映画批評(18)
今週は、疲れる用事が出来てしまい、記事を書く時間と体力がないので、映画評を出します。 用事というのは、庭の松の手入れでして、松の木は、この時期に、「緑摘み」という作業をするのですが、去年までは父がやっていたのが、今年は、体力が衰えて、脚立を使えなくなってしまったというので、私が代わりにやる事になった次第。
こんな時には、元植木屋見習いの経歴が恨めしい。 暑いわ、疲れるわ、危ないわ、腰が痛くなるわで、いい事なし。 別に、私がやりたくてやるわけではないのですがね。 庭仕事に関する詳細は、また、改めて書きます。
≪アイ・アム・キューブリック!≫ 2005年 イギリス・フランス
ジョン・マルコヴィッチさん主演。 製作総指揮に、リュック・ベッソンさんが噛んでいるようですが、それらしさはありません。 映画監督、スタンリー・キューブリックの名を騙り、寸借詐欺を繰り返していた実在の人物の、大胆不敵な犯行の経緯を描いた話。
主人公は、ゲイでして、喋り方も、服装も、とても、映画監督には見えないのですが、目をつけられた者は、みんな、有名監督に取り入って、成功のチャンスを掴もうと願っているために、いとも容易に騙されてしまいます。 人間というのは、弱いものなんですねえ。
ただ、映画が面白いかというと、そんな事はちっともないのでして、主人公に共感するのが、ほぼ不可能なため、不愉快さばかりが増幅して行きます。 ラストも、すっきりした解決には程遠く、劇場へ見に行った観客の、フラストレーションの溜まった顔が、目に浮かぶようです。
≪ナイロビの蜂≫ 2005年 イギリス
イギリス映画らしいっつやー、らしいですなあ。 庭弄りにしか興味がなかった、ケニア駐在のイギリス外交官が、貧困救済活動をしていた妻が事故死したのをきっかけに、現地の貧困層を食い物にしている製薬会社の不正を追求し始める話。
ヨーロッパ系の製薬会社を悪役にするのはいいとして、なんで、ケニアを舞台にしなければならないのか、そこが、納得行きません。 ここにも、「豊かな白人、惨めな黒人」という、欧米人特有の差別意識を見て取る事ができます。 「憐れむ」という発想そのものが、すでに差別なのだという事に気づいていないのです。
企画の時点で、問題外なので、迷わず、0点。
≪パーマネント野ばら≫ 2010年 日本
この映画、妙に気に入ってしまって、忙しいというのに、三回も見直しました。 菅野美穂さん主演。 小池栄子さん、江口洋介さんら、助演。
離婚後、幼い娘を連れて、母親が営む漁師町のパーマ店に戻って来た女が、地元で暮らす幼馴染み二人や、店に屯ろする近所のオバちゃん達など、揃いも揃って、男運のない女達が繰り広げる、しょーもない事件に呆れながら暮らしているものの、実は自分が最も重傷・・・、という話。
終わりの方に、≪今度は愛妻家≫と同類の仕掛けが施されていて、やはり、はっとさせられますが、ちょっと変な感じも受けます。 同じ仕掛けでも、この作品では、全体のストーリーと関連しておらず、仕掛けがなくても、話が成立するので、「わざわざ、妄想場面を入れてまで、この仕掛けに拘る必要はなかったのでは?」と思えてしまうのです。
コメディーというほど、楽しい雰囲気ではなく、言わば、悲喜劇。 上記の仕掛けの部分を除けば、カラっとしていて、過度に感情移入せずに、登場人物達の惨めで滑稽な運命を、突き放して、笑う事ができます。
菅野美穂さんと小池栄子さんの魅力が際立ってますなあ。 もう一人の幼馴染を演ずる池脇千鶴さんは、ちと、肥え過ぎか。 菅野さんは、代表作にしてもいいほど、よく、嵌まっています。 もし、この人の若い頃の姿を映像に残したくて、この映画が企画されたのだとしたら、大成功しています。
夜のトンネルで、江口さんの姿が一度消えて、もう一度浮かび上がる場面や、ラストの波打ち際の場面は、世界中の映画を探しても、そうそうお目にかかれない、逸品中の逸品映像です。
≪カールじいさんの空飛ぶ家≫ 2009年 アメリカ
ディズニー・ピクサーの、CGアニメ。 公開前のCMが、まだ記憶に新しい作品。 四年も立っているような気がしませんなあ。 つくづく、映画館へ行く甲斐のない、時の流れの速さである事よ。
冒険ごっこ仲間だった幼馴染みと結婚し、冒険とは無縁の生活に追われる内に、妻に先立たれてしまったおじいさんが、妻との昔の約束を果たそうと、家に大量の風船をつけて空に舞い上がり、南米にあるパラダイスの滝へ向かうものの、密林の中で道連れになった珍種の鳥を、かつて憧れていた有名な冒険家の手から守る羽目になってしまい、同行していた少年と共に、奮闘する話。
梗概が長くなったのが何よりの証拠ですが、かなり、複雑なストーリーです。 幼馴染みの妻との、数十年に及ぶ結婚生活が、冒頭の10分くらいで、ダイジェストで語られるのですが、その部分だけで、満腹しかけてしまいます。 アメリカから南米に行くまでが短か過ぎで、一嵐喰らっただけで、あっさり着いてしまうのですが、これは、飛行中のエピソードを思いつかなかったからでしょう。
滝が見える所に着いてから、滝に向かうまでが長く、実質的なストーリーは、そこから始まるようで、作り手は、冒険の様子を描きたかったんでしょうな。 有名冒険家の飛行船に招かれた後がクライマックスになりますが、そこにも、結構な時間が割かれています。 タイトルに、≪空飛ぶ家≫という文句が入っている割には、家の果たしている役割が少ないので、アンバランスな感じを受けます。
しかし、欠点よりも、いい所の方が多くて、見終わった後に、悪い印象は、ほとんど残りません。 同行する少年のキャラもいいですし、翻訳機を着けられて、人間の言葉を喋る犬達も面白いです。 言葉は喋っても、本性は犬のままなところが、殊の外、笑えます。 有名冒険家の最期だけが、ちと、気の毒。 「もう、そんな時代じゃないですよ」と、やんわり説得してみるべきだったのではありますまいか。
≪百万長者の初恋≫ 2006年 韓国
去年の10月に、映画中毒になってからこっち、韓国映画は、これが初めてです。 韓ドラは、無数に放送しているのに、映画は、なぜ少ないんでしょう?
