2024/12/22

EN125-2Aでプチ・ツーリング (63)

  週に一度、「スズキ(大長江集団) EN125-2A・鋭爽」で出かけている、プチ・ツーリングの記録の、63回目です。 その月の最終週に、前月に行った分を出しています。 今回は、2024年11月分。





【裾野市水窪・道祖神】

  2024年11月5日。 裾野市・水窪にある、「道祖神」へ行って来ました。 ネット地図で見つけた所。 旧246号線沿いの交差点の一角にあります。

≪写真1≫
  全景。 白い看板に、「長教寺 入口」とありますが、それは、ここではなく、もっと奥に入った所にあります。

≪写真2≫
  左端が、道祖神。 右の三体は、地蔵ですな。 花立て、線香入れ、ペット・ボトルのお茶と、どうも、仏物の方が、扱いがいいようです。 ネット地図上の名称は、「道祖神」なのですが。

≪写真3左≫
  道祖神のアップ。 道祖神と言ったら、普通、浮き彫りですが、ここのは、石像ですな。 顔は、地蔵と大差ないように見えます。

≪写真3右≫
  道路脇に停めた、EN125-2A・鋭爽。 水窪地区は、裾野市の南端ですが、それでも、かなり走らないと、着きません。 鼠蹊ヘルニアと糖尿病で、体に不安があるので、あまり、遠くに行きたくないんですがねえ。 バイクの方は、調子がいいです。

≪写真4≫
  旧246号線。 現在の名称は、「県道394号線」ですが、そう言っても、まず、通じません。 県道の番号なんて、知っている人の方が珍しいですから。 現在の246号線は、旧246バイパスで、もっと西を通っています。 こちらの旧246も、交通量は多いです。 私が通勤していた頃は、この道は使いませんでした。 信号が多くて、進みが悪いからです。




【裾野市水窪・水窪公民館】

  2024年11月12日。 裾野市・水窪の、「水窪公民館」へ行って来ました。 「みずくぼ」と読みます。 公民館に用があるのではなく、どういう所なのか、見に行っただけです。 観光地や景勝地ではないけれど、一応、公共施設だから、写真を撮っても、問題ないでしょう。

≪写真1≫
  黄瀬川の近く、住宅地の中にありました。 周囲は、普通の住宅です。 まあ、公民館だから、そういう場所にあっても、不思議はないです。 郊外のような場所があれば、そこに造ると思いますが。

≪写真2≫
  出入り口の前に、空間が取ってあります。 こういう部分があると、雨の日に、屋外作業する時など、便利です。

≪写真3≫
  路肩に停めた、EN125-2A・鋭爽。 水窪は、裾野市の南の端に位置しています。 うちから、ここまでで、往復20キロくらい。 通勤していた時には、裾野市の北の端までで、往復40キロ近くでしたから、裾野市が、南北に長い事が分かります。

≪写真4≫
  公民館の近くの家で、道路向きに咲いていた花。 花といい、葉っぱといい、どう見ても、菊ですが、品種名までは分かりません。



【裾野市水窪・愛鷹橋左岸の石碑】

  2024年11月17日。 裾野市・水窪の愛鷹橋左岸付近にある、二つの石碑を見に行って来ました。 前回、水窪公民館に来た時に、気づいたもの。

≪写真1≫
  光の加減で、暗い写真になってしまいました。 申し訳ない。 正面の石碑は、「渡邊孫三郎翁彰徳碑」。 地元の政治家のようです。 左側に経っている石碑は、その建設者の名前を彫ったもの。

≪写真2≫
  すぐ背後に、黄瀬川が見えます。

≪写真3≫
  近くの路肩に停めた、EN125-2A・鋭爽。 水窪公民館のすぐ近くなので、二週連続、ほぼ同じ場所に、同じ道を通って、やって来た事になります。 鼠蹊ヘルニアと、糖尿病を患っているので、冒険を避けたい気持ちが、目的地の選定に表れていますな。

≪写真4左≫
  すぐ近くにある、愛鷹橋。 黄瀬川に架かっています。

≪写真4右≫
  橋の左岸袂に建つ、石碑。 「愛鷹橋復興記念碑」。 復興という事は、その前に、流されてしまったんでしょうか。 「昭和○年四月」とあるのですが、○の字が読めません。 時の建設大臣が書いたもののようですが、読めないような字は、達筆とは言わんというのよ。




【裾野市水窪・山神社】

  2024年11月27日。 裾野市・水窪、黄瀬川に架かる愛鷹橋の、左岸袂にある、「山神社」へ行って来ました。 前々回、水窪公民館に来た時に、見つけた所。

≪写真1≫
  橋を渡る道より、一段低くなった、川沿いの道があり、そこに入り口があります。 しかし、向かって右上にある生活道路からも、下りて来る事ができます。

≪写真2左≫
  鳥居の名額。 「山神社」。 こうやって、名前を書いていただけると、他所から来た者にとっては、大変、ありがたい。 鳥居は、木製。 名額も、木の板で、素朴な造りです。

≪写真2右≫
  石組みで、階段が造ってありました。 これは、器用、且つ、風流だ。 さりげなく、高度な技術が使われています。 造園業者が関わったものと見ました。

≪写真3左≫
  社殿。 木製、銅板葺き。 これは、覆いで、中に、小さい木製の本殿が入っていました。

≪写真3右≫
  石燈籠。 小さなもの。 明らかに、バランスがおかしいですが、何か、部品が失われているか、もしくは、積み方が間違っているのかも。 笠と受け鉢が、逆とか。

≪写真4≫
  黄瀬川。 ちょっとした段差で、滝のようになって、水が渦巻いています。 川底は、富士山から流れて来た溶岩です。





  今回は、ここまで。

  裾野市は遠いので、南の端ばかり行っています。 今回は、全て、水窪地区。 体が治ったら、もう少し、遠くまで行ってもいいんですが、鼠蹊ヘルニアはともかく、糖尿病の治療は、下手をすれば、一生、下手をしなくても、長引きそうなので、思った通りには、行かないかも知れません。

2024/12/15

実話風小説 (35) 【恋深き女】

  「実話風小説」の35作目です。 10月の中頃に書いたもの。 鼠蹊ヘルニアで、総合病院にかかり始めたけれど、まだ、検査をしている段階で、重度の糖尿病だとは知らない頃ですな。 後生がいい。




【恋深き女】

  女Aは、歌手であるが、知る人ぞ知る程度の知名度である。 もっとも、今の歌手・グループは、ほとんどが、そんなものだが。 ただし、クラブ歌手とは違い、芸能事務所に所属し、ちょこちょこと、バラエティー番組に出る事もある。 その点、有名人と見るべきであろう。

  最初は、30人もいる女性アイドル・グループの一人として、デビューした。 顔が、特にいいわけではなかったので、目立たなかった。 ただ、今時のアイドル志望にしては珍しく、歌がうまかった。 デビュー前、最初に、プロ作曲家のレッスンを受けた時に、5人一絡げの扱いだったにも拘らず、すぐに、「君、ちょっと、一人で歌ってみて」と言われ、一人で歌ったら、あまりにも、うまいので、先生だけでなく、他の4人も、あんぐり口を開けて、聞き惚れてしまった。

