ろうと思ったら、≪EDレンズ付きのフィールド・スコープ+コンパクト・デジカメ≫か、≪連写速度の速い高級一眼デジカメ+500ミリ単焦点EDレンズ≫のどちらかにするしかないらしいのですが、前者だと10万円、後者だと60万円になるのです。 趣味に60万円とは驚き入った傾倒ぶりのようですが、考えてみれば、走り屋や各種コレクターなどは、ン百万、ン千万でも平気で使いまくっているわけで、それらに比べれば、別段突飛な浪費というわけではないのかもしれません。 だが、しかし、だけど、私には無理! そんな大出費は、金輪際できません。

  そういうわけで、≪野鳥撮影器材購入計画≫は断念せざるを得なくなったのです。 ところが、それまで二兎を追っていたのが、一兎になった途端、≪一眼デジカメ購入計画≫の方が、俄然、現実味を帯びて来てしまったんですな。 「10万円払うのに比べたら、2万円くらい安いもんだべさ」 なるほど、それはその通りだわさ。 ううう、なかなか物欲から逃れられない!


  もちろん、一番いい方法は、何も買わない事です。 そんな理屈は分かっています。 でも、「何でもいいから、何か買え~っ!」という欲望が、私の脳味噌をキリキリ締め上げるのです。 振り返れば、リーマン・ショック以降、給料が減って約一年間、高い買物をしたといえば、≪内蔵DVDドライブ≫の3000円だけ。 長い間、支出を抑制してきたから、浪費欲に飢えてやがるのでしょう。 ええい、いい歳こいて、物欲もコントロールできないとは情け無い!

  何とか断念しようと、今でも戦い続けてはいるのです。 一眼デジカメのデメリットをズラリと並べるとか。

1 大きくて重いので、ウエスト・バッグを着けなければならない。
2 ミラー・ブレがある。
3 マニュアルレンズをつけると露出が狂うので、外部露出計を使わなければならない。
4 ピントもマニュアルになるので、シャッター・チャンスを捉られない。
5 中古品は完全作動するかどうか、信用が出来ない。
6 中望遠域のレンズでは、撮れる対象が限られている。

  ところが、これらの問題点は全て、否定も可能なのです。 

1 毎週、一眼デジカメを使わなくても、用途に応じてコンパクト・デジカメと使い分ければよい。
2 今時、ミラー・ブレくらいは、ブレ補正機能でカバーできる。
3 外部露出計はフィルム時代に買った物があり、正常に作動するのを確かめた。
4 カメラ任せでなく、狙った所にピントを合わせられるので、却って表現の幅が広がる。
5 中古とはいえ、カメラ専門店がチェックしている品なので、信用度は高い。
6 対象は無限にある。 今まで見過ごしていた対象を見つけ、撮り方を工夫するのも楽しみの内ではないか。

  てな具合にね。 いやねえ、こういう言葉の上の検討は、いくらでもできるのですよ。 デメリットも無数に挙げられれば、それに対する反論も同じ数だけ並べられます。 弁証法みたいなもんですから、いくら考えたって、合理的結論なんて出やしません。 結局は、「欲しいか、欲しくないか」という、至って感情的な所に戻ってしまうのです。

  そもそもの動機が動機ですから、買ったって、二三回撮りに出れば、すぐに飽きるに決まっているのです。 撮っても、せいぜい、100枚といった所でしょう。 そのために、2万円か~! くー、厳しいなあ。 でもねえ、もう一つ、私の背中を押す理由があるのですよ。 それは、今たけなわの、≪豚インフル≫でして、もしかしたら、この冬あたり、私もくたばる可能性があるわけで、そう考えると、2万円ばっかケチるのも、馬鹿な話だと思うのです。 今の内に、買いたい物買って、やりたい事やって、悔いが残らないようにしようかなあとね。 でも、こういう考え方って、浪費家や借金魔がよく口にするんですよね。 どうしたもんだか。

2009/09/06

すっぽ抜け選挙

  後出し主義に則り、今回は総選挙の感想を書くつもりでいたんですが、終わってみると、あまりにも世間の反応が鈍く、実現した政権交代に誰も熱狂していないようなので、すっかり書く気が失せました。 この冷め切った有様を見て、尚、「今回の総選挙の意味」などというテーマで、熱く語ろうという人がいたら、よっぽど律儀な性格か、よっぽど空気が読めないかのどちらかでしょう。

  それを承知で、言わずもがなの事を無理に書きますと、あれほどの圧勝を遂げさせたにも拘らず、民主党政権に誰一人、何の期待もしていないのは、この日本という社会の行き詰まりをよく象徴していると思います。 単に自民党を追い落とす為の選挙だったのは明白で、それさえ実現すれば溜飲が下がるのであり、後の事は考えちゃいなかったのです。