大富豪の孫が、遺産相続の条件として、田舎の高校へ転校し、卒業する事を命じられ、渋々従うものの、農作業や演劇活動に反発して、学級委員の女子生徒と衝突する内、心臓が悪い彼女に恋をしてしまい、彼女の家である孤児の養護施設を閉鎖から守ろうとする話。
遺産相続の前に、無理やり再教育を施されるというパターンは、韓国映画では、よく見られますし、孤児施設を守るというパターンは、アメリカ映画にもあるベタなモチーフです。 この映画では、それらに加えて、難病物まで織り込んでおり、相当、欲張った話。
欲張って、いい結果になる事は、まずありませんが、この映画の場合、主演のヒョンビンさんのアイドル映画としての性格が強いため、あまり、違和感がありません。 まあ、アイドル映画でなくても、恋愛物は、ちっとやそっとのわざとらしさは、大目に見られる傾向がありますからのう。
ヒロインのヨンヒさんは、落ち着いた顔立ちの美少女。 健康的にふっくらした頬を見ていると、とても死にそうにありませんが、これまた、難病物のヒロインには、よくある事です。 ≪世界の中心で愛をさけぶ≫の長澤まさみさんも、およそ死にそうにない顔をしてましたからねえ。 撮影前に、一週間くらい、絶食してもらえば、程よくやつれると思うのですがね。
≪ドリーム・キャッチャー≫ 2003年 アメリカ
スティーブン・キングさんの原作。 ・・・といえば、不思議で、不気味で、怖い話と相場が決まってますが、これも、例外ではありません。 題名から感じるイメージとは、まるで違う内容なので、要注意。 不用意に見ると、吐きます。
子供の頃、ある少年をいじめから助けてやった事で、テレパシーや物探しなど、特殊な能力を分け与えられた、正義感の強い四人組が、大人になってから、森の中で、異星人の襲撃に遭い、能力を使って、異星人の親玉と戦う話。
何でもアリでぶち込んだ、無茶苦茶な設定ですが、それが分かっていても、充分怖いから、スティーブン・キング作品の実力は侮れません。 異星人の特徴は、≪エイリアン≫のパクリ。 しかし、この映画は、SFという感じはせず、やはり、ホラーに分類すべきでしょうなあ。
モーガン・フリーマンさんが、軍の異星人狩り専門部隊の指揮官として出ていますが、単に悪役なだけでなく、大した役割を担っていない点でも、意外な配役。 どうして、フリーマンさんに頼んだのか、フリーマンさんも、なぜ引き受けたのか、皆目解せません。
≪ザ・ライト エクソシストの真実≫ 2011年 アメリカ
アンソニー・ホプキンスさんが出ていますが、主演ではなく、助演です。 主演は、若い俳優さんですが、名前を聞いた事がない人。
アメリカで、葬儀屋の息子として生まれ、神学校を卒業した青年が、神を信じられずに、神父になる事を拒否しようとしたところ、教師から、バチカンの悪魔祓い講座を受けるように薦められ、更に、エクソシストの下で研修する事になり、実地に悪魔払いを体験する話。
実話が元だそうですが、そのせいか、盛り上がりに欠け、お世辞にも面白いとは言えません。 今や、古典となっている、≪エクソシスト≫も、そんなに面白い話ではありませんでしたが、こちらは、もっと、地味です。 アンソニー・ホプキンスさんに期待して、一級のホラーのつもりで見ていると、肩透かしを喰らいます。
悪魔の存在を認めてしまっている映画なわけですが、それの元が実話というのは、つまり、もろに科学否定なわけで、「おいおい、マジで、そう思ってんの?」と、キリスト教徒でない者でも、不安になって来ます。 「精神病ではないから、悪魔の仕業としか考えられない」と決めてしまう前に、トリックを疑った方がいいと思うんですが。
≪アルティメット≫ 2004年 フランス
リュック・ベッソンさんの、製作・脚本作。 原題の直訳は、≪郊外13≫で、これは、映画の舞台になっている、近未来のパリの架空の地区の名前です。
輸送中に強奪され、麻薬と暴力の横行で、無法地帯と化している≪郊外13地区≫へ運び込まれた中性子爆弾の起爆装置を解除するために、凄腕の潜入捜査官と、地元出身で、妹を麻薬王に監禁されている青年が、13地区へ乗り込んで、麻薬組織と戦う話。
しょっぱなから、あまりにも簡単に殺人が行なわれるので、「雑な話なのかな?」と引いてしまうのですが、見て行く内に、正義感のある青年や、義務感の強い警察官が出て来て、まあまあ、安心して見られるようになります。 逆に言えば、進むに連れて、平凡な勧善懲悪物に近づいていくわけですけど。
見所は、ストーリーよりも、アクションでして、壁を越えたり、建物から建物へ飛び移ったりする≪パルクール≫を使った追いかけっこが、最大の見せ場。 しかし、冒頭部分で、それが披露されてしまうため、クライマックスの戦いでは、ネタ切れして、しょぼくなってしまっているのが、難と言えば難です。
≪ツーリスト≫ 2010年 アメリカ・フランス
アンジェリーナ・ジョリーさん、ジョニー・デップさん、主演。 恋愛物と言えば、恋愛物。 犯罪物と言えば、犯罪物。 スパイ物のような雰囲気もあります。 この二人の顔合わせは、豪華と言うより、なんとなく、チグハグな感じがします。
高額脱税の容疑で追われている夫を持つ女が、警察の目を欺くために、ベネチアに向かう列車の中で、夫に背格好が似た男に近づき、整形後の夫だと思わせようとするが、ただの旅行者だったはずのその男が、実は・・・、という話。
実のところ、こんな風に、謎めかした梗概を書くほどの話ではありません。 出来損ないのスパイ映画みたいなしょぼさが、全編に漲っています。 監督が悪いとか、脚本が悪いとか言う以前に、話の発想自体が、ちゃちなのです。
アンジェリーナ・ジョリーさんを、絶世の美女という設定で使っているのですが、ご存知の通り、この方は、型に嵌まった美形ではないので、好みのタイプという人はともかく、そうでない人には、ピンと来ない場面が、たくさん出て来ます。 ジョニー・デップさんに関しても言える事ですが、ちと、配役に頼り過ぎなのではありますまいか。
トドメに更にツッコみますと・・・、ロンドン警視庁が、イタリアで、大人数の狙撃班を展開して、ロシア・マフィアの一団を射殺するというのは、法律的に許されるんでしょうかね? 常識的に考えれば、100パーセント間違いなく、重大な国際問題になると思うのですが。
≪ホーンテッド・マンション≫ 2003年 アメリカ
エディー・マーフィーさん主演の、実写ディズニー映画。 仕事中毒の不動産屋が、家族旅行の行きがけに、家を売りたいという客の屋敷に寄り道したばっかりに、呪いがかかった幽霊に妻を奪われそうになり、子供達と協力して、幽霊と妻の結婚式を阻止しようとする話。
エディー・マーフィーさんですから、コメディーなわけですが、あくまで、ディズニー映画なので、エディー・マーフィー映画とは、趣きが違います。 自己満足的な癖もない代わりに、毒もなく、声を出して笑えるような場面は見られません。
ホラーとしては、完全に失格でして、微塵も怖くありません。 幽霊よりも、蜘蛛の方が怖いくらいだから、話にならぬ。 子供向けとはいえ、これでは、子供も怖がらないでしょう。 コメディーにするか、ホラーにするか迷った末、両方の要素を混ぜたら、どちらでもなくなってしまった、といったところ。
≪クイック&デッド≫ 1995年 アメリカ
サム・ライミ監督で、シャロン・ストーンさんが主演、助演が、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオという、顔ぶればかり、妙に豪華な西部劇。
かつて、無法者に父親を殺された娘が、成長して、ガンマンになり、ある町で支配者になっていた犯人を見つけるが、なりゆきで、その男が主催する早撃ち大会に出る事になり、いずれも訳ありの参加者達と、命懸けの撃ち合いをする羽目になる話。
復讐物ですが、どろどろしたところはありません。 早撃ち大会という催し物の形式の中で話が進行するため、人が殺されても、深刻さが感じられず、「ふざけた映画」という印象が強いです。 サム・ライミ監督だから、仕方ないと言えば、仕方ないですが。
シャロン・ストーンさんは、ガンマンの格好をすると、もはや、美人でも何でもありませんな。 ジーン・ハックマンさんは、見事な悪役ぶり。 この人のお陰で、映画の体裁が保てている感あり。 ディカプリオさんは、まだ、10代後半の少年ですが、妙に嵌まっていて、カッコいいです。 この人は、この頃が、ピークだったのでは?