  30人全員のレッスンが終わった後、先生が、マネージャーに言った。

「Aって子は、うまいねえ。 驚いたよ。 今でも、あれだけ歌える子がいるんだなあ」

「そうですか。 あの子を、センターで行こうと思ってるんですよ」

  ところが、これが、勘違い。 同じ苗字の子が、3人いて、マネージャーが指していたのは、その中で、最も顔がいい子の事だったのだ。 作曲家は、レッスン生たちが胸に着けていた、名札の苗字しか記憶していなかった。

「昔だったら、ソロで、充分行けたんだが」

「80年代ですか?」

「いや、もっと前だ。 アイドル時代より前」

「そこまで遡ると、私にはもう、分かりません」

「君らの世代で分かる例というと、そうだなあ。 岩崎宏美とか、石川さゆりとか・・・」

「え? そんなに、うまいんですか?」

  マネージャーは、意外に思った。 30人の中で、顔が良い者だけ、7・8人連れて、カラオケに行った事があるが、センターを予定している子が、そんなにうまいとは思わなかったのだ。 下手でもないが、普通であった。

「デビュー前から、こんな事言っちゃ、失礼だが、もし、このグループがコケて、解散という事になったら、A君だけでも、どこか、有望そうなバンドに、ボーカルとして紹介したら、どうだろう。 埋もれさせるのは、惜しいよ」

  その先生の言う通りになった。 そのグループは、デビュー直後、テレビの歌番組に、3度出た程度で、その後、人気が盛り上がる事はなかった。 1年もしない内に、もう、解散の話が出た。 結局、1年3ヵ月で、解散。 しかし、その間に、女Aの歌のうまさに気づく者が、何人かいた。

  ステージでは、後ろの方で踊っているだけで、歌っているのかいないのか、分からないような存在だったが、仕事の関係者から誘われて、他のメンバー数人と共にカラオケに行くと、女Aのうまさを知っているメンバーが、「Aちゃん、○○、歌ってえ!」とリクエストする。 で、歌い始めると、それまで酔っ払って騒いでいた面子が、鎮まり返って、謹聴してしまうのだ。 全員、口あんぐり。 何か、薬物でも注射されたかのように、魂を奪い取られ、聞き惚れてしまう。

  グループの解散が決まった時、女Aを欲しがるバンドが、片手の指ほど、打診して来たが、マネージャーは、まだ、勘違いしていて、センターだった子を、顔合わせに連れて行き、「この人じゃありません」と、丁寧に断られたりしていた。 このマネージャーが、歌がうまいのが、女Aの事であると知ったのは、解散した後で、女Aは、他の大半のメンバーと同じく、事務所を辞め、実家に帰っていた。

  すでに、一般人になっていたので、女Aの才能を欲しがるバンドの所属事務所は、家に直接、訪ねて行って、スカウトした。 ところが、幾つかの事務所が、ほぼ同時に声をかけた事もあり、女Aは、困ってしまった。 実は、1年3ヵ月の芸能界生活で、その爛れぶりを目の当たりにし、うんざりしていたのだ。 至って、普通の家庭に育った女Aは、生き馬の目を抜くような世界に、嫌悪感を抱いていた。 歌って踊って、ファンと握手していれば、楽しいだろうと思っていた、デビュー前の気持ちには、もう戻れなかった。

  バンドのボーカルというのも、気が進まない。 大抵、他のメンバーは、男ばかりで、ボーカルだけ、女という組み合わせになる。 そういう集団では、紅一点などと言えば、華やかそうだが、その実、必ず、性関係になる男が出て来て、その男のオマケみたいな人生になってしまう。 何だか、非常に狭い世界に閉じ込められてしまうようで、想像するだけで、気が滅入った。 苦肉の回答として、

「事務所にも、バンドにも、所属しないで、コンサートやライブの時だけなら、ボーカルをお手伝いできますが・・・」

  最初は、どこの事務所も渋ったが、その内、承諾するところが出て来て、小規模なライブをやってみると、大変な好評。 ロック・バンドだったが、女Aは、音楽センスが図抜けて優れていたので、難なく要領を掴み、気持ちよく歌って、聴衆を魅了した。 そのバンドのファンが、「あのボーカルは、誰だ?」と騒ぎ出し、解散したグループ・アイドルに所属していたと聞いて、驚いた。

  助っ人ボーカルとして、重宝されるようになり、仕事が増えるに連れ、マネージメントが、自分一人では、こなしきれなくなり、以前いた事務所に、再度 所属して、マネージャーを付けてもらう事になった。 グループの頃とは違う、若い人である。 女Aの方から希望して、女性にしてもらった。 極力、芸能界の爛れに近づきたくなかったのだ。


  女Aも、20代半ばになり、そろそろ、結婚したいと思うようになった。 この点、普通の感覚なのである。 歌がうまい以外は、至って、常識的な人物なのだ。 女Aの歌唱力は、持って生まれた才能から出たもので、努力は、そこそこにしかしていないから、「一生を、歌に捧げる」などという、大袈裟な考えは、持ちようがなかったのだ。 一応、歌手をやっているけれど、ちやほやされるような人気ではないし、20代半ばで結婚して、子供も、二人くらい欲しいと思っていた。

  その為には、結婚する相手を探さなければならないが、芸能人や、業界関係者は、避けようと思っていた。 うまく行かない例を、いくらでも見ていたからだ。 どうせ、結婚するなら、一生、添い遂げたいと思っていた。 別に、古風というわけではなく、いつの時代でも、これから結婚する人は、そう思っているものである。

  たまに、仕事先で、芸能活動を続けている元グループのメンバーに会うと、必ず訊かれた。

「Aちゃん。 Zさん、誰か、分かった?」

  女Aは、首を横に振った。 「Zさん」というのは、グループ・アイドル時代からの、ファンの一人である。 しかし、コンサートなどで会った事はない。 少なくとも、誰が、Zさんなのかは、女Aは、分かっていない。 女A本人ですら知らないのだから、周囲の者は、誰も知らない。

  グループの頃、メンバー個人個人に、ブログが作られて、近況報告などをアップしていた。 センター始め、顔のいい方から、10人くらいは、ファンから、多くのコメントがつけられていた。 その他のブログは、ほぼ、開店休業状態。 誰も、コメントを書いて来ないので、本人はうっちゃらかしで、マネージャーが、グループ共通の通知を書き込む程度だった。

  ところが、女Aのブログだけ、毎回、コメントを書いて来る人がいたのだ。 それが、Zさんである。 元記事の長さに関係なく、コメントは、いつも、5行くらい。 書いてある内容から考えて、男であり、女Aよりも、5歳くらい、年上のようだ。 グループや、女Aの事について、妙に細かい事まで知っているので、最初の内は、気味が悪いと思っていたが、月並みな励ましの言葉だけでなく、知識・情報が豊富で、話題の広がりが自由自在といった態、文章が非常に面白い事に気づいた。 女Aが、歌がうまい事も知っていた。 どうも、どこかで、実際に歌っている声を聴いた事があるらしい。