  更に、誰にでも分かりきっている事を敢えて書きますと、自民党の最大の敗因は、古くからの支持者に見放されてしまった事でしょう。 特にまずかったのは、≪東○原氏擁立≫の一件ですな。 言うまでもない事ですが、自民党の支持者というのはコテコテの保守主義者なのであって、彼らにとって国政に参与する政治家とは、一にも二にも、≪偉い先生≫でなければいけないのです。 心から尊敬に値する人物でなければならないのです。 一方、東○原氏のイメージは、その対極にあります。 自民党支持者から見れば、彼は、政治家でも先生でもなく、大学へ行こうが、知事になろうが、単なる≪売れない芸人≫に過ぎません。

  そうそう、ちなみに、東○原氏、知事になって以降、テレビに出ずっぱりですが、イメージの割には、話が面白くない事に気付いた方も多いと思います。 それは当然なのであって、もし、話が面白い人物だったら、芸人として大成していたはずです。 つまらないから、三流で終わったというわけ。 面白い話術を期待するだけ無駄、というか、そもそも無理な相談というものです。

  そういう人物を担ぎ出す動きが見られ、更に、当人が、「総裁にしてくれるなら」などと言った為に、自民党支持者が、軒並み怖気を奮ったのは想像に難くありません。 「冗談はよせ! 他に人がいそうなものだ!」と、改めて見渡して見たところ、党内に尊敬に値する≪先生≫が、ほとんどいなくなっているのに気付いたというわけでしょう。 偉い先生達は、みんな歳を取って引退してしまい、残っているのは、テレビに出たがるだけが能の、どことなく胡散臭い若手ばかり。 保守主義者なればこそ、そういう状況に猛烈な嫌悪感を抱いたに違いありません。

  そうそう、東○原氏、「総裁にしてくれるなら」発言の後、世間の目が、さーっと引いている事に気付いたのか、出馬そのものをやめてしまいましたが、全く的確な判断で、ほんの僅かですが、感心しました。 沈む船に乗り込んで、更に沈没を早めるような馬鹿な真似は避けたわけだ。 そりゃそうだよね。 知事でいれば、それなりの扱いを受けられるけど、衆院に出馬して落選したら、ただの人に逆戻りだものね。

  自民党内では、大敗北の後、党の顔になる人物が誰もいなくなってしまった為に、舛○氏を担ごうという動きが出ましたが、たとえ当人が引き受けたとしても、更に支持者を減らすだけでしょう。 古くからの自民党支持者から見れば、舛○氏も東○原氏も、軽薄感に於いて本質的な違いはありません。 軽薄といえば、麻○氏のアニメ好きも、まずかったですねえ。 古くからの自民党支持者が、アニメや漫画なんぞ、心から軽蔑しこそすれ、≪日本が世界に誇る文化≫などとは、小指の爪の先ほども見做していないのは、金輪際疑いありません。 「ローゼン閣下」などと呼んではしゃいでいたのは、ちいっと頭のおかしいオタク小僧どもだけだったんですな。 何とも、頼りにならぬ味方であったことよ。


  一方、民主党ですが、勝って兜の緒を締めるどころの話ではなく、モスクワを占領したナポレオン軍のような虚脱状態に陥っていると見ました。 あまりに簡単に大勝し過ぎると、喜びが湧くより何より、「一体、これから、どうすればいいんだ?」と、途方に暮れてしまうものです。 恐らく、ナポレオン軍の末路と同様、今後、大ポカを連発するものと予想されます。 選挙前に、マニフェストで、途轍もない大盤振る舞いを約束してしまいましたが、本当に実行するんでしょうかねえ? すべての事が、莫大な資金を必要としますが、それでなくても、借金で押し潰されている国なのに、どこから余分なお金を捻り出すつもりなのか、イリュージョンでも見ている心地がします。

  「無駄を徹底的に減らす」と言いますが、個人に置き換えてみた時、多重債務者が、無駄を減らしただけで、借金を返し終えたなどという事例は、ついぞお目に掛かった事がありません。 道路、鉄道、港湾、空港、河川整備など、公共事業をすべて中止すれば、少なくとも借金がそれ以上膨らむ事はなくなりますが、現実には、そんな事は到底できますまい。 日本経済のお金の流れは、公共事業が原動力になっているので、それをやめるという事は、人体で言えば、心臓を止めるようなものです。 暴走族風に表現すると、「オッサン、死にてーのか?」つー感じ?