≪月夜の宝石≫ 1958年 フランス・アメリカ
ブリジット・バルドーさん主演。 スペインのとある地方で、伯爵の妻になっている叔母の屋敷にやって来た姪が、遺恨と成り行きで伯爵を殺してしまった青年を好きになり、共に逃避行する話。
最後まで片思いなので、恋愛物というには、ちと趣きが異なっており、ジャンル別けがし難い話です。 ブリジッド・バルドーさんは、この頃が最も美しかった年齢なのですが、話が暗過ぎて、せっかくの魅力が損なわれている感じがします。 こういう役には、もっと陰のある美人が似合うのでは?
青年のキャラに描き込みが足りず、何を考えているのか分からない不気味さがあって、それが恋愛物としての鑑賞を、更に難しくしています。 特に、子豚を殺そうとする場面は、まともに見ていられません。 こんながさつな男に惚れる女の気が知れぬ。
スペインの風景は、息を飲むほど、素晴らしいです。 これは、風景そのものが雄大なのもさる事ながら、ロケハンとカメラ・ワークに精力を注ぎ込んだ成果でしょう。
≪リプレイスメント≫ 2000年 アメリカ
キアヌ・リーブスさん主演、ジーン・ハックマンさん助演のスポーツ物。 スポーツ物は、大きく分けて、二パターンありますが、これは、駄目なチームが、ある事をきっかけに奮起して、急に強くなる方の、変種。
ストで選手がボイコットしてしまったプロ・アメフト・チームを、プレー・オフに進ませるため、引退したコーチが、訳ありの選手を集めて、代理チームを作り、シーズン残りの四試合を戦う話。
元アメフト選手はいいとして、元サッカー選手や、元相撲取り、足が速いだけの男、凶暴なだけの男など、あまりにも遊びが過ぎていて、リアリティーを著しく欠いています。 「こういう事もありうる」と、観客に思わせなければ、こういう映画は成立しないと思うのですが、そういう配慮を、端から放棄している様子。
元相撲取りですが、かなり、ひどいキャラで、大銀杏と丁髷を間違えているのは大目に見るとしても、フィールドで茹卵を吐くなど、目を背けたくなる醜さ。 日本の客に媚びるアメリカ映画は不愉快ですが、ここまでひどいのも、逆に、胸糞悪い。 相撲について知識がないのなら、相撲取りなど出さなければいいのに。
他の点でも、主人公のクオーター・バックとチア・リーダーが、安直に恋仲になるなど、非常に軽薄な発想で作られた話で、作り手の見識の低さが際立っています。
≪ソードフィッシュ≫ 2001年 アメリカ
ほとんど忘れていましたが、この映画は、前に、地上波・夜9時の映画枠で、二回くらい見た事があります。 2001年ですか? もっと前のような気がするのですが・・・。 ヒュー・ジャックマンさん主演、ジョン・トラボルタさん、ハリー・ベリーさん助演。
逮捕され、服役した後、引退していた伝説のハッカーが、銀行にプールされた政府の秘密資金を狙う組織にスカウトされ、離婚した妻から娘を取り戻す裁判費用を得る為に、犯行に手を貸すものの、FBIの手が伸びて、黒幕だった政治家に裏切られたり、組織に入り込んだスパイの存在が明らかになったりして、ころころ変わる状況に翻弄される話。
トラボルタさんが、組織のボスなのですが、この男が曲者で、複雑な計略を張り巡らせて、最終的に誰が得をするのか、先読みを許しません。 ただ、見る者が、純粋に驚かされるかと言うと、そうではなく、話が複雑過ぎて、伏線を張りきれていないため、途中で、ついて行くのが面倒になってしまうタイプの映画です。
本当に面白ければ、二度も見ているものを、忘れるわけがないんですよ。
≪戦火の勇気≫ 1996年 アメリカ
デンゼル・ワシントンさん主演。 メグ・ライアンさん助演。 しかし、この二人、最初から最後まで、一回も顔を合わせません。 たぶん、撮影現場でも、会っていなかったのでは?
湾岸戦争で、味方の戦車を撃ってしまったものの、罪に問われなかった中佐が、別の戦闘で戦死した女性大尉の功績が、名誉勲章の授与に適当かどうかを調べる仕事を任されるが、関係者の証言に喰い違いがあり、調査を進める内、意外な事実が浮かび上がる話。
湾岸戦争を題材にした最初の映画という事で、封切り時には、結構、前宣伝が盛んでした。 今までにも、何度もテレビ放送されて来たわけですが、どうも、アメリカ政府の宣伝映画の臭いがしたので、見ないようにして来ました。 今回、思い切って見てみたら、やっぱり、思っていた通りでした。
女性大尉に勇気があったかどうかが問題になるわけですが、果たして、これを勇気と言えるのかどうか・・・。 また、勇気以前に、指揮官として、妥当な判断をしたかどうかとなると、これは完全に×でして、一人の負傷者を見捨てないために、部下全員を危険に曝したわけで、とても、誉められるような采配ではありません。
そもそも、勇気だ、判断だと言う以前の問題として、湾岸戦争自体が、アメリカが参戦する正当な理由があったかどうか、非常に怪しいため、この映画の企画そのものの意義が疑われるのです。 「国の為に」という言葉が何度も出て来ますが、イラクが攻めたのはクウェートであって、アメリカではないので、アメリカ兵が出て行って、殺したり殺されたりする事が、「国の為に」なったかと考えると、どーにもこーにも、白けずにはいられますまい。
映画の発想自体が胡散臭いので、デンゼル・ワシントンさんの重厚な演技も、逆に、陳腐に見えてしまいます。 メグ・ライアンさんに至っては、この人がどうすれば、戦場でバンバン敵を撃ち殺す人間に見えるのか、配役担当の常識を疑うところ。
≪タッチ・オブ・スパイス≫ 2003年 ギリシャ
珍しく、ギリシャ映画。 いや、と言うより、初めて見ました。 イスタンブールに住むギリシャ系住民で、ギリシャとトルコの関係が悪化した時に、両親と共にギリシャへ追放された少年が、イスタンブールに残った祖父と、なかなか会えないまま、何十年も過ぎてしまい、祖父の危篤の報せを聞いて、ようやく、イスタンブールに戻った時には、40歳を過ぎていたという話。
イスタンブールが、いかに郷愁を誘う街であるかを主張するのが、主なテーマ。 それを、ギリシャ側から見ているところが、面白いです。 たぶん、作り手が、実際にイスタンブールに住んでいた、ギリシャ系トルコ人だったんでしょうなあ。 そうでなければ、こういう映画は思いつきますまい。
ギリシャ系トルコ人が、トルコにいる時には、ギリシャ人と見做され、ギリシャへ移り住むと、トルコ人と見做され、どっちにしても肩身の狭い思いをするのは、気の毒この上ないです。 しかし、この映画は、民族間の対立が背景になっているにも拘らず、どちらか一方に偏った立場をとらない事で、刺々しい雰囲気になるのを、用心深く回避しています。