  他のメンバーも読んでいて、やはり、最初は、「キモい」とか言っていたが、その内、羨ましがられるようになった。 「あたしも、Zさん、欲しいなあ」と、女Aのブログにコメントを書き込んで、略奪を計ろうとする者もいたが、Zさんの、女A推しは、不変不動だった。

  やがて、女Aも、コメント欄で、Zさんにレスを書くようになった。 事務所からは、ファンのストーカー化を恐れて、個別レスは禁止されていたのだが、グループ時代の女Aは、事務所内では、味噌っカス扱いだったので、事務所の人間は、誰も、ブログをチェックしておらず、読んでいるメンバーも、黙っていてくれた。 レスの内容が、格式ばった硬いもので、恋愛を匂わせる雰囲気に欠けていたから、問題にならなかったのである。

「結婚するなら、Zさんがいいかなあ」

  そんな事を考えたのが、何回か、十何回か、何十回か。 女Aは、Zさんの顔も知らないのだが、そんな事は問題ではなく、平和で温かい家庭が築けそうな相手を理想としていたのだ。 そうなると、自分の事を、よく分かってくれている人がいいではないか。 その内、グループが解散になり、メンバーの中で、廃業する者のブログは閉鎖された。 女Aも、生活がバタバタして、しばらくは、Zさんの事を忘れていた。


  さて、助っ人ボーカルとして、再デビューした女Aだが、年齢的に、真剣に結婚相手を探そうと考え始めた。 そのせいで、仕事を辞める事になっても、仕方がない。 自分が稼いで、ヒモのような男を養うという考えはなかった。 とにかく、生活能力がある男と結婚し、夫の理解があれば、仕事を続ける。 子供が出来て、続けられないようなら、やめるか、一時休止する。 そういう方針を固めていた。

  ふと、Zさんの事を思い出した。 以前のブログが閉鎖されてから、2年近く経っていた。 Zさんの事だから、女Aの情報は、集め続けているとは思ったが、ブログがないのだから、連絡のしようもないのだろう。 あ、もしかしたら・・。 今でも、郵便によるファン・レターを書いて来る人はいる。 アイドルの場合、人気があればあるほど、事務所で処分してしまうが・・・。

  「もしかしたら、保存してあるのでは?」と思って、今のマネージャーを通して、以前のマネージャーに訊いてもらったところ、「それらしい人から、ハガキが来ていたが、Aが事務所から外れていた頃には、全部、捨てていた。 その内、来なくなった」との返事。 残念。 しかし、こういう業界なのだから、前のマネージャーを恨んでも仕方ない。

  事務所に頼んで、ブログを再開してもらったところ、助っ人ボーカルになってからのファンが、毎日、何十人となくコメントを寄せて来た。 それはそれで、嬉しかったが、Zさんらしき、コメントはなかった。 半年以上経って、ようやく、Zさんが書き込んで来た。 ハンドルも変わらず、5行の長さも変わらない。 懐かしくて、涙が出て来た。

  しかし、以前と違って、今は、コメントを打って来る人の数が多い。 Zさんだけに、レスを書くわけには行かなかった。 マネージャーに頼んで、Zさんの素性を調べてもらったが、ブログの運営会社に問い合わせたら、「個人情報ですから」と、ピシャリ 撥ねつけられたとの事。 無理もない。 女A程度の知名度では、こっそり教えてくれるという事もない。

  「興信所を使ったら?」と、事務所のスタッフが言ってくれたが、そこまではしたくなかった。 とりあえず、Zさんが、コメントを寄せてくれるようになっただけでも、満足しなければ。 こちらが、おかしな事をして、Zさんの方で、警戒して、書き込んで来なくなったら、元も子もない。


  女Aは、知名度が少しずつ上がり、収入も増えた。 こうなると、寄って来る男がいる。 元アイドルだから、一般平均よりは、顔もいい方だし、年頃で、性的魅力も出て来た。 女Aは、芸能人や、芸能関係者は、慎重に避けていたが、ある時、「この人だ!」と思う人物が現れた。 何が、「この人」なのかというと、「この人が、Zさんだ!」と思う男が、現れたのだ。

  グループにいた時、二番目にコンサートをしたスタジアムで、支配人をしている男だった。 たまたま、助っ人ボーカルを始めてから、同じスタジアムで歌う事があって、その時、少し話をしたのだが、女Aの事を、よく知っていた。 「アイドル時代から、Aさんのファンなんですよ」と言った。 これは、業界では、社交辞令のような言葉だが、女Aは、グループ時代の自分だけのファンと言ったら、Zさんしか知らず、「もしかしたら、Zさん?」と思ったら、もう、Zさんとしか、思えなくなってしまった。

  相手の男に確認したわけではない。 「違う」と言われるのが、怖かったのだ。 Zさんだと、思いたかった。 相手の男は、名刺をくれたので、半月くらい経ってから、女Aの方から、メールを打ち、食事を一緒にした。 やはり、確認できなかったが、話をする内に、Zさんだと、決めてしまった。 アイドル時代のブログ・コメントの内容を知っていたからだ。 涙が出て来るのを、辛うじて堪えた。 その男は、もう、40代で、バツイチだったが、そんな事は、どうでも良かった。 この人こそ、私の運命の人なのだ。

  三ヵ月も交際しない内に、婚約し、半年もしない内に、結婚式を挙げた。 その間、ブログは、休んでいた。 現物のZさんと、毎日、顔を合わせ、仲睦まじく話をしているのだから、ブログなんて、必要ない。 「しばらく、お休みします」で、放っておいた。 マネジャーが、活動の告知だけ、アップしていて、「コメントが来てますよ」と、女Aに報告していたが、読む気にならなかった。

  結婚して、二ヵ月もしない内に、喧嘩が始まった。 夫が、女Aの預金を勝手に下ろして、高級車を買ったのがきっかけ。 夫の服装や持ち物も、結婚前とは様変わりして、ブランド物や金製品で固められていた。 女Aが抱いていた、Zさんの堅実なイメージとは、正反対である。

「お金の自由が利くようになって、人が変わってしまったのかな?」

  真顔で抗議したが、夫は、ニヤニヤ笑っているだけだった。 預金は、瞬く間に底をつき、あまつさえ、借金までしている事が分かった。

「どうしたら、そんなに変われるの? 私が知ってるZさんは、そんな人じゃない!」

「Zさん? 誰だよ、それ」

  女A、ギョッとした。 聞いてはならない言葉を、聞いてしまった。 だが、それ以上、喋れなかった。 確認するのが怖かったのだ。 ハッと思いついて、パソコンに走り、ほったらかしにしてあった、自分のブログを開いた。 マネージャーによる告知記事が続いている。 コメントを見る。 Zさんのハンドルと、5行の記事が、すぐに見つかった。 ほとんどの告知記事に、5行のコメントがついていた。 日付が古いところを見る。 そこだけ、1行だった。

「御結婚、おめでとうございます。 どうぞ、お幸せに」

  女A、顔色、真っ青になった。 体中の体温が、斑になり、血が渦巻き、逆巻いた。 気持ちの悪い汗が、そこら中から噴き出して来る。 もう、怖いの何のと言っていられない。 夫の腕を引っ張って、パソコンの前まで連れて来ると、きつい口調で、問い質した。