  何度も何度も言って来たように、お金というのは、何も無い所から湧いて来たりはしないのであって、必ず、どこかから持って来なければなりません。 民主党政権が、マニフェストを実行する為には、更に借金を増やすか、使う分だけ増税するか、どちらかしか無いのです。 さあ、♪どっちどっちどっち、どっち? ああ、そうそう、もう一つ手があるにはあります。 金融工学を駆使して、無い金をあるかのように見せかけ、投資熱を煽る事です。 実際の価値は増えないけど、動くお金の額は増えます。 ただし、その先には、確実にバブル崩壊が待っています。

  それにしても、民主党のマニフェストには、改めて見ると、冷や汗が流れる物が多いです。 高速道路無料化? マジ? ETC買った人、どうなるの? キャッシュ・バックとかで、補償してくれるの? そんな事ありえないよね。 資本主義だものねえ。 料金所で働いているオッサン達は、全員クビか? まあ、それはそれで、溜飲が下がるような気がせんでもないですが。 ありゃあ、楽そうな仕事だからねえ。

  子育て支援で、バラ撒きをやるつもりらしいですが、それじゃあ、自公政権と変わりがありますまい。 何が腹立たしいといって、独身者や子孫がいない者にとっては、税金を取られるばかりで、何の得も無い事です。 なんで、赤の他人が作ったクソガキの為に、無関係の人間が金を巻き上げられなきゃならんのよ? 理屈の通った説明を用意できるかな? できまいて! 将来の年金納付人口を確保する為? その発想が既に間違っているんじゃないの? 地球環境の保全が世界の潮流になっているのに、たかが一国の年金財政の為に、人口を増やす努力をするなんて、言語道断もいい所ですぜ。 人が一人増えれば、そいつが一生の間に消費する環境資源のせいで、小さな山が丸禿げになる事が分かってるんだろうねえ。

  まあ、こういう事は、自民や公明のマニフェストにも似たり寄ったりの内容が盛られていたわけで、民主党だけを批判するのは不公平ですが、とにかく、どの党が、どんなマニフェストを約束したにせよ、借金は増える一方、環境は悪化する一方で、この国に明るい未来は無いわけです。 感覚的に考えても、多重債務者に明るい未来がある方がおかしいですわなあ。 だから、どーやって、処分するつもりなのよ、800兆円の借金を? 分からんわ。 つもりが分からん。


  どうも、書いていても、ノリが悪いですが、実は私、国内政治って、あまり興味ないんですよ。 国際政治のような緊張感や真剣味に欠けるでしょう? 昨今のテレビで、国内政治をテーマにした討論番組がたくさんあるのが、不思議で仕方ないです。 あんなの、全然面白くありません。 いやしくも、ゴールデン・タイムに、ギトギト脂ぎった政治家を集めて、険々した罵り合いを見せるのは、やめて欲しいです。 仕事が終わって、やっと家に帰って来て、これから寛ごうって時に、そんな反吐が出るような醜い光景、見たかないんですよ。 だーから、テレビ、見なくなっちゃうんですよ。 そんな番組、齧りついて見てるのは、朝から晩まで暇を持て余している年寄りか、ネットで政治論客ぶってる馬鹿小僧どもだけだって。

  おや、脱線してますな。 やっぱ、駄目ですな。 興味が薄い事をテーマに文章を書こうとしても、集中力が高まりません。 何だか、つまらん国だねえ。 スポーツの日本代表が勝ったくらいで、大喜びしている単純な頭の持ち主が羨ましい。 いや、ほんとは、そこまで頭が弱くなったらおしまいだと思っているので、全然羨ましくなんかないんですが。 とにかく、政治は勿論、文化も科学技術も行き詰ってしまって、未来に夢が持てません。

  ノリピー逮捕で狂奔しているマスコミを見るにつけ、絶望的な気分になって来ます。 そんな事のどこがニュースじゃ! 彼女が一線から立ち退いて、楽々十年以上経っているのであって、もはや、ほとんど一般人と変わらんではないですか。 どこへ隠れていただの、誰に勧められただの、そんな瑣末な事はどうでもよろしい! ついこないだまで、見向きもしなかったくせに、まるで、信じていた者に裏切られたみたいな批判の仕方をして、恥かしくないんですかね。 どう見ても、ノリピーよりも、マスコミ各位の方が人間のクズに見えます。 レポーターははなから問題外として、アナウンサー達も、家に帰って家族から軽蔑されてるんじゃないの? とても、誇れる仕事とは思えません。

  おっと、また脱線だ。 あ~、駄目ですな、こりゃ。 国内政治の事を書こうとしても、まるで焦点が定まりません。 私にとって、ほとんど意味が無い事なんでしょう。 やめやめ。