途中から、主人公の感心の比重が、祖父よりも、初恋の女性の方に移ってしまうのは、心情的には分かるものの、ちょっと、軸ブレを起こしている感じ。 しかし、総じて見れば、いい映画だと思います。
≪神童≫ 2006年 日本
成海璃子さん主演、松山ケンイチさん助演。 物心ついた頃から、天才ピアニストと見做されていた少女が、中学生になって、親の期待が重荷になり、ピアノ嫌いになるが、亡父の死因になった難聴に、自らも犯されつつある事を知り、漸く素直に、ピアノに向き合えるようになる話。
松山ケンイチさんは、浪人の時に主人公に出会い、その後、音大生になる青年の役ですが、冒頭から出て来るので、主人公かと思いきや、実は、完璧な脇役で、後半になると、極端に存在感が薄くなってしまいます。 予備知識なしで見に行った人は、「え! 松山さんの映画じゃなかったの?」と、さぞや、戸惑った事でしょうな。
成海さんは、演技は宜しいと思いますが、中学生にしては、ちと育ち過ぎているような気がせんでもなし。 顔立ちが大人びている上に、クラスメートの平均よりも背が大きいので、「神童」と言う割には、子供に見えないのです。
音楽映画ですが、音楽を演奏する人間の映画であって、音楽そのものがテーマではないので、≪スイング・ガールズ≫的な、観客まで巻き込むようなノリはないです。 また、≪のだめカンタービレ≫のような、コメディーでもないので、「一体、何が見所なの?」と、首を傾げたくなるところがあります。
後半の、演奏会に出演する事になる展開には、ちょっと、わくわくさせてくれるものがありますが、いざ、演奏が始まってしまうと、巧いのか下手なのか、素晴らしいのか大した事ないのか、素人耳には、区別がつかないので、それ以上、盛り上がりようがありません
≪オカンの嫁入り≫ 2010年 日本
宮崎あおいさん主演。 大竹しのぶさんが、オカン役。 同僚のストーカー行為による精神的ショックで、ひきこもりになってしまった娘が、突然、若い金髪男を連れて来て、結婚すると言い出した母親に反発するものの、やがて、男の優しい人柄や、母親の真意を知り、二人の結婚を受け入れて行く話。
親子関係の難病物です。 映画にするより、スペシャル・ドラマにでもした方がピッタリ来そうな、ベタな話なんですが、非常に丁寧な演出で、細やかな心理描写を行なっているために、悪い印象は受けません。 とりわけ、宮崎さんは、実力を遺憾なく発揮しています。 大竹さんの存在感が霞むくらいだから、その程度が分かろうというもの。
とまあ、この映画単独で見れば、宜しいと思うのですが・・・。 監督が、呉美保さんなんですが、この方、前作の、≪酒井家のしあわせ≫でも、ほぼ、同じテーマを取り上げていまして、二本連続で、同じような趣向だと、「あれ? こういう話にしか興味がないのかな?」と思われてしまうのは、致し方ないところ。
≪スタンド・バイ・ミー≫ 1986年 アメリカ
ホラー小説で有名な作家、スティーブン・キング原作の少年物映画。 見ていない人にも、タイトルは知られていると思いますが、それは、テーマ・ソングが、CMなどで繰り返し使われているから。
小学校卒業間近の四人組が、行方不明になっている少年の死体があるという情報を聞きつけて、第一発見者になろうと目論み、親にはキャンプをすると偽って、死体がある場所まで、泊りがけの旅に出かける話。
ベタな少年物でして、粗暴・凶暴・乱暴・下品と四拍子揃っており、少年物が嫌いな人間には、見るに耐えない映画になっています。 この映画の評価が高いのは、つまるところ、少年物に嫌悪感を抱かない人間の方が多数派だという事の証拠なんでしょうな。
死体が絡むものの、事件性は全くなく、トリックとか謎解きとか、そういった要素は微塵も入っていないので、要注意。 人生論が若干入ってますが、それも、所詮、子供の悩みのレベルなので、感動するところまでは、とてもとても・・・。
≪イングリッシュ・ペイシェント≫ 1996年 アメリカ
第二次大戦中の北アフリカで、撃墜された飛行機から救出されたものの、大火傷を負い、記憶を失った男が、戦後、イギリス人と見做され、医療部隊に運ばれて、イギリスへ向かうが、途中、移動に耐えかねて身を寄せたイタリアの廃屋へ、撃墜前の彼を知る人物が現れ、彼の過去の行状を思い出させる話。
アカデミー賞を何部門も獲ったそうですが、その年は、よっぽど、不作だったんでしょうなあ。 私が見る限り、とてもとても、そんな映画では・・・。 あまりのつまらなさに、気を失いかけた事、幾たびか・・・。 つまらん話を、わざわざ、入れ子構造にしているのは、滑稽至極。
とにもかくにも、主人公に魅力がなさ過ぎです。 この人、一体、何の取り得があるの? 不倫はするわ、敵軍に地図は渡すは、およそ、主人公と思えぬ、感心しない行為ばかりしています。 ヒロインの方も同様で、砂漠に暇潰しに来ているとしか思えません。 こんな二人が、どんな目に遭おうが、知った事ではありますまい。
以上、20本まで。 2013年3月30日から、4月20日までに、見て、感想を書いた映画です。 あまりにも、遅々としていて、永久に現在に追いつかないような気もしますが、映画漬けで暮らしていた時期というのは、そんなに長くは続かなかったと思うので、その内、ポーンと、月日が飛ぶと思います。 2013年は、夏から、文庫本蒐集計画が始まり、秋には、北海道応援に雪崩れ込んで、後は、翌年夏の退職まで、映画どころではなくなるので、映画ラッシュが続くのも、2013年の7月くらいまでだと思います。
ところで、「映画評は、新作について書くのが、映画ファンのエチケットだ」と思っている人もいるかと思いますが、まあ、そう、硬い事を言いなさんな。 映画館に新作を見に行っていたのでは、お金がいくらあっても足りません。 逆に、ブログに、新作の感想をアップする為に、映画館へ行く費用を捻出しているという人がいたら、「目を覚ましなさい」と、こちらから、アドバイスしたいです。 そんな事をしていたら、いとも容易に、破産してしまいますよ。
趣味への傾倒度は、人それぞれだとは思うものの、「映画は、私の人生だ」というような物言いは、制作や配給に携わっている人達や、プロの批評家なら、問題ないですが、単なる観客が口にしたら、おこがましいです。 以前、新聞の人生相談コーナーに、「これまで、映画ばかり見て来て、結婚もしなかったが、もしかしたら、映画の世界に惑わされて、人生を棒に振ってしまったのではないかと思っている」という、もう、老境に差しかかった男性の告白が寄せられていましたが、大いにありそうな事です。 映画の世界を、現実と混同していたんでしょうなあ。
アイドル歌手が歌う、甘い歌詞の世界を、現実と混同して、「誰にでも、燃えるような恋愛の機会は訪れる」と信じ込み、婚期を逃した人間は、うじゃうじゃいると思いますが、それと同類の落とし穴なのでしょう。 まあ、大雑把に言って、容姿が、同年代の人間全体で、上から3割くらいの中に入らないと、歌の歌詞のような恋愛は、できないと思いますねえ。 つまり、残りの7割は、逆立ちしたって、恋愛結婚などできないわけだ。