「これは、あんたが書いたんじゃないの?!」

「あぁあ! Zさんて、こいつの事か。 思い出した。 お前がアイドル時代に、ブログにコメントを書き込んでたストーカーだろ? 俺も、読んでたんだよ。 なんだ、お前。 俺を、こいつだと思ってたのか? そんなわけねーだろ。 こんな素人と一緒にすんな」

  自分は業界人のつもりなのだ。 スタジアムの支配人も、業界人と言って言えない事はないか。 それは、どうでもいいとして、女Aは、すんでで卒倒するほど、激しい衝撃を受けた。 Zさんだと思い込んで、ろくでなしのクズと結婚してしまったのだ。 使い込まれたお金も然る事ながら、性的に穢された事が、痛かった。 私は、汚れてしまった。 こんな男に・・・、こんな男に・・・。


  その日の内に、実家に帰った。 夫とは、一度も会わずに、離婚した。 弁護士が行き来し、話を纏めた。 慰謝料というより、手切れ金だが、親から借りて、300万円、渡した。 それでも、ろくでなしのクズと結婚し続けているより、マシだと思えた。


  仕事は、続けた。 意気消沈して、歌に精彩がなくなっていたのも束の間、ブログで、Zさんのコメントを読む内に、励まされ、微笑まされ、嬉しくなり、すぐに立ち直る事ができた。 Zさんへの思いが、より強く募り、恋の歌を歌わせると、神がかり的な魅力を醸し出した。 助っ人コンサートで、女Aが歌うバラードに、ロック・バンドのファン達が、手拍子も忘れ、シーンと静まり返って、聞き惚れてしまったというから、凄い。 商業音楽界では、女Aの評価は、もうとっくに済んでいたが、また注目され、著名な批評家から、再評価されるくらい、レベルが上がった。


  コンサートとは別に、ファン・ミーティングが開かれると、Zさんが来ていないか、鵜の目鷹の目になってしまう。 顔を知らないのだから、見ても仕方がないのだが、探さずにはいられないのだ。 握手会では、それらしい年配の男性ファンの顔を、しげしげ、見つめてしまう。 惚れられていると勘違いして、「二人きりで会いませんか」と手紙を手渡して来る男もいた。 いそいそと出かけようとして、マネージャーに止められた。

「Zさんて、性格的に、そういう事をしないんじゃないですか?」

  ハッと、我に返る。 その通りなのだ。 たとえ、コンサートや、ファン・ミーティングに来ていたとしても、積極的にデートに誘って来るような、欲望剥き出しのタイプではないのだ。 この世で、Zさんの事を、一番理解しているのは自分だと思っていたのに、マネージャーに指摘されて、その事に気づくとは、何たる不覚!


  「女Aは、Zというファンに、片思いしているらしい」という噂は、業界内に、静かに広がって行った。 最初の夫が作った借金を返し、親から借りた離婚の手切れ金も返し、女Aの資産が、また、数千万円台に盛り返して来た頃合を見計らって、近づいて来る男がいた。 他の芸能事務所の、社長の息子という人物。 この男は、Zさんの事をよく、研究していた。 アイドル時代の女Aのブログを、たまたま、読んでいて、昔の事も頭に入っていた。 うまく、Zさんに成り済まして、女Aを信用させた。

  女Aは、ブログで、Zさんのコメントを読み続けていたが、男は口がうまくて、Zさんのコメント内容を巧みに利用し、まるで、自分が書いているかのように装った。 その上で、「もう、僕達に、ブログは要らないだろう」と言って、ブログを閉鎖させてしまった。

  婚約、結婚。 たちまち始まる、夫の浪費。 今度は、凄い。 高級車3台、スーパー・カー1台。 20人乗れるクルーザーまで買った。 毎晩、夫の友人・知人を集めたパーティーが繰り広げられ、女Aは、眠る事もできない。 マネージャーが言った。

「何だか、Zさんらしくないですね」

「うん・・・」

  試しに、マネジャーに頼み、夫に内緒で、ブログを再開してもらった。 一ヵ月くらいしてから、Zさんのコメントがあった。

「御再婚、おめでとうごさいます。 お幸せに、お過ごしですか?」

  女Aは、仕事の出先で、スマホの画面を見ながら、声を上げて泣いた。 まんまと、騙されたのだ。 離婚。 手切れ金、今度は、10万円。 二番目の夫から、500万円 要求されたのを、「結婚詐欺だから、訴えてやれ」と言う人がいて、弁護士が告訴を仄めかし、10万円に値切ったのだった。


  このシリーズを読んで来た人なら、この後の成り行きも、大体、想像がつくと思うが、女Aは、似たようなパターンで、あと、三回、騙された。 巧妙な事に、「僕は、Zさんじゃないけれど、Zさん以上に、君を大事に思っている」と言いながら、時折り、Zさんである事を匂わせる、という凝った手を使う男もいた。

  グループ・アイドルの時、センターだった女が、まだ、タレントとしてやっていたが、暴言を吐いて、吊るし上げられ、もう、引退するしかないところまで追い込まれた。 女Aが、助っ人ボーカルで評価されている事が気に食わず、自分の情夫を、Zさんに仕立てて近づけ、結婚寸前まで持ち込んだが、この計略は、事務所のスタッフから情報が漏れて、ギリギリで阻止された。

  ただ、週刊誌にスッパ抜かれて、元センターは、完全に、業界から追放。 女Aは、「男を取っ換え引っ換え」だの、「お盛ん、元アイドル」だの、さんざん、批難される羽目に。 実際に、4回も結婚・離婚を繰り返しているのだから、反論のしようがなかった。 テレビのトーク番組でも、「Aさんは、『恋多き女』として有名でいらっしゃいますが・・・」などと言われ、否定しても、白々しいので、「はい。 お恥ずかしい限りです・・・」と、認めていたが、本当は、Zさん一筋の、一途な人なのである。


  女Aは、30代半ばを過ぎ、もう、結婚したいという気持ちは、薄くなっていた。 相変わらず、ブログには、Zさんのコメントがつき、それを読むのが、一番の楽しみである。 最近、興信所を使って、Zさんが誰なのかを知る事ができた。 両親と実家に住む、普通の会社員だった。 女Aが歌うコンサートには、必ず来てくれているらしい。 ちなみに、まだ、独身。

  しかし、女Aの方から、会いに行く気はない。 理由は、いろいろ、ある。 Zさんとの、ブログ上での関係を壊したくない。 相手が、ごく普通の生活をしている一般人だと分かると、逆に、自分の方が引け目を感じる。 4回も離婚歴があるのでは、相手の両親が、いい顔をしないだろう。 などなど。 女心は、複雑なのである。

2024/12/08

EN125-2A補修 ⑰

  プチ・ツーリングに愛用しているバイク、EN125-2A・鋭爽の補修の記録です。 定期的な整備も含みます。 125ccで、車検もないので、バイクが壊れなければ、補修記事の書きようもありません。 何度も切れた、ギア・インジケーター・ランプ「1」は、麦球に換えてから、切れずにいます。 暗いので、見難いですが、点いている事か分かれば、充分。