映画も同じ。 映画で見た場面を、現実世界で真似てみれば、必ず、齟齬を感じる事になると思います。 所詮、作り物の世界なんですよ。 ヤクザ映画が全盛だった頃は、任侠の世界に惑溺し、つまらない理由で喧嘩して、命を落としたとか、大怪我したとか、そんな例が、うじゃうじゃあったんじゃないでしょうか。
ブルース・リー・ブームの時にも、カンフーを真似た喧嘩は多かったと思います。 冗談じゃない。 体を鍛えてもいない人間が、蹴り合いなんかしたら、死んでしまいますよ。 日活のアクション映画なんかも、観客に多くの怪我人を生んだでしょうねえ。 アメリカ映画の銃撃アクションは、日本では現実感がないですが、アメリカ本国では、真似する人間が、時々、学校を襲撃して、大量殺人を起こします。 洒落にならねー・・・。
こんな時には、元植木屋見習いの経歴が恨めしい。 暑いわ、疲れるわ、危ないわ、腰が痛くなるわで、いい事なし。 別に、私がやりたくてやるわけではないのですがね。 庭仕事に関する詳細は、また、改めて書きます。
≪アイ・アム・キューブリック!≫ 2005年 イギリス・フランス
ジョン・マルコヴィッチさん主演。 製作総指揮に、リュック・ベッソンさんが噛んでいるようですが、それらしさはありません。 映画監督、スタンリー・キューブリックの名を騙り、寸借詐欺を繰り返していた実在の人物の、大胆不敵な犯行の経緯を描いた話。
主人公は、ゲイでして、喋り方も、服装も、とても、映画監督には見えないのですが、目をつけられた者は、みんな、有名監督に取り入って、成功のチャンスを掴もうと願っているために、いとも容易に騙されてしまいます。 人間というのは、弱いものなんですねえ。
ただ、映画が面白いかというと、そんな事はちっともないのでして、主人公に共感するのが、ほぼ不可能なため、不愉快さばかりが増幅して行きます。 ラストも、すっきりした解決には程遠く、劇場へ見に行った観客の、フラストレーションの溜まった顔が、目に浮かぶようです。
≪ナイロビの蜂≫ 2005年 イギリス
イギリス映画らしいっつやー、らしいですなあ。 庭弄りにしか興味がなかった、ケニア駐在のイギリス外交官が、貧困救済活動をしていた妻が事故死したのをきっかけに、現地の貧困層を食い物にしている製薬会社の不正を追求し始める話。
ヨーロッパ系の製薬会社を悪役にするのはいいとして、なんで、ケニアを舞台にしなければならないのか、そこが、納得行きません。 ここにも、「豊かな白人、惨めな黒人」という、欧米人特有の差別意識を見て取る事ができます。 「憐れむ」という発想そのものが、すでに差別なのだという事に気づいていないのです。
企画の時点で、問題外なので、迷わず、0点。
≪パーマネント野ばら≫ 2010年 日本
この映画、妙に気に入ってしまって、忙しいというのに、三回も見直しました。 菅野美穂さん主演。 小池栄子さん、江口洋介さんら、助演。
離婚後、幼い娘を連れて、母親が営む漁師町のパーマ店に戻って来た女が、地元で暮らす幼馴染み二人や、店に屯ろする近所のオバちゃん達など、揃いも揃って、男運のない女達が繰り広げる、しょーもない事件に呆れながら暮らしているものの、実は自分が最も重傷・・・、という話。
終わりの方に、≪今度は愛妻家≫と同類の仕掛けが施されていて、やはり、はっとさせられますが、ちょっと変な感じも受けます。 同じ仕掛けでも、この作品では、全体のストーリーと関連しておらず、仕掛けがなくても、話が成立するので、「わざわざ、妄想場面を入れてまで、この仕掛けに拘る必要はなかったのでは?」と思えてしまうのです。
コメディーというほど、楽しい雰囲気ではなく、言わば、悲喜劇。 上記の仕掛けの部分を除けば、カラっとしていて、過度に感情移入せずに、登場人物達の惨めで滑稽な運命を、突き放して、笑う事ができます。
菅野美穂さんと小池栄子さんの魅力が際立ってますなあ。 もう一人の幼馴染を演ずる池脇千鶴さんは、ちと、肥え過ぎか。 菅野さんは、代表作にしてもいいほど、よく、嵌まっています。 もし、この人の若い頃の姿を映像に残したくて、この映画が企画されたのだとしたら、大成功しています。
夜のトンネルで、江口さんの姿が一度消えて、もう一度浮かび上がる場面や、ラストの波打ち際の場面は、世界中の映画を探しても、そうそうお目にかかれない、逸品中の逸品映像です。
≪カールじいさんの空飛ぶ家≫ 2009年 アメリカ
ディズニー・ピクサーの、CGアニメ。 公開前のCMが、まだ記憶に新しい作品。 四年も立っているような気がしませんなあ。 つくづく、映画館へ行く甲斐のない、時の流れの速さである事よ。
冒険ごっこ仲間だった幼馴染みと結婚し、冒険とは無縁の生活に追われる内に、妻に先立たれてしまったおじいさんが、妻との昔の約束を果たそうと、家に大量の風船をつけて空に舞い上がり、南米にあるパラダイスの滝へ向かうものの、密林の中で道連れになった珍種の鳥を、かつて憧れていた有名な冒険家の手から守る羽目になってしまい、同行していた少年と共に、奮闘する話。
梗概が長くなったのが何よりの証拠ですが、かなり、複雑なストーリーです。 幼馴染みの妻との、数十年に及ぶ結婚生活が、冒頭の10分くらいで、ダイジェストで語られるのですが、その部分だけで、満腹しかけてしまいます。 アメリカから南米に行くまでが短か過ぎで、一嵐喰らっただけで、あっさり着いてしまうのですが、これは、飛行中のエピソードを思いつかなかったからでしょう。
滝が見える所に着いてから、滝に向かうまでが長く、実質的なストーリーは、そこから始まるようで、作り手は、冒険の様子を描きたかったんでしょうな。 有名冒険家の飛行船に招かれた後がクライマックスになりますが、そこにも、結構な時間が割かれています。 タイトルに、≪空飛ぶ家≫という文句が入っている割には、家の果たしている役割が少ないので、アンバランスな感じを受けます。
しかし、欠点よりも、いい所の方が多くて、見終わった後に、悪い印象は、ほとんど残りません。 同行する少年のキャラもいいですし、翻訳機を着けられて、人間の言葉を喋る犬達も面白いです。 言葉は喋っても、本性は犬のままなところが、殊の外、笑えます。 有名冒険家の最期だけが、ちと、気の毒。 「もう、そんな時代じゃないですよ」と、やんわり説得してみるべきだったのではありますまいか。
≪百万長者の初恋≫ 2006年 韓国
去年の10月に、映画中毒になってからこっち、韓国映画は、これが初めてです。 韓ドラは、無数に放送しているのに、映画は、なぜ少ないんでしょう?