【タイヤ空気圧】

  2024年5月12日。 車の手入れをし、タイヤ空気圧を見たついでに、バイクの方も、見ておきました。

≪写真上≫
  車もバイクも、同じ米式バルブなので、同じ道具が使えます。 ゲージで測ったら、規定値より、僅かに減っていました。 空気入れで、追加。

  乗る前に、タイヤを手指で押して、硬ければ、走れないほど減ってはいません。 ゲージを使う計測は、半年に一度で、充分です。 

≪写真下≫
  普通、オートバイのタイヤ空気圧規定値は、チェーン・カバーに、デカールが貼ってあるのですが、私のバイクは、前の持ち主が、デカールを剥がしていて、分かりませんでした。 取説を入手して、規定値を調べ、書類入れの厚紙にラベルを貼って、そこに書き記してあります。 前輪、1.75(kgf/cm2)、後輪、2.0。 前後で異なるのは、後輪の方に、大きな加重がかかるからです。




【猛暑期用ヘルメット顎紐金具の錆取り・塗装】

  6月末、猛暑期用ヘルメットを、元箱から出したら、顎紐の金具に錆が出ていました。 顎には触れませんが、かぶる時に、手で握るので、錆は困ります。 7月初めにかけて、錆を落とし、塗装して、使えるようにしました。

≪写真上≫
  2019年末に買い、2020年の初夏から使い始めた、「ネオ・ライダース MA03」。 アマゾンで、4200円でした。 廉価品なので、金具が錆びる材質であっても、文句は言えません。

  バイクは黒ですが、猛暑期用メットは、シルバー。 黒っぽいヘルメットでは、暑さで、頭がポーッとしてしまうからです。

≪写真中左≫
  金具を、サンポールに浸けて、錆をとっています。 メッキが残っている部分まで溶かす必要はないので、時々、出して、様子を見ます。

≪写真中右≫
  錆をとった後、塗った、「カラーサビ鉄用・黒」。 自転車のレストアの時に買ったもの。 下に写っている赤いのは、水彩用の絵筆です。 塗料を塗る時の筆は、何でもいいのです。

≪写真下≫
  塗装が乾いたので、顎紐に取り付けました。 金具は、3ヵ所。 赤いキャッチの所の金具は、外せなかったので、付けたまま、半分ずつ、回して塗りました。 キャッチに入る金具は、入る部分だけ、メッキのままにしてあります。 塗っても、どうせ、剥がれてしまうので。




【自賠責証・ステッカー更新 / 錆塗装】

  バイク、「EN125-2A・鋭爽」を中古で買ってから、5年が経ちました。 自賠責保険が、期限を迎え、セブン・イレブンから更新案内ハガキが来たので、9月5日に、新たに、5年分、入って来ました。 ハガキを持って行くと、手続きが簡単なのです。 今回は、13310円(2662円/年)。 前回は、16990円(3398円/年)でしたから、随分、安く済みました。

  9月23日。 プチ・ツーに出かける前に、書類を入れ換え、ステッカーを貼り直しました。

≪写真1≫
  車載書類。

  左上は、セブン・イレブンでくれた、保管用ビニール袋。

  右上は、「標識交付証明書」で、これは、車だと、車検証に相当します。 自治体の役所で、バイクを登録すると、もらえます。 車載義務あり。 盗まれる事を用心して、積まない人もいると思いますが、事故を起こした時に、義務違反がバレると、より、厄介になりますから、結局は、積んでおいた方がいいという結論になります。

  下は、「自動車損害賠償保険証明書」。 「この証明書は、ビニール袋に入れて、保管・携行してください」と書いてあるので、やはり、車載義務があるのでしょう。 EN125-2Aは、書類を入れる場所があります。 セローの時には、なかったので、バッテリーのバンドに挟んでいました。

≪写真2≫
  数字を消してあるので、ちと、違和感がありますが、ナンバー・プレートです。 左上の、ステッカーだけ、見て下さい。 これまでの、5年間は、この緑色のものでした。 令和6年の9月までという意味。

≪写真3≫
  新しいステッカー。 令和11年の9月まで。 今回は、色が赤なので、ナンバー・プレートのピンク色と、多少、馴染みがいいです。

≪写真4左≫
  プチ・ツーから帰った時、錆が出ているのを見つけ、すぐに、塗装しました。

  これは、エンジン前のフレームについている、ケーブルの引っ掛けフックです。 錆取りはせずに、上から、水性艶消し黒を筆で塗りました。

≪写真4右≫
  塗装後。 まあ、こんなもんでしょう。 錆が見えなくなればいいのです。 塗料で覆うだけで、酸素が遮断され、それ以上、錆が進むのを抑える効果があります。

≪写真5左≫
  これも、エンジンの前側、ホーンの中心です。 前にも、この中心部分だけが錆びましたが、どうも、錆に弱い材質のようです。

≪写真5右≫
  ここは、ダイソー・スプレーのシルバーで、塗りました。 まあ、こんなものでしょう。

  ちなみに、私は、車でも、バイクでも、ホーンを使う事は、まず、ないです。 ホーン区間なんて、行きませんし。 平地で使うと、揉め事の元。 危ないと思ったら、ホーンで相手に注意するより、自分から避けてしまった方が、無難です。




【タイヤ空気追加】

  2024年11月9日。 車の定期手入れをしたついでに、バイクのタイヤも、空気圧を見て、足しました。 バイクを前に出さないと、後輪をやれないので、些か、手間がかかります。

  規定は、前輪、1.75(kgf/cm2)、後輪、2.0ですが、どちらも、1.5を割っていました。 車より、バイクの方が、減りが大きいです。 バルブが、もう、経年劣化しているのかも知れません。




  以上です。

  バイクそのものは、快調に動いており、今回の記事の中で、一番大きかった出来事は、自賠責保険の更新という事になります。 更新と言っても、任意保険のように、同じ契約を継続するのではなく、一から入り直す事になります。 ただ、セブン・イレブンから届いたハガキを持って行けば、その手続きが簡単になるという話。

  次の更新は、私が、65歳の時で、そろそろ、バイクという歳でもないので、その時に、やめるかも知れません。 もし、健康で、体力にゆとりがあれば・・・、いや、70歳までは、乗らないか、さすがに。

2024/12/01

読書感想文・蔵出し (119)

  読書感想文です。 これを纏めているのは、11月の中旬です。 鼠蹊ヘルニアで行った総合病院で、血液検査をしたら、「重度の糖尿病」と診断されました。 先に、そちらの治療をしなければならなくなり、毎日、インスリン注射と、血糖値計測をする身になってしまいました。 読書はしていますが、他に何かとやる事が多くなり、楽しみというより、苦痛になっています。





≪ゴールデン・マン≫

ハヤカワ文庫 SF 1655
ディック傑作集
早川書房 2008年3月15日 発行
フィリップ・K・ディック 著
朝倉久志・他 訳

  沼津図書館にあった、文庫本です。 短編、7作を収録。 本全体のページ数は、352ページ。 コピー・ライトは、1980年。 新しいですが、若い頃の作品を集めたものなので、作者薬中の心配はありません。 作者による、【まえがき】と、【作品メモ】が付いています。 この本は、2007年にアメリカで公開された映画、≪NEXT -ネクスト-≫の日本公開に合わせて、表紙を変えたもの。 