大富豪の孫が、遺産相続の条件として、田舎の高校へ転校し、卒業する事を命じられ、渋々従うものの、農作業や演劇活動に反発して、学級委員の女子生徒と衝突する内、心臓が悪い彼女に恋をしてしまい、彼女の家である孤児の養護施設を閉鎖から守ろうとする話。
遺産相続の前に、無理やり再教育を施されるというパターンは、韓国映画では、よく見られますし、孤児施設を守るというパターンは、アメリカ映画にもあるベタなモチーフです。 この映画では、それらに加えて、難病物まで織り込んでおり、相当、欲張った話。
欲張って、いい結果になる事は、まずありませんが、この映画の場合、主演のヒョンビンさんのアイドル映画としての性格が強いため、あまり、違和感がありません。 まあ、アイドル映画でなくても、恋愛物は、ちっとやそっとのわざとらしさは、大目に見られる傾向がありますからのう。
ヒロインのヨンヒさんは、落ち着いた顔立ちの美少女。 健康的にふっくらした頬を見ていると、とても死にそうにありませんが、これまた、難病物のヒロインには、よくある事です。 ≪世界の中心で愛をさけぶ≫の長澤まさみさんも、およそ死にそうにない顔をしてましたからねえ。 撮影前に、一週間くらい、絶食してもらえば、程よくやつれると思うのですがね。
≪ドリーム・キャッチャー≫ 2003年 アメリカ
スティーブン・キングさんの原作。 ・・・といえば、不思議で、不気味で、怖い話と相場が決まってますが、これも、例外ではありません。 題名から感じるイメージとは、まるで違う内容なので、要注意。 不用意に見ると、吐きます。
子供の頃、ある少年をいじめから助けてやった事で、テレパシーや物探しなど、特殊な能力を分け与えられた、正義感の強い四人組が、大人になってから、森の中で、異星人の襲撃に遭い、能力を使って、異星人の親玉と戦う話。
何でもアリでぶち込んだ、無茶苦茶な設定ですが、それが分かっていても、充分怖いから、スティーブン・キング作品の実力は侮れません。 異星人の特徴は、≪エイリアン≫のパクリ。 しかし、この映画は、SFという感じはせず、やはり、ホラーに分類すべきでしょうなあ。
モーガン・フリーマンさんが、軍の異星人狩り専門部隊の指揮官として出ていますが、単に悪役なだけでなく、大した役割を担っていない点でも、意外な配役。 どうして、フリーマンさんに頼んだのか、フリーマンさんも、なぜ引き受けたのか、皆目解せません。
≪ザ・ライト エクソシストの真実≫ 2011年 アメリカ
アンソニー・ホプキンスさんが出ていますが、主演ではなく、助演です。 主演は、若い俳優さんですが、名前を聞いた事がない人。
アメリカで、葬儀屋の息子として生まれ、神学校を卒業した青年が、神を信じられずに、神父になる事を拒否しようとしたところ、教師から、バチカンの悪魔祓い講座を受けるように薦められ、更に、エクソシストの下で研修する事になり、実地に悪魔払いを体験する話。
実話が元だそうですが、そのせいか、盛り上がりに欠け、お世辞にも面白いとは言えません。 今や、古典となっている、≪エクソシスト≫も、そんなに面白い話ではありませんでしたが、こちらは、もっと、地味です。 アンソニー・ホプキンスさんに期待して、一級のホラーのつもりで見ていると、肩透かしを喰らいます。
悪魔の存在を認めてしまっている映画なわけですが、それの元が実話というのは、つまり、もろに科学否定なわけで、「おいおい、マジで、そう思ってんの?」と、キリスト教徒でない者でも、不安になって来ます。 「精神病ではないから、悪魔の仕業としか考えられない」と決めてしまう前に、トリックを疑った方がいいと思うんですが。
≪アルティメット≫ 2004年 フランス
リュック・ベッソンさんの、製作・脚本作。 原題の直訳は、≪郊外13≫で、これは、映画の舞台になっている、近未来のパリの架空の地区の名前です。
輸送中に強奪され、麻薬と暴力の横行で、無法地帯と化している≪郊外13地区≫へ運び込まれた中性子爆弾の起爆装置を解除するために、凄腕の潜入捜査官と、地元出身で、妹を麻薬王に監禁されている青年が、13地区へ乗り込んで、麻薬組織と戦う話。
しょっぱなから、あまりにも簡単に殺人が行なわれるので、「雑な話なのかな?」と引いてしまうのですが、見て行く内に、正義感のある青年や、義務感の強い警察官が出て来て、まあまあ、安心して見られるようになります。 逆に言えば、進むに連れて、平凡な勧善懲悪物に近づいていくわけですけど。
見所は、ストーリーよりも、アクションでして、壁を越えたり、建物から建物へ飛び移ったりする≪パルクール≫を使った追いかけっこが、最大の見せ場。 しかし、冒頭部分で、それが披露されてしまうため、クライマックスの戦いでは、ネタ切れして、しょぼくなってしまっているのが、難と言えば難です。
≪ツーリスト≫ 2010年 アメリカ・フランス
アンジェリーナ・ジョリーさん、ジョニー・デップさん、主演。 恋愛物と言えば、恋愛物。 犯罪物と言えば、犯罪物。 スパイ物のような雰囲気もあります。 この二人の顔合わせは、豪華と言うより、なんとなく、チグハグな感じがします。
高額脱税の容疑で追われている夫を持つ女が、警察の目を欺くために、ベネチアに向かう列車の中で、夫に背格好が似た男に近づき、整形後の夫だと思わせようとするが、ただの旅行者だったはずのその男が、実は・・・、という話。
実のところ、こんな風に、謎めかした梗概を書くほどの話ではありません。 出来損ないのスパイ映画みたいなしょぼさが、全編に漲っています。 監督が悪いとか、脚本が悪いとか言う以前に、話の発想自体が、ちゃちなのです。
アンジェリーナ・ジョリーさんを、絶世の美女という設定で使っているのですが、ご存知の通り、この方は、型に嵌まった美形ではないので、好みのタイプという人はともかく、そうでない人には、ピンと来ない場面が、たくさん出て来ます。 ジョニー・デップさんに関しても言える事ですが、ちと、配役に頼り過ぎなのではありますまいか。
トドメに更にツッコみますと・・・、ロンドン警視庁が、イタリアで、大人数の狙撃班を展開して、ロシア・マフィアの一団を射殺するというのは、法律的に許されるんでしょうかね? 常識的に考えれば、100パーセント間違いなく、重大な国際問題になると思うのですが。
≪ホーンテッド・マンション≫ 2003年 アメリカ
エディー・マーフィーさん主演の、実写ディズニー映画。 仕事中毒の不動産屋が、家族旅行の行きがけに、家を売りたいという客の屋敷に寄り道したばっかりに、呪いがかかった幽霊に妻を奪われそうになり、子供達と協力して、幽霊と妻の結婚式を阻止しようとする話。
エディー・マーフィーさんですから、コメディーなわけですが、あくまで、ディズニー映画なので、エディー・マーフィー映画とは、趣きが違います。 自己満足的な癖もない代わりに、毒もなく、声を出して笑えるような場面は見られません。
ホラーとしては、完全に失格でして、微塵も怖くありません。 幽霊よりも、蜘蛛の方が怖いくらいだから、話にならぬ。 子供向けとはいえ、これでは、子供も怖がらないでしょう。 コメディーにするか、ホラーにするか迷った末、両方の要素を混ぜたら、どちらでもなくなってしまった、といったところ。
≪クイック&デッド≫ 1995年 アメリカ
サム・ライミ監督で、シャロン・ストーンさんが主演、助演が、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオという、顔ぶればかり、妙に豪華な西部劇。
かつて、無法者に父親を殺された娘が、成長して、ガンマンになり、ある町で支配者になっていた犯人を見つけるが、なりゆきで、その男が主催する早撃ち大会に出る事になり、いずれも訳ありの参加者達と、命懸けの撃ち合いをする羽目になる話。
復讐物ですが、どろどろしたところはありません。 早撃ち大会という催し物の形式の中で話が進行するため、人が殺されても、深刻さが感じられず、「ふざけた映画」という印象が強いです。 サム・ライミ監督だから、仕方ないと言えば、仕方ないですが。
シャロン・ストーンさんは、ガンマンの格好をすると、もはや、美人でも何でもありませんな。 ジーン・ハックマンさんは、見事な悪役ぶり。 この人のお陰で、映画の体裁が保てている感あり。 ディカプリオさんは、まだ、10代後半の少年ですが、妙に嵌まっていて、カッコいいです。 この人は、この頃が、ピークだったのでは?
≪月夜の宝石≫ 1958年 フランス・アメリカ
ブリジット・バルドーさん主演。 スペインのとある地方で、伯爵の妻になっている叔母の屋敷にやって来た姪が、遺恨と成り行きで伯爵を殺してしまった青年を好きになり、共に逃避行する話。
最後まで片思いなので、恋愛物というには、ちと趣きが異なっており、ジャンル別けがし難い話です。 ブリジッド・バルドーさんは、この頃が最も美しかった年齢なのですが、話が暗過ぎて、せっかくの魅力が損なわれている感じがします。 こういう役には、もっと陰のある美人が似合うのでは?
青年のキャラに描き込みが足りず、何を考えているのか分からない不気味さがあって、それが恋愛物としての鑑賞を、更に難しくしています。 特に、子豚を殺そうとする場面は、まともに見ていられません。 こんながさつな男に惚れる女の気が知れぬ。
スペインの風景は、息を飲むほど、素晴らしいです。 これは、風景そのものが雄大なのもさる事ながら、ロケハンとカメラ・ワークに精力を注ぎ込んだ成果でしょう。
≪リプレイスメント≫ 2000年 アメリカ
キアヌ・リーブスさん主演、ジーン・ハックマンさん助演のスポーツ物。 スポーツ物は、大きく分けて、二パターンありますが、これは、駄目なチームが、ある事をきっかけに奮起して、急に強くなる方の、変種。
ストで選手がボイコットしてしまったプロ・アメフト・チームを、プレー・オフに進ませるため、引退したコーチが、訳ありの選手を集めて、代理チームを作り、シーズン残りの四試合を戦う話。
元アメフト選手はいいとして、元サッカー選手や、元相撲取り、足が速いだけの男、凶暴なだけの男など、あまりにも遊びが過ぎていて、リアリティーを著しく欠いています。 「こういう事もありうる」と、観客に思わせなければ、こういう映画は成立しないと思うのですが、そういう配慮を、端から放棄している様子。
元相撲取りですが、かなり、ひどいキャラで、大銀杏と丁髷を間違えているのは大目に見るとしても、フィールドで茹卵を吐くなど、目を背けたくなる醜さ。 日本の客に媚びるアメリカ映画は不愉快ですが、ここまでひどいのも、逆に、胸糞悪い。 相撲について知識がないのなら、相撲取りなど出さなければいいのに。
他の点でも、主人公のクオーター・バックとチア・リーダーが、安直に恋仲になるなど、非常に軽薄な発想で作られた話で、作り手の見識の低さが際立っています。
≪ソードフィッシュ≫ 2001年 アメリカ
ほとんど忘れていましたが、この映画は、前に、地上波・夜9時の映画枠で、二回くらい見た事があります。 2001年ですか? もっと前のような気がするのですが・・・。 ヒュー・ジャックマンさん主演、ジョン・トラボルタさん、ハリー・ベリーさん助演。
逮捕され、服役した後、引退していた伝説のハッカーが、銀行にプールされた政府の秘密資金を狙う組織にスカウトされ、離婚した妻から娘を取り戻す裁判費用を得る為に、犯行に手を貸すものの、FBIの手が伸びて、黒幕だった政治家に裏切られたり、組織に入り込んだスパイの存在が明らかになったりして、ころころ変わる状況に翻弄される話。
トラボルタさんが、組織のボスなのですが、この男が曲者で、複雑な計略を張り巡らせて、最終的に誰が得をするのか、先読みを許しません。 ただ、見る者が、純粋に驚かされるかと言うと、そうではなく、話が複雑過ぎて、伏線を張りきれていないため、途中で、ついて行くのが面倒になってしまうタイプの映画です。
本当に面白ければ、二度も見ているものを、忘れるわけがないんですよ。
≪戦火の勇気≫ 1996年 アメリカ
デンゼル・ワシントンさん主演。 メグ・ライアンさん助演。 しかし、この二人、最初から最後まで、一回も顔を合わせません。 たぶん、撮影現場でも、会っていなかったのでは?
湾岸戦争で、味方の戦車を撃ってしまったものの、罪に問われなかった中佐が、別の戦闘で戦死した女性大尉の功績が、名誉勲章の授与に適当かどうかを調べる仕事を任されるが、関係者の証言に喰い違いがあり、調査を進める内、意外な事実が浮かび上がる話。
湾岸戦争を題材にした最初の映画という事で、封切り時には、結構、前宣伝が盛んでした。 今までにも、何度もテレビ放送されて来たわけですが、どうも、アメリカ政府の宣伝映画の臭いがしたので、見ないようにして来ました。 今回、思い切って見てみたら、やっぱり、思っていた通りでした。
女性大尉に勇気があったかどうかが問題になるわけですが、果たして、これを勇気と言えるのかどうか・・・。 また、勇気以前に、指揮官として、妥当な判断をしたかどうかとなると、これは完全に×でして、一人の負傷者を見捨てないために、部下全員を危険に曝したわけで、とても、誉められるような采配ではありません。
そもそも、勇気だ、判断だと言う以前の問題として、湾岸戦争自体が、アメリカが参戦する正当な理由があったかどうか、非常に怪しいため、この映画の企画そのものの意義が疑われるのです。 「国の為に」という言葉が何度も出て来ますが、イラクが攻めたのはクウェートであって、アメリカではないので、アメリカ兵が出て行って、殺したり殺されたりする事が、「国の為に」なったかと考えると、どーにもこーにも、白けずにはいられますまい。
映画の発想自体が胡散臭いので、デンゼル・ワシントンさんの重厚な演技も、逆に、陳腐に見えてしまいます。 メグ・ライアンさんに至っては、この人がどうすれば、戦場でバンバン敵を撃ち殺す人間に見えるのか、配役担当の常識を疑うところ。
≪タッチ・オブ・スパイス≫ 2003年 ギリシャ
珍しく、ギリシャ映画。 いや、と言うより、初めて見ました。 イスタンブールに住むギリシャ系住民で、ギリシャとトルコの関係が悪化した時に、両親と共にギリシャへ追放された少年が、イスタンブールに残った祖父と、なかなか会えないまま、何十年も過ぎてしまい、祖父の危篤の報せを聞いて、ようやく、イスタンブールに戻った時には、40歳を過ぎていたという話。
イスタンブールが、いかに郷愁を誘う街であるかを主張するのが、主なテーマ。 それを、ギリシャ側から見ているところが、面白いです。 たぶん、作り手が、実際にイスタンブールに住んでいた、ギリシャ系トルコ人だったんでしょうなあ。 そうでなければ、こういう映画は思いつきますまい。
ギリシャ系トルコ人が、トルコにいる時には、ギリシャ人と見做され、ギリシャへ移り住むと、トルコ人と見做され、どっちにしても肩身の狭い思いをするのは、気の毒この上ないです。 しかし、この映画は、民族間の対立が背景になっているにも拘らず、どちらか一方に偏った立場をとらない事で、刺々しい雰囲気になるのを、用心深く回避しています。
途中から、主人公の感心の比重が、祖父よりも、初恋の女性の方に移ってしまうのは、心情的には分かるものの、ちょっと、軸ブレを起こしている感じ。 しかし、総じて見れば、いい映画だと思います。
≪神童≫ 2006年 日本
成海璃子さん主演、松山ケンイチさん助演。 物心ついた頃から、天才ピアニストと見做されていた少女が、中学生になって、親の期待が重荷になり、ピアノ嫌いになるが、亡父の死因になった難聴に、自らも犯されつつある事を知り、漸く素直に、ピアノに向き合えるようになる話。