【まえがき】 約24ページ

  ディックさん本人が、1980年時点から、過去の作家人生を振り返ったもの。 自伝というほど、纏まりはないですが、読み応えがあります。 ただ、「薬中から足を洗ったとは言え、一度、壊れてしまった人が、こんな、まともな文章を書けるのか?」という疑念も湧いてきます。 誰か、ディックさんについて、詳しい人が、代筆したのでは? ちなみに、ディックさんは、1982年には、他界してしまいます。


【ゴールデン・マン】 約58ページ 1954年

  核戦争後、生まれて来た畸形人間を処分する法律が出来ている社会。 未来が見える18歳の青年が存在する事が分かり、当局が狩り出しに向かうが、なぜか、自首という形で、捕えられた。 未来が見える彼を殺す事はできず、監禁していた部屋から逃げられてしまい、建物の出入口を封鎖して、全ての部屋を虱潰しに捜し始めるが・・・、という話。

  未来が見えるから、自分に対する攻撃が、どこに当るかも分かるわけで、前以て、避けられるという仕組み。 アイデアはともかく、小説としては、暗い雰囲気で、さほど、興が乗る話ではないです。

  この作品を原作とした映画、≪NEXT -ネクスト-≫は、ニコラス・ケイジさん主演で、私も見ていますが、未来が見えるというアイデアだけいただいて、話は全然、別物。 映画は、面白かったですが、「ここまで変えるのなら、原作は要らなかったのでは?」と思わないでもなし。 単に、映画製作者が、ディックさんのファンだったのでしょう。 


【リターン・マッチ】 約32ページ 1967年

  宇宙人が運営していた地球人向けカジノに、地球当局の手入れがあり、宇宙人の手によって、客ごと焼き払われたものの、ピンボール・マシンが一台、残されていた。 そのマシンで遊び続けると、マシン上にあるミニチュアの村で、少しずつ、投石機が組み立てられて行き、完成するや、ピン・ボールの弾がプレイヤーめがけて・・・、という話。

  これは、面白い。 こんな話は、確かに、ディックさんしか、思いつかないかも知れません。 なんで、宇宙人が、こんなマシンを作ったのか、全く説明されていませんが、そこがまた、シュールな雰囲気を盛り上げています。 この不思議さは、ストルガツキー兄弟の、【ストーカー】に近いですな。 地球人の発想では、宇宙人の考えている事が全く分からないという点が、面白いのです。


【妖精の王】 約38ページ 1953年

  コロラド州の、寂れた街道沿いで、ガソリン・スタンドを経営する高齢男性。 ある雨の夜、店じまいした後で、何かの気配を感じ、外に出てみたら、妖精の一団が来ていた。 輿に乗っているのが王で、ひどく弱っており、男性が自宅に泊めてやったが、翌朝には息を引き取った。 王の後継者に指名されてしまった男性は、妖精の敵であるトロールとの戦いを覚悟したが・・・、という話。

  現代物のファンタジー。 「妖精」は、原語では、「エルフ」で、映画、【ロード・オブ・ザ・リング】を見ていれば、大体、見当がつく世界。 アメリカに、ヨーロッパの妖精がいるのは、変ですが、それは、作中でも、触れられています。 アメリカ先住民の妖精にすれば、違和感がなかったと思いますが、ディックさんが、そちらの知識に乏しかったか、読者に分かり易いように、敢えて、ヨーロッパ物を使ったかのいずれかでしょうか。

  ファンタジーなので、SFファンには、いささか、食い足りないですが、普通に、お話として、面白く読めます。 友人の死体をどうするつもりなのか、心配してしまいますが、たぶん、妖精達が、何とかしてくれるのでしょう。


【ヤンシーにならえ】 約44ページ 1955年

  人類の植民が、太陽系全体に広がった世界。 木星の衛星、カリストで、ナンシーという人物と、その家族が、全住民の人気を集め、みなが、ナンシー一家の生活様式や、考え方を真似るようになっていた。 ナンシー一家は、実在しない、テレビ画面の中だけの虚像で、住民の意識を制御する為に作られたものだった。 という話。

  住民に気づかれないように、マインド・コントロールをかけるという方策。 別に、ディックさんが考案したわけではなく、1955年時点で、アメリカでは、すでに、こういう事ができるのではないかという学説が出ていたんでしょう。 ナンシー氏のモデルは、アイゼンハワー大統領だそうですが、人気がある人が、流行を作ってしまうという現象は、すんなり、理解できます。

  問題は、テレビ放送くらいで、ごく普通の人物であるナンシー氏を、これだけ、人気者にできるかどうかという事ですな。 テレビに出て来る人物というのは、平均的ではない、変わった人が多く、一般人が真似する気にならないからこそ、価値があり、テレビに出る資格があるとも言えます。 矛盾を感じないでもなし。


【ふとした表紙に】 約20ページ 1968年

  火星の動物、ワブの皮で表装した本が、発行中止になった。 ワブは、皮だけになっても、生きていて、なんと、本の中身が書き換えられてしまうのだ。 「死」が否定され、「全ての生物は、永遠の命を持つ」という内容になってしまう。 出版社の社長は、この特性から、ある事を思いつき・・・、という話。

  アイデアが、ピカ一。 まさか、薬物の影響で、思いついたのではなかろうね。 結末は、「こうなったら、いいな」という、子供の夢のようなアイデアが提示されて、終わります。 社長の目論み通りにならなかった、その後を書いて、ショートショートにしてしまえば良かったのに。

  ちなみに、「ふとした表紙に」という邦題は、誤植ではないです。 洒落。


【小さな黒い箱】 約54ページ 1964年

  ある新興宗教が、世間にバラまいた、小さな黒い箱。 その取っ手を握ると、教祖の「痛み」を共感する事ができる。 取り締まりたい当局は、教祖の居場所を知っていると思われる、テレパスの男に目をつけて、その男と同棲している女を、政府職員として雇い、キューバに派遣して、当地のテレパスに、頭の中を探らせるが・・・、という話。

  【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】、つまり、映画、≪ブレードランナー≫の原作ですが、その元になった短編だそうです。 私も、【アン電】を読んでいるんですが、随分、昔なので、ほとんど、忘れてしまいました。 よって、比較して語る事はできません。 【アン電】に、宗教なんて、出て来なかったような気がするんですがねえ?