松山ケンイチさんは、浪人の時に主人公に出会い、その後、音大生になる青年の役ですが、冒頭から出て来るので、主人公かと思いきや、実は、完璧な脇役で、後半になると、極端に存在感が薄くなってしまいます。 予備知識なしで見に行った人は、「え! 松山さんの映画じゃなかったの?」と、さぞや、戸惑った事でしょうな。
成海さんは、演技は宜しいと思いますが、中学生にしては、ちと育ち過ぎているような気がせんでもなし。 顔立ちが大人びている上に、クラスメートの平均よりも背が大きいので、「神童」と言う割には、子供に見えないのです。
音楽映画ですが、音楽を演奏する人間の映画であって、音楽そのものがテーマではないので、≪スイング・ガールズ≫的な、観客まで巻き込むようなノリはないです。 また、≪のだめカンタービレ≫のような、コメディーでもないので、「一体、何が見所なの?」と、首を傾げたくなるところがあります。
後半の、演奏会に出演する事になる展開には、ちょっと、わくわくさせてくれるものがありますが、いざ、演奏が始まってしまうと、巧いのか下手なのか、素晴らしいのか大した事ないのか、素人耳には、区別がつかないので、それ以上、盛り上がりようがありません
≪オカンの嫁入り≫ 2010年 日本
宮崎あおいさん主演。 大竹しのぶさんが、オカン役。 同僚のストーカー行為による精神的ショックで、ひきこもりになってしまった娘が、突然、若い金髪男を連れて来て、結婚すると言い出した母親に反発するものの、やがて、男の優しい人柄や、母親の真意を知り、二人の結婚を受け入れて行く話。
親子関係の難病物です。 映画にするより、スペシャル・ドラマにでもした方がピッタリ来そうな、ベタな話なんですが、非常に丁寧な演出で、細やかな心理描写を行なっているために、悪い印象は受けません。 とりわけ、宮崎さんは、実力を遺憾なく発揮しています。 大竹さんの存在感が霞むくらいだから、その程度が分かろうというもの。
とまあ、この映画単独で見れば、宜しいと思うのですが・・・。 監督が、呉美保さんなんですが、この方、前作の、≪酒井家のしあわせ≫でも、ほぼ、同じテーマを取り上げていまして、二本連続で、同じような趣向だと、「あれ? こういう話にしか興味がないのかな?」と思われてしまうのは、致し方ないところ。
≪スタンド・バイ・ミー≫ 1986年 アメリカ
ホラー小説で有名な作家、スティーブン・キング原作の少年物映画。 見ていない人にも、タイトルは知られていると思いますが、それは、テーマ・ソングが、CMなどで繰り返し使われているから。
小学校卒業間近の四人組が、行方不明になっている少年の死体があるという情報を聞きつけて、第一発見者になろうと目論み、親にはキャンプをすると偽って、死体がある場所まで、泊りがけの旅に出かける話。
ベタな少年物でして、粗暴・凶暴・乱暴・下品と四拍子揃っており、少年物が嫌いな人間には、見るに耐えない映画になっています。 この映画の評価が高いのは、つまるところ、少年物に嫌悪感を抱かない人間の方が多数派だという事の証拠なんでしょうな。
死体が絡むものの、事件性は全くなく、トリックとか謎解きとか、そういった要素は微塵も入っていないので、要注意。 人生論が若干入ってますが、それも、所詮、子供の悩みのレベルなので、感動するところまでは、とてもとても・・・。
≪イングリッシュ・ペイシェント≫ 1996年 アメリカ
第二次大戦中の北アフリカで、撃墜された飛行機から救出されたものの、大火傷を負い、記憶を失った男が、戦後、イギリス人と見做され、医療部隊に運ばれて、イギリスへ向かうが、途中、移動に耐えかねて身を寄せたイタリアの廃屋へ、撃墜前の彼を知る人物が現れ、彼の過去の行状を思い出させる話。
アカデミー賞を何部門も獲ったそうですが、その年は、よっぽど、不作だったんでしょうなあ。 私が見る限り、とてもとても、そんな映画では・・・。 あまりのつまらなさに、気を失いかけた事、幾たびか・・・。 つまらん話を、わざわざ、入れ子構造にしているのは、滑稽至極。
とにもかくにも、主人公に魅力がなさ過ぎです。 この人、一体、何の取り得があるの? 不倫はするわ、敵軍に地図は渡すは、およそ、主人公と思えぬ、感心しない行為ばかりしています。 ヒロインの方も同様で、砂漠に暇潰しに来ているとしか思えません。 こんな二人が、どんな目に遭おうが、知った事ではありますまい。
以上、20本まで。 2013年3月30日から、4月20日までに、見て、感想を書いた映画です。 あまりにも、遅々としていて、永久に現在に追いつかないような気もしますが、映画漬けで暮らしていた時期というのは、そんなに長くは続かなかったと思うので、その内、ポーンと、月日が飛ぶと思います。 2013年は、夏から、文庫本蒐集計画が始まり、秋には、北海道応援に雪崩れ込んで、後は、翌年夏の退職まで、映画どころではなくなるので、映画ラッシュが続くのも、2013年の7月くらいまでだと思います。
ところで、「映画評は、新作について書くのが、映画ファンのエチケットだ」と思っている人もいるかと思いますが、まあ、そう、硬い事を言いなさんな。 映画館に新作を見に行っていたのでは、お金がいくらあっても足りません。 逆に、ブログに、新作の感想をアップする為に、映画館へ行く費用を捻出しているという人がいたら、「目を覚ましなさい」と、こちらから、アドバイスしたいです。 そんな事をしていたら、いとも容易に、破産してしまいますよ。
趣味への傾倒度は、人それぞれだとは思うものの、「映画は、私の人生だ」というような物言いは、制作や配給に携わっている人達や、プロの批評家なら、問題ないですが、単なる観客が口にしたら、おこがましいです。 以前、新聞の人生相談コーナーに、「これまで、映画ばかり見て来て、結婚もしなかったが、もしかしたら、映画の世界に惑わされて、人生を棒に振ってしまったのではないかと思っている」という、もう、老境に差しかかった男性の告白が寄せられていましたが、大いにありそうな事です。 映画の世界を、現実と混同していたんでしょうなあ。
アイドル歌手が歌う、甘い歌詞の世界を、現実と混同して、「誰にでも、燃えるような恋愛の機会は訪れる」と信じ込み、婚期を逃した人間は、うじゃうじゃいると思いますが、それと同類の落とし穴なのでしょう。 まあ、大雑把に言って、容姿が、同年代の人間全体で、上から3割くらいの中に入らないと、歌の歌詞のような恋愛は、できないと思いますねえ。 つまり、残りの7割は、逆立ちしたって、恋愛結婚などできないわけだ。
映画も同じ。 映画で見た場面を、現実世界で真似てみれば、必ず、齟齬を感じる事になると思います。 所詮、作り物の世界なんですよ。 ヤクザ映画が全盛だった頃は、任侠の世界に惑溺し、つまらない理由で喧嘩して、命を落としたとか、大怪我したとか、そんな例が、うじゃうじゃあったんじゃないでしょうか。
ブルース・リー・ブームの時にも、カンフーを真似た喧嘩は多かったと思います。 冗談じゃない。 体を鍛えてもいない人間が、蹴り合いなんかしたら、死んでしまいますよ。 日活のアクション映画なんかも、観客に多くの怪我人を生んだでしょうねえ。 アメリカ映画の銃撃アクションは、日本では現実感がないですが、アメリカ本国では、真似する人間が、時々、学校を襲撃して、大量殺人を起こします。 洒落にならねー・・・。