  作品メモによると、【アン電】で、「共感」できるかどうかが、人間とアンドロイドを見分ける手がかりになっているらしく、この、【小さな黒い箱】でも、「共感」がテーマになっているので、そこから、膨らませて、【アン電】を書いたという事でしょうか。 テーマというより、モチーフの一つ程度のような気もしますが。

  ちなみに、この短編自体は、別段、面白くないです。 残念なのは、禅をモチーフに使っていながら、ディックさんが、仏教を、ほとんど、理解していない点です。 解説書ではなく、原始経典の翻訳を読めば、分かり易いのに。 新興宗教を弾圧する為に、アメリカが、キューバと協力するというのは、いかにも、ディックさんらしい皮肉ですが、こういう皮肉で笑える人は、発表当時でも、ほとんど、いなかったでしょう。


【融通の利かない機械】 約72ページ 1957年

  箱形の機械。 建物の壁をよじ登り、窓を壊して侵入し、偽の犯人の証拠を残しつつ、人を殺す。 通常なら、逃げるが、逃げる機会を失すると、テレビに化けて、やり過ごす。 そんな機械が使われ、犯人として、奴隷貿易業者の一人が逮捕される。 機械の存在に気づいた調査員が、真犯人をつきとめようとする話。

  推理小説の枠を借りたもの。 しかも、倒叙物。 基本的に、推理小説で、トリックの部分を、SFにしてあるわけですが、未来でなければ、ありえない機械を、凶器にしているだけで、推理小説としては、アンフェアさしか感じません。 小松左京さんの、【長い部屋】や、【幽霊屋敷】のような、小気味良さが、欠けているのです。

  犯人が逮捕され、追放された後の描写に、不自然なほど、多くのページが割かれていますが、おそらく、編集者から、長さの指定があって、後から付け足したものと思われます。 ストーリー結構的には、全くの蛇足。


【作品メモ】 約4ページ

  この短編集が出された時に、ディックさん本人が書いた、各作品の簡単な説明。 頭のいい人は、戦略的に嘘をつくので、何年・何十年も経ってから書いた説明を鵜呑みにはできませんな。 その時の気分で、修正してしまう事があるからです。 それでいて、何と言っても、本人が書いたものなので、疑うわけにも行かないわけだ。




≪逆まわりの世界 【改訳版】≫

ハヤカワ文庫 SF 2289
早川書房 2020年7月15日 発行
フィリップ・K・ディック 著
小尾芙佐 訳

  沼津図書館にあった、文庫本です。 長編、1作を収録。 352ページ。 コピー・ライトは、1967年。 この文庫は、1983年8月に出たものの、改訳版。


  1980年代から、突然 始まった、時間の逆転現象。 死者が、墓の中で目覚め、その声を聞いた警察官や民間業者は、掘り出して、蘇生措置を施さなければならない。 ある時、大きな力を持つ新興宗教の教祖が、生き返りつつある事が分かり、その教団はもちろん、文書の消去に絶大な権限をもつ、「図書館」や、イタリアに本拠がある伝統宗教の組織が、教祖を取り合う争いとなる。 蘇生業者の社長と、その妻、彼らの知人である警官らが、巻き込まれる話。

  解説にも書かれていますが、フィルムの巻き戻し映像から着想したのは、疑いないと思います。 蕎麦を食べる場面なら、逆回しにすると、口から蕎麦が出て来て、丼に戻って行くという映像。 そういうのが、昔、流行ったのです。 露悪趣味なので、すぐに、飽きられてしまいましたが。

  この作品の中でも、食べ物が吐き出され、最終的に、スーパーへ戻されたり、「ソウ・ガム」という、糞尿らしき物を排泄口から体の中に入れる行為が、設定されています。 そのまま書くと、露悪過ぎるので、暈されていますが、暈しても、発想自体が露悪だから、ごまかしようがないところがありますねえ。 

  逆回りと言っても、すべてが時間的に巻き戻されて行くわけではなく、些か、ご都合主義的に、ストーリーは、先に進んで行きます。 これは、東へ進んでいる列車の中で、人間が、西へ向かって歩いているようなものでしょうか。 あまり、いい譬えではないですが。 死者が蘇える以外は、ストーリーに関わって来る逆転現象は、ほとんど、ないです。 つまり、時間の逆転はなしにして、死者が蘇えるだけの設定にしても、成り立つ話なんですな。

  時間の逆転を、アイデアとして思いついたはいいが、いざ書き始めたら、あまり、面白くならないので、困ってしまって、活劇風にして、お茶を濁した、と指摘したら、ディックさん、図星を指されて、草葉の陰で、嫌~な顔をするでしょうか? 解説には、エントロピーと絡めて、小難しい事が書いてありますが、ディック作品を読む時には、買い被りは禁物です。 私の読みの方が、当たっていると思いますねえ。

  では、活劇としては面白いのかというと、そちらも、全然でして、警官にせよ、蘇生業者の妻にせよ、必然性が、大変 薄い退場の仕方をさせており、単に、話の展開に詰まって、そうした観が、強烈に見て取れます。 三勢力の争いも駄目で、展開は、グズグズ、決着は、あやふや。 作者が、どう進めていいか分からなくなっているのだから、面白くなるわけがないです。

  この蘇生業者の妻ですが、ちょっと変わったキャラを与えられています。 いかにも、スパイ然とした、抜け目のない、「図書館長の娘」と対比させる為に、おっとりした、夢見がちな女性にしたのだと思いますが、こういう人って、実際にいますよねえ。 たぶん、ディックさんの周囲にも、いたのだろうと思います。 大変、女性的な魅力があるが、いざ、交際したり結婚したりすると、理解できない部分が多過ぎて、結局、うまく行かないという。




≪シミュラクラ 【新訳版】≫

ハヤカワ文庫 SF 2155
早川書房 2017年11月25日 発行
フィリップ・K・ディック 著
山田和子 訳

  沼津図書館にあった、文庫本です。 長編、1作を収録。 353ページ。 コピー・ライトは、1964年。 原稿が書き上がったのは、前年の1963年で、その時のタイトルの直訳は、「地球のファースト・レディー」だったらしいです。 変えたのは、出版社でしょう。 「新訳版」というのは、日本での出版サイドの話ですが、1986年に、別の出版社から、別の訳者で出ていたものが、その後、絶版になり、早川で、新たに訳し直したという意味。


  21世紀半ば、世界を二分している勢力の一方である、ヨーロッパ・アメリカ合衆国。 ここ数代の大統領は、アンドロイド、その夫人は、常に一人での女性で、計算上は、90歳を越しているが、外見は、20歳前後にしか見えないのは、そっくりさんが、時々、交替しているから。 その国家最高機密を守る為に、国民は、二つの階層に分かれている。 巨大薬品会社の差し金で、精神分析医を廃止する法案が通ったせいで、念動力でピアノを弾く、心を病んだ世界的演奏家が、キレてしまい、そこから、多くの人間が、一つの国家体制の断末魔の混沌に呑み込まれて行く話。

  長い梗概だな。 これでも、内容の、100分の1も、伝えられていませんが。 とにかく、登場人物が多くて、しかも、群像劇なので、最初の内は、何が言いたいのか、さっぱり分かりません。 横になって読んでいると、間違いなく、眠ってしまいます。 読書習慣が出来て久しい人なら、経験があると思いますが、半分眠りながら読んでいると、自分で勝手に、半ページ分くらいの文章を作ってしまい、ハッと目覚めて、読み返すと、全然違う内容だった、という事が、何度も起こるくらい。

・ 商業音楽会社のスタッフ。
・ 念動力ピアニストと、妻子。
・ 最後の精神分析医と、受付係。
・ 大統領夫人と、その周辺。
・ ジャグ演奏家の二人と、違法火星移民宇宙船の販売会社社長。
・ それぞれ、別のシミュラクラ(アンドロイド)メーカーに勤める兄弟。
・ 突然変異か先祖返りで生まれたネアンデルタール人達。

  登場人物を、分けると、こんなところ。 他にも、ちょこちょこと出て来ます。 タイトルは、「シミュラクラ」ですが、モチーフの一つに過ぎず、アンドロイド自身は、大した役どころを担っていません。 元のタイトルの、「地球のファースト・レディー」の方が、また、相応しい。 少なくとも、クライマックスは、大統領夫人が、ストーリーの中心になるので。

  前半は、とにかく、耐えて読み、登場人物達の特徴を、覚えるしかありません。 英語圏やドイツ語圏の名前ばかりだから、なかなか、記憶できませんが、これだけ多いと、明治期の輸入翻案小説のように、日本人の名前に入れ換えたとしても、やはり、覚えられないでしょう。 明らかに、この長さの小説としては、出て来る頭数が多すぎるのです。

  後半に入り、大統領夫人が中心になると、主人公がはっきりして、話が安定します。 おそらく、どんな読者でも、この後半には、引き込まれるはず。 しかし、SFとして面白いわけではなく、活劇として面白いのです。 スパイ物の緊張感を戴いているんですな。 ディックさんというと、奇抜なアイデアで勝負する作家のイメージ強いですが、意外に、活劇調の展開が得意で、そういう場面の描写は、手に汗 握らされる事が多いです。

  軸になっているアイデアは、短編、【ヤンシーにならえ】(1955年)と同じで、尾鰭を付けて、長編にしたわけですが、随分と大きな尾鰭にしたものです。 解説によると、アメリカの60年代は、SF雑誌が不調で、短編が売れなくなり、長編を書かざるを得なかったとの事。 ディックさん、浪費家の妻を養う為に、書きまくっていたらしいのですが、昔書いた短編を、長編に書き直すというのは、ありがちな事ですな。




≪裸者と死者 Ⅰ・Ⅱ≫

ノーマン・メイラー全集 Ⅰ・Ⅱ
株式会社新潮社
Ⅰ 1969年5月25日 発行
Ⅱ 1969年6月25日 発行
ノーマン・メイラー 著
山西英一 訳

  沼津図書館にあった、ハード・カバーの全集の内、2冊です。 2冊で、長編、1作を収録。 二段組みで、2冊分の合計、717ページ。 コピー・ライトは、1948年。 筒井さんの、≪漂流≫に紹介されていたもの。


  太平洋戦争中、南太平洋の孤島、アナポペイ島で、先に駐留してい日本軍を、後から上陸した米軍が追い立てる構図の中、偵察小隊の十数名を中心に、後方勤務の単調な生活や、偵察任務の地獄のような日々を描いた話。

  大作で、しかも、発表当時は、評価も、国際的に高かったとの事。 今でも高いのかは、不明。 戦争を扱っていますが、戦記物ではなく、戦争小説としか言いようがない作品です。 アナポペイ島は、実在せず、そこで行なわれた戦闘も、ありません。 作者が、創作したものなんですな。 しかし、異様にリアルなのは、メイラーさん本人が、フィリピンで対日戦争に従軍しており、戦場を実体験していたからでしょう。

  メイラーさんは、21歳で、戦争に行き、この作品を発表したのは、25歳の時だというから、驚きます。 功績評価の基準に、年齢の若さを入れるのは、問題がありますが、それにしても、20代前半で、こういうものが書けるというのは、大変な事ではないかと思います。  おそらく、子供の頃から、膨大な数の小説を読みこなし、そこへ、戦場での体験が重なって、この作品として結晶したのではないかと思います。

  前半は、後方での生活が描かれており、戦闘場面もありますが、それが中心ではありません。 後半は、偵察任務になりますが、これも、戦闘場面は少しで、それ以外の苦労が、細々と、情景描写、心理描写、織り交ぜて、書き連ねられます。 起こる事件の数に比べて、よく、これだけ、書く事があるなと、驚くくらい。

  日本人の立場で読むと、負け戦は当然として、日本兵が、虫ケラのように殺されて行くので、気分のいいものではないです。 解説によると、メイラーさんは、日本に進駐した経験もあり、日本好きになったらしいですが、そういう裏情報は、あまり、真に受けられませんな。 日本でも、この作品が出版されると聞いてから、日本人の反発を避ける為に、セルフ・フォローをしたんじゃないでしょうか。 もし、本当に、日本好きだったら、そもそも、こんな作品、書けないと思いますよ。

  アメリカ兵も死にますが、ほんのちょっとです。 最終的には、日本兵の方が、二桁三桁違いに、多く死んで行きます。 しかし、これは、フィリピン戦での経験を元に、実際の死亡比率に近いものを出していると思われます。 日本側は、武器・弾薬どころか、食い物もないのですから、戦争どころか、ただ生きて行く事もできません。 日本軍が、補給もできないくせに、なんで、南太平洋の島々に拘ったのかは、不思議としか言いようがありませんな。 大方、何も考えてなかったんでしょう。 情けない話ですが。

  米軍が、捕虜にした日本兵を、その場で、バンバン撃ち殺してしまうのは、衝撃的。 完全に、虫ケラ扱いです。 映画、≪硫黄島からの手紙≫でも、降伏した捕虜を見張っているのが面倒になり、射殺してしまう場面が出て来ますが、どうやら、あれは、特殊なケースではなかった模様。 この作品では、何度も出て来るから、実際に、行われていた事なのでしょう。 「捕虜は、とらない方針」は、日本軍だけではなかったわけだ。

  後半で、偵察小隊の指揮官になる少尉は、前半では、将軍の従卒をしているのですが、この将軍と少尉の争いが、実に、チマチマとしたもので、呆れてしまいます。 前線では、命のやり取りをしているというのに、なんだ、この下らない、見栄とプライドの張り合いは? この部分にこそ、人間のつまらなさが、最もよく表れていると思います。

  「タイム・マシン」と題して、ところどころに、主要登場人物達の、アメリカでの徴兵前の生活が、一人ずつ紹介されるのですが、それが、また、つまらない。 アメリカが、文化的にも、経済的にも、圧倒的に輝いていた戦後間もない頃ならともかく、今の日本人では、この頃の一般のアメリカ人の生活に、何の興味も湧かないと思います。

  この作品、映画にもなっているそうですが、その映画自体は、大した評価を受けていないようです。 原作に沿って作ったのだとしたら、見せ場がないのだから、無理もないか。 むしろ、徴兵された、無知無教養で、ガサツな兵士達を細かく描いている点で、他のアメリカ映画に影響を与えているのでは? ≪第十七捕虜収容所≫、≪大脱走≫、≪プラトーン≫など、製作者が、この作品を読んでいないとは、とても思えません。




  以上、4冊です。 読んだ期間は、2024年の、

≪ゴールデン・マン≫が、8月20日から、22日。
≪逆回りの世界≫が、9月1日から、3日。
≪シミュラクラ≫が、9月4日から、7日。
≪裸者と死者 Ⅰ・Ⅱ≫が、9月9から、14日。

  ≪ゴールデン・マン≫は、短編集としては、作品数が少ない方ですが、やはり、感想は、長くなってしまいます。 私としては、読むのは、短編の方が好きなんですが、感想を書かなければいけないと思うと、尻込みしてしまい、短編集を借りてくるのに、抵抗を感じてしまうのです。

  インター・ネットがなかった頃は、気楽で良かったなあ。 世の中、明らかに、不便になって行くなあ。